- Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093523073
作品紹介・あらすじ
退廃的な田舎町で過ごした“青年のひと夏”
誇り高い姉と、快活な妹――いま、この2人の女性の前に横たわっているのは、一人の青年の棺だった。
美しい姉妹に愛されていながら、彼はなぜこの世を去らねばならなかったのか? 卒業論文を書くために「廃墟のような寂しさのある、ひっそりした田舎の町」にやってきた大学生の「僕」は、地所の夫婦、妻の妹の三角関係に巻き込まれる。
古き日本の風情を残しながらも、どこか享楽的な田舎町での青年のひと夏の経験から、人の心をよぎる孤独と悔恨の影を清冽な筆致で描いた表題作「廃市」は、後に大林宣彦監督によって映画化された。ほかに「飛ぶ男」「樹」「風花」「退屈な少年」「沼」の全6編を併録。
感想・レビュー・書評
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短編集。表題作がなかなか好きでした。ストーリー自体はメロドラマ的三角関係、四角関係なのだけど、モデルになった筑後柳河という町の水路のある景色やお祭りの情景がなんとも情緒があって良い感じ。映画化されたというので作品発表当時の昭和30年代の話かと思っていたら大林宣彦で1983年の映画だった。意外。そして安子役は小林聡美、姉の郁代が根岸季衣までは良いとして、直之が峰岸徹てなんだ、いくら83年の映画にしてもオッサンすぎないか。美女3人にモテてモテて死ぬほど困る役なのに。
閑話休題。表題作以外では「沼」が良かったです。短い中にいろいろギュッと凝縮されてる。中編の「退屈な少年」も含め、福永武彦は少年や子供が主人公のものの心理描写がいつも上手いなと思う。
※収録作品
廃市/沼/飛ぶ男/樹/風花/退屈な少年詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
福永武彦の短編6話
廃市と退屈な少年は読んでて面白かった
残りはワシの読解力の問題か話がよく分かりませんでした -
なんか惜しい感じがする短編集だった。特に表題作の「廃市」は惜しい。もう少しでかなりの名作になりそうな風格がある。途中まではすごく引き込まれて読んだが、姉の夫の自死のあたりが説得力にも欠くしなんか唐突で白けてしまった。あのあたりの処理がしっかりされていて物語がきちんと膨らんでいたら、すごい作品になっただろうに。廃市の死んでいるという雰囲気とか、それに魅せられてしまう卒論を書かねばならない主人公とか、何か秘密のある姉妹とか、それぞれとても良かっただけに残念。福永武彦は素晴らしい小説家なんだが、やっぱり今にそんなに作品が残っていないのは、どこか惜しいところがあるからだろうな、と思ってしまう。
その他の短編については特に言うことはない。あまり見るべきところはなかったように思う。 -
1960年刊行の単行本が復刊。
本書の根底に流れるのはある種の『残酷さ』ではないだろうか。『退屈な少年』のラストはなかなかの衝撃。