マザーランドの月 (SUPER!YA)

  • 小学館
3.65
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本棚登録 : 164
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784092905764

作品紹介・あらすじ

世界が注目した“もし”の物語

もし何かが違ったら、もしサッカーボールが塀の向こうへいってなかったら。もし、もし、もし・・・・・・。「もし」ってやつは、星みたいに無限なんだ。

「頭が悪い」とレッテルを貼られた少年スタンディッシュ。隣に引っ越してきた少年ヘクターは、あっという間にスタンディッシュの心をとらえ親友になる。彼らのまわりでは何かとてつもないことがおこっているようだった。そして、ある日、突然ヘクタ-がいなくなってしまう・・・・・・。

これは、壮大な「もし」の物語。
歴史的大偉業が、もしうそだったなら・・・・・・・。

イギリスの児童文学作家サリー・ガードナーは、これまでも多くの文学賞を受賞しています。この『マザーランドの月』は、23カ国語で翻訳出版され、2013年に、イギリスの最も権威ある児童文学賞といわれるカーネギー賞を受賞、その後、コスタ賞、マイケル・L・プリンツ賞、イタリアのアンデルセン賞、フランス文学賞など、世界各国の文学賞を受賞した注目作品です。また、全米図書YA部門、パブリッシャーズ・ウィークリー、ウォール・ストリート・ジャーナルなど、いろいろなベストブックにも選ばれています。

【編集担当からのおすすめ情報】
一見、未来小説のような不思議な空気感をもつ物語ですが、実は1965年が舞台です。実際にあった出来事をベースに、もしその歴史的事実が違っていたら……と、SFチックに描いている点が、「斬新で圧倒的なパワーのある歴史改変SFだ」と評されてもいます。
若者たちに広く人気のあるマンガ家、五十嵐大介さんに装画を描き下ろしていただきました。

感想・レビュー・書評

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  • 戦争の後両親は「消え」て、祖父とふたりで<ゾーン7>に住む15歳の非純血の少年スタンディッシュは、左右の目の色が違っていて、読み書きもネクタイを結ぶこともできない。友人ヘクターと、テレビで見る海の向こうの国と想像上のジェニパー星に行くことを夢見ていた。
    学校は苦痛の連続で、革コートの男の詰問があったり密告者がいたり、良い先生が消えたりしたが、ヘクターがいればうまく切り抜けられた。
    ヘクターとは、いじめっ子から逃げるために標識の向こうに駆け込んだ日に出会った。そこは家の裏にもある高い塀の向こう側で、美しい自然の草地だった。そこで潰れたサッカーボールとラズベリーと花を手に入れた彼は、祖父とともに、以前スタンディッシュが両親と住んでいた隣家の廃屋に住み始めた家族ヘクターと彼の両親ラッシュ夫妻をこっそり訪ねたのだった。彼らは純血種でエンジニアと医者だったが、マザーランドに従うことを拒否したためにそこに行き着いていた。彼らは友人となり、一緒に生活し始める。
    ヘクターとふたりでジェニパー星に行く宇宙船を作り、出発するはずだった朝、ヘクターと彼の両親が消えていた。
    その後マザーランドの一大行事で月に向かってロケットが打ち上げられたが、その飛行士の一人ELD9は、彼の家の地下に匿われていた。
    スタンディッシュたちも抹消の危機に追いやられていた。彼は、月面着陸の嘘を世界中に暴くことでマザーランドを倒そうと企てる。

    想像力と絆を武器に、圧倒的権力に対抗する少年の姿を描く物語。








    *******ここからはネタバレ*******

    なんともわかりにくい作品でした。

    スタンディッシュがいる世界は、独裁政権下で、自由で豊かな海の向こうの世界とは隔てられているようですが、このマザーランドが完全なフィクションなのか、どこかの国を表しているのか、なかなか見えてきませんでした。
    雰囲気としては、ナチス政権下のドイツやジョージ・オーウェルの「1984」の世界で、そこで月面着陸捏造があったと想像するとわかりやすいと思います。


