炎に恋した少女 (SUPER!YA)

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本棚登録 : 63
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784092905832

作品紹介・あらすじ

痛快な復讐劇を描く思春期世代の家族ドラマ

ガーディアン賞受賞の英国人児童書作家ジェニー・ヴァレンタインの5年ぶりの期待作で原書は『Fire Colour One』(ファイアー・カラー・ワン)。
カーネギー賞最終候補作品にも挙がった話題の作品!
作者が描く、死を前にした本当の家族愛と知的なカルチャーワールドに、ぐいぐいと引き込まれる!!

【あらすじ】
美しいけれど心が冷たい母ハナ、義理の父で落ち目の役者ローウェルとカリフォルニアで暮らすアイリス。
そんな彼女の唯一の楽しみは火を燃やすことと、親友のサーストンと語り合うこと。
しかし、ある日、大富豪で本当の父が住むイギリスへ帰ることになり・・・・・。

【編集担当からのおすすめ情報】
小学校高学年~中学生向きのYA(ヤングアダルト)作品ですが、実在の絵画やアートなど、大人顔負けの知的なカルチャートークが展開され、大人にもおすすめの作品です。

感想・レビュー・書評

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  • どんな理由やきっかけ、小さな規模でも、放火は駄目だ。
    空虚感や破滅感がずっとそばにあった。どうしても登場人物たちに寄りそえなかった。

    母と義父に、もう少し人間らしいところがあれば…

    仕返しも、もう少し早くに出来てればもっと胸がスカッとしたように思う。

    誰ともつながらなかった少女が、最後に父を含め何人かと繋がった。これから地に足をつけて暮らしていけるのかな。

  • 見た目の美しさばかりで愛のない母と義父の元で過ごすアイリス。アイリスにとって心を許せるのは偶然出逢った路上アーティストのサーストンのみであり、火を燃やしそれを見ること感じることで心の安定をはかるのだった。
    ある日、アイリスは本当の父に会うために無理矢理イギリスへと連れて行かれることになる。父は絵画コレクションを有する大富豪。しかし病気のため余命わずかだったのだった。

    アイリスにとって火は魅了されるものでもあり、すがりつくものでもあった。それは彼女の孤独さに起因するものかもしれない。母や義父は自分たちのことしか興味がなく、実父からは捨てられたと告げられていたのだから。
    大人に翻弄されるしかない境遇で、何者も飲み込むだけの力を内包している火は負けない力の象徴かも知れず、それが故に美しくアイリスの目に映ったのでしょう。

    自分を捨てたはずの父は、死の間際になってなぜ自分に会いたいと思ったのか。アーネストの遺産にしか興味のない母とは別に、アイリスはアーネスト自身に興味を引かれていく。
    想像していた父とは、母より伝え聞いた父とは違っていた父の姿。
    アーネストから語られる幼き日の姉との思い出。そして語られるアーネストとアイリスの真実。物語は過去と現在、アーネストとアイリス、イギリスとアメリカを交差させながら進んでいく。
    アーネストが望んでいたものとアイリスが本当に望んでいたものが交差した時、物語は終息を迎える。


    帯には「大どんでん返しの復讐劇」とあります。誰が誰に対しての復讐なのかと思いつつ読み進めていくと、最後の最後に思いがけない展開が待っています。
    これは確かに復讐。そして愛の証。でも茶目っ気も感じて、あの人にはこういう面もあったのかとニンマリとさせられました。
    この茶目っ気は作品全体にも感じる部分で、重い話なのにスルスルと読み進められる要因でもあるでしょう。
    そしてプロローグでありエピローグでもある冒頭部分へと繋がり戻り、はじめ読んだ時とは違ったまた印象を与えるのでした。

  • ジェニー・ヴァレンタインさん3作目。
    この人の書くものは、どうも感覚的にしっくりこないんだなぁ。人物設定も突飛すぎるんだけどそれでいてステレオタイプだし。 良い人だと思っていたけど、最後まで読んで(たぶん爽快なところなのだろうけど)うわー、セコい奴だったんだなあ!と思ってしまったし。
    なんだかんだいって、こてんぱんにされたお母さんとパートナーのローウェルだって、虐待もせず放置もせず主人公を12年も自分たちで育てたのだし、愚かだとしてもそこまで徹底的に悪人にされて徹底的に痛い目に遭わなくてもよいのではと同情してしまった。むしろ主人公の放火癖、どうにかしたほうがよくない?

  • 一気に読ませるだけの力を持った物語。
    だけど主人公の造形そのものはかなり危ういんだよね。
    火をつけたい、燃やしたいという衝動は作中でもかなりていねいに描かれているので、ある意味納得ができるし、どうしようもない母親を背負わされた人生を「浄化」したいっていう願望もあるんじゃないかとは思う。でも、それを彼女が克服して別物にできるかどうかはまさにこれからだし、完全なオープンエンディング。

    あと、アーネストの結婚してからの人生は、なんというか、気の毒としかいいようがない。そう考えると、この物語、わりと悲惨な人生がいくつも描かれているなあと思う。あまりそう感じさせないストーリー展開ではあるのだけど。

  • 派手好きの母ハナと外見ばかり気にしている売れない役者の義理の父ローウェルとカリフォルニアで暮らすアイリス。炎の揺らめきと匂いが自分を落ち着かせてくれる。そして、それでボヤ騒ぎを起こしてします。そんな不安定なアイリスが唯一信じ、頼りにしているのが路上アーティストのサーストンだった。
    いよいよ借金で暮らしていけなくなったハナは、アイリスの実の父親で大金持ちのアーネストを頼って3人でイギリスへ戻ることにする。4歳のころにイギリスを離れたアイリスには、アーネストの記憶はなく、ハナに吹き込まれた情報しかなかった。アーネストは病に侵され余命いくばくもなく、看護師たちと屋敷で暮らしていた。アイリスが聞かされていたアーネストとは違い、彼はアイリスを深く愛していた。そして、アイリスもアーネストを理解していく。そして、アーネストの遺産を狙うハナを欺くためにアーネストが仕掛けた一世一代の罠とは…。

    アーネストのお葬式から始まるストーリーは、米国と英国を行きつ戻りつ、アイリスを取り囲む環境を少しづつ描いていく。そして、最終章のトリックには映像を思い描くと涙と感動でした。

  • 自分勝手で愛のない母親ハナと自分大好きなナルシストの義父と暮らすアイリスは、満たされない日々の中で炎にだけ心を惹かれていた。ある日、借金で首のまわらなくなった母と義父は、イギリスにいるアイリスの本当の父親アーネストのところに行くことにした。病気で死にかけているアーネストの遺産を目当てに。自分を捨てたと思っていたアーネストが、実は娘の行方を必死で探していたということを知り、アイリスはアーネストとの日々を大切に思うようになっていった。けれども…。魅力的な登場人物たちから目がはなせません。

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