犬を飼うと12の短編 (ビッグコミックススペシャル)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 187
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (506ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091826831

作品紹介・あらすじ

▼犬を飼う▼そして…猫を飼う▼庭のながめ▼三人の日々▼約束の地▼海へ還る▼松華樓▼山へ▼凍土の旅人▼白い荒野▼貝寄風島▼秘剣残月▼百年の系譜
●あらすじ/14歳になった飼い犬のタムを、久々に遠くまで散歩に連れて出た夫婦。すでにタムの足は弱り始め、軽快な走りは失っていたが、それでも懐かしい河原の香りをかいだからなのか、嬉しそうにはしゃいでいた。そんなタムを見ながら、私たち夫婦も遠く過ぎ去った日々の思いにふけり…(第1話)。
●本巻の特徴/今、ヨーロッパで最も評価の高いマンガ家・谷口ジローの選集全3巻、第1回配本『犬を飼うと12の短編』いよいよ刊行開始!

感想・レビュー・書評

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  • 表題の「犬を飼う」は良かったんですが、山岳もの、海洋もの、自伝的なものと広がると男っぽさが前面に出てきて私と好みとは少しずれる。まあ、初出がビックコミックですもんね。

    手元に「孤独のグルメ」の本があるので、お口直しに読んでみますわ。

  • どれも秀逸な短編ですが、動物愛、人間愛に溢れる内容でした。

  • 谷口ジロー原作の映画"Quartier Lointain"がお気に入りで、それと原作しか読んだことなかったのですが動物に関する短編集があると知り即購入。
    頭の40ページでもう泣ける。

  • 谷口ジローは不思議な作風を持つ。淡々と事実を描写しているように見えるが、それは飾らない人間本来の姿である。地域や時代という枠組を越えて、不変の真実を否応なしに我々の眼前に突きつける。死を描いてはいるが、それは生の歓びを伝えたいがためだ。

    表題作の「犬を飼う」の他に、猫や鯨、熊にまつわる話も載っている。人間そのものを描いた作品もある。その舞台も様々で、日本の家庭であったり、ヒマラヤの山中やアラスカの鉱山であったりする。どこか懐かしい感じがするのは、その時代の人々を実に活き活きと丁寧に描き上げているからなのだろう。

    谷口ワールドへの入口として、「犬を飼う」というなじみやすいタイトルを冒頭に持ってきたことは正解だと思う。そして、タイトルから期待するよりも遙かに深い感動を我々に呼び起こす。一度足を踏み入れたら、その果て無き世界をくまなく探索したくなる。そんな希有な漫画家の一人である。

  • 『マンガで学ぶ動物倫理: わたしたちは動物とどうつきあえばよいのか』からの派生読書。伴侶動物に関する本に挙がっていた。対象となっていたのは表題作である。この版は選集であり、必ずしも伴侶動物に関する話ばかりではないのだが、全13作の短編は、動物と暮らしたり、自然と向き合って生きたりという話が目立つ。

    表題作が冒頭「犬を飼う」。ストレートに伴侶動物の老いと死の話である。若い夫婦が雑種の犬を飼い始める。しつけ、運動、散歩。犬はいつも、子のない夫婦のまんなかにいる。時は経ち、犬は14歳。老いが忍び寄る。散歩の足取りが重くなる。必ず外でしていた用足しに失敗するようになる。やがて歩けなくなり、寝たきりとなる。夜鳴き、痙攣、痴呆症状。生命力の強い犬は、苦しみながらも生き続ける。夫婦もそれを見守り続ける。
    端正な絵で綴られる死の肖像である。

    夫婦のその後を描く続編が3編。
    その他は、著者の若き日がモデルであるような話も挟みつつ、野生動物ものや自然の厳しさを描くものが多い。
    ヒマラヤのユキヒョウの話、クジラの墓場の話、アラスカの凍土に生きる人々。
    原作があるものもあるが、実話なのかフィクションが混ざっているのか、不思議な感じで終わる話もある。

