残酷な神が支配する (10) (小学館文庫)

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著者 : 萩尾望都
  • 小学館 (2005年2月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091916204

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残酷な神が支配する (10) (小学館文庫)の感想・レビュー・書評

  • イアンとジェルミ、堂々巡りの思考が繰り返されます。
    ジェルミの心に平穏を取り戻してくれるはずの、頼みの綱のカウンセラーの、心理的弱さが浮き彫りにされるシーン。
    ジェルミがつらい告白をすればするほど、面談の終わる時間を気にしたり、早く紅茶を飲みたいと思ったり、完全にクライアントの心から離れています。
    結局のところ、苦しむ人間の罪も闇も全て受け止められるのは、聖人でもカウンセラーでもなく、家族という繋がりを持つ関係だけなのでしょうか。
    そして、頼るべき家族に裏切られていた場合、人は気持ちをどこに向ければいいのでしょう?

    やはり、ジェルミのトラウマの根は、グレッグの向こうの母サンドラにありました。
    ようやくジェルミは、母親の墓参りをし、彼女に向き合うことを果たせます。

    人間は、自分達が救われるために神を創造しましたが、子どもにとっての実際の神は親であるという話になります。
    なんと、この『残酷な神が支配する』というタイトルは、そういう意味だったんですね。
    「非情な運命」という意味かと思っていましたが、「残酷な親が(子供を)支配する」ということと知って、震えました。
    親は子供を生贄とし、自分の人生の供養をさせるのだそうです。
    その犠牲者となったジェルミ、そしてイアン。

    ただ、もしかすると、そういった目にあわせたグレッグも、同じ目にあってきたのかもしれない、と思わせる回想シーンもありました。
    誰もが被害者であり、加害者になりうる存在。
    人間の原罪とは、かくも恐ろしいものなのでしょうか。

    心と肉体を完全に切り離し、愛を信じられなくなったジェルミ。
    彼とどう向き合えばいいのかわからないながらも、心を解かし、愛を伝えようと、時に優しく、時に暴力的に、常に必死に寄りそおうとするイアン。
    先の見えない絶望的な状態でしたが、ジェルミが亡き母に対面できたことで、ようやく暗闇の中に光がさし、立ちすくむ二人の前に道が開けていきそうです。

    「人殺しは人を愛する資格がない」と心を閉ざすジェルミですが、母を許し、時の流れにゆっくりと癒されることで、イアンという、すべてを受け止めてくれるかけがえのない存在に、愛をもって接することができそうな、そんな修復と再生へのかすかな希望を抱かせる終幕です。

    親と子。愛と憎しみ。神と生贄。自分のためと相手のため。
    難しい、重いテーマの長編作品に、読書中も、読了後も、深く考えさせられました。

  • とにかく細かく描写を延々と綴ります。
    私たちの日常でありがちな、主語の無い会話のイライラ
    「やめる?」「何を?」「旅行を?」「二人の関係を?」「何を?」
    早く言えといった、一瞬の不信や迷いや怒りを入れ込んで行きます。
    そこにただの絵物語ではない、実はよくある悲劇なのだと感じさせます。


    萩尾望都の世界は、そこに実在していない人物が普通に現れ、
    少女漫画を読みなれていない人には、
    「これ何?」「この人誰?」「何でこの人、急に葉っぱが生えてるの?」と、
    ストーリーや登場人物の迷子になるかもしれないけど、
    これが物凄くパニックしている精神状態に迫力を加えます。
    じれったいくらいに現実を知らなかったイアンが、現実を知るシーン
    「さあ、代償を払え」
    主人公のジェルミに義兄のイアンが殺人の告白を迫るシーン
    とにかく台詞がかぶります。
    会話と口には出していない思考や雑念が同時に、
    しかも、この順番でこれは同時に読め。と指図もされた様なコマ割りの緊迫シーンは迫力です。

    わあー。萩尾さんやってのけた。


    親自身が抱えているトラウマをそっくり子供は押し付けられる。
    生物として未熟で親に依存して育つしか選択のない子供は、
    親の感情に引きずられ、支配され、呪いをかけられるようなもの。
    親はそうして自分の人生の供養を子供にさせる。


    この漫画の登場人物は、カウンセラーを含め、実は誰も正論を言っていない。

    私もそう言う。私でもそうすると共感します。
    しょうもないカウンセラーの言うしょうもないカウンセリングシーンは、
    実際にネットやメディアでよく見る感じでリアルなダメさのえぐり出しに、
    萩尾さんのアンテナが冴えます。
    インターネットで正論を持って糾弾が大好きになってしまった想像力のない人達にも読んで貰いたい。

  • 文庫で全10巻。
    最初、10巻大人買いする勇気がなくて、4巻しか買いませんでした。そうしたら、一番苦しいところまででぷっつり途切れてしまって、苦しくて苦しくてとても後悔して、もう続きも買わないし、持っている4冊も売ってしまおうと思った。でも、最後まで買って本当ーーーーに、良かったです。

    義父に性的虐待を受けていたこと、義父を殺そうと仕掛けた事故により誤って母親を死なせてしまったことがきっかけで、深く苦しんでいるジェルミ。ジェルミは黒髪で、巻き毛で、まゆげがキリリと長く、まつげも長くて、濡れたような美しい目をしています。

    愛が信じられなくなってしまったジェルミを必死に抱きしめる義兄のイアン。イアンもまた、ジェルミとどう向き合えばいいのかわからず、利己的な気持ちも抑えられず、苦しい。

    お気に入りは、マージョリーです。自殺未遂を繰り返している設定なのだけど、作中ではたしか、1回しかしない。そしてそうでないときはいつも、ころころ気分がかわって、どこにでも行っちゃう、わがままで、頭の回転のはやい、とっても可愛い女の子。
    性格が会社の同期にそっくりで、かわいくてたまりませんでした(笑)。こういう女の子にふりまわされるの、けっこう楽しいですよね。作中ではお友達が明るくて、ほっとします。

