大前語録

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093460880

感想・レビュー・書評

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  •  大前研一学長の、ビジネスメソッド。あまり、テクニック的な所にフォーカスせず、マインドセットを整えるのに有用な本。
     「仕事には面白いやり方と、面白くないやり方がある」「プレゼンは3つくらい質問がでてくるようでなければ、良い企画とは言えない」「他人の期待する人生ではなく、自分が期待する人生を生きるべし」「そのうちには人生の禁句である」「人間が変わる方法は3つしかない。1番目は時間配分を変える、2番目は住む場所を変える、3番目は付き合う人を変える。最も無意味なのは、決意を新たにすることである」「アフターファイブの過ごし方として家庭の定期点検、すなわち家族が抱えている問題について、定期的に妻と語り合う場を持つということ。木曜夜をレストランで食事をしながら語り合う時間を作った」「今を楽しめない人間が、セカンドライフを楽しめる訳が無い」
     示唆に富む内容だ。全てのビジネスパーソンに当てはまるわけではないと思うが、伸びている人、特に中堅若手で成長しているときに、立ち止まって読みたい本だ。上司になると、誰も教えてくれない。その立場になって初めて準備したのでは遅い。部下に教えてあげられるのは、仕事の仕方よりも、もっと大切なことなんだと思う。大前学長も、そうなんだ、と思う。

