ラヴァーズ・キス (小学館文庫 よA 23)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091911834

作品紹介・あらすじ

心に深い傷を持つ朋章と里伽子。二人の運命的な出会いと、彼らをとりまく人々を描いた、傑作恋愛オムニバス。

感想・レビュー・書評

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  • 高校の3年間というものは
    人生の中で一番美しくもあり醜くもあり綺麗であり汚くもあり純粋であり不純であり
    いくつもの矛盾と二面性を持った時期だと思う。

    あの時期にどんな経験をし何を感じ考え選択したかでその後の人生は大きく変わるのだと当時わからなかったことは今になって身に染みる。
    歳を重ねればこの先いくらでも過去は増え懐かしい思い出はできるだろうが高校の3年間というのは遠く神聖な別の記憶の箱にポツンと置かれているいるように思う。

    こういう気持ちを呼び起こさせてくれる漫画というのは何年たっても色あせず自分の中の、各々の中の記憶の箱を叩き開かせ優しく時に苦しく一番近いところで寄り添い続けてくれることだろう。


    この漫画の最後にある有吉玉青さんのエッセイがとても良かったので少しだけ。

    「高校時代というのは、不思議な感触を持って思い出される時代である。
    よく、わからないのである。あの時代はなんだったのか、よくわからない。
    それはもちろん、どの時代をとってみても、その日々はこのようなものであった、などとまとめることは安易ではない。
    けれど、こと高校時代に関しては、像があまりにも不確かで、つかみどころがないのである。
    高校時代に残してきた問題は、今なら、さっさとカタをつけることができる。
    そして「あの頃は、どうでもいいことで悩んでいた」と言うこともできるだろう。
    でも、それは、あの時代に対する冒瀆に違いない。
    あの時代は、何だったのか「わからない」、そのままの、いつまでもひきずっていたい、そんなふうに思う。」

  • ものすごく大好きな作品。
    boy meets girl、boy meets boy、girl meets girl。
    同じ時間を別の視点から切り取ることにより、複雑な心の綾を描いてる。
    せつなさだけが心を磨くなぁ、としみじみした。

  • 同僚の先生から、お薦め頂き拝借。

    禁断の恋のオンバレードでした。


    で、巻末に掲載されている、有吉玉青によるエッセイにあった一文が妙に納得。

    「高校時代というのは、不思議な感触を持って思い出される時代である。
     よく、わからないのである。あの時代は何だったのか、よくわからない。
     (中略)
     こと高校時代に関しては、たとえば、楽しかったのか、といえば、そうでもあったようだし、そうでもなかったようである。では、何かに悩んでいたのかといえば、悩んでいたようだし、そうでもなかったような。そんな具合に、像があまりにも不確かで、つかみどころがないのである。」

    僕自身も、高校時代は、よくわからない。
    最近、同窓会などで再会して、記憶がなんとなく蘇ってくる感じ。

  • 吉田秋生の最高傑作と言う気がします。 萩尾ファンの私ですが、萩尾センセーは恋愛モノが あまりお得意じゃないし、小説、漫画問わずとも ここまで女々しくなくでも繊細に、美しい恋愛を 描いたものはないんじゃないかとすら思います。 何かこう、しめつけられますよね。2011年5月25日

    再読2014年8月13日

  • ようやく『海街diary』を読もうと思って、なんならリンクしているというこちらの本も読んでおこうと思って購入。

    吉田秋生は『桜の園』しか読んだことがなかったけれど、やっぱり思春期の女子の心情のゆれを描くのが上手いなあという印象。

    それにしても藤井くんの抱えている闇の部分が重すぎて重すぎて、そんなに重い必要があるのかという気もしたし、それにしては藤井くんがあまりにも大人な印象があったが、彼がこれからも生きていくために街から出て行くことや、周囲の大人たちの生き方を見ていたら考え直した。
    この世界で生きていたら、彼はあんなふうに育つかもしれない。

    女子団はもう一言で表せるような、表せないような思春期というには大人に近づいてしまっている感じがよく出ていてよかった。
    完全なおとなの身体と未熟で素直な心のずれが、よーくでていてとても好き。

    特に里伽子の小さい頃から染み付いてしまった生き方と、素直に自分をぶつけられる対象(藤井くん)が現れてしまったときの変化を他者の目から表現するとか、美樹さんが本音を吐露してから、えりちゃんと一枚のタオルをかぶって並んで座っているところとか、「何を使って」心情を描写するかという、その「何」を選ぶ吉田秋生のセンスがすごく好き。

    他者との境界が曖昧だった子供の頃には分からない、だけどおとなになると、自分がすでに多くの秘密を抱えていて、他者はどうしようもなく他者であることを知る。
    ひとりは心細くて、だから誰かと共有したいと思うのに、自分が他者に与えているイメージや相手の秘密の前に立ち尽くすばかりで、上手くいかない。
    また秘密を告白して、共有しても、結局ひとりきりだという場合もある。
    本書を読んで、そんなことが改めて感じさせられ、元気に生きてるってほんとちょっとした奇跡だなーなどと、何気ない毎日をもっと大事に生きようと思ったりした。

    あと緒方と高尾はもうこれからどんどんしあわせになればいいよ!

