西の魔女が死んだ

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784092896109

感想・レビュー・書評

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  • まいは小学校を卒業し1か月程たった頃、中学校にはもう通わないときっぱりと母親に宣言した。母はまいに不登校を続けていた理由をたずねることはせず、田舎の祖母の家でしばらく暮らしてみることを提案する。
    母親が単身赴任の父親と電話で話す内容から、自分は母親をがっかりさせてしまったと感じとる、まい。
    祖母にもそう思われてしまうのではないかと不安な気持ちを抱えつつ、大好きなおばあちゃんの家へと向かう。

    久しぶりに会った祖母は、まいと一緒に暮らせることをうれしいと話し、まいが生まれてきてくれたことを、心の底から感謝しているのだと教えてくれた。

    周りに民家のない田舎の暮らし。野菜を育て、家で飼っているにわとりが生んだ卵を朝食にいただく。昼には掃除や庭仕事をし、夜には縫い物をして過ごす。
    規則正しく、丁寧に毎日を繰り返していく祖母。年齢を重ね、経験による実感のこもった祖母の話は味わい深い。まいは特別な能力を持っているらしい祖母の話から自分も魔女を目指して修行することを決める。
    魔女にとって大切なことは、自分で決めることとそれを最後までやり通すことだと祖母はいう。
    そのために生活を見直し、周りの人に流されたり心を乱されることのないよう、自分と向き合っていこうとまいは努力する。

    とても情緒的で、美しい文を堪能できる喜びでいっぱいになる。情景の描写の鮮やかさも会話の中から滲んでくる温かみも梨木さんらしく、うれしくなってくる。
    まいの少女らしいまっすぐな気持ちや正義感、人を思う気持ち。祖母の丁寧な暮らしぶりと穏やかな言葉の中にある毅然とした力強さ。
    読みながら、時間にただ流されて思考停止している毎日を恥じたり、また自分の弱さを認められる強さもあるのだよと背中に手を当てられたような温もりを感じたりした。

    恐らく読んだ時の自分の状況によって感じ方がずいぶん変わってきそうな本だ。誰の立場で読むか。現在自分が対峙しているものは何なのか。その時々で、気づくことも見えてくる情景も大いに変化するだろう。再読が楽しみである。そのとき、私はどのような感想を持ち、その感想にどのような自分が映し出されるのか。

    1か月ほど祖母と暮らした家から、いよいよ自宅へ戻ることを決めた頃、ようやく、まいの口から不登校になった原因が語られる。

    うーん。ここまで待つのは相当難しいよね。
    人は時間の経過(もちろん、人それぞれの時間が必要ではあるが)とともに、自分が整理され、語る言葉を見つけ出す。それを周囲が急かすことなく、同情のような脅しによって追い詰めることなく、じっと待っていられるか。
    こちらがきっかけを与えたとしても、相手が自らそうしよう、そうしたいと決めるのを待つためには、相手を信じ、その人の力を信じ、必ず人は成長するのだと信じるほかはない。

    最後の最後に守られた祖母の約束。亡くなった後に残るその人のぬくもり。
    別れを経験したすべての人に、失った人を愛情に満ちた気持ちで思い出させる余韻を残している。

    追記
    お仲間さんに、「文庫には、その後のストーリーがあるそうだけど、知ってる?」とたずねたところ、「どうだったかなあ・・。うちにあるから、貸しましょうか?」ということで、それを、読むことができました。
    また、あとがきも素敵で、おまけの楽しみを手に入れることができました。

  • なかなか面白く読めました。
    たしか映画化してたはず…
    映画館が見たくなりました。

  • 魔女って特別な存在のようだけど、おばあちゃんの言う魔女には、誰にでもなれる可能性があるんじゃないかな。

    毎日を丁寧に生きること。
    周りに流されすぎないこと。
    固くなりすぎないこと。

    シンプルに丁寧に。
    それはきっととても難しいことだけれど。

    私もいつか、おばあちゃんみたいな魔女になりたい。

  • わぁ、なんて素敵なおばあちゃんなんでしょうヽ(◎´∀`)。

    日本のおばあちゃんって、
    ただただ孫を甘やかして、可愛がるイメージしかないけれど、

    外国の人はちゃんと一人の人間として接している人が
    多いような気がしますねぇ。

    こういう自給自足みたいな生活は、私のおばあちゃんもやってたので
    懐かしく思い出しました(人´エ`*)。

    畑とか、保存食作りとか、今そんな古いの流行んないじゃんっていう
    意見もあるとは思いますけど、知ってて損はないかと。。。
    あと戦争中の話も貴重です

  • こんなおばあちゃんがいたらなって思った

    暖かくてまいは本当に救われただろうな。
    自然ってやっぱり癒されるよなあと改めて思った。

    アイノウ。が、体の芯まで伝わってくるというか聞こえてきました

    ほっこり

  • こんなおばあちゃんになりたいです。

    魔女と呼ばれたおばあちゃんと魔女修行をする不登校になった孫の話。
    修行といっても、自分で決める事とか、決めた事を実行する事。
    生きる為の基本の修行みたいですね。

    おばあちゃんとのスローライフがとても素敵で、
    バタバタ過ぎていく日常をもっと大切にしたくなりました。



  • 学生の頃、学校に行きたくないと感じてた頃に支えとなった本。

    今読むと、なかなかきつい話でしたね。

    ただ最後のおばあちゃんとの約束には感動。

  • 何度読んでも、ちゃんと分かってるのにラストで泣いてしまうよ。おばあちゃん、大好き。

  • 中学校でいじめにあった主人公のまいと、西の魔女と呼ばれているおばあちゃんが1ヶ月くらい一緒に暮らすお話。

    おばあちゃんは不思議な力が使える人を魔女と呼び、誰でもそのように慣れると、魔女修行としてまいを少しずつ立ち直らせて行く
    おばあちゃんは、田舎で自給自足で暮らすスローライフでその生活をしていくまいも、だんだんと勇気が出ていく。

    こんなに大好きだったおばあちゃんと、ひょんな事で喧嘩をしてしまい、そのままお別れをしてしまい、仲直りすることなくおばあちゃんが死んでしまった。
    後悔先に立たず。生きている間に伝えたい事は伝えておかないとと感じました。

    おばあちゃんの言葉は、考えさせられるものが多く、まいと一緒にふむふむと聞き入ってしまうことが何度かありました。

    ひと夏の思い出と言うか、なんかふわふわした気持ちになりました。

  • タイトルでおばあちゃんが亡くなる話とわかり読みながら覚悟もしていたのに
    最後のページで泣いてしまった。
    すごい本だ。
    死は肉体から魂が脱出することであって悲しい事ではないのかもしれない。
    絶望感のある死ではないのがとても良かった。
    まいの成長を言語化できていてそれも良かった。
    ゲンジさんの話も回収できていて小説として投げっぱなしにしない所が親切だと思った。
    銀龍草をはじめ名前の知らない植物がたくさん出てきてその都度画像検索をしていたら物語の映像が湧いてきて挿絵もない児童書だけど楽しむことができた。子供にも大人にも読んでほしい一冊。

著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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