  • 本レビューにはネタバレ、というか抜粋個所が多く、私自身にとっての備忘録としての内容になっています。
    ネタバレが嫌いという方はご注意ください。

    ①いい上司に恵まれまして、と言っている人の未来は暗い。それではいい上司に恵まれなければ終わり。
    →本当にいい上司とは何か、考えるべき。
    ②大器晩成。という言葉があるが、そういう人はあまりいない。最初にサボっているだけだ。
    →どこかで自分に対して大器晩成型だから。なんて言い訳していた気がする。よくよく考えればそれってなんだ。大器にもならず晩を迎えたら取り返しがつかない。今できることは今やるべき。
    ③日本人は従来のサラリーマンのメンタリティを捨てる必要があると思う。従来のサラリーマンのメンタリティとは、9時から5時までなんとなく仕事をしているふりをして、残業代を稼ぐという、しみったれた根性のこと。
    →なんとなく仕事をしているふりをして、残業代を稼ぐ。という点で私自身とても耳が痛いが共感です。
    ④悪魔の主張をする。反対を表明する勇気を持つことが、ビジネスマンにとっていかに必要かを痛感している。
    →どんな良い提案に対しても反対からスタートする議論方法、Devil's advocateという方法がある。辛い方法だが、反対者は提案者への論理的な反証と、有効な代案を提示する「証明する責任」が生じる。無意味なようだが、反対者からの批判をクリアしていくことで、提案内容はさらによくなっていく。悪魔の主張と反対なのが、相手の意見をそのまま受け入れてしまう態度。それは知的に怠惰な人間のすることである。
    ⑤「腐っても鯛」「寄らば大樹の陰」という諺があるが、腐った鯛は単なる腐った魚であるし、倒れる大樹の陰にいたら潰されてしまう。
    →腐って倒れることがわかっている会社に、若い人は定年までしがみついていたいのか、自分で自分に問いかけてもらいたい。
    ⑥与えられた仕事を与えられたとおりにやっているだけに人には”名札”がつかない。”名札”がつかなければ”値札”もつけられない。
    →もし、私が面接官なら「協調性がある」とか、「上司から与えられた仕事は必ずきちんとこなします」と答える人は、絶対に採用しない。「人一倍努力します」も、それだけではだめだ。こういう人は単なる体力勝負で、このタイプは大抵40歳を過ぎると使い物にならなくなる。他人にはできない発想をして、それを実行できる人材こそ、今、求められているのだ。単にできないことをやるのが「仕事」であり、だれでもできることをやるのは「作業」でしかないのである。
    ⑦プレゼンテーションにおける「提言」は一つでいい。
    →提言はいくつもあると迷いを生むが、とにかく一つだけこれを行ってください。といわれれば気持ちは動きやすい。しかも提言の背景に膨大なデータ収集や分析、フィールドインタビューがあればなおさらである。
    ⑧プレゼンテーションを聞いた人から質問が3つぐらい出てくるようでなければ良い企画とは言えないのである。
    →企画書からエッセンスを取り出し、コンパクトにまとめ(15行程度のサマリー)、企画のカギはこれです。とわかりやすく説明すれば良い。その際のポイントは、最初から企画に対する疑問点が3つ出てくるようにして、その答えを用意しておくことだ。
    ⑨成績の悪い営業マンほど、売れない理由の説明がうまい。
    →本当に耳が痛い。顧客を相手にした際も、商品の欠点を滔々と語っていないか。常に注意したいものだ。
    ⑩成功する人間としない人間には唯一、明らかな違いがある。それは、成功する人はどんな仕事でも厭わずやるが、成功しない人は仕事を選ぶということだ。
    →仕事を選り好みする人間は、いつも好きか嫌いかだけで仕事が終わってしまい、経験が蓄積していかない。そうすると、5年、10年経っても成長しないから、人間に深みも凄みも付加価値も出てこない。結果的に「あの人は若いころは優秀だったのに、今は見る影もないね」といわれる存在になってしまうわけだ。
    ⑪自分が「もっと知りたい」と思うことこそ、他人も知りたがっていることである。
    →勉強会等で講演をする際、気を付けることは「体験談」を話さない、ということ。自分がすでに知っていることを選べば楽だが、それでは自分の知的好奇心は満たされないし、聞く人を惹きつけることもできない。自分がもっと知りたい。と思うことを勉強し、他人に話すことで自分にとっても他人にとっても財産となる。
    ⑫企画力の無い人間は、どうにかひねり出した1つのアイディアにいつまでも固執し、別の発想をしてみたり、同じ発想を別のモノやコトに当てはめてみる柔軟な発想ができない。
    →一つのアイディアがビジネスとして実現し、継続的に利益を生む確率は1000分の1とも言われている。いつまでも思いついたアイディアにしがみつかず、ボツになることを恐れずに次々と新しいアイディアを発想することが企画力を高める第一歩。
    ⑬若い人が肝に銘じてほしいのは、出来上がった絵は無い、ということだ。あるいは、他人の描いた絵を模写しても、お金にならない。ということだ。
    →失敗はいくらでもある。だが、それを恐れず、自分の見えているものを真っ白いキャンバスにどんどん書き込んでいって、正しくなかったときは薪にくべて、新しいものを描く。この作業を繰り返さなければ大きな成功を手にすることはできない。
    ⑭1冊のビジネス書を読むのに費やすのは1時間が目安だ。
    →ビジネス書を最初から最後まで読もうとは思わず、全体を把握し、章タイトルや小見出しに注意しながらななめ読み。そうすれば自然と気になる個所では手が止まる。そうやって1時間以内に重要な部分を効率的に読めばよい。