    主人公スタンディッシュは難読症で、白日夢を見る傾向がありますが、なかなか賢いし強い。これは良い教師だった両親と聡明な祖父の影響でしょうか。

    困難な状況にありながらもヘクターやラッシュ夫妻、フィリップス先生等、良い人たちとの出会いがあってよかった。

    最後に見えた救いが、虹の果ての生活だったというのはとても悲しい。
    彼の祖父が、どうして彼だけを危険に向かわせたのか、私には(合理的な理由以外では)理解できませんでした。
    この後彼は、何もできなかった自分を責めることになりませんか?それとも新しい世界の構築に尽くしていくのでしょうか?
    子ども向けの本ですから、死んで幸せになるよりも生きて希望を見つけてほしかった。


    文章自体は平易ですが、時系列が前後して、整理しながら読まないといけないのと、指を切り落とされるとか残酷な場面もあるので、しっかりした中学生以上の読書をおすすめします。

    • seanさん
      初めまして。フォロー頂けるのは嬉しいのですが、ただのメモにまでいいね!をされるのは残念に感じます。
      自分へのいいね!はしないで頂けるとあり...
      初めまして。フォロー頂けるのは嬉しいのですが、ただのメモにまでいいね!をされるのは残念に感じます。
      自分へのいいね!はしないで頂けるとありがたいです。
      2020/10/03
    • 図書館あきよしうたさん
      それは大変失礼しました。
      「いいね」は見つけた限り消しておきましたので、ご容赦ください。

      今後気をつけておきます。

      またお気づきの点があ...
      それは大変失礼しました。
      「いいね」は見つけた限り消しておきましたので、ご容赦ください。

      今後気をつけておきます。

      またお気づきの点があったら、ご連絡くださいませ。
      2020/10/03
    • seanさん
      ありがとうございます。
      少し気になっていたので、これで十分な対処です。
      登録されている本や感想等興味の惹かれるものも多いので、また読ませ...
      ありがとうございます。
      少し気になっていたので、これで十分な対処です。
      登録されている本や感想等興味の惹かれるものも多いので、また読ませてもらうと思います。
      2020/10/03
  • スタンデッシュの整然としない独特の言葉遣いによって語られる世界はぼんやりしているが、次第に明らかになってくる。
    時は1965年、アメリカアポロ計画を暗示するような、それも壮大な捏造の月着陸の話の展開に驚く。実際の1969年アメリカ月面着陸も本当は嘘だったのか?と不安になる。
    描かれている物語世界の怖さは、ナチスドイツ、ソ連、北朝鮮、アメリカなどの国々の愚行を彷彿させる。
    そこに偽装の月面着陸を取り入れた話を読んでいると、世界は支配者たちが創り上げた茶番劇のように感じる。その中で体制に疑問を感じる人々が傷ついていく。
    弱っているヘクターに「薬代わりになるものは言葉しかなかった」と語りかけ続けるスタンデッシュに胸が熱くなる。この世界を覆っている醜さと対照的に二人の友情の純粋さが美しい。
    スタンデッシュとヘクターが憧れたテレビ番組の世界コッカ・コーラスは、アメリカをイメージさせる。二人が行こうとしたジャニパー星は、豊かさの象徴のアメリカなのか?その豊かさへの道が正しいのか疑問を感じる読者は、二人が憧れる国へ希望を持てない。
    ラスト一文「キャデラックを運転して、太陽が鮮やかな色に輝いているのはコッカ・コーラスの国だけだ」最後まで同調できずに読み終えるように仕組まれているのか?
    ヘクターがサッカーボールと戯れているイラストが繰り返されるが、最後の2枚の絵だけがちがう。思いっきり助走をつけ蹴ったボール。それに続くのは月の絵。
    希望へ向かうラストのようなのに、希望はない。

