- Amazon.co.jp ・マンガ (196ページ)
- / ISBN・EAN: 9784091878458
感想・レビュー・書評
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この表現は正しい云々の前に、同意を得られるか、が微妙なラインだが、私としては、東村先生の描く上杉謙信=景虎はエロいな、と感じた
女性としてエロいって意味じゃなく、人間としてのエロさが滲み出ているようだ。エロい、つまり、整った外見と内から滲み出る強い雰囲気で、人間を惹きつける能力が強いってコトだ
東村先生の分身、そのような印象も覚える。東村先生を直に見た事はないが、きっと、先生も全身から人たらしのオーラが出ているに違いない
軍神の尊名を冠す人生を歩んでいるだけあって、生まれた時から波乱万丈続きの景虎に、一つ目の山場が訪れる
それが、黒田秀忠の謀反だ
これ自体も結構な事態なのだが、これを景虎は父譲りの才覚で快刀乱麻よろしく解決したことで、長尾家の中で名を高める事になる。エロさが、完全に裏目に出てしまったのだ
それは、最愛の兄・晴景との間に、大きい差を作ってしまう事に繋がっていた
悲しき兄妹対決が勃発しようとしていた・・・・・・
正直なトコ、これは誰も悪くないんだよな
景虎は野心など一欠けらもなく、ただただ、病弱な兄を支えたい、楽をさせてやりたいだけだった。その為に、粉骨砕身の働きを見せただけである
晴景は部下の忠誠心を維持し続ける努力を怠っていた感はあるにしろ、これだけ病に体を蝕まれていては、戦いどころか政に力を注げなかったのも仕方ない
景虎を神輿に担ごうとしている将らも、長尾家の繁栄を願って、より有能な方に自分らの上に立ってほしい、と私欲でなく、むしろ、忠誠から動いている
誰も悪くないけど、運命が笑えない結果に向かって転がっていく事など、人生ではしょっちゅうだ。そんな事態を打破する時にこそ、人間力は計られる
東村先生が、次巻で景虎の決断を、どのように描くのか、今から楽しみでならない
そんな絆の亀裂の入り始めも、この(3)の見どころだが、そこに負けず劣らずの展開が、小島弥太郎の登場だろう
実在していたのか、していなかったのか、そこが明確に分からない。けれど、いたと思った方が面白いなら、そこにロマンが生じる
鬼小島弥太郎に支えられてこその上杉謙信、と言いきっても過言じゃない
景虎をエロい、と私が感じたのは、この出逢いのシーンだ
小太郎のように、本能で生きている男には、景虎の魅力は特に強く効くだろう
加えて、このシーンにも、私は東村先生らしさを勝手に感じた
小太郎と出くわした際、彼女は月の物が来ていた
私が生理の辛さを分からない男だから、余計に強く感じるのかも知れないが、作中に男がつい目を背けてしまいたくなる描写、表現を、ストーリーのテンポを崩さないために入れられるのは、やはり、東村先生が男の方がまだ多い漫画家の世界の中で、女を武器に戦い続けている猛者だからだろうか?
意図せず、イケメンの仲間を身元に揃えていく景虎の道は、覚悟を持って自身の手も赤に染めたことで、今よりも血の匂いは濃さを増していき、刀を手放せなくなるだろう。もしかすると、背負う敵味方の命の重さに足が止まってしまう時もあるだろう
けど、自分だけのモノサシを、彼女は捨てたり、折ったりせず、杖にして辛い道のりを歩き続けられるだろう。仲間に支えられ、仲間を励ましながら、一歩ずつ前へ前へ
そんな歩く様を、同じように自分だけのモノサシを持っている東村先生が描く。最高じゃないだろうか。変な言い方かも知れないが、景虎と東村先生のタッグは、YJで連載中の『銀河英雄伝説』の田中芳樹/藤崎竜や、『荒野に獣慟哭す』の夢枕獏/伊藤勢に負けない、ゴールデンコンビじゃないか。互いの味を殺さずに引き出し合っている。出会うべくして出会った二人だ
この台詞を引用に選んだのは、先にも書いたが、景虎の人間としてのデカい器が、小太郎によって示されているからだ。一人の人間として、性別など気にせず、自分に全力を出させてくれる主に出逢えるのは、一つの最高な幸せだろう