    ⑮人は30歳までに3回以上失敗すべきだ。
    →失敗したことのない人間や組織は、思い込みがあって非常に怖い。失敗からしか学べないことがあるからだ。失敗しなければならないなら、失敗しても恥ずかしくなくて、やり直しがきく若いうちに失敗したほうが良い。ところが最近は、失敗しないように教育されている。わずかな失敗にも×がつくという恐怖を植え付ける教育が施されている。失敗を恐れるな。私自身、失敗はたくさんしている気がする。少なくとも前々回の転職、リクルート時代、今思い出しても本当に恥ずかしいくらい私は失敗してばかりであった。この文言を読んで安堵感を覚えたが、ちゃんとそれらの失敗から学ぶことができているのであれば良いが、できていなかったとしたら、それは考えたくもない。今でも色々な失敗を思い出すのは、むしろ振り返りができて良いことなのかもしれない。
    ⑯地道に努力して手に入れたスキルは、必ず後で人生に、大きな実りを与えてくれるのである。
    →スキルを手にするためのハードルが高ければ高いほど、手にする果実は大きい。コンピューターゲームのように、半日も練習すればできるようになる程度のスキルは、芥子粒ほどの満足しか得られない。
    ⑰最も重要なリーダーの役目は、まず「方向」を決めること、次が「程度(スピード)」を決めることだ。
    →日本企業では方向が無いのに程度だけを言う経営者が多い。売り上げを1.5倍に増やせとか、経費を2割削れなど。数字だけを目標に掲げる。こういう経営者はリーダー失格だ。これからのリーダーは方向と程度を正確に見極めなければいけない。
    ⑱プロジェクトは、対極的な発想をする人たちが、仲良くやっていったときに最も成功するものだ。
    →プロジェクトチームを作る際、上が勝手に決めるのは最悪。仲が良い同士でチームを組むのもなあなあになりやすい。チームは対極的な人の組み合わせにすべき。論理的思考力の強い人と、エモーショナル型の人。発想型の人と数字の分析に強い人、というように、まったく違うタイプの人間を組み合わせることが一番大切なのである。
    ⑲難しいことを人に頼むときほど、相手に選択権や考える余裕を与えることが大事なのだ。
    →孫子の兵法に「囲む師は必ずかく」というくだりがある。敵を追い込むとき、必ず敵に逃げ道を用意しておく戦法である。そうすれば、皆殺しにされなかった敵は感謝し、二度と攻めてくることは無い。人に対しても、この戦法は有効だ。相手に選択権や考える余裕、逃げ道を用意するのだ。
    ⑳良い会社の経営者は「我が社の問題はこれだ」と一つのことしか言わない。
    →そして、1つのことを4-5年かけて徹底的に実行させる。トヨタ”中興の祖”と呼ばれた豊田英二・元トヨタ自動車最高顧問は無駄を失くすことを言い続け、カンバン方式を確立した。ダメな会社の経営者は改善策を10も20も並べて、それらを全部やらせようとする。しかし、社員はそれに追いつけなくなり、結局は何も実現しない。
    ㉑どんな事柄も、それを知っている人間と、知らない人間がいる。この「知識格差」にこそ、ビジネスチャンスがあるのだ。
    →好例はユニクロ。中国の生産コストが安いことは誰しも知っていたが、深くまでシミュレートし、知識を深め、ビジネスに結びつけたことがユニクロの優れた着眼点であった。
    ㉒ノウハウで生きていこうとすると、人は怠惰になる。
    →ツールに習熟するのはいい。だが、ツールを知っているだけでは怠惰になる。
    何とか総研などの分析屋さんたちは、ツールから導き出したアウトプットをクライアントに魅せて、「へぇー!」と驚かせるが、じゃあ、会社はどうすればいいのかと問われても答えられない。ツールはツールに過ぎない。と割り切ることが重要だ。
    ㉓「マイクロ・マネージャー」型の上司が会社で最も嫌われる。
    →よくわかります。はしの上げ下げまで細かくチェックするような上司。自分が傷つきたくないだけなんだろうなと思います。
    ㉔大企業の社長と話をすると、優秀な人間を採用しておきながら「我が社には人材がいない」と嘆く人が多い。
    しかし、それは根本的に認識が間違っている。優秀な人間が、その会社にいるうちに愚鈍になってしまっただけのことである。
    →かつての日本では5万ドルのプラントの次は50万ドルのプラントを、というように規模の経済「EOS=economies of scale)の追及であった。そこでは経験が活きるので経験を積んでいけば、将来その経験を生かして大きな仕事ができた。だが、そういった時代は終わり、「発想力」「創造力」「構想力」によってレールから外れたことをやることが企業戦略の要諦になっている。その場合、経験は生きないどころか邪魔になる。
    ㉕常に3C(カスタマー、コンペティター、カンパニー)で考える。
    →ビジネスパートナーの言うBAS(バトルフィールド、アセット、ストロング)とほぼ同様だろう。優れた事業戦略には、必ず3つの特徴がある。①市場が明確に定義されている。②企業の得意分野と市場のニーズが一致している③カギとなる成功要素において、競合に比べ優れた実績を発揮している。すなわち戦略とは、自社の相対的な強みを、顧客のニーズを満たしうるように用いて、競争相手よりも優位な差別化を達成しようとするための、努力の結晶である。
    ㉖先輩社員が新入社員を教育するということは、新入社員をその企業の秩序、言い換えれば従来の鋳型にはめ込む教育をしているということだ。
