ひろしま

  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (92ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087804829

作品紹介・あらすじ

花柄のワンピース、水玉のブラウス、テーラーメイドの背広、壊れたメガネ。写真家・石内都が被爆遺品を撮った。美しいから辛い、可憐だからむごい。風化しない広島。

感想・レビュー・書評

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  • 普段は文章が好きですが、こういうように写真で訴えることがとても強烈である場合がありますね。
    美しい布であり、丁寧に作られた服であるからこそ原爆投下の瞬間にこれらが時を止めたんだなと強く思えた。
    またきっと地味にしておしゃれもままならない時代であったけれど、見えないところには自分の好きな服を身につけていた当時の女性の心を思うと切なくなります。
    過去に起きたことだからと今の世から切り離して考えることは難しいです。現代だっていつ何が起きるかわからないので他人事のように考えることは許されないなと感じました。

  • つらかったです。
    透明感、清潔感、生地やデザインの可憐さが。

    これらのお洋服や小物の素材を買った人縫った人、着て鏡にうつして見た人、お母さんや姉妹やお友だちにちょっと自慢した人、好きな人に見てもらいたかった人。
    もういない。その朝から。

  • 昨年、この写真集の撮影風景を追った番組をTVで見た。
    撮影をしながら、原爆が落とされたその瞬間でも人々は普通の生活を
    していたということ、女性はおしゃれをしてお気に入りの柄のワンピースや
    ブラウスを着ていた‥‥ということを記憶に留めていたい。というような
    ことを石内氏がおっしゃっていた。
    被爆者の着ていた45着のぼろぼろになった服を撮った写真集。
    着ていた人は亡くなって、残った衣類は風化せずに部分的にしっかりした
    縫製の後などを残している。どうして戦争なんてしたんだろう?と考えさせられる。特注のライトテーブルの上で撮られた服のディテールからは風に揺れるスカートの動きや涼しげな素材感、着ていた人の体型までが皮肉にも生き生きと見て取れる。写真になった一着一着が心に刻まれた写真集だ。

  • きれいな写真集がみたいな、と思って、図書館の写真集の棚を眺めていたら、見つけた
    どうしてもひかれてしまい、手に取った

    広島で被爆死した方方の、遺品の写真集
    ワンピースや制服や小物など、時間を奪われてしまったものたちが写されている
    撮影者と寄稿者の文章を読み、色色な布地に染み込んだものは、確かに血や汗だけではないと感じた
    生生しい写真こそないものの、想像をかきたてられる
    確かにその人が存在していたこと、確かに(私たちが?)殺してしまったこと、感じたことをそれぞれ受け止めて、私たちは生きていかなければならない
    写真にはこういう働きもあるのだと知った

    • Eさん
      そのときには、どうしようもなく、時間を奪われてしまったものだと感じます

      たしかに、資料となった今では、自らが力や意思を持って時間を止めた、...
      そのときには、どうしようもなく、時間を奪われてしまったものだと感じます

      たしかに、資料となった今では、自らが力や意思を持って時間を止めた、という感じかもしれません
      2013/07/25
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「どうしようもなく」
      そう、どうしようもなかった。悲しい事実ですね。
      リンダ・ホーグランドのドキュメンタリィは、観に行く予定。また違う顔が見...
      「どうしようもなく」
      そう、どうしようもなかった。悲しい事実ですね。
      リンダ・ホーグランドのドキュメンタリィは、観に行く予定。また違う顔が見えてくるかも、と期待しています。。。
      2013/08/01
    • Eさん
      やっぱり、恐ろしいものや醜いものの存在を知る義務もあると、最近感じています
      戦争自体はまがまがしいものでも、そこに生きていた人たち一人ひとり...
      やっぱり、恐ろしいものや醜いものの存在を知る義務もあると、最近感じています
      戦争自体はまがまがしいものでも、そこに生きていた人たち一人ひとりは、そういうものでもないですものね

      ドキュメンタリー映画のこと、知りませんでした
      岩波ホール、私も観に行こうと思います
      nyancomaruさん、教えてくださり、ありがとうございます(^^)
      2013/08/02
  • 『ひろしま 石内都・遺されたものたち』 2013年夏、岩波ホールほか全国順次公開予定
    http://www.thingsleftbehind.jp/

