イグアナの娘 (小学館文庫 はA 21)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091913814

作品紹介・あらすじ

生まれてきたのは、イグアナの姿をした女の子!! 親子の葛藤と愛憎をシュールな心象で描く異色短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 母親と娘の関係がせつない。
    自分を愛せないことのメタファーが“イグアナ化”で表現されていて、悲しい孤独感に不思議なおかしみが漂うお話。
     
     
     
    母親は、実は自分自身を愛せないイグアナで、そのことをすっかり忘れたまま、自分に似ている娘を愛せない。そうしたら、母親に愛されない娘は、自分を愛せないイグアナになってしまう。それで母親はますます娘を愛せない。それだから娘は…。負のスパイラル。

  • 大傑作「イグアナの娘」は、決して奇蹟のようにポツンと存在を始めた作品ではない、ということが解る一冊。
    親子に生じるあれやこれやを、母視点、娘視点、さらに母と子に挟まれた世代視点、きょうだいの存在、男視点、女視点、老若男女なるべく多くの方角から多層的に描き・重ねている。
    ピンク・フロイドの「狂気 DARK SIDE OF THE MOON」のジャケ写よりももっと多方面から、ブラックボックスに光を当てて、当て直して、当て直し続けて、毎回どういうプリズムが出るか吟味している、という感じ。
    で、たぶん結論としては地味なところに落ち着く。
    歳を重ねたからこそ判ることがある・見えるものがある、と。
    あるいは萩尾先生にとってもその年齢にならなければ描けなかった作品群なんだろう。
    渦中にあってはどうしようもなかった物事に、別の場所で基地作りした後で再度直面する。
    ここには時間の流れがある。
    親との和解は、渦中においては困難で、時間差で、可能の兆しが見える。
    これは年齢差ゆえ仕方ないことだが、往々にして手遅れになりがち。
    と「シン・エヴァ」後の身として、平凡なことも恐れずに書いてみる。

    ■イグアナの娘 50p
    私の世代だと菅野美穂主演のテレビドラマのインパクトが強い。
    が、原作の凄まじさはまた一層で、コミカルなタッチだからこその恐さが、ちょっと度を越している。
    思春期に読んだときは完全に子供の視点で親を見ていたが、今回見てみると、序盤はむしろ母親視点で進むので、少し驚く。
    途中で娘視点になり、娘が成長し母になり、後半が前半と対になる形で描かれ……と時間の経過があり、むしろそこが大事なんだな、と。

    ■帰ってくる子 24p
    漫画ならでは、映像ならでは、いや小説でもあるかな、な醍醐味。
    それは、ある存在が誰に見えて誰に見合ないのか、という設定。
    なんでも初出は井上雅彦監修「チャイルドー異形コレクション7」らしく、あのアンソロジーの中でこれを出すとは、いい仕事をするな! と。
    実際私はヒデが心の底から叫ぶ場面で、不覚にもぐっときてしまった。

    ■カタルシス 40p
    この作品を読むあたりで気づいたのが、この本全体として、「ごく普通の人」が描かれているということ。
    おそらく萩尾先生が、天才や選ばれし美形を主役にしたら「自分が救われない」から、と決めたんではなかろうか。
    ロボットみたいな自分を変えようとし、一歩踏み出し、しかし何もかもが改善したわけではないまま生活が続く、という真理もここには描かれている。

    ■午後の日射し 50p
    一時期の近藤ようこが描いていそうな題材。
    ザ・昼ドラ。

    ■学校へ行くクスリ 40p
    コミカルだがまっとうな成長譚・ジュブナイル。
    周囲の人物が変に見えるだけでなく話している言葉がバグったよう、という描写が面白い。
    また単純に絵柄の話だが、この時期に萩尾先生が描いている少女も可愛いな~、と花だらけのマユミを見て思った。

    ■友人K 8p
    全ページ横一段ブチヌキという実験的なコマ割り。
    萩尾作品でこういう人物が視点人物に据えられるのは少し珍しいかも。

    ◇エッセイ―どこまでも、いく:江國香織(作家) 4p

  • 萩尾望都さんの作品によくみかける毒親のお話。コミカルにホラーで現実的なのにファンタジー。

    萩尾望都さんの表現はある程度理解出来てもある程度以上は不思議で仕方ない。
    なぜ比喩にイグアナを選んだのか……謎でありその辺りのセンスが刺さる。

  • エグい。母娘って本当に難しい。ぼろっぼろ泣けました。

  • どこにでもありそうな家族のちょっとした歪みを芸術的作品に仕上げる手腕!

  • 大きい方がいいと思ってPFコミック版で読了。
    こちらの文庫版だと1篇多いんですね…

  • 母娘で楽しめた漫画❢

  • 表題作をはじめ短編6作品を収録しています。

    「イグアナの娘」は、青島リカと妹のマミの物語です。二人の母親のゆみこには、リカがトカゲのように見えてしまい、彼女に愛情を注ぐことができません。そんな家庭で愛を受けることなくそだったリカは、いつしか人間のなかで一匹のイグアナとして一生をおくることを受け入れるようになっていきます。

    ほかに「帰ってくる子」や「カタルシス」など、親子愛のもつれやゆがみをえがいた作品、「午後の日射し」のように夫への愛をうしなってしまった女性を主題とした作品などが収録されています。

    「イグアナの娘」や「学校へ行くクスリ」は、登場人物のすがたが変化して見えてしまうという設定になっており、マンガならではの寓意的な表現を駆使して人間関係の機微をえがきとっています。

  •  最後に親の言葉から解放されてよかったです。


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著者プロフィール

漫画家。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年朝日賞など受賞歴多数。

「2022年 『百億の昼と千億の夜 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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