最終退行

著者 :
  • 小学館
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093796286

感想・レビュー・書評

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  • 胸が悪くなるような銀行の内情と腐敗を描きつつ、そこに残る僅かな矜持が立ち向かうという構図。序盤に物足りなさを感じたものの、後半は楽しめました。

  • 20年近く前のブラックな銀行、ブラックな池井戸さんのストーリー展開。
    様々な思惑と欲が繋がって、最後は爽やかではないけど、ハッピーエンド?な感じだったので、スッキリした。

  • 銀行の腐敗に立ち向かう銀行マンの物語。

    序章
    第一章 傾斜
    第二章 旋回
    第三章 退職
    第四章 乱数
    第五章 貸し剥がし
    第六章 出向辞令
    第七章 裏帳簿
    最終章 最終退行

    組織に忠実であった東京第一銀行羽田支店副支店長・蓮沼鶏二は、組織に反旗を翻した部下の退職や、支店長の執拗ないびりをきっかけに銀行マンとしての人生に疑問を呈していく。

    不透明な金の流れを調査していくうちに、バブル期に過剰な投資をし、不良債権を生み出してもまだ私利私欲を肥やそうとする会長・久遠の陰謀の影を認めた蓮沼。

    同時に終戦間際に埋蔵されたといわれるM資金をタネに、久遠に詐欺を働きかける退職した銀行マンと怪しい海洋開発会社。

    それを逆手にとろうとする久遠。

    腐敗した銀行はつぶれてしまうのか!?


    レビューで表しにくいほど話が複雑で、前半は少々疲れましたが、最後は正義を信じている自分がいました。

  • 銀行は人事で行員を支配している。企業には、晴れている時に傘をさし、雨が降れば傘を取る。ずっと支店勤務をしてきた行員が、義憤にかられ、私利私欲に取り付かれたエリート頭取に挑戦する。このパターンは池井戸潤に多いな。

  • 勧善懲悪ストーリーで最後は正義が勝つ。実社会もこうあって欲しいと思う。蓮沼副支店長、最高!半沢直樹シリーズに近い内容だった。2015年ラストに読んだ本。

  • 著者得意の銀行ものでそこにM資金が絡んでくるという物語、半沢直樹のようにアップダウンが激しく、やられたらやり返すものではなく、当初はヤラレっぱなしでイライラさせられる。結局正義は勝つ式で終局するのだが、公的資金をつぎ込まれながら反省しない銀行の姿を批判した物語になっている。銀行員は悪人だらけということか?著者の小説が有名になってから銀行を就職希望する学生は減ったんじゃないだろうか。

  • 一旦開き直った人間の言動には、見ているこちらをスカッとさせてくれるものがある。こんな風には言えないなぁ、でも言えたらすっきりするんだろうなぁって。

  • 池井戸さんの作品を初めて手に取ってみた。
    実力がある人って、題材からして魅力的なものが多い中、銀行を舞台にした本作はガチガチだったら疲れるかも、と思ったけれど杞憂杞憂。初めは「ん?」と思ったけれど、ストレスの代名詞、社会人として色々胸につまされたわ。

    あらすじ;
    蓮沼が支店長として勤める東京第一銀行は、首都圏中堅どころの銀行だが、バブルの痛手からまだ脱却できておらず、信用不振により恒常的な赤字と顧客離れが続いていた。人員削減の割を食って残業の日々。そんな時、煮え湯を飲まされ続けていた部下の塔山がとうとう銀行を退職した。彼が融資を担当したある零細企業に不信感を募らせる蓮沼は、その企業がトレジャーハンティングを副業としているこをに眉をしかめる。
    そこへ投資資金の回収を言い渡され、その数字しか考慮に入れず、古くからの取引先を省みない温情のなさに憤りを覚える。一方、会長の久遠が手を結んでいた取引先には緩く甘い手を差し伸べている。保身に身を投じる店長谷の嫌がらせ、そして回収目標が悲劇を生む――。
    だれがここまで経営を悪化させたのか。怒りと憤りが蓮沼を動かす。

    冒頭でいきなりM資金詐欺の話が出てきて、「へ?」という感じだったのはわたしだけじゃないはず。そういう話なのか、と興味がわいたら一気に現実へ引き戻され、最終退行のカギを渡される疲れ切った中年男の蓮沼と対面するのだった。それにしてもM資金って本当にあるといわれていたものなのか?
    バブルの時の反省か、銀行の貸し渋りの問題は本を読んでいると偶に目にする。融資拒否が厳しい審査の結果ではなくて、舞台となる東京第一銀行では適当な調査によって言い渡されるのだからたまったものではない。担保になるものがあれば、ゴー。赤字が続いている中小企業では、倒産によってむしろ多額の負債を銀行側が被ろうと、ストップを宣言するのだ。銀行によって振り回される側にとっては、常に冷や汗ものだ。
    どれ程残酷なことか。そして蓮沼への対抗心を燃やす店長谷がおこした問題は、道徳に触れる。
    会長職へ退いたが事実的に権力を掌握し続けている久遠がまず私腹を肥やすことにいとまないから下もそうなる。一方で、ドサ周りを続けざるを得なかった蓮沼や塔山が怒るのはもっともだ。赤字経営の取引先へ実際赴き、資金を回収するのは彼らなのだから…。
    随分まあひどいことだ。架空の話だとしても、だ。
    大抵の社会人は同じ目には合っていなくても、「上がしっかりしてないから下が苦労する」というのは共感できる部分も多いのではないか。
    ミステリ的な要素を持って、塔山のたくらみが語られていくのは面白い。まあ予想できるのだが、ワクワクするじゃないか。一方で、赤信号が灯ろうとしていることに、不安になった。久遠のじーさんの貫録はね、読んでいるだけで伝わる。怖いわこのオジサン。
    しかし不正の記録というのは必ずどこかに残っている物なのだ。
    らラストの展開は、まさに待ってましたと手を叩かんばかりの大興奮。

    一方で腑に落ちない点が。彼の私生活の転落や性交に対してはあまり共感が出来ない。特に、これ、子供がかわいそうすぎて…。そんなに喜ぶなよ蓮沼。何かしらのフォローをしてください、と作者に訴えかけたいくらいだ。

  • 池井戸潤の銀行ミステリー。支店の副支店長の主人公・蓮沼が保身と出世しか頭にない支店長や裏金で私腹を肥やす銀行の会長に立ち向かうストーリーに、日本軍が終戦間近に隠したというM資金という宝探し的要素を絡めたストーリーは読んでいて飽きがこない安定感でした。
    当初は胡散臭さだけ感じたトレジャーハンターの連中が話が進むにつれて見方がかわってきたのは面白かった。

  • バブル崩壊と貸し剥がし

著者プロフィール

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を、’20年に第2回野間出版文化賞を受賞。主な作品に、「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『民王』『民王 シベリアの陰謀』『不祥事』『花咲舞が黙ってない』『ルーズヴェルト・ゲーム』『シャイロックの子供たち』『ノーサイド・ゲーム』『ハヤブサ消防団』などがある。

「2023年 『新装版 BT’63(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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