    『ひろしま 石内都・遺されたものたち』 Things Left Behind / ひろしま 石内都・遺されたものたち
    日本、アメリカ / 2012 / 80分
    監督:リンダ・ホーグランド(Linda HOAGLUND)
    ©NHK / Things Left Behind, LLC 2012
    配給:NHKエンタープライズ

    【作品解説】
    平和記念資料館に収蔵されている原爆犠牲者の遺品を撮影したシリーズ「ひろしま」で知られる写真家、石内都。リンダ・ホーグランドの監督第2作である本作は、2011年10月、カナダのバンクーバーにあるMOA(人類学博物館)で石内都の大規模な個展が開催されるまでを1年以上にわたって記録したドキュメンタリーである。衣類、靴、人形など、原爆で亡くなった人々の様々な遺品たちは、時の流れを越えて見る者に静かに語りかけてくる。映画は、個展の準備の過程に密着し、バンクーバーで個展に訪れた人々の率直な反応を記録する。更に興味深いのは、様々な人々へのインタビューから明らかにされるカナダと原爆との間にある意外な関係性である。監督デビュー作『ANPO』において現代アートを媒介にして日米安保の問題を投げかけたホーグランドは、本作でその方法論を更に深化させたと言えるだろう。数々のドキュメンタリーを撮影し、『誰も知らない』など是枝裕和作品の撮影監督としても知られる山崎裕が撮影を担当。

    『ひろしま 石内都・遺されたものたち』 :特別招待作品 : TOKYO FILMeX 2012 / 第13回東京フィルメックス
    http://filmex.net/2012/ss13.html

    • Eさん
      こんにちは

      先日、「ひろしま」、観てきました
      石内都さんの撮影における思いは、良い意味で想像と異なりました

      ありがとうございました(^^...
      こんにちは

      先日、「ひろしま」、観てきました
      石内都さんの撮影における思いは、良い意味で想像と異なりました

      ありがとうございました(^^)
      2013/08/15
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      > 良い意味で想像と異なりました
      そうでしたか、此方では朝1回の上映だったので、観に行く都合をつきませんでした。今から次のチャンスを待ちます...
      > 良い意味で想像と異なりました
      そうでしたか、此方では朝1回の上映だったので、観に行く都合をつきませんでした。今から次のチャンスを待ちます。。。
      2013/08/19
  • 半世紀以上も前の、しかも戦時中に着られていたとは思えないほどに色彩が鮮やな衣服たち。
    この花柄のブラウスは、どんな少女が身につけていたんだろう?
    このワンピースを着た女性は、いくつくらいの人だったのかしら?
    彼女、彼らの生きていた記憶が、布地にしっかりと残留しているようで。
    私は、この原爆投下の悲劇を決して忘れてはいけない国に生まれたのだ。
    写真を見ながら、そんなことを思い知らされました。

  • この写真集のモチーフは、おもに女性の衣類です。ページをめくって、その意外にも華やかな色や柄に驚きました。

    中の一着、ドット柄のワンピースは、ていねいな針目で繕われていました。
    当時の衣類は、ほとんどが手作りだったそうです。お店で仕立てられたものか、家族が仕立ててくれたものか――いずれにしても、とても大切に扱われていたであろうことは、想像がつきます。
    お気に入りの服を、大切に着ようと思う気持ち。後世に生きる私たちにも、たやすく共感できる感情です。そんな、ふつうの人々のささやかな楽しみを、たった一つの爆弾が無残に踏みにじってしまう。そんな行為の愚かしさや哀しさを、写真たちは静かに語りかけてきます。

  • 長女が音読している広島の話の展開で借りた写真集。夏休みに長崎の資料館で、衣類やめがねなどの実物を一緒に見た。広島にはまだ連れて行ってない。この本の写真は光を取り入れて写しているため、衣類を作った母達の気持ち、それを身にまとった一人一人の人生が伝わってくる。その一人一人に何が起こったのか、爆風や熱線で衣類がどうなったのかを通して、考えることができた。
    12万人という集団に悲しいことが起きたのではない。(一人+その人を想う人びと)×12万の悲しい出来事が、一瞬のうちに起きたということ。三月の津波も同じ。忘れないようにしよう。

