逆説の日本史5 中世動乱編: 源氏勝利の奇蹟の謎

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093794169

作品紹介・あらすじ

なるほど形のうえでは源氏と平家が争っているように見える。また『平家物語』『源平盛衰記』といった作品は、その点を重視している。しかし、よく考えてみると、頼朝と義仲の争いは「源平」ならぬ「源源」決戦だ。

感想・レビュー・書評

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  • 「源氏勝利の奇蹟の謎(逆説の日本史(5))」井沢元彦著、小学館、1997.05.01
    332p ¥1,628 C0095 (2022.11.16読了)(2022.11.04借入)(1997.08.01/4刷)
    日本の歴史は、「大系日本の歴史」(小学館ライブラリー)全15巻を読んでいるのですが、「逆説の日本史」もいずれ読んでみようと思っていました。第1巻から読めばいいのでしょうけど、『鎌倉殿の13人』をテレビで見ているところなので、その関連で、第5巻を読むことにしました。
    通説や教科書で教えている説に異議を唱えることが「逆説」ということの意味のようなので、驚くこと、多数でした。なかなか興味深く読めました

    【目次】
    第一章 鎌倉幕府の誕生(Ⅰ)源頼朝と北条一族の謎編
    ―「源源合戦」「幕府成立」を予見した北条時政の謀略
    第二章 鎌倉幕府の誕生(Ⅱ)源義経と奥州藤原氏編
    ―“戦術の天才”義経が陥った「落とし穴」
    第三章 鎌倉幕府の誕生(Ⅲ)執権北条一族の陰謀編
    ―鎌倉「幕府」を教える歴史教科書の陥穽
    第四章 武家政治の確立(Ⅰ)悲劇の将軍たち編
    ―「言霊将軍」実朝を暗殺した黒幕
    第五章 武家政治の確立(Ⅱ)北条泰時と御成敗式目編
    ―「法の正義」に優先する「道理」精神
    あとがき
    年表

    ●「乱」と「役」(77頁)
    なぜ将門の戦いが「乱」なのに、安倍頼良は「役」(前九年の役)になるのかといえば、乱は単なる国内の反乱だが役は「戦争」という意味があるからだ。つまり将門は「日本人」だが、安倍氏をそうは見ていなかったということにもなる。
    ●鎌倉幕府成立の基礎(169頁)
    (頼朝は)後白河法皇を圧迫して、「日本国惣追捕使」「日本国惣地頭」「反別五升の兵粮米徴収権」を得た。これが1185年(文治元年)のことだ。
    ●鎌倉幕府(173頁)
    「幕府」なるものは、鎌倉時代には「なかった」のである。
    幕府とは後世の人間、江戸時代以降の人間が付けた名称であった。鎌倉時代にはそういう名称はなかった。
    ●「源平の争乱」(200頁)
    平氏政権の崩壊から鎌倉幕府の誕生にかけての一連の出来事は、「源平の争乱」ではなく地方在住の武士(特に東国武士団)が都の中央政権に仕掛けた独立戦争なのである。
    ●東国と西国(212頁)
    鎌倉幕府と一口にいうが、この時代の幕府がまだ東国における勢力のみ強く、西国においてはまだまだ古代からの荘園領主が幅をきかしていた。東国は武士たちによって開拓された土地だが、西国はそうではない。早くから藤原氏などの貴族によって盛んに開墾された土地、あるいは寺社領などがはなはだ多い。
    ●「金槐和歌集」(216頁)
    実朝の個人歌集である『金槐和歌集』(金は鎌倉を、槐は大臣の位を表す。鎌倉右大臣歌集という意味)
    ●革命(269頁)
    革命理論は、この世の外に「絶対者」がいるという信仰(信念)がない限り、生まれない。

