残酷な神が支配する (1) (小学館文庫 はA 31)

著者 :
  • 小学館
4.05
  • (213)
  • (85)
  • (164)
  • (9)
  • (3)
本棚登録 : 1035
感想 : 137
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091916112

作品紹介・あらすじ

友達に恵まれ、ボランティアと勉強に励む幸せな生活を送っていたジェルミの日常は、ある男との出会いで一変する。母・サンドラの婚約者で大金持ちの英国紳士・グレッグ。ジェルミの苦痛に満ちた地獄の日々が始まった

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 実家の部屋のどこかに隠しています。全巻とも。大好きな萩尾望都さんの作品だから、ムリして読んでいた。けど、やはり、残酷で、辛すぎた。

  • タイトル通り残酷な内容のマンガ。
    あまりにつらい内容にエネルギーの少ない時は読みたくないと思うほどです。
    でもその残酷さ故にこの話は面白い。
    こちらにグッと伝わるものがある。

    ジェルミは15歳の少年。
    父親はおらず母親と二人暮らし。
    健康な青春を送っていたジェルミだったが、その生活がある日一変してしまう。
    それは母親とつきあい始めた中年男の出現。
    彼はイギリスの一見紳士風なお金持ちだったが、その実態は性格破綻者、そして異常者だった。
    一度は彼の魔の手から逃れたジェルミだったが、とうとう罠にはまり蟻地獄のように彼の支配から抜け出せなくなってしまう。

    ジェルミが最初と最後ではまるで別人のよう・・・。
    彼がどれだけ過酷な中で生き抜いてきたのかが分かります。
    心の傷というものは人格も根っこから変えてしまいます。

    そこまで彼を変えてしまったのはもちろん、義理の父親になる男。
    もうそれは言うまでもないわけだけど、それだけでなく、この話では全てを知っているのに見て見ぬふりをする周囲の人間たち。
    何があろうと実際に目の前で起こることしか見えない義理の兄も全てが残酷。
    そして何と言ってもジェルミの母親が残酷。
    自分が原因を作っておいたくせに感情的になってばかりの彼女に本気で腹が立ちました。

    ジェルミだけでなく、子供というのは親の庇護のもとに置かれます。
    その際はある意味支配されている。
    だけどそれが残酷なものだったら・・・逃げ場はないし救われない。

    読んでいてつらくなる話ですが、一度は読んで欲しいと思う作品です。

  • 罪の告白に
    変わらない愛で応えてくれたことに号泣した。

    ラストで登場人物全員好きになる

  • 萩尾望都の「残酷な神が支配する」全17巻を読んだ

    この「残酷な神が支配する」というタイトルは、アイルランド人イェイツの詩から
    アルヴァレズという人が「自殺の研究」という本に引用したものである。
    それを萩尾氏が読み、タイトルとして10年ほど温めておったとか?

    またこの漫画には「春の祭典」というタイトルと、「残酷な神が支配する」と
    どちらのタイトルを使うか迷ったとか…(?)
    「春の祭典」といえば…
    別名「春の虐殺」と言われたあのバレエ組曲のことだろうか…(?)

    しかし…萩尾氏は、なんという幅広い分野の本を読んでおるんだ。。。。
    ま、だから、彼女の漫画を読むと、頭が腐りそうになるのかもな~(笑)

    太宰治「人間失格」の一節、
    「神に問う、無抵抗は罪なりや」 を
    この漫画を読んでいる間中、思い出していた
    太宰治の小説の中には、幼児期の性的虐待についての記述が時々現れる
    それは、太宰の経験によるものではないか?と考える研究家も多い

    そのイメージが浮かんでは消え、消えては浮かび
    押さえ切れなくなりそうになった所で、漫画が終わった(笑)

    1992年から2001年まで「プチフラワー」で連載され
    萩尾望都の新刊だ!っと嬉しくなり、1巻から3巻まで買ったのだが…
    あまりの内容の厳しさに…中古買取店へ売っぱらった私である(笑)

    だから…正直に言うと…私の嫌いな部類の本なのだ(アハハハハハ)

    今回、何時もブログで遊んでもらっておるトミーさんから全巻借りることが出来た
    最後まで通して読めるのなら、なんとかなるじゃろうっと思ったのである
    先に言わせてもらえば…確かになんとかなった(笑)



