逆説の日本史15 近世改革編: 官僚制度と吉宗の謎

著者 :
  • 小学館
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093796859

作品紹介・あらすじ

『週刊ポスト』誌上で大好評連載の歴史ノンフィクション『逆説の日本史』の単行本化。第15巻では主に「八代将軍吉宗」と「田沼意次」を取り上げます。六代家宣から家継を経て、八代吉宗が将軍になるまでは日本史上有数のミステリーであるとして、その「強運」の数々を検証。「名君」と呼ばれる吉宗ですが、経済の運営者としては「下の下」である「バカ殿」であることを示し、「享保の改革」が本当に「改革」であったのかを検証します。 また、「稀代のワル」そして「賄賂の帝王」と言われる田沼意次の「賄賂伝説」はデッチ上げられたもので、その烙印を押された背景には「儒学」があると分析。実は有能であった彼の虚像と実像に迫ります。

感想・レビュー・書評

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  • 吉宗をバカ殿と言い、儒教が経済音痴の政治を生み出すと
    いったあたりの解説は著者の面目躍如といったところだが、
    ここまで執拗に裏からの観方を繰り返されると、それを
    さらに裏から見たくなってしまう私は間違いなく天邪鬼で
    ある(笑)。

  • 2019年3月7日、津BF

  • 江戸時代は日本人が形成された時代だ。近代日本人の原型はすでに江戸時代にできていたことがわかる書である。

  • 江戸時代における名君や学者は儒教の影響を甚大に受けており、経済を悪と見なしている為結果的に改革では無かった。
    田沼政治こそが改革であったのだが失敗したからこそ明治維新があったと思うと感慨深い。

  • 松平定信
    木っ端微塵です

  • 徳川吉宗、新井白石、松平定信は実は名君ではなかったという衝撃の事実。

  • 2013.6.21読了

  • 15巻。

    6代将軍家宣、8代吉宗、
    そして田沼意次と松平定信の政治バトルを
    読み解く。

    一番なるほどと思ったのは、吉宗の経済政策が
    経済の実態をまるで知らない、というよりも
    「儒教の影響が強くて、臨機応変な経済政策なんて
     想像の範疇にない」
    というレベルであったこと。
    「貴穀賤金」の儒教思想を強く持っているのに、
    実際には貨幣経済であり、米価の上下動が武士や農民の
    暮らしを直撃するという事態。

    今日の中国は、政治は共産党独裁だが、経済は
    完全に資本主義的になっているのも、まさに共産主義の
    ような「宗教」(神がいるという意味じゃなくて非合理性という意味で)
    に従っていては、人々の暮らしはまったく良くならず国家が
    崩壊するというところはよく分かっているためだろう。

    だがそうなったのは、ロシア、東欧やカンボジアといった
    失敗と悲劇の歴史を踏まえているためであって、
    江戸時代の日本にそんなことは望むべくもない。

    大商人たちは貨幣経済をよく理解していたし、
    尾張家の徳川宗春や田沼意次のような「商業経済」型の
    行政者もいたけれど、結局権力闘争の中で敗れてしまい、
    幕府が倒れるまで、儒教的農業国家は続いていくことになる。

    忠臣蔵の武士たちが称えられ、吉良は悪者、というのは、
    フィクションの構図が真実だと誤解されているからというのが
    14巻にあったが、
    吉宗や松平定信は立派な人で、田沼意次は賄賂をとる悪人という
    「江戸の行政者」像も根強い。

    そもそもなぜこういう見方が主流なのかというと、個人的には
    経済感覚の薄い人、あるいは共産主義的思想の持ち主(マル経)が
    歴史学者として、そういうもので「あるべきだ」と主張したり、
    あるいはそういう思想の人たちが良いように利用したとか、
    そんなところに原因があるような気がする。

    今日名を成している、たとえば大企業経営者たちから
    この時代の行政者たちを評価すれば、
    どう考えても吉宗は困った政治家であり(経済の足を引っ張る)、
    田沼意次は国際貿易拡大を視野に入れていたという意味で頼れる政治家だと
    なるだろう。

    今日の中国共産党が上手いやり方だなと思うのは、
    経済は資本主義の拡大のパワーを最大に利用しつつ、
    政治批判は国家権力のシステムで封殺するところであろう。
    人々は、目先の発展を追うことに夢中になることも多く、
    また格差も是認されるわけだから、あんまり団結して政治批判に向かわない
    (あとは、日本批判をしたりとか)。
    もちろんこれからどうなるかは分からないけれど。

    政治と経済ということを考える上で、江戸期の歴史を
    いかに「思想的偏りなく」見るかということは重要に感じた。

  • 井沢日本史の第15弾。今回は江戸時代中期の“ヒーロー”と“悪役”に注目を当てる。

    徳川吉宗、松平定信など、“改革”を行ったとされる人物は、実際には経済政策について無策で、自分の信念を貫くあまり、国を混乱に陥れた本人であったのだ。ここでも儒教の悪い面が、強力に作用している。
    ―儒教という人間のルールを、経済という別の生き物に押しつけてはいけない

    この筆者の言葉は、リーマンショック以前、“強欲”という人間のルールを金融にあてはめた、現代の状況とある種共通するのではないか。

  • 綱吉が暗君だったというように言われていることすら知らなかった自分。

    そういった情報を知ることができるとともに、その情報の信憑性を打ち破る論の展開に驚かされるよりも納得させられてしまいました。

    「歴史は勝者による歴史である」とはなかなか考えさせられるものでした。

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著者プロフィール

1954年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念。独自の歴史観からテーマに斬り込む作品で多くのファンをつかむ。著書は『逆説の日本史』シリーズ(小学館)、『英傑の日本史』『動乱の日本史』シリーズ、『天皇の日本史』、『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』『お金の日本史 近現代編』(いずれもKADOKAWA)など多数。

「2023年 『絶対に民主化しない中国の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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