  • 「出会ってしまった」6人のそれぞれの想いを描いた連作短編集。

    ひとつの季節を、6人それぞれの視点から描き、全ての話がひとつの終結(始点でもある)に繋がっていくので、最初から最後まで通して読むと、また最初から読み返したくなる作品。

    男女の恋愛、女子同士、男子同士の報われない切ない恋愛。家族関係、姉妹関係の問題。

    美樹さんの
    「あたしはあたしの家族が好きだよ でもだからってずっとあそこにいたいとは思わない

    家族だからたまらないこともあるんだよ」
    という重い、重い一言。
    きっと皆が心のどこかで思っていても、口に出さないようなことを、さらっと書いてしまうところが、作家の才能を感じさせます。

    「あたし、彼女に出会ってしまった」
    そう言った美樹さんの横顔はとても美しい。


    「あの人に、会ってしまった」
    そういうふうに言えるほどの出会いを経験したことがある人は、幸福なんじゃないか、と思わせてくれる。
    たとえその出会いが、報われても、報われなかったとしても。


    きっと皆、経験を積むに連れ、色々な人を忘れていくんだろうけれど、「出会ってしまった」と感じる人のことは、きっとずっと忘れないんだろう、と思う。

    「櫻の園」は永遠の乙女の聖書ですが、「ラヴァーズ・キス」は、もう少しほろ苦い、少し大人向けの青春漫画です。

  • 少女マンガから、すっかり離れてしまった私が
    唯一、愛する少女マンガかと。
    ちょっと内容はアレがアレで・・・アレ??(笑)

  • 鎌倉の県立高校を舞台に繰り広げられる男女六人の恋愛模様。

    初読の感想としては、登場人物皆スペック高すぎだし、主要人物六人中四人が同性に対して思慕の情を抱いてるしで、ちょっと入り込めない感じがあったのだが、読み進めてゆくうちに、内面描写の丁寧さと構成の巧みさにすっかりやられてしまった。

    まず内面描写だが、もはや吉田秋生さんのそれは職人芸の域だ。本当に10代後半から20歳前後の内面の揺れを、モノローグを駆使して見事に浮かび上がらせる。揺れ動き、刻々と変化する思春期の内面の模様を、まるでマーブリングでもするかのように掬い取る、とでも言おうか。

    そして、何よりもこの作品を傑作たらしめているのは、視点人物を各話毎に変えていくことで、一つ一つの恋愛上の事件の多面性を暴く構成力の高さである。他にもこうした構成を持つ作品はあるが、ここまでの精度でそれを行った作品はそうそうないだろう。

    同作者の「海街diary」もあわせてどうぞ。

  • 吉田秋生は全部好きだと思う

  • 藤井朋章、海街の朋章と微妙に違うから・・・
    他の人も海街のキャラとかぶりながら、でも違う。
    だから、海街は完全なこの先の物語ってわけじゃない。
    ほぼ17歳の話だから、切っ先が鋭い。
    背景がはっきりとは語られないけれど、17歳なんて、そんなものかもと思える。

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著者プロフィール

同姓同名あり。

1. 吉田秋生 (よしだ あきみ)
1956年、東京都渋谷区生まれの女性漫画家。武蔵野美術大学卒業。1977年「ちょっと不思議な下宿人」でデビュー。1983年、「河よりも長くゆるやかに」及び「吉祥天女」で第29回小学館漫画賞を、2001年に「YASHA-夜叉-」で第47回小学館漫画賞をそれぞれ受賞。その他代表作に、「BANANA FISH」。
代表作のメディア化が多く、「吉祥天女」は2006年TVドラマ化、2007年に映画化された。「海街diary」は2015年に映画化されている。2018年には「BANANA FISH」がTVアニメ化された。

2.吉田 秋生(よしだ あきお)
1951年生まれのテレビドラマ演出家。学習院大学法学部卒業。

吉田秋生の作品

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