- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784091910141
感想・レビュー・書評
-
パパにとって
雪の上を
歩いてくる
神さまは
それは
ぼくの顔をしていたの?
(訪問者/城/エッグ・スタンド/天使の擬態)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
母親を殺した父親と旅をする子供の話です。
ひたひたと哀しいお話でした。
オスカーの切実な願いと、諦観と絶望が痛いほどに切ないです。
妻と息子への愛情と、疑惑と罪の意識の狭間でグスタフが追い詰められていく様が、淡々とリアルに描かれています。
またオスカーが聡い子で、薄々とそんな父のことを気付いていて、ずっと不安を抱えていて、それでも愛されたいと必死でしがみついていこうとするのが泣けてきます。
段々と憔悴していくグスタフの姿が、蹲るグスタフの背中を見てると遣り切れない気持ちで一杯になります。
父親のそんな姿を見なきゃいけないのも哀しいことながら、父を最も追い詰めていたのは自分の存在自体だったんだと気付いたときのオスカーの衝撃と哀しみが、痛すぎます。
自分の居場所を見つけられなかったオスカーが、父が話してくれた神様の話で、自分が家の中の子供かもしれないと希望を抱いていたのに、あんな形でそれを奪われてしまうなんて哀しすぎる。こんな話が描けるなんてすごい…!!と思いました。
本当に、萩尾さんの描く世界は怖ろしいほどのリアルさと、非現実的な綺麗さが同居してるんだなあと……これに出会えてよかった…!と思うほど、大好きな作品です。
-
誰かに萩尾望都の漫画を1冊貸してと言われたら、この文庫を貸すと決めている。
萩尾さんの漫画のモノローグには印象的なものが多いと思うけれど、中でも「訪問者」のオスカーのモノローグを思い返すことが多い。
”あの家のなしの花もいまは満開だろうね”
何ともいえませんな・・・。 -
トーマの心臓の続編というか番外編。短編だけれどこちらも味わい深い。子どものいる家に神の裁きはない。だから家の中の子どもになりたかったというオスカーは、血のつながらない父親を愛していたから。トーマの心臓も「愛しているといったときからただいっさいを何があろうと許していた」というテーマだった。
-
表題作は、親子関係の話。「あなたが神だとしても、子供がいる家には来てはいけないんだよ…」母を殺した父を必死に庇う少年。暖かいはずの家庭を、愛おしい記憶を、不器用な父を守ろうと必死になるその姿の愛おしさと切なさ。世界を放浪せざるをえない、魂の放浪者であるフリーカメラマンの父も、その父を引き止めるために母が犯した罪もなんとも人間臭く、切なく胸に響く。
-
萩尾望都の文庫の中で、いや漫画の文庫本で一冊を選べと言われたら迷わずこれを推します。表題作、『エッグ・スタンド』、脇を固める『城』と『天使の擬態』、いずれも傑作・大傑作。
-
「トーマの心臓」の名脇役オスカーのスピンオフ過去編。
※収録作品
「訪問者」「城」「エッグ・スタンド」「天使の擬態」 -
表題作がよても良かった。
最後の一ページで胸が詰まって泣きそうになった。
思わずトーマの心臓を引っ張りだしてきて、成長したオスカーが健やかに暮らしているのを確かめちゃった。