    「山へ」と題されたマタギの話。マタギが開いた秋田の村。時代の流れにしたがって、生活の中心は農耕に移っていたが、猟期になれば銃を取るのが村の男たちの常だった。元マタギの軍八が猟を止めるきっかけとなったのは、片耳の大熊との死闘だった。以来、猟はしないと決めていた軍八だったが、姿を消していた大熊がまた現れたという。軍八は過去の因縁にケリをつけるため、再び銃を手にする。
    この話にはマタギ犬である雌のシロが出てくる。マタギ犬というのがどういうものなのか、なかなか興味深いエピソードがある。犬の出産のくだりはちょっとそんなことがあるのか判断がつかないが、意外にあることなのかもしれない。

    ちょっと異色な感じがするのは「秘剣残月」。元会津藩士がアラスカに渡り、彼の地で英雄となるが、悪党の陰謀に屈し・・・、というような話。西部劇とチャンバラとイヌイットの伝説が混じったような不思議な味わい。1編の映画のようでもある。

    最後に収められている「百年の系譜」は、軍犬となったジャーマン・シェパードの話である(cf.『犬の現代史』)。シェパードが徴用されるまでの物語は、戦争へと向かう時代の空気がひしひしと感じられる。ラストはぐっとくる感動作なのだが、モデルとなるような話があったものか。大半の軍犬はおそらく悲しい運命を辿ったはずであるが、あるいはこんな奇跡もあったのか、あったのだとよいのだが。

    一昔前の物語という印象を受ける話が多いが、人と動物、人と自然をじっくり味わう余韻のある作品集である。


    *谷口ジローは、個人的には「坊ちゃんの時代」シリーズの印象が強いです(こんな作品もありましたが。→『父の暦』)。
    バンドデシネに影響を受けているとのことですが、端正な絵ですね。端正だけど、華奢ではない、というか、この人の描く絵(特に女性)は、どことなくがっしりしている感じを受けます。描線は繊細なのに描いている身体が骨太に感じるといったらよいのでしょうかね。

  • 谷口ジローの12の短編集

    『約束の地』はヒマラヤアンナプルナが舞台。
    『山へ』は年老いたマタギが因縁の大熊を追いかける。

    谷口ジローの作品は素晴しい!!

  • 欧州でもっとも高く評価される日本人漫画家谷口ジロー。その代表作の「犬を飼う」を読む。緻密な風景。その線描写の美しさ。動物への愛おしみ。リリカルな、静かな物語の美しさ。文句のつけようのないアンソロジーだ。

  • 絵が上手い

  • 「犬を飼う」の連作は、掲載当時に犬を傍にして読んで号泣したのが中学生の頃だった。昨年、そのあと飼った犬を亡くしてまた読んでまた号泣した。犬や猫を飼う人ならほぼ撃沈だろうな。
    それ以外にも、人と自然とのつながりのドラマを描く谷口ジローの真骨頂だろう短編が集まった、宝石箱のような本です。犬や猫を飼っていたら、あるいは自然や動物好きの人はぜひお手元に。
    ジャックロンドンと一緒にお楽しみください。やっぱここは「白い牙」かな?

  • 子どもが出てくる話は、じんわりと共感しやすかった。
    内容が全部ノンフィクションなのかと思ってしまう描写と、客観的で淡々としたト書き(?)がよい。

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著者プロフィール

1947年、鳥取県鳥取市出身。アシスタントを経て、1975年『遠い声』で第14回ビッグコミック賞佳作を受賞。『「坊っちゃん」の時代』シリーズ(関川夏央・作)で手塚治虫文化賞マンガ大賞、『遙かな町へ』『神々の山嶺』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。アングレーム国際漫画祭最優秀脚本賞など、海外でも数多くの賞を受賞。

「2022年 『サムライ・ノングラータ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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