     内容の紹介(多少ネタバレあり)

    ボストンの高校に通うジェルミは、8歳の頃に父親を病気で亡くしていた
    夫が死に、先行きが不安なのか…その不安を打ち消すために
    幼い息子を頼り、やたら息子にベタベタと接する精神的に弱い母との二人暮しを
    ジェルミは、それなりに楽しんでいた

    そんな頃、母の勤め先のアンティークショップに
    英国紳士のお金持ちグレッグ・ローランドが現れる
    程なく母とローランドは婚約するのだが…
    何かに頼っていないと安心出来ない母は、婚約者のローランドが全てとなっていく
    そこに付け込むローランドは、ジェルミに肉体関係を迫り、強要する。
    母親の幸せのためにと「一度きり」の約束で身を投じたジェルミは
    この後、無頓着な母の犠牲となり、ズーっと性的虐待を受け続けるのである

    無事、ジェルミの肉体的及び精神的犠牲のもと
    母とローランドは結婚し、イギリスへ渡るのだが…そこでも虐待は続く
    ジェルミだけならどうにか逃げられるのだが
    母を人質に捕られている以上、ジェルミに逃げ場はなかった

    イギリスのローランド家には、
    ローランドの先妻の子「イアン」と「マット」という息子が二人居る
    また、先妻の姉も通いで来て居た。執事も居るしメイドも居た。
    ローランドによるジェルミへの虐待は、エスカレートし暴力の域に達するが
    誰も気付かない。何か気付いたとしても、誰もが「ありえない」と打ち消し
    ジェルミの犠牲による家庭内の平和に身を委ねる

    精神的に追い詰められたジェルミは、ローランド氏の殺害を企てるのだが
    大きな誤算が生じ、ジェルミの最愛の母親までもが死んでしまう

    ローランドの息子「イアン」は、
    ジェルミが父の死になんらかの関わりがあると感じ、ジェルミを追い詰めていく
    ローランド氏の真実の姿が明るみに出ると共に、
    この家に誰一人として、正しい判断、正しい精神を持っていた者が
    一人も居なかったことが判明していく
    もちろん、ジェルミをも含めて・・・

    というような…救いようのないお話しが17巻ビッシリと続く(笑)

    つまり先にも述べたが「無抵抗は罪なのか」と
    「無意識の見て見ない振りは罪なのか」である。

    ちょっとした所に「逃げ道」「解決策」が見え隠れしているのだが
    それに気が付いて実行してしまうと、全てが壊れ破壊されてしまう危険も見える
    だから分別ある大人は、幸せをぶち壊すような「勇気」が持てない

    健康に生活している人から見れば
    一見すると、いくらでも逃げ道はあっただろうっと思われる無抵抗なジェルミも
    日々、塗り重ねられていく侮辱的な行為に、気力を奪われてしまい
    同じぶち壊すなら、母の幸せをではなく、元凶を殺そうと思ってしまったとしても
    それをこの本の登場人物の誰一人として、責めることは出来ない。

    だが、父親の卑劣な行為の全てを知った息子のイアンは、
    父親を軽蔑しつつも…無抵抗だったジェルミを責める
    「何故、言わなかったのか?」と
    「何故、逃げなかったのか?」と
    「自分なら、こんな事をされれば、逃げる」と

    この物語には…作者はハッキリとは書いてはいないのだが
    読者が見て見ぬフリが出来る複線が張ってあるっと思う。

    ローランド氏の父親が非常に厳格で、ローランド氏に厳しかった事
    このことから、もしかして…
    ローランド氏も父親からムチで打たれるなどの虐待を受けていたのかもしれない
    なんぞとチラっと脳裏をよぎる(ただし、まったく根拠は載っていない)

    もう一つは、ジェルミの母親の日記に…ハッキリとは書かれていないのだが
    母親がジェルミとローランド氏の関係に、可なり早い段階で
    気が付いていた節が見受けられるのだ。

    これは、母親が…夫と息子の関係を、知っていたにも関わらず
    息子を助けるより、自分の優雅な安定した生活を守ったことを示唆している

    ところがその後、
    ローランド氏が事故で死んだ当日に、彼女らしからぬ行動が描かれている

    普段では見られないほど思いつめた様子で、母親が夫であるローランド氏の車に
    一緒に乗り込む姿が描かれているのである。
    そこで夫と一緒に事故にあい、彼女は死んでしまうのだ。

