半神 (小学館文庫 はA 7)

著者 :
  • 小学館 (1996年8月10日発売)
3.99
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本棚登録 : 1915
感想 : 173
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091910172

作品紹介・あらすじ

萩尾望都の異色短編傑作集。

双子の姉妹ユージーとユーシー。神のいたずらで結びついた2人の身体。知性は姉のユージーに、美貌は妹のユーシーに。13歳のある日、ユージーは生きるためにユーシーを切り離す手術を決意した……。異色短編「半神」、コンピューターが紡ぎだす恋の歌と夢「ラーギニー」、植物惑星オーベロンでも男女4人の一幕劇「真夏の夜の惑星」など香気あふれる傑作ストーリー全10編。

感想・レビュー・書評

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  • 最近まとめて萩尾望都短編集を読んでいて感じるのは、一冊の中が統一されていないというか、バラエティがあるというか。
    いや萩尾望都は似たテーマや似たモチーフを深化させる人だろうから、発表年が一冊の中でバラバラなので絵柄も語り口も様々に見える、ということなのだろうか。
    しかしたとえば「半神」を読んで感銘を受けた入門期の人が、いい意味でも悪い意味でも玉石混淆の本を通読して、どう感じるんだろうか。
    と要らぬ想像をしてしまう。

    ■半神 16p
    若いころに衛星放送で野田秀樹が深津絵里主演で舞台化していて、漫画が至高なのに何で、と意地を張って見なかったのを思い出すが、頑なだったなあ。
    今回集中的に読んでいて知ったのは「モザイク・ラセン」のチョイキャラが発展してできているということ。
    凄いの一言。
    「愛よりも もっと深く 愛していたよ おまえを。憎しみも かなわぬほどに 憎んでいたよ おまえを。わたしに 重なる 影―― わたしの 神―― こんな夜は 涙が 止まらない」

    ■ラーギニー 16p
    オリエンタリズムとSFが融合するのはいつもだが、とりわけ独特な美しさ。
    扉絵がまた美麗。

    ■スロー・ダウン 16p
    感覚遮断実験から着想を得ていることは明白だが、そこから孤独と愛と異世界へシフトするのが、凄い。
    山岸凉子とも通じる読後感。

    ■酔夢 21p
    「ラーギニー」と通じ、長編へも発展する作り。
    メイルーフィメイル問題、夢ー現実問題、ファンタジーーSF問題、どうまとめられるんだろうか。

    ■ハーバル・ビューティ 57p
    比較的コミカルで気楽に読める。
    「11人いる!」っぽさもある。

    ■偽王 50p
    記憶からすっぽり抜けていたが、これは大傑作!
    寓話性も高く、ロード・ダンセイニにでもありそうな、しかし存分に残酷な……。

    ■温室 41p
    「ハワードさんの新聞広告」と同じくイケダイクミさんの原作だとか。
    曲線が風のようで流麗。

    ■左ききのイザン 16p
    これは、うーん……なんともいいがたいコント。
    とはいえ「銀の三角」にブール博士が受け継がれたり、「ヘルマロッド殺し」という前日譚を小説で書いたりしているので、作者にとっては意義のあるものだったんだろうけれど。

    ■真夏の夜の惑星(プラネット) 32p
    中盤くらいでシェイクスピアの「真夏の夜の夢」まんまだなと気づく。
    だんだん綺麗で可愛く見えてくるのが、マジック。

    ■金曜の夜の集会 32p
    レイ・ブラッドベリっぽい。
    「もしも僕が星を見つけても自分の名前をつけないんだ、セイラの名前をつけるんだ」と頬を赤らめる少年が可愛すぎる。
    本書の中でも結構好き。

    ◇エッセイ―南の国の鳥を待つ:佐藤嗣麻子(映画監督)

  • 題作「半神」のみについて。永井均の『マンガは哲学する』に書かれたあらすじだけで泣き、もしかしたら元を読まない方がいいんじゃないかとも思ったのですがどうしても読みたくなって読みました。
    で、結局は構成・演出を中心に読み切ってしまったのですが本当に素晴らしい。読後、当時のノートに写し書きした覚えがあります。
    素晴らしい!16ページの奇跡。

    • まろんさん
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      『半神』、萩尾望都さんの傑作ですね!
      作品ごとに、怖ろしいほど緻...
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      『半神』、萩尾望都さんの傑作ですね!
      作品ごとに、怖ろしいほど緻密なのに詩情豊かな世界を築き上げてしまう萩尾さん。
      長編ももちろん素敵ですが、この『半神』や『イグアナの娘』などの短編作品では
      短いからこそ構成の素晴らしさが際立って、心が震えました。

      手に取ったことのないような新鮮な本との出会いのチャンスを作ってくれそうな
      オオニシリョウさんの本棚とレビュー、これからも楽しみにしていますので
      どうぞよろしくお願いします(*^_^*)

      2012/09/05
  • 2022年5月12日読了。萩尾望都による10篇のSF・ファンタジー短編集。冒頭の表題作が最も印象的、読み終わってわずか16ページとは信じられない、濃密で哀切な余韻を残すお話だ…。他の話も劣らずレベルが高い、残酷な話や美しい話、ちょっとイイ話など色々バラエティに富んでいて面白い、藤子不二雄や手塚治虫にも似たような話があったかもだが、何より絵が幻想的で美しいのが素晴らしい、漫画だから当たり前だが、絵って大事だよなあ…。

  • 読了:2011/4/9

    「半神」と「偽王」がすごい話だ。

    妹を切り離して、今まで妹に与えていた養分も、美貌も、周りからの愛も、妹から取り返した。
    それは同時に、「妹に与え続けていたわたし」を失うことでもあった…。

    偽王は難しいよ〜。
    加害者の罪なのに、被害者がそれを負わされてしまうことって多々ある。児童虐待において親をかばい自らを責める子、性犯罪における被害者叩き、etc.…
    そんなことを連想した。

  • 表題作の「半神」は怖い、ともかく怖いです。この作品の怖さを語る言葉が欲しい。

  • シリアス寄りの短編集。
    衝撃的な話が多いので一度に読むと疲れるかも。

    偽王は軽くトラウマ。

  • あえて表題作「半神」の感想のみ。
    どこでも書かれていることだが、16ページでここまで描ける、というお手本。
    かつて鈴木光明に萩尾が「新人マンガ家に16ページとか32ページとか、投稿作に
    ページ制限を設けるのはいかがなものかしら? 私たちのころはみんなページにとらわれず自由に描いていたでしょ?」と電話をしたとき、鈴木が「近頃の投稿者はページ制限を設けないと、何ページ描けばデビューに有利になるかとか、長いと不利かとかそんなことばかり聞いてくるから、あえて設けている」
    と答えたのを聞いてうーむと考えた、というエピソードがあったのだが、
    そりゃ天才とそうでないものは違うさ、と思わざるを得ない。
    努力でどうにもならないものはある。この16ページを読めばまざまざと見せつけられる。

  • 読み終えて「!?」という気分になる短編が多い。
    けど、それは決して不愉快な感覚ではない。
    思い出して読み返し、また「!?」な気分に浸ることができる。
    読み終えた時「ああ、なるほど」と思える日はくるのだろうか?

  • 半神を読んだのは中学くらいだったかな。
    いろんな意味で衝撃だった。悲しみと、肉体の変化と、見た目と。
    短い中にいろんなものが詰め込まれていて、どれも無駄なく届いてくる。


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著者プロフィール

漫画家。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年朝日賞など受賞歴多数。

「2022年 『百億の昼と千億の夜 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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