    →会社を変えたいならば、まず新入社員教育のやり方を変えなければならない。先輩社員が新入社員を教育して、変わるわけがない。変わりたいと言いながら、変わらない教育をしているのだ。このやり方では、せっかく新鮮な感覚を持って入ってきた新入社員が、古い社員と同じ感覚を持つようになってしまう。しかも、その教育内容は、我が社の歴史なんてものを教えいてる。我が社が変わりたいならのなら、我が社の歴史を教えてはいけない。だが会社は、秩序を崩すことには必ず二の足を踏む。しかし、私に言わせたら、従来の秩序を壊さなければやり方は変わらない。やり方が変わらなければ会社は変わらない。
    ㉗40歳になってからキャリア・プランを立てるのでは遅いのではないか、と心配する人もいるかもしれない。だが、少しも遅くない。大学を卒業して就職したとしたら40歳は中間折り返し地点に過ぎない。
    →転職を検討する際に重要なことは、キャリア・プランを持つことだ。5年後、10年後、15年後、自分はどんな仕事でカネを稼ぎ、どのような存在になっていたいか、という人生設計だ。キャリアプランは40歳になってから立てても遅くない。途中で変わっても構わない。だが、常に5年刻みで、自分の将来についての明確な目標は持つべきである。
    ㉘本来、人生にはあらかじめ決められたキャリア・プランなどは存在しない。それは自分で作るものだ。
    →現在の日本では他人が決めたような人生を多くの人が歩んでいる。これは世界の常識ではない。例えばドイツでは寄り道が当たり前で、大学を休学して世界を1-2年旅して、大学に戻る。そして卒業してからまた旅行を続け、その経験を踏まえて就職する人も多い。キャリア・プランが明確であれば、やりたいことをやっても時間が余るし、「寄り道」がマイナスになることもない。逆に「寄り道」をしたほうが、グローバル・ジャングルを肌で感じられる。
    ㉙私の結論はただ一つ。
    「そのうちに・・・」
    ということは人生では禁句なのだ。
    →もし「そのうちに」やりたいことがあれば、今、そう今の今やりなさい。というのが私のアドバイスだ。やりたいと思った時が旬であり、先延ばしする理由は無いのだ。今楽しいと思っていることが年を取ってからも楽しいとは限らない。楽しいと思うことを今からやっていれば、老後にも楽しむ方法が自然と身について、老後も遊びのプロとして楽しみながら暮らしていける。それが私の結論であり、生き方である。
    ㉚人間というのは、我慢している間に頭が、”フリーズ”してダメになる。
    →多くの若者は「大手・安定思考」だ。就職人気ランキング上位の企業を目指す。だが、そうした大企業の場合、若いうちに活躍できる余地はほとんどゼロである。60歳近くにならないと自由なことをやらせてくれない。それまでは「忍」の一字、ひたすら我慢である。だが、我慢している間に頭はフリーズし、ダメになる。ランキング上位の大企業に就職するということは、その会社の鋳型に入って石膏のように固まるということなのだ。
    世の中というものは、レールから外れないと平均給与しか稼げない。レールから外れると、失敗して路頭に迷うリスクもあるが、早くから活躍できるし、大金持ちになる可能性も生まれる。フリーズする人生とリスクのある人生、どちらの人生が面白いのか、有意義なのか、やりがいがあるのか、ということをよく考えるべきだと思う。
    ㉛35-50歳前後のサラリーマンが仕事上の閉塞感から陥る無気力状態を、「魔の15年」と呼んでいる。
    →一般的なサラリーマンは、10年もすれば一通りの仕事を覚えてしまうが、50歳を過ぎないと大きな権限は与えられない。この間の15年は社内や業界で名を知られるための「営業」期間に充てられてしまう。この間に目標や向上心が徐々に失われてしまう。こうした状態を「魔の15年」と呼ぶ。
    ㉜人間が変わる方法は3つしかない。1番目は時間配分を変える。2番目は住む場所を変える、3番目は付き合う人を変える。この3つの要素でしか人間は変わらない。
    →これは以前にもどこかで見かけた。全てを今は実行している上代だと思う。どう私自身変わっていくのか楽しみでもある。
    ㉝社会や企業環境が激変すると、今までとは違う処世術や人生観の類を求めがちだが、本当に必要なのはむしろどんな状況でも変わることのない生きる姿勢だ。
    哲学書や自然科学書は、この根本の部分を考えさせる刺激に満ちている。
    →プラトンの描くソクラテス『ソクラテスの弁明』などは相手と対話し、質問を重ねることによって徐々に真実に迫っていく。また、自然科学書が教えてくれるのは、ある主張は実験によって検証されない限り仮説に過ぎず、真実とは言えない。ということだ。
    こうした論理的思考と科学的態度は、私が問題解決能力というビジネス能力を提唱するうえで礎になった考え方だ。実際、欧米のビジネスマンは学生時代に哲学と自然科学の古典に親しみ、それが彼らの生き方の姿勢や教養の基礎になっている。古典は「生きる基礎体力」を身につけるにはうってつけなのである。
    ㉞人生なんて、自分がわからないと思えば、他人だってわからないのだ。だったら、早めにわからないと思ったほうが勝ちだ。
    →みな手さぐりなのだ。だったら早めに考え始め、研究を開始したほうが勝ちなのだ。そうしていくうちに人生、人にも語れることが増えてくる。
    ㉟人生はスキーと同じで、転びそうになったら転んでしまったほうがいい。