    つまり、最後の最後で彼女は、
    夫との安定した生活を捨てて、息子を助けようと思ったのか?
    っと見ている読者が感じてしまうように話を持っていっているのだ

    だが、それまでの彼女の行動を見ていた読者は
    この母親にそんな底力が果たしてあっただろうか?とも思うのだ
    そんな風に感じるほど、それまでの彼女に自我が見受けられない

    ちょっと底意地の悪い私のような読者は
    結局、夫より、息子より…この女は自分が一番可愛かったんじゃないか?
    っと思ってしまう

    自分より、息子を愛した夫に逆上したのではないだろうか?
    だから事故が起きた…

    この事故は、息子がローランドに復讐を企てたから起こったのではなく
    また、母が息子を守るためにローランドを殺したから起こったのでもなく
    ただ単に、自分本位な女が…自分の夫を息子から取り戻すための
    逆上から起こった心中じゃないのか?っと…

    だからこそ、ココで「自殺の研究」という本から拝借した
    「残酷な神が支配する」っという言葉が生きてくるのかも?なんぞと思った

    この作者は…オソロシイ(笑)

    どちらにしても、残酷な神にも天罰は下ったようである
    ただし、消えた残酷な神に代わり新たな残酷な神がジェルミの前に君臨する
    それが息子のイアンなのだが…

    で、ここでもう一度問う
    「無抵抗は罪なりや」
    私の考えでは、事が終わった後から
    無抵抗云々に関しては、誰も議論出来ないだろうと思う。

    残酷な神も悪魔も悪人も、善人の隙を付いて襲ってくるのだから
    幼子ゆえの善人が持つ隙が狙われるのなら、
    力ある者が保身を捨てて守るべきであろう。

    太宰もジェルミも自身を責める言葉を連ねているが
    本当に彼らが言うべき言葉は
    「なぜ、助けてくれなかったのか?」であるべきだ

    結局、ジェルミに救いは見当たらないまま、この物語は終わる。
    ただ、時だけが流れ、流れた時が記憶を遠い彼方に追いやる。

    これだけのお話しの最後が、時の流れの解決とは…少々陳腐かとも感じたが
    この終わりかたが、一番、現実に近いのかもしれん

    いや~。この漫画。イイと思う…心理学の勉強には最適じゃ(笑)
    でも、普通に生活しておる人にとっては
    暗くなるので読まなくても良いかもしれん(アハハハハハハ)

  • 養父グレッグを、そして母サンドラを殺したという罪の意識
    グレッグに犯され続けたという性と暴力のトラウマ
    愛し、愛されいたと信じて疑わなかった母の裏切り
    これがジェルミという少年の心を縛り、
    人を愛することの恐怖を感じるようになる。
    このATフィールドをこじ開けようとする義兄弟のイアン。
    そして、そのイアンさえも信じいた父グレッグの裏切りを知り、
    自分にグレッグの影を見つけ、怯えています。
    恐ろしく繊細なテーマを恐ろしく緻密なプロットで描いた傑作。

    作中、母サンドラはジェルミによって、心の弱い人と何度も語られてきた。そのサンドラが死ぬ間際の車に乗り込む際に「大切な話がある」と強く告げる。おそらくこれはジェルミとグレッグの関係について以外の何物でもなく、そしてサンドラがヤケドの際に「ジェルミ、おまえと一緒にボストンへ帰る!」と言ったことから考えると、ジェルミが車を弄らずとも、サンドラは自分の意思でジェルミを救っていたのではないかと描き方になっており、そして作中でそのことをジェルミが知りえなかったこともジェルミの不遇さがより際立つ作りになっている。
    本当に萩尾先生は天才なのではないかと思う。

    確かにテーマや作品を構成する要素が実に重いものであるため、手に取るハードルも高く、読破にエネルギィを要する作品なのは間違いないが、そのハードルを越えてでも読む価値がある。

    94点

  • ぜーぃぜぃフラバりながら 大変な想いで(笑)読んだ 
    今までで こんな気持ち悪い想いをしてまで読んだ本はないかも

    作品としての「残酷な神が支配する」が気持ち悪いのかと思う人も
    いるかもしれないけど そういう意味ではなく こちとらの問題である、

    傷があるものにとってはトラウマが反応してしまう感じ
    2巻くらいで もうギブアップしかかったけど(コミック17巻 文庫だと10巻です)吐き気をもよおしながら何日もかかり 読み進めた

