ポーの一族 (3) (小学館文庫 はA 13)

著者 :
  • 小学館 (1998年7月17日発売)
4.02
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本棚登録 : 1483
感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091912534

作品紹介・あらすじ

時を超えて生きるバンパネラ一族の大ロマン

1959年、西ドイツ。川の中州にあるギムナジウムにエドガーとアランが現れた。天使を待つ少年ロビンを2人は迎えにきたのだが…。 美しい季節の少年たちを襲う魔の5月の伝説「小鳥の巣」、バンパネラ・ハンターとエドガーの肖像にまつわる悲劇「ランプトンは語る」、エヴァンズの末裔にアランが恋する最終章「エディス」…。 時を超えて生きつづける、はるかなる一族を描いた超名作の完結編。

感想・レビュー・書評

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  • 「ポーの一族」の新作が刊行された。噂によると、最終編『エディス』の 正当な続編らしい。それで急遽これを取り寄せた。そうせざるを得なかった。読む前に、ファンとして私の40年間のあれこれの妄想を、もう一度整理しておきたかったからだ。

    以前、前回の『春の夢』連載開始時に復刻版『小鳥の巣』を紐解き、こう書いた(16.6.25記入)。

    「現在キリアンがドイツで生きているならば、おそらく71歳。ドイツ統一のために闘って来たのではないかと(勝手に)想像する。」
    「キリアンは微かにマチアスに噛まれて仕舞う。萩尾望都はついつい書いて仕舞った。『パンパネラの血は、キリアンの体内に深く沈んで存在した。それは潜在的な因子として子孫に受けつがれてゆき‥それはもっとのちの話となる』この記述があるがために、「ポーの一族」ファンたちは、一生「続編」を待ち望む「呪い」をかけられてしまった。もちろん、私にも。その呪いは未だ解けていない。」

    つまり現代は、ポーの一族が再び現れるならば、キリアンの14歳の孫の前に出現しても可能な時代になっているのだ(晩婚化が進んでいるからちょうどいいだろう)。ちなみに『小鳥の巣』はシリーズの中でも屈指の傑作である。

    その妄想を膨らますために、1976年当時の『エディス』を読んだわけだ。この時点で、アランはエディスを助けるために消滅してしまったことになっている(ロンドンでの事件)。「消滅」するのである。マチアスは肉体どころか靴さえも消滅してしまった。だとすれば、他の次元に移るとした方が正しいのかもしれない。この本には、そのほかに1966年にエドガー研究家のオービンが関係者を集めた『ランプトンは語る』も収録。時系列の歴史を解説した便利な本になっている。しかし、最初に読むべき本ではない。文庫本なのであまりにも画が小さいのだ。あれから40数年。オービンは当然、エドガーについての総括的な一書をしたためているはず。エディスは50歳後半だ。テオの血液研究はどうなったのだろうか。66年当時に血液保存技術はないだろうから、成果も出ずに終わった可能性が高い。

    『春の夢』(2017年刊行)も、当然この「続編」のために準備されているはずだ。改めて読み直す。ポーの一族の間の中のいろんなランクと、消滅への危機感を持ったクロエのような人物がいることが明らかにされている。ポーとはまた別系統の異能種のいることも明らかになった。「ポーの一族」とは何なのか?それが最終的に明らかにされるのが、最終章になるはずだ。それを意図して始めたのが『春の夢』だろうと、今なら想像できる。

    『春の夢』の中にいくつもヒントがある。ファルカは言う「(アランがすぐ眠るのは)"気"のヒフが薄いんだよ。すぐシューシュー漏れちまう」。吸血鬼とは実は病原菌とかの生物が中に入ってなる病気ではなかった。気はエナジーとルビを振る。だとすれば、バンパネラの正体は、エネルギーだ、ということになる。ファルカは瞬間移動が出来る。だとすれば、バンパネラの存在は、異次元の存在なのかもしれない。それから、大老ポーが老ハンナを仲間にしたのは、8世紀だ。一体何があったのか。一方、ファルカはウクライナ・ポーランドの「紅いルーシー」という一族。800年(600年かもしれない)も生きている。さらにルチオというギリシャ系の一族さえいる。紀元からいると言われる「さまよえる者」がホントだとしたら、本当の起源は2000年前から居るのかもしれない。

    しかし、バンパネラの正体だけならば種明かしに過ぎない。エドガーの約240年間にわたる、魂の遍歴の意味を明らかにするのが、最終章の役割のはずだ。

    それにしても、本当に終わるのだろうか?今、あらゆる情報は今回が「ポーの一族最終章」だと囁いている。知りたいのと、知りたくないのと、半々だ。「カムイ伝」「火の鳥」と未完に終わった名作を抱えて、私たちは長編漫画の夢の中を生きてきた。その正当な継承者である萩尾望都が「終わらす」と言うのならば、やはり私たちはそれを真正面から受け止めなくてはならないのかもしれない。襟を正そう。そして、新章を紐解こう。

  • 恩田陸が萩尾さんの影響を受けているのがとてもよく分かり、納得。
    恩田陸の作品を読んでるようで、スルスルと読めた。
    アランが切ないなぁ。
    彼らを追う人もいて、なんか全てがハマるとこハマってすごい漫画だなぁと感動。
    他の萩尾作品も読んでみたい