    ☆関連図書(既読)
    「炎環」永井路子著、文春文庫、1978.10.25
    「絵巻」永井路子著、角川文庫、2000.08.25
    「源頼朝の世界」永井路子著、中公文庫、1982.11.10
    「北条政子」永井路子著、角川文庫、1974.04.15
    「尼将軍 北条政子」童門冬二著、PHP文庫、2008.11.19
    「源義経と静御前」中島道子著、PHP文庫、2004.09.17
    「源義経」五味文彦、岩波新書、2004.10.20
    「源実朝」大佛次郎著、六興出版、1978.12.20
    「朱い雪 歌人将軍実朝の死」森本房子著、三一書房、1996.05.31
    「実朝私記抄」岡松和夫著、講談社、2000.05.15
    「定家明月記私抄」堀田善衛著、新潮社、1986.02.20
    「定家明月記私抄続篇」堀田善衛著、新潮社、1988.03.10
    「藤原定家 愁艶」田中阿里子著、徳間文庫、1989.12.15
    「藤原定家『明月記』の世界」村井康彦著、岩波新書、2020.10.20
    「完全図解でよくわかる承久の乱」高橋信幸編、廣済堂出版、2019.06.10
    「承久の乱と後鳥羽院(敗者の日本史6)」関幸彦著、吉川弘文館、2012.10.01
    「後鳥羽院(日本詩人選10)」丸谷才一著、筑摩書房、1973.06.10
    「後白河院」井上靖著、新潮文庫、1975.09.30
    「新古今和歌集」小林大輔編、角川ソフィア文庫、2007.10.25
    「新古今和歌集・山家集・金槐和歌集」佐藤恒雄・馬場あき子著、新潮社、1990.09.10
    「吾妻鏡」上・中・下、竹宮 惠子著、中央公論社、1994.12.20-1996.02.25
    「大系日本の歴史(5) 鎌倉と京」五味 文彦、小学館ライブラリー、1992.12.20
    「マンガ日本の歴史(15) 源平の内乱と鎌倉幕府の誕生」石ノ森章太郎著、中央公論社、1991.01.20
    「マンガ日本の歴史(16) 朝幕の確執、承久の乱へ」石ノ森章太郎著、中央公論社、1991.02.20
    (アマゾンより)
    日本人を欺き続けてきた『平家物語』の虚妄と義経伝説を暴く!
    『週刊ポスト』にて連載中の歴史ノンフィクション・ミステリー『逆説の日本史』シリーズ。第1巻~第4巻は、既に累計57万部を超える大ベストセラーです。鎌倉幕府の成立から北条執権政治の確立までを描いた、待望の第5巻「中世動乱編」のテーマは「源氏勝利の奇蹟の謎」。源氏がいかにして平家を打倒し、武士政権を樹立していったか、の解明です。第一章「源頼朝と北条一族の謎編」では、800年間に渡って多くの日本人に「鎌倉幕府の成立=源平の争い」と錯覚させてきた『平家物語』の虚妄を摘出し、「鎌倉幕府成立への道程は実は“源源合戦”だった」ことを証明します。さらに、第二章「源義経と奥州藤原氏編」では、日本史上初の“アイドル”義経の実像を検証。“戦術の天才”でありながら、“戦略”がまるで理解できなかった真の姿と、数々の不死伝説を生んだ「義経伝説」にメスを入れます。さらに、第三章「執権北条一族の陰謀編」、第四章「悲劇の将軍たち編」、第五章「北条泰時と御成敗式目編」では、「ありもしない『鎌倉幕府組織図』を丸暗記させる」などの歴史教育の危険さを指摘。独自の井沢史観で、歴史教科書が決して書けない、教えない日本史の“真実”に迫ります。

  • 源平の合戦から、幕府の成立までをテーマでした。

    やはり、今までのどこかぼんやりとした公家政権についてと違い、武士の決起や、義経の画期的な戦術、歴史的人物たちの思惑など、刺激的な巻でした。

    教科書で区分して学ぶ「幕府」という考え方は当時なく、律令制が実際とそぐわない中武士が決起し、実情に合った政治を行なっていく中、将軍が移り変わっていった。

    また、「御成敗式目」の制定が、武士政権が確立されたまさに革命的な瞬間であったこと、教科書では知り得ないことでした。

    個人的には、2人の息子が暗殺される、それを黙認しなければならなかった、尼将軍、北条政子の心情が気になりました。

    機会があれば、彼女についてもっと理解を深めたいと思います。

  • 源頼朝や義経、北条氏の詳しい一面が知られて楽しめた。道理やあるべきよう(自然であること)が、日本人の根本になっていることに気付かされた。

  • 井沢先生は変わらないねえ

  • 這卷比起前幾卷的衝擊稍微小了一點(時代越接近,推測的空間也比較小),關於明惠上人部分是比較讓我意外的。北條泰時"法意識"(和意識?)的部分寫得相當具啟發性。

  • 武士による幕府ができて、怨霊信仰が弱まった印象。供養法が変わったからかもしれないが、義経生存伝説も供養のひとつと考えるのは面白い。
    しかし、日本人の和と納得、自然の思想は、文章としてみると、所謂コウモリみたいだな。ズルいというか強かというか。

  • 源氏と平氏との争い、鎌倉幕府の出現、北条執権政治の本質から、朝幕併存、律令制と土地所有まで、歴史の授業では習うことのなかった本質が見える。近現代の日本の政治が何故このようになってしまったのか?というヒントにもなりえる。そこには、日本人独特の「和を重んじること」「言霊信仰」「怨霊信仰」「あるべきがまま」など様々な日本的な独特の背景があった。学校の歴史の授業は「お勉強」で結構だが、本質に切り込んで学問をするとはこのようなことを言うのだろう。

  • 最近、鎌倉幕府成立前後の話が好きなので、読んでみました。

    文中に「」のついた単語がたくさん出てきます。
    初めはなんだ?と思いましたが、読んでいくうちに「いわゆる『』という」の意味だとわかりました。
    私はこの巻だけ読んだのですが、これ以前の巻を読んでるともっとわかりやすいかと思います。

    時間があったら他の巻も読んでみようと思いました。

  • 1997.5.1.初、並、帯なし
    2013.1.25.伊勢BF

  • この本を読む前に、別の著者様の鎌倉時代の本をいくつか読んだけど、内容はだいたいこれに沿っていてどこが「逆説」か分からなかったけど、日付を見るとこっちはずいぶん古くて、そういえば鎌倉幕府も今は1192と教えてないとか聞いて、歴史の見方は変わるものだと実感。今の時代にも生きる「和」と「自然法」色々納得。

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著者プロフィール

1954年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念。独自の歴史観からテーマに斬り込む作品で多くのファンをつかむ。著書は『逆説の日本史』シリーズ(小学館)、『英傑の日本史』『動乱の日本史』シリーズ、『天皇の日本史』、『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』『お金の日本史 近現代編』(いずれもKADOKAWA)など多数。

「2023年 『絶対に民主化しない中国の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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