- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784091910165
作品紹介・あらすじ
幼い恋を覆う戦争の大波、愛の名編!
ライラックの茂みの中で始まった、ヴィーとビリーの幼い恋。しかし幸福は不意に終りを告げ、第1次対戦の暗い渦が時代を覆う。失意の日々、見上げる空には希望のありかをさししめすかのように、いつも飛行機が高く飛んでいた……。傑作長編の表題作ほか、世紀末ロンドンを舞台に錯綜する恋愛劇が進行する「ばらの花びん」、少年と青い瞳の少女の時を超える悲恋物語「マリーン」を収録。
感想・レビュー・書評
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少女コミックに三回に分けてこの作品が発表されたとき、私はまだ小学中学年だった。それでも、今読み返してみて、大方の本質を理解していたと気づくことができた。小学生も侮れない。
『風とともに去りぬ』を読んだときにどことなく既読感があったのはこの作品に出会ったのが先だったからだろう。しかしスカーレットと決定的に違うのは、金のために結婚した夫を、彼女は彼女なりに愛したことだ。きりきりと柳眉をあげて難局を乗り越えるヴィーの表情が秀逸。萩尾望都の絵の巧さにあらためて感動した。この頃の絵柄が一番好きだったな。 -
萩尾望都作品の中で、一位二位を争うくらい大好きな作品です。
ヴィーの美しく魅力的なこと。気の強さも正しさも浅はかさも含めて愛らしい。
年月を経ないとわからない、成就しない愛もあるなぁと。
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萩尾望都さま再読月間(あ、今日31日か)。第1次世界大戦前後のイギリスが舞台の人間ドラマ。
どうしてこんなに胸を打つのでしょう。最初から最後までずっと泣き続けてまうわ。
ありがちかつドラマチックすぎる筋立てに、典型的なキャラなのに。エピソードひとつひとつを受け止めるときの人物の表情、短いがゆえにピリッと効いてテンポよく物語を進めるセリフ…うーん、カンペキ。
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現実の困難に見出す夢と愛と。心が自分に向けられていないのを承知で大切にしてくれた人、独りになるかもしれないのを覚悟でその人の死後、去る。「それぞれの水はそれぞれで見つけなければならないものなのだった 自分のうちにあるものを」。あの短編では出てくる人皆が水を探しているんじゃないか。
過酷な現実を脱ぎ捨てるための技術が戦争に使われるが飛行の夢は消えないというモチーフで言えば、宮崎アニメ『風立ちぬ』より『ゴールデンライラック』の方が良かった。男女どちらかの夢や現実だけを一方的に描いていないからか、どうだろう。
タイトル通り、花の登場のさせかたも印象的。(「ゴールデンライラック」) -
ヒロインのキャラクターやエピソードが『風と共に去りぬ』を彷彿とさせる表題作と、やはり部分的に『風とともに去りぬ』っぽい(「私はまだ若いのに喪服を着なきゃならないなんて!」ってあたり。)『ばらの花びん』、そして、今里孝子さんが原作の『マリーン』の3作を収録した1冊。
『風と共に去りぬ』はあちらの方があちらの女性を描いているから実感的だけど、日本人が海外を舞台に長編恋愛ドラマを描くとそれはやはりファンタジーになっちゃうような気がする。
その現実と虚構の隙間を上手に紡いで物語にしているのが、萩尾さんの魅力なのかなぁ~。
らじ的には、ややギャグ的要素のある作品のほうが生き生きしているように思うんだけど…。 -
表題作「ゴールデンライラック」のほか、「ばらの花びん」「マリーン」を収録しています。
「ゴールデンライラック」は、ヴィーことヴィクトーリアという少女と彼女の家に引き取られてきたビリー・バンの物語です。ヴィクトーリアの父親のスタンレィ氏が死んだことで、彼女たちは働いて生活をすることを余儀なくされます。最初はホテルで働いていたヴィーは、やがてクラブで働きはじめ、スティーブンス男爵と知りあいます。しだいに変わっていくヴィーを身ながら、ビリーは複雑な思いを胸にかかえます。
「ばらの花びん」は、ミシェルという青年と、彼の年上の友人であるマルスラン、そして美しい未亡人のファデットと、ミシェルの姉のセザンヌの物語です。ファデットの夫が生きているとカン違いをしたミシェルは死ぬことを決意しますが、それがきっかけとなって登場人物たちがおたがいに心のなかでいだいている想いのねじれが解けることになります。
「マリーン」は今里孝子の原作をもとにした作品で、少年時代にペイトン家に引き取られたエイブ・リーマンと、彼が子どものころに浜辺で出会ったマリーンという謎めいた美少女、そしてペイトン家の娘であるディデットの物語です。
「ゴールデンライラック」のヴィーは、みずからの力で運命を切り開いていこうとする活力にあふれた少女です。他方「マリーン」のディデットほうは、すなおになれないツンデレ少女ですが、ゆがんだかたちではあるもののエネルギーが身体にみなぎっていることを感じさせられる絵が気に入っています。 -
叶わぬ恋の3篇、と思って読み終えたけど、ヒロインたちのほうを主人公として読むとまた違うかも。