  • 人から忌み恐れられる存在“バンパネラ”。期せずして大老ポーから血を分け与えられ不老不死となったエドガーは、愛する妹メリーベルとともに終わりのない旅へ出る。

    時系列を前後しながら展開する連作短編です。
    望んでポーの一族に加わったわけではないエドガー。14、5歳の少年の姿で永遠を生き続けなければならない苦悩と孤独が痛いほど伝わってきます。その苦しさすら包括して、人を惹きつけて止まない美しさと佇まいと知性。関わった人々は魅了され、時に人生をかけて翻弄されていきます。
    最初は物語に惹き込まれ一気読み。ラストまで読み、登場人物と全体の構成力に圧倒されしばし呆然…。その後登場人物たちの関係を確認するため、そして世界観にまた没頭するべく再読に次ぐ再読…。少女漫画は苦手と敬遠して今の今まで積読してしまった自分を叱りたい。
    どの章も印象的ですが、『エヴァンズの遺書』で密かな計画がうまくいったと知ったメリーベルの表情がとても良いです。ゾクゾクします。
    永遠を生きる彼らと、彼らからすればあまりにも刹那的な生である人間たちの対比が儚くも切ない。多くの数奇な人生に触れ、重厚な歴史書を読み終えた気持ちになりました。

  • エドガーとアランは消失してしまったの…?

    小鳥の巣、ランプトンは語る、エディス
    3篇とも素晴らしい

    誰がどこの時代の人だったかわからなくなるので、年表ありがたし笑

  • 第一話「小鳥の巣」は、エドガーとアランの二人がドイツの学園にやってくるところから物語がはじまり、キリアン・ブルンスウィッグという少年とのかかわりがえがかれています。本作の原点回帰といった印象のある話で、おなじく寄宿制の学園を舞台にした本作第一話の「ポーの一族」を反復するような構成によって、バンパネラたちの生きてきた時間の長さが印象づけられます。

    このほかに「ランプトンは語る」「エディス」の二編が収録されていますが、時代が現代に近づいて、これまでの登場人物たちがのこしたさまざまな手がかりがストーリーに絡んできます。これらの話でも、世代をかさねる人間の時間と、少年のままのエドガーとアランの時間の対比がいっそう鮮明になっているように感じました。

  • うーん、なんか今回は小さい字で書きたいような気がするのだけど…、「え~?それでもファン?」とか言われそうなんだけど…、えーと、わたしは「ギムナジウムもの」ってあまり好きじゃなくて、いやいやキライと言うんじゃなく、さほど魅力を感じないというかムニャムニャ…。だもんで、萩尾作品のなかでも「トーマの心臓」「11月のギムナジウム」あたりにはあまり思い入れがない。(「スター・レッド」とか「銀の三角」とか、SF者としてのモト様をこよなく崇敬するものであります。)

    というわけで、「小鳥の巣」にはどうもうまく入り込めない感じがする。これって、全体の流れのなかでちょっと浮いてるようにも思ったり。いやこれはやっぱり、ギムナジウム的な世界がよく理解できないからこそ思うのだろうけど。

    「エディス」で幕が閉じられたとき、これで終わりだとは思えなかった。始まり方が始まり方なので、終わりなんてあってないようなものだもの。エドガーの永遠の孤独が終わるのは、彼自身の死によってしかない。だからまた必ず読めると思っていた。それがまさか四十年後とは思わなかったけど。

    巻末の解説を書いているのは有吉玉青さん。「ほんとうの孤独」というタイトルで、胸にしみます。

  • 結局我慢できずに最後まで読んでしまった。ロビン・カーの話は、中でも一番よく覚えていた話だった。

    ああ、本当にいい話だねぇ。しばらく前に流行ったアメリカのティーン小説「トワイライト・サガ」より数倍は深い話だよな。

  • ミステリ仕立ての3巻。
    エドガーやアランが死ぬまでなんだけど、今までのストーリーを拾って、かつミステリにしてるのが凄い。
    結局、エドガーは自分の血筋の人の近くにいたかったんだね。
    ずっと側にいる。
    人間に一番戻りたかったんだろうな。
    時に冷酷だけど、それは彼が人間に嫉妬してるからかもしれない。

    僕はこの巻のロビンとキリアンの話が大好きだ。
    エドガーが言うんだ。


    ぼくたちは
    あまり
    いそがなかったよ

    彼がもう
    天使を
    信じて
    ないことを
    おそれて
    いたし…

    …そして

    おそくきすぎた

    「ねえ
    世の中には
    すこしばかり
    神経が細いために
    育たない子どもが
    たしかに
    いるんだよ

    彼はずっとずっと」

    天使を
    信じて
    待ってた
    のにね…


    そうだ、僕がそうなんだって思った。
    僕はたしかに死んでいるハズなんだ。
    育たなかった子どもなんだって。

    優しく
    悲しく
    そして真実の言葉

    ミステリとしても傑作だ。

    好きで好きで仕方ない。
    読むべき漫画だと思うんだ。

  • アランが好きな私としては、『小鳥の巣』は最も思い入れの強い作品。100年近く生きながら、いつまで経ってもまるで我儘な子供で、人間の様に優しく脆いアランを、エドガーはきっと愛したのだろうと今なら思います。自分と違い、「ポー」に染まっていない、けれどずっと側にいてくれる存在を求めたのでは。『ランプトンは語る』で、月の下二人が戯れるシーンは、最も好きな場面の一つ。人間に戻りたがっていたエドガーだけれど、この時ばかりは永遠に少年のままいられる時間を愛していたのではないかと思うと切なくなります。『エディス』のラストは号泣。

  • 「ランプトンは語る」と「エディス」で、エヴァンズ家の子孫たちの物語へ。
    でも、本当にアランは死んでしまったのだろうか。アランが死んだら、エドガーは一人ぼっちになってしまう。それが、永遠を生きる者、バンパネラの宿命なのか。

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著者プロフィール

漫画家。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年朝日賞など受賞歴多数。

「2022年 『百億の昼と千億の夜 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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