長井健司を覚えていますか ミャンマーに散ったジャーナリストの軌跡

著者 :
  • 集英社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087805314

作品紹介・あらすじ

現場にこだわり、現場で倒れた日本人ジャーナリストがいた。2007年9月27日、自由と民主化を求める民衆の中でミャンマー軍の銃弾に倒れた彼は、音楽を愛する、愚直で純粋で熱い男だった。

感想・レビュー・書評

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  • 読みやすさ:★★★☆(3.8)
    推奨度:  ★★★★★(5)
    好み:   ★★★★★(5)

    この本読んで、「考えさせられます」なんていう感想はチープ。


    覚えていますか?
    と言われて、率直に「忘れていました」

    毎日新聞の一面にのっていた、彼の最期の姿は
    記憶の片隅に残っていた。

    勇猛果敢な人だと思い込んでいたし、
    戦場ジャーナリストなんて「特別な人」だと思い込んでいたけど、

    撃たれるにいたるまでの彼の人生は、
    決して私たちからかけ離れたサイヤ人みたいな生活ではなくて

    むしろ、
    素朴で純粋で
    ちょっと子どもっぽくてワガママな

    少年みたいなオッサンだったことを感じた。


    戦場のリアリティは、
    弾丸とびかう戦地の中ではなくて
    人々の息づく生活の中にある。



    あれだよ。

    日本の戦争にしても、空襲なんて戦争の小さな一コマじゃないか。

    防空壕ほったり、食べ物なくて着るもの売ったり、
    弾丸つくるのに、おばーちゃんが銀歯抜いたり...。




    そういう、ちいさな戦争に
    もっともっと目を向けて、
    生活目線で「戦争」を実感しなきゃね。


    っていうか、この人の取材はそんな取材だったんだね。



    あと、テロだなんだって騒いでるけど
    テロリストからみたテロってなんでしょうねって目線がかわる。

    被害者ぶってる方が、案外加害者かもしれませんよ。

    この本と勇午(マンガ)の1巻はイスラーム原理主義について、
    本当にきちんと描かれていて
    相手を正しく理解することの大事さを痛感する。


    人それぞれ感じるものは、色々だと思うけど。

    かわいそうとか、感動とか、
    そういう余計な修飾はぜんぶ捨てて
    ありのままに感じてほしい。

  • 響き渡る銃声。逃げ惑う人々。そして、路上に横たわる彼だけが
    残された。ビデオカメラを握った右手を掲げて。

    スー・チー女史の軟禁が解かれる以前の2007年9月27日。軍事
    政権下のミャンマーで、取材中の日本人ジャーナリストが命を
    落とした。

    長井健司。テレビの現場からフリーランスのジャーナリストになり、
    アフガニスタンやイラクでも取材活動を続けた人だった。

    スクープを放った訳ではない。それでも彼が関わったいくつかの
    ドキュメンタリーをテレビで見た。そこには弱者に対すると、
    とてつもない正義感が漂っていた。

    「伝えなければいけないものが、そこにあるから」

    危険なことは百も承知している。だが、そこで起っていることを、
    事実を伝えなければならない。それがジャーナリストの仕事な
    のだから。

    そうやって、日本人も含め、これまで多くのジャーナリストが
    亡くなった。

    「『悪いことは悪い』と、俺は棺桶に片足を突っ込むまで言い続け
    るんだ」

    その「悪いこと」のひとつが、ミャンマーの軍事政権による市民へ
    の弾圧だった。臣民や僧侶たちが参加したデモを撮影中、政権側
    の兵士の放った銃弾が彼を襲った。

    狙い撃ちだったという。外国人ジャーナリストを狙い撃ちしたとの
    証言もある。都合の悪いことを、自国の外へ持ち出されたくない。
    だから、彼が銃弾に倒れた時、その手にあったビデオカメラも
    返却されていなのだ。そこにはきっと、彼を撃った兵士の姿が
    映し出されていたことだろう。

    彼らジャーナリストたちが戦地や紛争地から伝える情報は
    貴重だ。でも、もう誰も命を散らさずに帰って来て欲しい。

  • 亡くなって3年になるが、ソニー製のカメラは帰ってきていない。返せ。

  •  2007年9月、ミャンマーの最大都市ヤンゴンで、軍事政権に対する僧侶・市民の反政府デモを取材中、ミャンマー軍兵士の銃撃によって亡くなったジャーナリストの長井健司さん。彼は、何を考え、どう生きてきた人なのか。彼の身近な人たちへのインタビューから見えてきた彼の生き方とは…

     銃撃され、カメラを上にかざしたまま亡くなった長井さんの映像や、APF通信社代表の山路さんの失意の表情はまだ焼きついていて、とても「覚えていますか」どころではないのだけど、長井さんがどんな方だったのかとても気になっていたので、読んでみました。

     キケンな場所に果敢に出かけるジャーナリストに対しては、今まで「自己責任」とまではいかないけれど、好意的な見方ができずにいたけれど、「『悪いことは悪い』と、俺は棺桶に片足を突っ込むまで言い続けるんだ」と、「伝えたいものがそこにあるから」と現場に赴いた長井さんの思いを知ると、少し見方が変わってきました。

     今日も世界中のあちこちで、いろんなことが起こり、それを居ながらにして知ることができるのは、彼らジャーナリストが居てこそのこと。「正しいこと」は、見方によって左右されてしまいかねないから、自分が見たことだけを伝えたいという長井さんの思いは痛いほどでした。

     長井さんが十分に慎重だったことや、半ズボンやサンダルばき姿にも意味があったことを初めて知りました。そして、いかに断片的にモノを見る人たちの多いことかということについても…。
     

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