しまなみ誰そ彼 3 (ビッグコミックススペシャル)

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著者 : 鎌谷悠希
  • 小学館 (2017年11月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・マンガ (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091897404

しまなみ誰そ彼 3 (ビッグコミックススペシャル)の感想・レビュー・書評

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  • 「互いをわかり合えなくても、
    わかり合えないまま生きていける世の中がいい。」

  • LGBTQの本棚から
    第28回「しまなみ誰そ彼 3巻」

    今回紹介するのは
    「しまなみ誰そ彼 3巻」(鎌谷悠希)
    です。

    このコーナーの 第1回目で紹介した漫画の続編がついに発売されました!
    この漫画は「談話室」という誰でも好きな時に好きなだけ利用できるスペースを舞台に、様々なセクシャリティの登場人物がぶつかったり、支え合ったり、助け合ったりする物語です。

    今回はFtM、善意の押し付け、ホモフォビアについて描かれています。
    いやー、満載ですね!
    1,2巻に引き続き、心理描写も巧みです。


    まずは「FtMと善意の押し付け」について
    3巻の重要キャラクターはFtMの内海さんです。


    実は彼、1.2巻にも登場している主要キャラクターです。
    今回FtMだと発覚したのですが、言われなければわからないです。
    つまり普段はパス(男性として認識されている)しているFtMなんです。


    そんな彼の前に高校時代の同級生が現れます。
    高校時代…まだ女性として生きていた時の。


    その同級生は善意でいろいろな行動を起こします。
    『心と身体の性別が違うのってそういう障害なんでしょう?』
    『同性愛みたいな趣味とはまた違うんだし。』
    『大丈夫、みんな受け入れてくれるよ!』(カミングアウトしたいとは言っていない)
    『同性愛の人とは違うんだから、みんなにちゃんと知ってもらったほうが』


    確かにLGBTQに分類したとき、Tだけは抱える問題が性的指向の違いではなく心と身体の不一致なので違うといえば違うんですよね。
    そう考えているトランスの人もいると思います。
    でも内海さんには談話室の仲間という同性愛者の仲間がいました。

    内海さんは同級生に
    『友人を傷つけてまで、俺だけをわかってもらおうとは思わない。』
    と告げました。



    この話のポイントは「善意が相手を傷つける」こともあるということです。
    同級生からは ”世間的に偏見の目でみられている同性愛者” とあなたは違う! 私はあなたのことをわかってる! 理解してる! と思っていたりするんだろうな…と感じました。


    現実でもいるんです、こういう人。
    「あなたのために!」という善意で色々行動してくれる人。
    でもその善意は押し付けで、大体の場合方向がずれていて、はっきり言うと迷惑だったり…


    本人が自覚しているかは別としてこういう人たちからは「あなたたち弱者をサポートしてあげてる自分はすごい!」とか「弱者を助けることで優越感に浸っている」という感じがするんですよね。




    なんて言うと、わがままだ!とか思われたりするんですかね。
    でもこういうこと、セクマイに限らずあることですよね?


    内海さんと同級生のやり取りを通して、主人公は2巻で傷つけてしまった子に対して『僕の「絶対の好意」のせいで去っていったなら。傷つけ合わないで人と付き合うって難しすぎない?』と思います。
    本当に難しいですね。






    もう一つのポイントは「ホモフォビア」
    日本語にすると「同性愛者嫌悪」


    自分や談話室の仲間に対して差別や偏見の目を向けられることに、主人公が感情を爆発させます。
    『君の言葉で僕が傷ついたことを知ってほしい!』
    『謝ってほしいわけでも受け入れてほしいわけでもない。』
    『僕以外の誰かを傷つけないでほしい』
    と……。


    ここを読んで思わず「わかる…」と声がでてしまいました。
    涙さえでそうになりました。
    本当にその通りで、僕らはそんなに多くのことを望んでいなくて…
    同じ立場の人を、仲間を傷つけないでほしいって ”普通” の感情ですよね?




    それにプラスして
    セクマイ視点だけでなく、嫌悪する側の視点でも描いてくれているのがこの漫画のすごいところで
    『君は何に怯えているの?』
    と投げかけられたホモフォビアのキャラクターは大きく動揺していました。


    今まで読んだ本なんかによると、ホモフォビアは男性に多く、その理由として「自分が性の対象として品定めされることに嫌悪を抱く」らしいです。
    いつもは女性をそういう視点でみている人が多いのに!
    まあ確かに性の対象として品定めされることにいい気持ちはしないですけど(僕も女性として生きていたころに覚えがあるので。)、それは自分が恋愛対象の性に対してそういう目を全く向けてない人しか文句は言えないですよね。


    ホモフォビアの人は、どうして自分が同性愛者を嫌悪するのか一度考えてみるといいのかも。
    まあ、考えてもらえないから偏見の目は減らないんですけど!




    ということで「しまなみ誰そ彼 現材3巻」をぜひ図書館に入れてもらいたいです!
    セクマイにはよりそい、それ以外にはセクマイについて考えるきっかけを与えてくれる漫画だと思います。


    時に心を揺さぶりすぎるくらい、心理描写が巧みです。
    読んだ人は少なからず何か考えさせられるんじゃないでしょうか!


    2017年11月20日

  • 当事者からしたらこれは…涙でるな。
    悔しい気持ちとか諦めないとか、もうとうに捨てた気持ちだと思ってても消しきれないよね。
    黙って隠してたら一時は平穏でも続かない、いつか爆発するのはどんな気持ちも一緒なんだって思う。

  • 悪意のない、「善意」の押し付け。すごく苦しいというかイライラした。それこそ私もグーパンを壁にお見舞いしてしまうかもしれない。苦笑
    彼らのコミュニティにいない私でも、こういう「善意」に当たることって幾らでもあって、もしかしたら自分が押し付けてる立場になることだって、なくはない。そう思うと少し怖い。
    尾道、いいなあ。

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しまなみ誰そ彼 3 (ビッグコミックススペシャル)の作品紹介

理解し合えないまま、それでも共に生きる。

夏祭りの苦い思い出を拭えぬまま迎えた新学期。
たすくは、想いを寄せる椿から文化祭の課題を
一緒にこなそうと誘われ、戸惑いながらも足を運ぶ。
しかし、すでに顔見知りである「談話室」のメンバーを
揶揄する椿の姿に、たすくは困惑と悲しみを抱えることに。
一方、「談話室」メンバーの内海の元に、かつての
部活仲間の小山が現れた。
小山は善意から、内海が今「男性として生きている」
ことを、部のOG達に知らしめようとするが…?

尾道を舞台に鎌谷悠希が描く
性と生と青春の物語、第3集。


【編集担当からのおすすめ情報】
この第3集ではカムアウト(性的指向や性自認などの表明)と
アウティング(同意を得ない形での、他者の性的指向や性自認
などの暴露)、そして「善意」についてのエピソードとなっています。
「よかれと思って」「あなたのために」「何も恥じ入ることはない」
といった言葉とともに示される、善意。
それは時として、人をひどく傷つけます。
そんな善意を目の前に提示された内海さんは、
いったいどんな思いを胸に秘めているのか。
ぜひ、皆様の目で確かめていただきたいです。

掲載誌・スピリッツ増刊「ヒバナ」の刊行停止に伴い、
本連載は2017年11月現在、小学館のマンガアプリ
「マンガワン」へと籍を移して継続中です。
そちらもぜひご覧ください。

しまなみ誰そ彼 3 (ビッグコミックススペシャル)はこんなマンガです

しまなみ誰そ彼 3 (ビッグコミックススペシャル)のKindle版

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