  • 梯久美子『昭和二十年夏 女たちの戦争』で知った写真集。
    実際にその写真集を開いてみれば、息が止まりそうだ。
    知っていたけれど、その写真の愛らしさと、むごたらしさと。
    涙が止まらない。

    あの日、誰かが身に着けていた衣類、
    今は広島平和祈念資料館に眠っている。
    そのワンピースを、ブラウスを、あるいはメガネを、石内都は撮った。
    何のキャプションもつけず、写真集はできた。

    それなのに、はっきり見えるように感じられる。
    母の手作りのワンピースを身に着ける幼子、
    お洒落な腕時計の持ち主は仕事のできる才色兼備の人。
    レースのついたスリップは、恋に胸ときめかすお嬢さん……

    巻末に「被爆資料リスト」として
    品名と寄贈者の氏名が記されている。
    被爆のせいばかりでなく、品名を見なければ、
    時代のギャップで、それが何かわからないものもあった。

    梯氏は前掲書で書いている。
    「史料として見る前に、女性たちが大切に来た服として見る視点が
    この写真集にはある」と。
    その服本来の美しさが蘇ったからこそ、着ていた人たちの日常、
    死の瞬間まで大切にされていた日々の暮らしの中での美しいものへの
    想いがそこに立ち上る……

    異常な戦時下にあって、なお日常の営みが行われること。
    田辺聖子も向田邦子も、あの時代に青春を過ごした作家は
    皆、明るい学園生活をも書いている。

    それだからこそ、怖いのだ。
    昨日、一緒に笑い転げた仲良しの同級生が、
    今日、冷たい亡骸となっていることが。
    健康で、何のさわりもなく日常を送れる人が、
    突然命の営みを止められてしまうこと。

    その恐怖が不条理が、ひしひしと感じられる。
    いまだに涙が止まらない。

  • 井上ひさし氏、柳田邦男氏が高く評価。風化しない広島
    花柄のワンピース、水玉のブラウス、テーラーメイドの背広、壊れたメガネ。写真家・石内都が被爆遺品を撮った。美しいから辛い、可憐だからむごい。石内の写真に広島の心模様が残っている。
    2009/8/15

  • ふむ

  • 物言わぬ遺物の雄弁さ。
    ここで紹介されているものは、持ち主が生前身に付けていたものだという。

    付録のしおりの、井上ひさしさん、柳田邦男さん、鷲田清一さんの寄稿も、ぜひ読んで欲しい。

  • 「ひろしま」石内都著、集英社、2008.04.30
    78p ¥1,890 C0072 (2018.11.15読了)(2018.11.15借入)
    読売新聞の読書欄で「平成時代名著50」が順次掲載されています。その中の一冊として、この本が紹介されていました。図書館の蔵書検索で検索したらヒットしたので、借りてきました。石内都の展覧会は、今年の1月に横浜美術館で見ました。「ひろしま」に収録されている作品も何点かありました。洋服を撮った写真だったように記憶しています。
    この本に収録されている写真は、洋服の他に下着、防空頭巾、化粧水瓶、入れ歯、櫛、腕時計、靴、靴下、眼鏡、手袋、等です。すべて被爆者の方々が、被爆の際に身に付けていたものです。
    一通り、見た後に「被爆資料リスト」を見ていたら、同じもの(洋服、下着、防空頭巾)を映した写真が何組かあるのに気づきました。アップにしたり、光の当て方を変えて撮っているようです。撮り方によって、ずいぶん印象が変わってしまいます。

    【目次】(なし)
    写真
    在りつづけるモノ達へ  石内都
    石内都 主な個展/主なグループ展/パブリックコレクション
    被爆資料リスト
    (別冊) 栞
    世紀の没落  ヴィスワヴァ・シンボルスカ
    より鮮明になる記憶  井上ひさし
    風化を拒否する表現  柳田邦男
    <衣>の無言  鷲田清一