    トラウマがあるすべての人に。

  •  …終わった…
     でもジェルミがこれで本当に救われたわけではない。過去に向き合えた、というだけで、これを背負って生きていくことに変わりはないし、その辛さにも変わりはない。ただ、生きる上で、隣にそれをすべて受け止めるという意志をもったイアンという人間がいること、彼を信じてみようと思えていることが変わったこと。そしてそのために、ふたりでずっと闘ってきたんだ。
     親子関係、近親相姦、愛憎、同性愛、心理学…本当にいろいろなテーマが混ざり合っていました。これは傑作長編。

  • 続きが読みたくて続きが読みたくて電車を途中で降りて買いに走ったことがあります。簡単には救われなくて苦しくて苦しいこのお話が大好きです。何度も読んでしまう。そのたびに消耗します。

  • 終わったのか??
    ここまできたら、どこかで終わらせないと、終わらないから、
    終わらせた感があります。
    「子供は親の神への供物であり 親の人生の供養として存在するんだ」
    「親の親のそのまた親も 誰かの子供であり生贄だったんだ」
    親を選んで生まれてくる子ども
    その親を選んだ子も、その子に選ばれた親も現世での修行でしょうか

    とにかく、長編読破した!!満足!!!

  • 全部読み終わって、ジェミニからイアンに主人公が変わったことがさすがだなぁ、と思いました。最初はジェミニに感情移入しまくりで読者はジェミニを早く救って欲しい気持ちでいっぱいになるんだけど、その後、イアン目線で話が始まることで読者もジェミニを救う人目線になる…萩尾先生は凄いですね…

  • ハッピーエンドでもなく、バッドエンドでもない。
    萩尾望都作品で一番好き。

  • 神ってなんなのかな?と考えます。
    自分が創った神の存在にときに救われ、ときに傷つけられる。愛に似ている。
    罪は何度も蘇り、常に傍らにある。そして裁かれるのを待っている。裁くことができるのは愛する者だけだ。
    スター・レッドでも主人公を産みなおすのは元々男性だった人だけれど、何か意味があるのだろうか。

  • 義父がつけた心の傷。
    その息子を愛すること。
    ジェルミとイアンの苦悩、されたことを告白する勇気、重くて辛いけど何度もこの世界に浸りたくなる。

  • 読了
    感想は追々。
    まずは登録まで

  • 少しずつ、約半年かけてやっと読み終わった。
    虐待を受けた人の人生がどんなに苦しいものか描かれていて凄い。
    ハッピーエンドで良かった・・・。感動しました。

  • 最後まで読めないストーリー展開に衝撃が残った

  • 対話でしか人は救われないし成長もしない

    希望があるから人は他人と対話を試みる

    希望は進化にとって一番重要なんだなあ

  • 言葉がまとまらない。
    これは本当に漫画なのか?って衝撃を受けた。

  • 主人公の苦悩と歯がゆさが あまりにも伝わってきて切ない。
    話は暗くて重いものだが・・心理描写がとにかくすごくて やっぱり萩尾作品の中で1番好きかもしれない。
    主人公はもちろんだが愛すべき登場人物がたくさんでてくる。

  • あれ!?
    おお……びっくりした…わりとハッピーエンドじゃないか……おかしいな、昔読んだ曖昧な記憶によるとバッドエンドだった気がしたのに……。昔の自分はこれをバッドエンドだと解していたのだろうか……。

  • こんなにたくさんの、愛があるのか。

  • 完結。一応の救済はみるものの、何もかもハッピーエンドの大団円とは当然いかない。それでもイアンとジェルミが、一緒に生きていけるなら、それだけで支えになるのかも。

  • また次のクリスマスが来る

  • はぁ・・・終わった・・・。

    解決という解決はしていないし、誰しも癒しきれない傷を抱えたまま生きていくことには変わりない。
    それでも、ジェルミはサンドラ、イアンはグレッグと向き合えたことは大きいです。

    愛する人がいてるから、
    受けとめてくれる人がいてるから、
    自分を捧げる人は親から他人へと変わっていく。

    感じ方は人それぞれですが、これほどまでに精神を揺さぶられる漫画を読んだことがありません。
    この作品を世に出し書ききってくださった、先生に感謝。

  • 神としか言えない作品
    読後の余韻が半端ない。

  •  母が再婚した男から性的虐待を受ける主人公。そして、その義理の兄。結局は主人公だけでなく、兄を含めた二人の成長の物語だったように思う。が、考えさせられる。もーさまの作品はいつもそうだ。読んだ時にもそれなりに受け止めているんだけど、時間がたってふいに自分の中に流れ込んでくるように「意味」がわかる。
     なので、これもきっと10年ぐらい(<おい)して、ある朝ふいに「あああ」って思うのだろう。
     解説の中で「トーマの心臓」になぞらえてるものがあった。それも複数。でも私は「訪問者」を考えていた。雪の上をたどって神様が罰を与えにくる。そのモチーフが頭の中をぐるぐるしていた。
     罪、罰、犠牲、人はどうして、そんなものを必要としてしまうのだろうか?
     そして物語は、真のカタルシスもなく終る。そして、そのことこそが萩尾望都の言わんとするところを示しているのではないだろうか。つまり、痛みは消え失せることはないから、人はそれを抱えて生きていかなければならないと。
     萩尾望都が読める今、生きててよかった。

  • コミックスで持ってるけど文庫でも欲しい。

    家族は軒並みリタイアしましたが、絵の美しさにつられて一気に読破した。
    もはや1コマ1コマが絵画の域。

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