月にハミング (児童単行本)

  • 79人登録
  • 4.17評価
    • (12)
    • (11)
    • (7)
    • (0)
    • (0)
  • 14レビュー
制作 : Michael Morpurgo  杉田 七重 
  • 小学館 (2015年8月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784092906082

月にハミング (児童単行本)の感想・レビュー・書評

  • 戦争の悲惨さと平和の美しさを静かに伝える物語。

    シリー諸島の無人島で奇跡的に発見された謎の少女ルーシー。彼女は記憶を失いひと言も話すことができない。彼女はどこからどうやってきたのか…
    ルーシーはドイツ人ではないかと噂が流れ、彼女と暮らす優しい家族は村八分になっていく。
    なかなか話せないルーシーがもどかしい。だけどそれが現実なんだ、戦争の起こした悲劇なんだと思い知る。

    「あやまるな、言い訳もするな」Uボートの艦長のお父さんの言葉が心に残る。戦争とはそういうものなのかもしれない。謝られても言い訳されてもどうしようもない苦い思いが渦巻く。戦争からは何もよいものは生まれない。

  • 第一次世界大戦下、イギリスのシリー諸島で記憶喪失の少女が発見されます。飢え死に寸前のところを救い出された物言わぬ少女は、いったい何者なのでしょうか。
    シリー諸島沖で豪華客船ルシタニア号がドイツ潜水艦の魚雷に撃沈された、という史実を下敷きに、物語が広がっていきます。戦時下にあって、人の中に潜む憎しみや差別意識がむきだしになる場面にぞっとし、客船が沈んで、人びとが恐怖にかられて次々と死んでゆく場面から目がそらせず、…と、続きがどんどん気になりだして読書が進みます。
    戦争の哀しみや醜さの中にも、人の善意や優しさを描いているところに救われる思いがします。

  • ロマンチックなタイトルだが、話は第一次世界大戦のイギリス シリー諸島での物語。
    戦争という時代の中で、本来、善良である人々の気持ちや行動が、どのように煽られて方向性を見失いがちであるか、それを淡々と描いている。

    正直、話の展開は先が読めてしまい、また、少し都合が良すぎるように思うけれど、実際にあったUボートによるルシタニア号の沈没のことなどを取り混ぜ、時代や人々の戦時下の複雑な立場が、ストレートに伝わってきた。
    同じような状況下で、理性を持ち、国同士の戦争の最中にも、個人を見つめることは、簡単なことではない。他人事と思わずに考えておくことが、実際、何かが起こった時に(起こっては困るが)、正しい行動をする手助けになるのかも。物語は、そのために存在するのかもしれない。

  • 第一次世界大戦のイギリス、シリー諸島。学校をサボって父の漁を手伝っていたアルフィーは、普段だれも近づかない島から、奇妙な声を耳にした。咳まじりの泣き声の主は女の子で、痩せてケガをして死にかけていた。母親のメアリーは彼女を引き取り、家族同様に献身的な看護をする。言葉を話せないながらも、彼女は少しずつ回復し、地域社会にも溶け込んでいったが、彼女のいた場所からドイツ語の名前が書かれた毛布が見つかったことで、敵国ドイツ人ではないかと疑われ、彼女も、アルフィーと家族も、酷いいじめにあってしまう。

    シリー諸島の美しく大きな自然を背景に、戦争の痛ましさと、人の心のふれあいの尊さを描く。
    モーパーゴ作品には珍しくオムニバス形式で物語は進んでいきますが、最後にはきちんと希望があり、ほっとします。

    最後の急展開があまりにもうまく進み過ぎで、それだけがちょっと興醒めでしたが、メリーのサバイバルは、読むだけで胸が痛くなります。

    この物語が、ともすると争いがちな人々の心に、善意が世界を救うことを思い起こさせてくれることを願います。

    数多いモーパーゴの作品の中でも、好きなお話。

  • これが児童向けの本なの?って感じ。
    大人が読んでも十分に面白い。
    戦争とか、集団心理とか、学校とか色々考えさせられる。

    情けは人のためならずって教訓ぽいけど、
    戦争とかあっても、人の心の奥にある優しさ、というか、ただのひとりの人としてみたときに、みんな心の奥に優しさって持ってるんじゃないかな、と思わせる本だった。

    ミステリー要素もあって、読むのを止められなかった。

  • よい童話でした

  • すっごく良いです。感動 泣いちゃいます。

  • 配置場所:2F童話架
    請求記号:D933||Mo 77
    資料ID:W0182308

  • 第一次世界大戦中、豪華客船ルシタニア号が沈没するという史実を基にしている。
    グランドピアノの上で漂う少女を助けたのはドイツ軍兵士であり、彼らは少女が生き延びることを願いながら無人島に少女を残す。
    そんな瀕死の状態にある少女をシリー諸島に住むジムとアルフィ親子が家に連れ帰る。

    しかし、母を亡くし海に投げ出されるという苛酷すぎる状況の中少女は言葉と記憶を失くしたまま、アルフィの母であるメアリーの献身とクロウ医師の愛情に満ちた的確なアドバイスのもと少女は元気になっていく。

    少女はドイツ人なのではないかという噂が広まり一家も含めて村八分。校長や牧師の非情な人格は、かえってウィートクロフト一家の愛する者を守ろうとする愛情を浮き彫りにする。

