健康で文化的な最低限度の生活 1 (ビッグコミックス)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091863577

感想・レビュー・書評

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  • 内容の簡単な説明は他に任して私は自分の経験に照らして感想を書く。

    とは言っても、経験を軽々しくは書けない。私は彼らの人生をどられくらい知っているのか、自信がない。ただ、労働組合運動で10件ほどのケースに接してみて思うのは、例えばパチンコで生活保護費のほとんどを使ってしまって困っているという話を聞いて、軽々しく不正受給だとか、受け取る資格がないとか、生活態度を改めるべきだとか、人に話したり、SNSで書くべきではないということだ。そのことが仕方ないことだとは、私も思っていない。しかし本人に優しく厳しく注意出来るのは、本人と深く関わっている支援者だったりケースワーカーに限ると思うのだ。

    私がビックリしたケースにこういうことがあった。ある生活保護受給をしている青年で、仕事も決まったばかりの彼が、新しい給料が出るまでの生活費の1-2万円を借りれないかと言って来たのだ。私は意外だった。彼はたまたま職を失っているけど、側からみても他の受給者の世話を献身的に行い、性格もいいホントに好青年だったのだ。労組としてそういう金銭援助は禁じられているとしても、ポケットマネーで貸すぐらいは何とでもなりそうだった。しかしその時の労組専従はキッパリと断り冷たく突き放した(ように見えた)。彼はもともとパチンコ依存症とでも言うべき理由で受給者にまでなったというのだ。金はなくとも餓死しない知恵はあるだろう、というのが専従の考えだった。つまりは厳しく当たらなければならないケースだったのである。私は自分の考えの甘さを恥じた。

    不正受給は件数で全体の2%、金額では全体の0.4%にすぎない。一方、利用することか可能な人が利用している割合(捕捉率)は2割程度だ。あとの8割は利用していないのだ。

    我々納税者は、しなければならないのは、不正受給を糾弾することでも、生活保護費の増大を嘆くことでもない。命の危険に晒されているあと8割の国民の生存権を守ること、増え続けている生活保護費の元凶になっている穴だらけのセーフティーネットの責任を追求し再構築を求めることだろう。「その財源はどうするのだ」と必ず反論が来る。だからこそ私は「責任」を追求しろ、と言っている。

    受給者の就労意欲について、我々がコメントするようなことなど一つもない、というようなことがこの漫画の様々なケースを見るとわかってくる。それこそ、ケースワーカーや支援者の専門的な支援に感謝して期待したい。

    いや、一つ我々にも出来ることがあった。受給者は一人一人様々なケースがあることを、この秀逸な作品を通じて「知る」ということである。私も数件だけと、具体的なケースを知らなかったら、こういう確信は持てなかったのだから。

  • 年末年始に、まとめて7巻まで読みました。
    本当に読むことが出来てよかったです。
    荒れてしまった部屋の様子の描写、人物のエピソードなどがとてもリアルで、取材協力の大きさも感じました。
    CWさん共に、生活保護につながる人達側の事も描いて下さっているのが嬉しかったです。

  • 公務員として読んでおきたいと思い購入。
    配属されたばかりで1人で何件ものケースを受け持ち把握しなければならない為、重たい仕事だと思う一方で 色んな苦労や悩みを抱えながら生活を送っている方々とどう向き合うかは難しいことだと考えさせられました。

  • 2015/04/15開催の若手ビブリオバトル@雑司ヶ谷で紹介された本⑤。翌日ネカフェですが京都にて1巻まで読了しましたのでレビューします。

    私は福祉事務所には行ったことはありません。でも、リアルに生活保護受けてもおかしくない生活はしていたことがあるので、結構リアルだなぁと思って読みましたよ。

    生活保護に関する知識は、何処にでも当てはまるような本当に基本的なレベルについてさっとしか触れていません。ですから、生活保護についてしっかり知りたかったら「自分の生活地域でどうなってるか」を特に意識して、漫画で得る知識とは別に調べる必要がありますね。ケースワーカーという仕事を把握する上でも同じです。
    ここで描かれてる人間模様も、「現実よくあること」ではなく、「こういうケースもあるんだ」と一旦突き放す必要を感じました。「生活保護受給者にも様々な事情がある」こと以上に、「生活保護受給者という括りで、彼ら・彼女らがどんな人達なのかを一概に説明することなど不可能」ということをむしろ読み取るべきだと思います。