    →我慢して転ばないように滑っていると、いつまでたってもへっぴり腰でしか滑ることができない。つまり、失敗を恐れて思い切ったことにチャレンジする勇気が持てないのだ。そういう人間が今の教育制度ではエリートと呼ばれているわけで、成功するためには失敗しなければいけないこれからの時代は、エリートほど成功の可能性が小さくなる。本当に実力のある人間とは、失敗しても「必ず次は成功する」と開き直ることのできる人間なのである。
    ㊱悩めば解決する問題については、一生懸命に考えてなるべく早く解決する。悩んでも解決しないことについては悩まない。この二つを実践すると、人生はかなり生きやすくなる。
    →くだらない上司がいて、どうしても解決できないときがあるとする。その際は、相手は俺より年上なのだから、順番から言えば俺より先に死ぬ。と考えているうちにくだらない上司のことなんかで自分の大切な時間を費やすのがばかばかしくなり、いつのまにかどうでもよくなる。
    ㊲私の生き方のもう一つの特徴は、「もったいない」と思わずオールクリアボタンを押してきたことだ。「もったいない」と思った瞬間に人生は負けである。
    →このままいけばそこそこの地位や収入は得られるだろうと考えて守りに入ってしまえば上昇志向は無くなる。
    ただし、やり直すときには思い切りが必要だ。「いざとなったら引き返せばいいや」という甘えがあっては、ダメ。退路を断って、これしか自分の生きる道は無い。と思いこまなければいけない。その決意を持ってアフターファイブも週末も自己投資に励めば、世の中で実現できないことはほとんどないと思う。
    日本人は住宅を買う意思決定が早すぎる。「男子一生の仕事」とはよく言ったもので、30代前半で家を持ち、大きな借金を背負いこんで、一生払い続ける人が多い。だが、そんな国は世界で日本だけである。
    →アメリカやヨーロッパやオーストラリアでは、30-40賃貸住宅、買うとしても安い中古住宅だ。それをいくつも住み替え、さまざま家を体験した上で、引退間際になって初めて自分で設計した理想的な「ドリーム・ハウス」を建てる。同じように日本のサラリーマンも、平日の家はあくまで「仮の住まい」と割り切って、都心で安く借りる。その代り、首都圏の郊外に「ウィークエンド・ハウス」を持つのである。
    ㊳死ぬ時までに貯蓄を全部食いつぶしてゼロにしよう、と思った途端に目の前に広がる世界はゴージャスである。
    →65歳から75歳までの10年間で3,000万円を遣えると思えばかなり派手に遊ぶことができる。
    ㊴オフなのに、その通りに実践するなんて息苦しい、オフぐらいはいい加減に過ごしたいという人がいるかもしれないが、間違いだと思う。
    →オフを充実させることがオン、つまり仕事をエネルギッシュにしていくためにとても大切なことだ。
    ㊵私がアフター5の過ごし方としてぜひとも注目してほしいと思うのは、「家庭の定期点検」すなわち家族が抱えている問題について定期的に語り合う時間だ。
    →子育ての方針、近所づきあいや友人との付き合い等で悩んでいることなどは無いかコミュニケーションをとる。それができないようでは円満な家庭など望むべくもない。
    ㊶自分の時と同じように「いい学校からいい会社」というレールを敷こうとする。昔の”成功の法則”で子供の将来を期待するのは罪作りでもある。
    →いい学校を出て、いい会社に入れば幸せになれる。というのは30年以上前の発想であり、幻想に過ぎない。
    周りを見渡してみても、40代、50代のビジネスマンで「自分は幸せだ」と言い切れる人はほとんどいないだろう。一生懸命働いてきたのに、新しい技術になかなか適応できず、気が付いたらリストラの影に怯え、疲れ切っている。
    自分が現在のそうした姿を20年前に想像できなかったのに、子供の将来の幸せがわかるわけがない。実際、若手の企業家の多くは、学生時代に大きな挫折を経験している。いい学校をそこそこの成績で卒業した人は、まったくと言っていいほどいない。
    ㊷親が反対しても子供はやる。むしろそれを前提に親子の対話を活発にしたほうが、親のためにも、子供のためにもなるのではないか、と私は思っている。
    →子供が悪の道にはまったとしても、やりたいことがあったらやってごらんという。やめろと止めるから行ってしまう。女のことはまだ付き合うな、などと言って保護していたら最初に出会った女性で大きな過ちを犯すかもしれない。怪我しないように何もやらせないのは一番いけない。家庭内の唯一の安全装置は対話だ。禁止するよりも、それを前提に子供との対話を活発にしたほうがいい。
    ㊸私に言わせれば、奥さんに見栄を張っているような男は、もともともダメだと思う。
    そんな家庭は既に崩壊しているも同然だ。自分がどういう人生を生きたいかを奥さんに話せないような夫婦関係だったら、私なら別れることを選ぶだろう。
    →奥さんが、あなたの身に余るほどの大きな期待をあなたに寄せている場合、これは早いところ是正したほうがいい。奥さんには見栄を張らず、夫婦で何でも話し合えるような人間関係にしておきたい。
    ㊹今を楽しめない人は一生楽しめない。現時点で好きなことがやれてない人は、第二の人生でもやっぱりできないのである。
    →現役のサラリーマンが「仕事もプライベートも充実させる」などということが現実にできるだろうか。
    できるに決まっている。そのためにはまず、「本当にやりたいことは引退してからやればいい」「時間ができたら、その時間を趣味にあてる」という発想を変えることだ。
    私はやりたいことがあれば、1年のうちのどこでそれをやるか先に決め、年初に休みを取ってしまうことにしている。さらに、ここは仕事を休んでこれをやると決めたら、その予定は何があっても動かさない。そうやって、ひとつひとつ確実に実現していくのである。