  • 難読症の少年スタンディッシュと、親友ヘクターの壮大な「もし」の物語。事前情報をあまり仕入れず読み始めたので、ディストピア小説とは思わなかった。細かな章立てで前後する時系列になかなかついていけず初めは戸惑ったが、慣れてくるとだんだん明らかになっていく事実に愕然とする。脳裏に浮かぶのはいくつかの国、いくつかの時代。有名な某計画の捏造説は、今回初めて知った。
    「もし」の話であるはずなのに、何でこんなにリアルに感じてしまうんだろう。この物語世界に引き込まれ、先が知りたい気持ちと裏腹にページを捲るのが怖いという矛盾する思いを抱くなんて、滅多にないことだった。結構ヘビーなシーンもある。それでも「先が知りたい」気持ちを止めることが出来なかったのは、スタンディッシュの勇気ゆえだ。難読症ということで学校では愚か者扱いされていたけど、実はなかなかに賢い少年。とにかく彼のキャラクターが秀逸。同じくらい魅力的な彼のおじいちゃん。ハラハラする場面の連続だが、彼らの知恵と勇気で切り抜けていく過程は読み応えがある。クライマックスのシーンは胸に迫るものだった。
    五十嵐大介さんの装画も素晴らしかった。本書を手に取るきっかけともなった。ページの隅のイラストにも注目だ。
    好みは分かれるとは思うが、十代がこの物語をどう捉えるだろうということには興味がある。勿論大人にも読んで欲しい。

  • もしかしたらあったかも知れない歴史。もしかしたら存在したかも知れない国。もしかしたらいたかも知れない少年たち。

    架空の管理国家マザーランドの、月面着陸を目前とした1956年の物語。難読症の少年スタンディッシュは、無二の親友ヘクターの失踪に思いを馳せる。
    家族や友人が不意にいなくなる。管理と暴力教師による学校生活。物語はスタンディッシュの回想で進んでいきます。時間軸は揺れ動き、スタンディッシュのつたない言葉から世界の端々が見えてきます。
    スタンディッシュの一人称で語られるので、彼が見る範囲知る範囲でしか読者はその世界を見ることができません。そのため余計にマザーランドという国家の不気味さや恐ろしさが増して感じられます。

    ディストピアな世界観、スタンディッシュの勇気など読みどころは多くありますが、中でもスタンディッシュとヘクターの友情に心揺さぶられます。
    ある日隣にやって来たヘクター。どん底の学校生活から救い上げてくれたヘクター。マザーランドから脱出し自由の国へと行く夢想を共にしたヘクター。
    そんなヘクターがある日突然いなくなる。ヘクターを救うため、ヘクターの元に行くためスタンディッシュは決断する。

    余りにも過酷な運命。しかしここで書かれているあれやこれは、どこかで聞いたことのあること。もしかしたらあり得たかも知れない歴史。そこで生き、あらがった少年の物語が胸を打ちます。

  • 政府の追及から逃れる
    スタンディッシュたちの活躍に
    手に汗握る展開となり
    ぐいぐい読まされました!!

    まるで アンネの日記のように
    秘密警察から隠れる毎日
    見つかりませんように
    連れて行かれませんように
    と 願いながら読んでしまいます

  • 同じ5月に出版された岩波少年文庫の『ジャングル・ブック』の翻訳者と同じ三辺さんの訳で、2013年にカーネギー賞、イタリア・アンデルセン賞、フランス文学賞、全米図書YA部門ベストフィクションなどに選ばれたサリー・ガードナーの作品です。「もしなにかがちがったら、とおれは考える。もしサッカーボールが塀の向こうへいってなかったら。」舞台は1965年。実際にあった事実をベースに、もしその歴史的事実が違っていたら・・・という設定で書かれている作品です。100の章から成り立っていますが、それぞれの章はせいぜい3ページ程度の短いもので、時系列もバラバラで、行きつ戻りつしながら、一気に話の中に引き込まれていきます。「圧倒的なパワーのある歴史改変SFだ。」、「感嘆にふるえ、息がつけないほどの完璧な物語。」と裏表紙に印刷されているキャッチコピーがそのままのYA作品です。

  • なんというお話
    現在だとも
    過去だとも
    イヤ未来かもしれない
    そんな中を生きていく
    2人に幸あれ

  • オッドアイのディスクレシアの少年が主人公のディストピア小説。読みやすくはあったけれど、なんとなく苦手な感じだった。

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