白土三平―ビッグ作家究極の短篇集 (ビッグコミックススペシャル)

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著者 : 白土三平
  • 小学館 (2013年3月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・マンガ (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091850782

白土三平―ビッグ作家究極の短篇集 (ビッグコミックススペシャル)の感想・レビュー・書評

  • 98年に特製単行本として刊行されたものを、コミックス判に再編集したもの。そのせいか、吟味された名作が載っているのと、解説と特別インタビューが素晴らしかった。

    解説は、その後に貴重な白土三平の評伝を書いた毛利甚八氏。何度も何度も白土三平宅に通い、氏の生きた土地を実際に見て書いた評伝のエッセンスがたった3ページの解説の中に詰まっている。

    白土三平の劇画に流れる地下水脈は大きく分けてニつである。その生い立ちからくる社会的マイノリティとしての自覚、そして少年期に信州の山河によって鍛えられた生きる技術に対する信頼感。(231p)

    しかし最もビックリしたのは白土三平本人のインタビューである。カムイ伝第二部を始めるにいたって、自分で自分を総括しているのである。ここまであからさまに自分の作品について語っているのを初めて見た。

    当時、私は、生産者が第一だと思い、それを中心に描き、忍びの者を人間社会と自然との中間であり、かつ人間社会における支配階級と被支配階級の中間の存在にして描いていこうと考えていた。(略)この存在を媒介にすれば、見えないものを見せたりもできる。(略)たとえば、この中間の存在を、私は「カムイ伝」にも出している。正助というのが土を象徴すているとすれば、カムイは風を象徴しているのです。この風は、土と違ってそこに定着はしないけれども、移動しながら種を運び、雨を呼び、「自然」に変化と再生の契機をもたらすわけです。(略)つまり、自然と人間の世界の問題のつながりというものは、これから先もずっと変わりようがないということである。これまで動物の世界や人間の生産の問題を執拗に描いてきたわけだが、この時に得た認識はいまにいたるまで変わってはいない。(235p)

    「カムイ伝」第二部をどう見るか、については既に幾つかの批評があるが、私は私なりにこのインタビューを元にもう一度読み直してみたくなった。「神話伝説シリーズ」は第二部に至るステップだという認識はあったが、これを読んでやっとスッキリした。

    さて、ここに出てくる短編(63年作成中心)は、半分以上初読みだったが、見事に上記の問題意識で描かれていた。特にその色合いが強いのが「ざしきわらし」「スガルの死」「遠当」「野犬」である。そのうちスガルのキャラクターはその後に名作「カムイ外伝」に結実し、「野犬」は形を変えて3-4の短編がまた作られた。このテーマは、白土三平の生涯のテーマに確かになっている。
    2016年1月6日読了

  • 半分以上は忍者。残りが戦争と犬。“戦争その恐怖の記録”が印象的。戦争が終わったあとで、少女が兵士を殺したり、労働者が作戦妨害でミサイルに砂を詰めたり、人肉を食べたり……

  •  「カムイ伝」で有名な白土三平先生の短編集。「カムイ伝」のほうは有名なのでもちろん知ってはいるのですが、未だ手付かずでした。今回の短編集を読んでみて、この「ビッグ作家究極の短編集シリーズ」の先生方は本当にマンガが上手くかつ作者の主張がよく伝わってくる素晴らしい作品の数々でした。

     中間的存在を描く。あとがきでも書いてありましたが、白土先生は支配階級と被支配階級の間の存在を描きたかったらしく、今回の短編集に乗っている忍者シリーズは影の存在である忍者の本質を描いた作品でした。影でありつづけなければならない掟で縛られている忍者を自由かつ被支配階級に平等的な存在に変える展開が多くあり、それが顕著だったのが「ざしきわらし」と「遠当」でした。この2つは影でなければならない主人公が人のために動き、支配階級と闘うという物語の基本のような作品でいて、言葉の節々にただ上から説教をするだけではなく、人に考えさせるいい構成でした。

     戦争の悲惨さを描いた「戦争その恐怖の記憶」、犬の自由を描いた「野犬」と今もなおここから受け継がれたであろう作品の数々が掲載されてましたが、どれも白土先生の強いメッセージを受け取れる面白い作品でした。機会があれば、「カムイ伝」は見るべきだろうなぁ。

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白土三平―ビッグ作家究極の短篇集 (ビッグコミックススペシャル)の作品紹介

ビッグコミック創刊45周年記念企画

1968年創刊のビッグコミックは2013年で45周年を迎えます。これを記念し、創刊当時に作品をお寄せいただいた8人のビッグな作家が、60年末~70年初頭に生み出した大人向け作品の中から厳選した短編を作家ごとに集成しました。2013年1月「手塚治虫」と「水木しげる」の2冊を同時刊行。以下毎月1冊ずつ「藤子・F・不二雄」「白土三平」「藤子不二雄A」「楳図かずお」「石ノ森章太郎」「さいとう・たかを」と続きます。子供向けの娯楽からスタートして青年、大人にまで読者層を広げ、今や世界中で親しまれるマンガの魅力の原点がここに! 4冊目は、忍者や兵士など社会の基底からの冷徹な眼差しをコミックで表現した白土三平氏。社会の中で役割を背負って苦吟するのが大人だとすれば、まさに大人のための作品集。▼第1話/ざしきわらし▼第2話/陽忍▼第3話/七方出▼第4話/スガルの死▼第5話/遠当▼第6話/戦争▼第7話/野犬

【編集担当からのおすすめ情報】
白土氏の描く忍法はリアルで、ひょっとしたら遠い昔ならこれぐらいの体術を持った忍者がいたのかも…… と思わせる。さらにその忍者が、実は厳しい階級世界に生きる哀しく報われない技術者だったとわかってくる。そのリアルで重層的な面白さ!

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