破戒

著者 :
  • 小学館
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091885715

感想・レビュー・書評

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  • カリスマだから許される巻末対談。一定のクオリティではあるけれど、もっと素晴らしいものをこの2人が組んだのなら期待してしまうな。なんて、贅沢いうなって感じですが。

  • 先日、青年コミック雑誌『月刊IKKI(イッキ)』を9月25日発売の11月号で休刊させると小学館が発表した。
     松本大洋、唐沢なをき、喜国雅彦、ゴツボ×リュウジ、宇仁田ゆみ、日本橋ヨヲコといった個人的に好きな漫画家が登場する傾向があったのでたまにチェックはしてたんだけど、最近は僕も本屋で見かけてもあまり手に取らなくなっていた。
     今冬には新雑誌が始動するらしい。改めて読んでみようかな。
     そんな『IKKI』の2004年6月号~2004年12月号に連載されたのが本書である。松尾スズキ原作、山本直樹作画という強烈なコラボだが、キャッチコピーでは「共闘」と表現されている。なるほど。
     もちろん島崎藤村の小説とは関係ありません。

     町の小さな印刷工場の、うだつのあがらない二代目社長・甘佐古カズシ。31にもなって仕事に対する情熱はなく、趣味の落語を人生の楽しみに日々を送っていたが、ある日従業員ノボルが機械操作を誤り指を切断してしまう。
     この日を境に何かが狂い始めた。ノボルの兄は弟の指切断をダシに金をたかる。突然奔放な女・桑原ミツコが現れカズシを誘惑する。植物は枯れる。お隣のピアノはうるさい。父親は倒れる。カラオケ教室の男に追い回される。工場の経営は傾く。
     翻弄されるままのカズシだが、その無気力な生き方には少年時代のあるトラウマが関わっていた。

     残酷で、精神的にも肉体的にも「痛い」マンガである。物語の鍵となるミツコは、豪快に酒を飲み、周囲のあらゆるものを破壊していく。主人公は側でそれに巻き込まれていく訳だが、意外にも居心地は悪くないらしい。まあ美人だし。
     妙な登場人物たちが妙な理屈で暴れ回るところは松尾スズキっぽい気がするが、正直なところ終盤まではそれほど強く彼の個性は出ていない。最近どんどん観念的、社会派な傾向が強くなっている山本直樹が、単独で描いているマンガですって言われたらああそうかとすんなり納得しそうだ。
     ただ、みんなが期待するような(?)エロシーンは控え目。一カ所だけ濃厚なシーンがあるが、主にそこだけである。それでもミツコというキャラが全身から終始まき散らしているエロオーラは強力で、登場してから中盤までの傍若無人ぶりもあり山本作品でも一、二を争う魅力的なキャラかも。

     だが終盤、コトの真相が明らかになりカズシがそれに立ち向かう場面になってからは、急にストーリーを牽引するパワーがダウンしてしまう。絵面的には一番派手な見せ場なのだが、イマイチ盛り上がらないのだ。主人公がある「力」を自覚して過去のトラウマと対峙するなど見所はあるはずなのに。
     思うに、このミステリアスな物語が予想よりもすんなりと着地してしまうのが物足りなさの原因ではなかろうか。
     皮肉にもここで松尾スズキの個性が発揮されている。彼の綴るストーリーは精一杯非常識であろうとするが、性格故か常識的に非常識な所に着地してしまうのである。部分部分で超常現象や不条理を描きつつ、物語全体としてはキチンと意味付けがされてしまう所が彼の性根の生真面目さかも知れない。
     だから山本直樹的に中盤まで盛り上がったマンガが、最後にこじんまりとまとまってしまうように見えるのだろう。
     主人公が自分の持つ「力」について「意味なんかないっっ!」と無理矢理否定するシーンがあるが(p123)、松尾自身が自分にそう言い聞かせているように見える。本当はもっと意味不明なマンガにしたかったのではなかろうか。

     それでもストーリーに起伏はあるしテンポも良いので、普通に面白いマンガではある。何気ないコマに重要な意味を持たせていたり、フラッシュバックが効果的に使われていたり、テクニックはさすが円熟の域。ここぞという場面でのセリフにもインパクトがあり、<いい気味だ。セックスされちゃ、学校も終わりだ。>(p106)なんて名言も飛び出します。
     山本&松尾というネームバリューから普通以上を求められるから物足りなさを感じるんだろうな。「超鬼才クリエーター」なんてレッテル貼られたらそりゃハードルも上がるよ。
     映画化に向いている気がする。絶対R指定だけど。舞台化には…どうだろう、よくわからない。

     巻末に収録された山本と松尾、それぞれの編集者、IKKI編集長の5人による居酒屋トークは結構面白い。創作の秘話やどうでもいい話題がヘンなテンションでダラダラと続くのが面白い。面白いがレイアウトが超絶読みにくい。改行無しで延々と字がびっしり書かれていて、嫌がらせか!と思うくらい読みにくいがトークの内容が気になるので読んでしまう。AVに関する伏せ字の部分がものすごく気になります。

     単行本化にあたって24ページもの大幅な加筆が施されたそうだ。山本&松尾の熱量は確かに感じる。

  • 久しぶりに読んだらやっぱりキチガイ地獄

  • ぼんやりとノワールなのは山本直樹の特徴だが、原作ありのためか話がかっきりしている。
    主人公の造詣がけっこうよい。

  • ほふー
    なんといおうか
    ほふーですかな

  • 指が切れる。借金。 映画みたい。夜に読んでいると思わず家を飛び出してそこらへんで ッパパらパーと 歩きたくなるような漫画。

  • 突き抜けた残酷で美しい純愛物語。
    ステキだけど嫌かもね??

  • やっと買いました。山本直樹はやっぱいいなぁ。今までわかってくれる人が周りにいなくてなかなか言い出せなかったけど、最近はわかる人がたくさん現れたのでうれしいです。今回も終始不条理だった。

  • サブタイトルは「ユリ・ゲラーさん、あなたの顔はいい加減忘れてしまいました」。松尾スズキが原作、山本直樹が作画を担当という、演劇界とコミック界の鬼才同士によるコラボである。
    近年の山本作品に多い、いつまでも続く悪夢のような幻想的な雰囲気は、原作付きという事もあって若干弱めだが、しかし、なんといってもミツコのキャラクターが良すぎる。ネタバレになるので深くは書かないが、主人公を振り回す悪魔のような魅力の女性、というのは山本作品としては「あさってDANCE」以来のものではないか。

  • とにかく絵が痛い。体に訴えかけてくる漫画。なかなかグロテスク。

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著者プロフィール

作家・演出家・俳優

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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