    ―――――――――――――――――――――
    【展覧会】石内 都 肌理と写真
    会場:横浜美術館
    会期:2017年12月9日(土)~2018年3月4日(日)
    今年、デビュー40周年を迎える石内都。建物や皮膚そして遺品などに残された生の軌跡から記憶を呼び覚ます石内の作品は、「記憶の織物」とも評され、世界各地で高い評価を受けています。本展は、石内の40年にわたる活動を展覧できる、国内では8年ぶりの大規模個展。「肌理(きめ)」をテーマに自選された約240点を紹介します。
    ―――――――――――――――――――――
    【展覧会メモ】 (2018年1月15日)
    石内都さんは、綺麗な風景や建物、人物を撮るわけではないし、戦争や事故の現場を取るわけでもありません。見るのに戸惑いがあります。
    それでも、ヒロシマ、フリーダ・カーロ、傷ついた女性たちを見ていると痛ましさが伝わってきます。
    老人のしみやしわを見ると自分も大分これに近くなっていることを自覚させられます。
    ―――――――――――――――――――――
    (2018年11月15日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    花柄のワンピース、水玉のブラウス、テーラーメイドの背広、壊れたメガネ。写真家・石内都が被爆遺品を撮った。美しいから辛い、可憐だからむごい。風化しない広島。

  • 衣類を中心とした遺品の写真集。
    グッと胸にきました。

  • 物が物語る。
    主人をなくした物たちが語る声なき声が聞こえました。

  • 言葉を持たないことはときに言葉より雄弁。

  • 表紙のスカートは赤いちいさな紫陽花の模様です。たっぷりとギャザーの入っていて幅の広いリボンで結ぶようになっている。「広島平和記念館」収蔵の遺品、被爆した人々が着ていた洋服、靴、メガネなど。

    ライトボックスの上に載せて撮られたそれらの品々は、色柄はもちろん布目、縫い目、しわまで
    鮮明に浮かび上がる。

    白にピンクの薔薇、シフォンのブルーグレーに白の水玉、赤黒白のチェックのワンピースにはレースの縁取りが。

    被爆地に残されたこれらの洋服が美しいだけに悲惨さが際立つ。

  • 文章はほとんど無く、被爆者が着用していた遺品(遺服)の写真のみが並んでいる。しかし、だからこその迫力で、原爆の恐ろしさが伝わってくる。

  • 2010年8月28日

    <Hiroshima>
      
    アートディレクション/佐藤卓
    デザイン/日下部昌子

  • 白いブラウスのテキスタイルに等間隔に並ぶ、1mmにも満たない黒のドットのひとつひとつが、錐で突かれたように穿たれている。熱線が瞬時に焼き貫いたのだ。──女学生の衣服を中心に、今も原爆資料館に残される被爆者の遺品を、まるで今も幽かに残された持ち主の息づかいを漉し取ろうとするかのように、時にライトテーブルで透かし、時に自然光に晒して撮った、小さな写真集。一瞥では奔放な風に煽られているかのようなかたちや風合いは、“その日”の爆風と混乱に引きちぎられた襟や肩口や裾を写真家や補佐した学芸員が丁寧に整えた結果と知って、言葉を失う。少女の身体を包む衣服は戦時下であっても機能性とともに愛らしさを忘れない。その守るべき愛らしさと無差別の暴力のあまりにかけ離れた隔たりに、ページを繰りながら静かに混乱する。あれは、天災だったのか。避けられない災難だったのか。
    否、原爆は、人の手によってなし得た比類なき災いなのだ。
    それを、この国の僕たちは、決して忘れてはいけない。

  • 広島被爆の服などの写真。淡々と悲しみが伝わる。

  • ある日 ふつーの人が ふつーに暮らしていたら 十把一絡げに 殺されてしまったんだよね一人殺したら 殺人犯だけど たくさん殺せば英雄になるというような。なんか ヒロシマ は 最近 本来あるはずのところからあちこちで いいように 使われているような気がする 原点に 戻るべきなんだと思う

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