  • 今月で開店4周年を迎える居心地の良いカフェでレコードの音色を聞きながら30分程度で読了。
    著者の大前研一さんは言わずと知れた著名な経営コンサルタント。
    講演でも頼もうものなら、ものすごい金額だという噂。(それも需要と供給ですから、健全な姿だと思います)
    そんな単位あたりのパフォーマンスと言う切り口から見ますと、この本は、とても字が少ないです。(それが30分程度で読むことが出来た理由です。)
    見開きで右側に大きな文字で格言、左側にその説明の構成で2ページ完結で次々と88箇条が綴られています。
    もしも、一文字あたりの印税のような切り口があったとすれば、この本はものすごいパフォーマンスを示すように思います。
    文字が多いことをありがたがるようでは、いけないのでしょうが、この文字数でコノ価格。
    まさに、大前ビジネスの真骨頂を見た思いがいたしました。
    心に響く大前節がギュっと詰まったこの一冊。
    付箋は12枚付きました。

  • 自分から最も遠い人こそ自分の人脈にする。
    私は、興味があればどこでも出かけ、誰にでも質問する。これが人脈づくりの基本である。
    飛行機に乗った時は隣の座席に座っている人に必ず話しかけるようにしている。隣席には自分の人脈を超えた未知の人物がすわっているわけだ。

