淋しいのはアンタだけじゃない (3) (ビッグコミックス)

著者 :
  • 小学館
4.45
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本棚登録 : 60
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091896490

作品紹介・あらすじ

ついに完結!その「最奥」にあるのは…?!

(文化庁メディア芸術祭〈第20回〉・マンガ部門・審査委員会推薦作)

医療の現場でふれた、課題と光明。
しかし、取材をすすめれば、取材対象者の見解をすんなり描けない
現実にもぶつかって…

マンガ家は、自分のマンガに揺れ動く…

結局、僕らの“ほんとう”はどこにある?

マンガで進化する、新感覚ドキュメンタリー!!
&ミステリー!?

ついに完結へ!!

マンガがいちばん人に迫るのだ!!!

【編集担当からのおすすめ情報】
2集の発売後、事情により連載を中断、休載が続いた関係で
この続刊の発売も遅れましたが、ようやく連載再開、そして完結3集の発売に至りました。

障害に迫る医学者の挑戦と到達、
そして、マンガの到達点をご確認ください。

感想・レビュー・書評

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  • 仕事上の必要があって、全3巻をKindle版で購入して一気読み。

    聴覚障害者の世界を、丹念な取材を基に深堀りしていくドキュメンタリー・コミックだ。

    我々はつい「聴覚障害者」と十把一絡げにしてしまいがちだが、本当はひとくくりになどできないほど、聴覚障害のありようは多様である。

    生まれつきの聾者と中途失聴者では立場が違うし、難聴にも軽度・中度・高度と段階がある。
    また、本作で大きく光が当てられる「感音性難聴」(音は聞こえていても、聴覚中枢の問題などから歪んで聞こえ、意味が伝わりにくい難聴)の不自由さは、健聴者にはなかなかわかりにくい。

    本作は、聴覚障害の多様な世界の一端を垣間見せてくれる。難聴の人に見えている(聞こえている)世界を、見事に「見える化」する表現上の工夫が素晴らしい。文章のみのノンフィクションではできない、マンガならではの表現が最大限活用されているのだ。

    難聴や耳鳴りのメカニズムを解説する部分にも、活字にも映像ドキュメンタリーにもできない、マンガならではのわかりやすさがある。

    あの佐村河内守への取材が柱の一つになっている点は、賛否が分かれるだろう。
    私は、ないほうが作品がスッキリしてよかったと思う。佐村河内の登場パートとそれ以外のパートはテイストが異なっていて、木に竹を接ぐような不自然さがある。

    ただ、佐村河内の登場によって本作が大きな話題になったことはたしかで、読者を増やすという意味ではプラスになったのだろう(どっちみち、コミックスはあまり売れなかったようだが)。

    佐村河内がらみで、『FAKE』撮影中だった森達也も登場する。
    マンガ家と担当編集者も重要なキャラクターとして登場する本作のスタイルは、森達也のドキュメンタリー映画に近いとも言える。

    手放しで傑作とは言い難い、随所に未整理感が感じられる作品だ。それでも、ドキュメンタリー・コミックの新たな地平を切り拓く、チャレンジングな意欲作ではある。

    P.S.
    内容の本筋とは関係ない話だが、取材で佐村河内守の自宅を訪問するシーンで、飼い猫の名を「仮名」にしているのがむしょうにおかしい。無意味な配慮というか、むしろ渾身のギャグなのか?

  • 何かご縁のある本のようで。1巻のときも電子で買おうか迷っていたところ、たまたま本屋で見つけて購入したのですが、今回もふと見たら新刊の棚にありました。その日が発売日だったようです。

    最初は「聴覚障害」という幅広いところから飛び立ち、「難聴」と「耳鳴り」というところに着地した……そんな印象を受けました。

    ノンフィクションなので、大団円のエンディングとはいきませんが、難聴者のリアルな現状や、現在わかる範囲での医学的な情報など、素人にも理解できるように、丁寧に説明されていると思います。

    手話の勉強をしていると、どんどん「ろう者の世界」に気持ちが傾いていってしまうので、「難聴」や「中途失聴」などについても、もっと知ることが必要だなとひしひしと感じました。

    私にしては珍しく、ほぼ3冊とも発売日に購入しました。もし続編や番外編が出たら、また買いますよ〜!
    (この本の内容に☆で評価をつけるのは難しいので「評価なし」です。0点という意味ではありません)