    そこまでして読むか?!分からないけど 読んだ以上
    途中で終われなかった

    舞台はボストンだし、ただの物語として読むのなら 
    どうのこうの言えるだろう 

    でも虐待ということに関して
    まったく幼いときに同じ運命を辿っている者がいたら・・・?
    これってまんまだよね・・・って 正直 きつかった

    後は漫画という手法はすごいな、って思った 

    もうフラバ描写が絵だから もちろん 絵的にはキレイなんだよ

    でも、自分まで持っていかれそうになる
    あっと気づくと 自分の方がフラバってしまう幻想におちいる 

    渦中から出たあと、というのか?生き延びたあと
    ・・・この漫画の場合 ただ生き延びたのではないんだけど
    コロすしかなくなるし

    もう一気に主人公の落ちるとこまで堕ちていく感じとか、最後も救われていない感じが まったくもってリアルすぎて 落ち込む 

    そうそう 簡単に救われてハッピーはっぴーなら嘘くせっ!と思うし
    もしそうなら 逆に距離感を保てたかもしれん、私的には
    (作品としては 引っ張るだけ引っ張って 何 あの結末って思う人もいるかもしれないけど)
    現実は【こんなもん】だ、って正直に思うよ
    そんな簡単に救われないさ

    設定そのまま リアルで似た体験してれば 読み方も当然 違う訳で
    そんなもんじゃねーよな、でもそこをぐるぐるやり続けていった先に 
    いつか傷はだいじぶ、になるかもしれない、かも かも
    逆にあの終わり方だからこそ ある意味希望が見えた←どんな読み方だよ???

    堕ちて堕ちてそのフラバ渦中 助けようとするものが現れて 
    周囲もろとも巻き込みながら みんながみんな壊れていく

    解説などを見ていて 
    甘美なあぶない世界、にあこがれ的なことを言う人がいて
    えっ?!絶句した
    でも これをやおい(BL)、だとか 
    こんなんやおいじゃないとか どうだ、こうだというなら 
    ああ、そういうことかって思った

    深い傷を負い その過去が過去として機能していなくて
    フラバが破壊的で どんなにしんどいか、リアル体験してないとわからん、
    けど 体験していると 絵が迫って来て 呼吸が出来なくなる 

    あ、でもSとかサイコ系 暴力的や性的に支配されて 洗脳や
    いけにえにされてない人だったら 普通に読めるのかな・・・。

    なにがしかの傷がある人にはキツイけど 
    あるある、そうそうって世界かも
    脳内はこんな感じ

    私自身は日本人の設定で描かれていたら 読めなかったかもしれん
    そんな作品

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「2巻くらいで もうギブアップしかかったけど」
      図書館にあったので借りたのですが、2巻でリタイア、、、読めると思えるまでストップです。
      「2巻くらいで もうギブアップしかかったけど」
      図書館にあったので借りたのですが、2巻でリタイア、、、読めると思えるまでストップです。
      2014/03/14
    • silenciosaさん
      「2巻でリタイヤ・・・」
      ですよね・・・?
      「読めると思えるまで、ストップ」
      はい、私も・・・ムリしない方がいいと思います;
      「2巻でリタイヤ・・・」
      ですよね・・・?
      「読めると思えるまで、ストップ」
      はい、私も・・・ムリしない方がいいと思います;
      2014/03/16
  • 大好きだけど、読むのに気合いがいります。
    精神が安定してる時に読んだ方が良いです。

  • 依存と加害欲、性被害の本。フラッシュバックが起こる恐れがあります。

  • Kindleの試し読みで3巻まで一気読み。
    つらい。どこまでもつらい。
    グレッグがどこまでも悪なのは言うまでもないけど、サンドラがジェルミを縛っている部分もあるよねと思うとモヤモヤ……
    ただひたすらつらい。

  • 読んでいる最中は徹底的に打ちのめされるんだけど、読んだ事を決して後悔はしない作品。

全137件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

漫画家。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年朝日賞など受賞歴多数。

「2022年 『百億の昼と千億の夜 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

萩尾望都の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
綿矢 りさ
魚喃 キリコ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×