    マイケルモーパーゴの作品では、どんな状況にあっても良識を失わない生き方が示される。どんな短編でも彼の作品は私たちに救いを与えてくれる。

  • 児童書だが、大人にも勧めたい良書。

  •  第一次世界大戦中シリー諸島で言葉を話さないひとりの少女が発見された。
     献身的な家族に支えられ、少しずつ回復していくが、どこからどうやって来たのか、何もわからない。 
     戦争という悲劇を描くと同時に記憶を失った少女の再生の物語。デモをしたり声高に反戦を訴えるより戦争はしてはいけないということを感じることができる。信じられないような実話。

  • すばらしかった。
    なにか、今の状況と重なりすぎてつらくなるところもあるのだけど、モーパーゴさんの筆致には、いつでもどこかあたたかい人間性とユーモアがひそんでいて、厳しい時代のことを描いていても大きな愛情を感じながら読めるのがいい。
    とちゅうではさまれるメリー視点の回想が、幼い女の子の口調ではないのが不思議だったけれど、それも最後まで読むと納得がいく。とても繊細な心遣いでつむがれた訳文もすばらしくて、一気に読み終えた。

    あ、あと、子どもの本らしく着地してはいるけど、そのとちゅうであばかれる人間というもののどす黒さは決して消えたわけではなく、今の世の中にもそのままつながっているのがつらい。それでも作者が人間に希望を失っていないのが救いなのだと思った。

  • イギリスの作家マイケル・モーパーゴ、2014年発表の小説。第1次大戦下のイギリス、シリー諸島を主な舞台に、無人島で発見された記憶喪失で言葉を話せない少女の物語。戦争のもたらす悲劇を、声高に訴えるのではなく、淡々と、しかしリアルで感動的な物語として描き出した佳作。

    シリー諸島の漁師の父子が漁の最中、無人島で衰弱しきった少女を発見します。家に連れ帰り、少女は一命はとりとめるものの、相当な精神的ショックを受けている模様、記憶喪失で言葉も話せず、心を閉ざしています。漁師一家で少女の面倒を見るのですが何ヶ月経っても一向に改善の兆しは見えず・・・。
    シリー諸島での物語の合間に数ヶ月前に遡っての少女の物語が時々挟まります。少女がシリー諸島にたどり着くまでの経緯が描かれていき、読者には早い段階で少女の身元が明かされるわけです。

    心を閉ざした少女は漁師一家との触れ合いや、音楽、馬との関わりの中で次第に心を開いて行くものの、少女がドイツ人ではないかとの疑惑から一家は村八分となり・・・。

    いじめ、村八分、教師の横暴、といった良くある話ではあるものの、戦争が人々の心を蝕みゆがめていく様がとてもリアルに説得力ある形で描かれています。それと共に敵味方関係なく信じ合い助け合う姿もまた描かれ、最終的に少女が記憶と言葉を取り戻すクライマックスに繋がるわけですが、何だかその辺が唐突であっさりしすぎているような感も受けました。
    全体的に良くある話の集成譚、ではあるものの、シリー諸島という舞台設定が素晴らしく、良い物語だと思います。

  • 原題は「Listen to the Moon」。舞台は、第1次世界大戦中のシリー諸島(英国南西部の諸島。初めて知った)。ある無人島に置き去りにされていた、言葉と記憶を失った一人の少女。彼女は何者なのか。これは、戦争がもたらした悲劇の物語であると共に(遭難の場面は読むのが辛い)、戦争という極限状況の中でも示される尊き人間愛の物語でもある。

全14件中 1 - 14件を表示

月にハミング (児童単行本)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

月にハミング (児童単行本)の作品紹介

海から上がってきた少女の不思議な物語

本作品は、第一次世界大戦中、豪華客船ルシタニア号が撃沈されたという史実の話をベースに創作されたフィクションです。

シリー諸島の無人島で奇跡的に発見された少女ルーシー。彼女は、ひと言も話すことができなかった。献身的な家族に支えられて、少しずつ回復していくのだが、ルーシーがどこから来たのか、どうやって来たのか、何もわからない。そんな中、「ルーシーは、ドイツ人に違いない」という噂が流れる。ドイツと戦争をしているさなかのイギリスにおいて、それは、大変なことだった。それまでは、やさしく見守っていた近所の人たちが、うって変わって、ルーシーとその家族を攻撃してきたのだ。ルーシーはおびえ、家族は、孤立していく。どうしても、ルーシーの隠された真実を解明したいと願うのだが……。

戦争という悲劇を描くと同時に、記憶を失った少女の再生の物語でもあります。それぞれの人生が、絡み合って一本の糸になっていく物語は、まさにストーリーテラーの巨匠としてのモーパーゴの真骨頂です。
2014年コスタ賞児童書部門のショートリストに入っています。

【編集担当からのおすすめ情報】
「マイケル・モーパーゴほどの児童文学作家はいない!」とイギリスで評されているモーパーゴは、スマーティ賞、チルドレンズ・ブック賞、ウィットブレッド賞、カーネギー賞ショートリストなど、数々の賞を受賞しています。本作品は、コスタ賞の児童書部門ショートリストに入っている作品です。
モーパーゴの作品は、日本でも、数多くの作品が翻訳されています。近年翻訳出版された作品は、青少年読書感想文全国コンクールの課題図書に選ばれたり、映画化された作品もあり、多くの読者を獲得しています。
本作品は、発売されるやいなや各紙で絶賛されています。
「モーパーゴの世界は、読者の心をつかんではなさない」(ガーディアン紙)。「社会的、倫理的問題を巧みな筆致で描くすぐれた作品だ」(ブリティッシュカウンシル)。「『戦火の馬』を超える作品」(デイリーテレグラム)ほか。

ツイートする