  • 2巻から間を空けたくなくてすぐに読みました。
    映画「FAKE」で疑問に思った「音は多少なりとわかるのか」はこの作品でもすんなりとはわからず、さらには描写をきっかけにご夫妻と距離ができてしまったことが明かされびっくりしました。
    映画でもかなり繊細というか気難しさが垣間見られたけれど、ピタッと心を閉ざしてしまったのでしょうか…
    ゴシップ目的で面白半分にアプローチしたのではなく「聴覚障害」と真摯に向かい合おうとした過程でのアプローチが不調に終わるのは、残念というか淋しいことのように感じます。
    ナーバスにならざるを得なかったのだとも思うし、望んでいた方向に作品がおさまらなかったことで絶望したのかもしれないし、あれこれ考えをめぐらせるとキリがないけれど、少なくともこの作品を読んで佐村河内氏へのゴシップ的な見方は完全に変えられた分、もっと色々聴いてみたかったと思いました。
    あと、後日取材したという新垣さんのお話もどこかで漫画にしてもらえないだろうか…と思います。

  • 聴覚障害に真摯に向き合った取材ルポ漫画が完結。
    聴覚障害への理解がこの漫画で広まることが期待される。
    最終話まで読んで、佐村河内守氏の事件について大きく考えさせられることになった。

  • 聴覚障害には個人差があり過ぎて一概にはくくれないこと、耳鳴りは聴覚障害や心因性のものとされてきたが、脳が本来来るはずの音の信号を聞き取ろうとするために無理をすることで発生するなでは、という説も。補聴器も特別な資格なく眼鏡屋で買えて、適切な調節もされず、つけたり外したり、慣れる前にやめることで、効果を発揮してないのではないかと。状態が悪化することで、捉え方が狭くなり、本人には耳鳴りが強く認識されているケースもあるのでは、と。佐村河内氏とは最後は行き違ってしまったけど、語りかけるような、言いたいことが届くことを祈るような内容に。森達也監督のFakeも観てみたいと思った。

  • これで完。聴覚障害について正面からいろんなことを調べてその過程をそのまま表しているドキュメンタリーマンガ。偽装ではないかと言われた佐村河内守氏への取材なども。生まれつきの聾ではない、途中失聴や難聴は人によって症状がそれぞれということや、補聴器でメガネのようによく聞こえるようにはならないということになるほど。聞こえないとかだけじゃなく、音の整理がつかないというのは、聴覚障害だけではなく発達障害の人の話でも触れられていたけれど、カクテルパーティー効果という名前はぴったりだ。

  • マァしょうがないよね、という気持ちや、こういう未消化感こそにメッセージがある、的な理解、作家の極めて「意志の強い」その選択・描写、への敬意。を含めても、やはりどうしても残念というか、そんな感情が気持ちの大部分を占めてしまう。「周りの人を実は不幸にしているかもしれない」吉本の臆病な優しさは、本当につくづく森達也とは正反対で、だからこそ読ませてもらって良かったと思う。そうだ、終わらない。実はこの漫画は何一つ「始まってはいない」のだ。いつか出版されるかもしれない第4巻までの長いお休みと捉えてもいいし、次はこの本を3巻まで読んだ(少人数の)私たちこそが、本当の意味で「始めて」ゆけばいいのだと思う。吉本がこのシリーズで成し遂げたのは、絶対に辿り着けない天界への道を覆い隠す、深い霧を晴らすことだったのだ。

  • 宇都宮病院。( ..)φメモメモ。興味深い。

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著者プロフィール

73年、富山の港町に生まれる。高校卒業後、美大に行きたい思いを封じて、福祉系の大学へ進学。牧場バイトなどを経て、「一生の仕事にする」と、テレビ番組の制作会社に就職するが、1年で退職。制作会社で描いた絵コンテを褒められた経験を糧に漫画の持ち込みを続けて漫画家に。最新作『ルーザーズ~日本初の週刊漫画誌の誕生~』が『このマンガがすごい! 2019[オトコ編]』第7位にランクインした注目の漫画家。

「2022年 『定額制夫のこづかい万歳 月額2万千円の金欠ライフ(5)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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