    日本人は上司はこう考えているのではないかと推量して、それに沿った答えを出すクセがついている。したがって自分で答えを考えようとしない。上司が何から何まで言ってくれれば、それを考えずにやってしまった方が楽だと思い込んでいる人が多い。その結果、日本企業は競争力を落としてきている。ビジネスではボスのことよりも真実が上位概念である。

    仕事というのは、自分で見つけて、自分なりのやり方に変えていくものだ。

    営業マンが大事にすべきは、負け方なのだ。負けることで逆に顧客との関係を強化し、将来の勝ちに繋げることは可能だ。例えば、自社の商品が顧客の使用目的とマッチしなかったとしよう。そういう場合は、すぐさま売り込みを中止し、顧客のニーズにあった他社製品を紹介するのも手だ。ポイントは自分が窓口になること。顧客からすれば、自社利益だけを追求せず、こちらの利益を考えてくれている、ということになる。おそらくこの顧客は、将来、また声をかけてくれるだろう。これが、万全の負け方の一例だ。

    提言がいくつもあると経営者は二の足を踏んでしまうが、社長とにかくこの一つだけをやってくださいと言われれば、相手の気持ちは動きやすい。きっぱりと断言できないプレゼンは、誰も信頼、信用しない。
    しかもその提言に膨大なデータ収集や分析、フィールドインタビューがあり、提示された結論が否定しようのないものであることが分かれば、経営者は行動を取りやすくなる。これは相手が誰であれ、プレゼンの基本だ。

    プレゼンを聞いた人から、質問が3つくらい出てくるようでなければ、良い企画とは言えない。
    では、どうすれば良いのか。企画書からエッセンスを取り出し、コンパクトにまとめ(15行程度のサマリー)、この企画のカギはこれですとロジカルに分かりやすく説明すればいいのである。

    最も重要なリーダーの役目は、まず方向を決めること。次が程度(スピード)を決めること。ところが、日本企業では、方向がないのに程度だけを言う経営者が多い。売上を1.5倍に増やせとか、経費を2割削れとか、数字だけを目標に掲げる。そういう経営者はリーダーとして失格だ。

    最前線のリーダーと組織を動かすリーダーでは、必要な資質がまったく違う。

    価値を変えずに価格を下げても、商品は売れない。逆に言うと、価値を変えれば、価格を下げなくても商品は売れる。

    マイクロマネージャー型の上司が会社で最も嫌われる。

    戦略プランニングにおいて競合他社の存在を考慮するのは当たり前だが、必ずしも最優先事項ではない。まず考えるべきは顧客ニーズである。

    人間が変わる方法は3つしかない。1番目は時間配分を変える、2番目は住む場所を変える、3番目は付き合う人を変える、この3つの要素でしか人間は変わらない。最も無意味なのは、決意を新たにすること。行動を具体的に変えない限り、決意だけでは何も変わらない。

    私の生き方のもう一つの特徴は、もったいないと思わずオールクリアボタンを押してきたことだ。勿体無いと思った途端に人生は負けである。

    自分の生き方として何を基準にしているかというと、死ぬときにこれで良かったのだと言うための生き方を工夫しているのだ。

    私はマッキンゼー時代、どんなに忙しくても必ず毎週木曜日の夜を家族の定期点検にあてていた。他の予定をいれず、近所のレストランで食事をしながら妻と話し合う時間を持つようにしていたのである。定期点検で語り合うテーマは主に二つ考えられる。一つは子育ての方針など家庭内のことだ。夫婦の考え方の違いを放置したまま子供に接している限り、夫の考えも妻の考えも中途半端な形でしか伝わらない。もう一つは、妻が家庭以外に関して抱えている悩みだ。近所付き合いや友人関係、両親の老後、、、。妻の悩みを抱えたままで暗い顔をしていれば、それは同じ屋根の下に暮らす夫や子供に跳ね返ってくる。

著者プロフィール

1943年、福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。(株)日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。 以来ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を務める。現在はビジネス・ブレークスルー大学学長を務めるとともに、世界の大企業やアジア・太平洋における国家レベルのアドバイザーとして活躍のかたわら、グローバルな視点と大胆な発想で、活発な提言を行っている。

「2018年 『勝ち組企業の「ビジネスモデル」大全 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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