    難しいですよ。この漫画。おそらく、百人いれば百人違う読みになるでしょう。受ける印象から共感度までかなりバラツキが出るんじゃないかな。理由は単純。「この漫画を読んでいる今の自分がどういう生活状況にいて、これまでどういう生活を経てきたか」がその時々の漫画の評価にモロに影響を及ぼすテーマだから。そういうテーマだと思いますね、生活保護って。
    その分、「繰り返し読めば読むほど味わいが変わる」面白い漫画とも言えましょう。

    それでも、この巻に描かれているどの生活保護受給者達にも共通するある面に私は読んでいて気付かされました。それは「生活保護なんかに頼りたくない」という至極真っ当な想いです。その想いが「こんな事になったのは自業自得で、責任は自分で取るのが当たり前だ」という形で露骨に対応として現れている姿です。一見個人主義的で上昇意欲がある結構な態度と思いがちですが、生活保護受給者達に至ってはそういう意識が改善に対する足枷にすらなっている。

    本来なら、人に頼ることで人から頼られるのが当たり前なんです。自分で自分の責任を取り切れない弱さゆえに受給しているんです。

    そういった状況下で「自分の意志で選択したんだ」という自負とか、「自分はこんな人間じゃない」という自尊心とかは全部裏目に出ます。心の底から頼り、一緒に弱さを克服していかなくてはならないことを受け入れられない。阿久沢さん、岩佐さんはそういう面がかなり強く出ていると思いますね。

    そんな訳で義経ちゃんはじめ新米ケースワーカーさん達に言いたいのは一言、「ま、頑張って」。

  • 福祉事務所生活課に配属になった、新卒の義経えみる。

    最初に担当した平川さんという男性の自殺から始まるショッキングな第1話ではあるが、話の重さと絵柄、キャラクターの分かりやすさのバランスがとても良くて変なストレスなく読める。

    同じ生活課の同僚の面々も、それぞれ「こういう考え方、スタンスの人もいそうだよな〜」とやけに頷ける、様々な顔ぶれ。

    その中で、えみるの直属の先輩である半田さん、頼もしすぎる。

    半田さんの言葉一つ一つが、この漫画自体の一つの羅針盤のようだ。

  • 借りたもの。
    新卒公務員である義経えみるが福祉事務所生活課に配属され、様々な理由で働けない人たちの人生に触れてゆく。
    主人公の天然っぷりが潤滑剤になるのだろうか……
    と、思って読んでいると、生活保護を受けていた担当の人が自殺予告の電話をしてきて、本当に自殺してしまう。
    …自殺予告をする人は一種の“賭け”をしていて、助け、あるいは確認しないと本当に死んでしまう場合もある。実は「オオカミ少年」とは訳が違う。しかし、公務員はカウンセラーではない。個々の事情に対応しきれない現実をつきつける。

    垣間見る、精神的に追い詰められた人々の姿……
    虐待を受けていそうな児童(その母親は見かけ明るい)、精神障害者、借金……一概には言えない人間の生き様。

    他の主人公を含め、新人たちも四苦八苦している。

    国民の血税で支払われている……
    最低限の命を守る最後の砦は、蜘蛛の糸のように地上最強の繊維でありながら細くて弱いものだった。

  • 2014年9月3日発売。
    第1話ㅤ生活保護のお仕事
    第2話ㅤ福祉事務所へようこそ
    第3話ㅤいろいろな人いろいろな人生
    第4話ㅤ働かなきゃダメ?
    第5話ㅤ働いてもらいます!?
    第6話ㅤかくしごと
    第7話ㅤダブルワーク

  • なんか色々大変何度と思う。

  • 世の中にはどんな人がいるんだろう、一人ひとりのケースが学びになりそう

  • ドラマにもなった漫画

    生活保護について知ることができます。

著者プロフィール

柏木 ハルコ(かしわぎ はるこ)
1969年、千葉県生まれの漫画家。千葉県立東葛飾高等学校卒業、千葉大学園芸学部卒業。1995年『いぬ』でデビュー。
代表作に、2008年映画化された『ブラブラバンバン』、そして2018年7月からドラマ化された『健康で文化的な最低限度の生活』。

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