逆説の日本史 16 江戸名君編~水戸黄門と朱子学の謎~

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093796866

作品紹介・あらすじ

幕末尊皇攘夷思想のルーツに迫る。「家康の遺言」に秘められた水戸黄門への蜜命!シリーズ400万部突破!歴史ノンフィクションの金字塔。

感想・レビュー・書評

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  • 2019年3月7日、津BF

  • 水戸学は現代に見直されなければならない日本人の日本人たる学問である。

  • 徳川光圀、保科正之、上杉鷹山の水戸学、改革、財政再建の実態が理解できた。また当時の大衆文化芸術の背景がよく分かる。

  • 江戸文化
    おもしろいですな

  • 16巻。

    徳川光圀、保科正之、上杉鷹山、池田光政らの
    「名君」を取り上げる。

    もちろん、ただ単に「善政をした」から彼らを
    取り上げるような著者ではない。
    そこには、「儒教」と「その日本化」の中で
    強烈な個性を発揮した人々を、長い時代的スケールから
    明らかにし、歴史の繋がりを新たに描こうとする
    著者の強い意思があらわれている。

    興味深いのは、日本政治思想史を読み解くうえでの
    必須の資料として
    「太平記秘伝理尽鈔」の重要性を強く説くところである。

    太平記自体は、著者の説では、前半(朱子学の価値観)と
    後半(怨霊信仰の価値観)で執筆者が違うということであり、
    怨霊信仰を抜け出そうとしていた武士たちにとっては、
    全部が全部、好都合なものではなかった。
    そこで、註釈によって、「より武士に合う」テキスト化が
    されたということである。

    信長、秀吉、家康が心血を注いで仏教勢力を軍事的に無力化
    したところで、代わって求められる「思想」が必要だった。
    そこで、朱子学と神道が、「日本化」の中で重視されることになるのだが
    その道筋を作る主要関係者こそが、熊沢蕃山であるとか、
    上述の「名君」たちとかであったということだ。

    それがひいては倒幕に繋がっていくわけであり、なるほど大変これは
    興味深い。

    あとは、この巻では
    「平家物語が果たした日本の識字率向上への劇的な役割」
    ということが「逆説」らしくて面白い。

    なぜ日本の識字率が高かったのか? という問いに対して、
    私も「寺子屋が普及していたから」じゃないのかと答えたと思うが、
    それは因果関係からすれば、十全な答えではないということを
    著者の見解を知って、学んだ。

    平家物語を慈円という天台宗当主のスーパープロデューサーが
    「音曲化」して、琵琶法師に語らせて津々浦々に広めるという
    システムがあったからこそ、謡曲として子供たちが物語を覚え、
    それが文字を学ぶ原動力になった。
    そういった「歌の物語」の伝承が広まっていったから、江戸期に
    寺子屋での文字習得が成り立つようになったというのは、
    コロンブス的転回というか、言われて知れば、
    「たしかに!」という話である。

    今日では、教育レベルと、収入・地位の格差がかなり相関的であるという
    ことは明らかになっており、
    だからこそ、親は子どもの教育に熱心になり、
    あるいは国家は教育サービスのコストを下げることで、格差是正に
    努めることを国民から要求されたりするわけである。

    だが、子供自身の立場にたってみれば
    「将来、収入が少なくてもいいのか!」という圧力をかけられたところで、
    学ぶことが面白くなければ
    「いやそんなこと言われたって嫌なものは嫌だ」
    となって当然であろう。

    だからこそ、「ゲーム感覚で学べる」ような教育プログラムが
    歓迎されるわけである。
    教育レベル向上は、あくまで結果であって、
    教育を受ける側からすれば動機こそが大事なのである。

    ということでいえば、この平家物語が、楽しく(?)かどうかは知らないが
    歌になって語られることは、動機づけとしてすごいパワーがあったことだろう。
    「ギオンショウジャというのは、祇園精舎と書き…」という説明を受け入れる
    土壌となり、著者が記すように
    「歴史、宗教、地理、歌道、政治、軍事」などの教科書になったのだから。

    そして、さらに太平記が「音読文化」としてそれを引き継ぐことになり、
    さらに識字率向上に繋がる。
    で、その太平記の中で出てくるのが「天皇への忠臣、楠木正成」だというのが、
    なるほど、これも長い倒幕への道のりに繋がっているのであろうと
    思う。

  • 毎年1冊ずつ単行本化されるのを楽しみにしているのが、井沢氏の書かれている逆説日本史シリーズです。18冊目でとうとう江戸時代半ばまで来ました。

    今回は江戸時代を生きた政治家(武士)で、井沢氏が名君を認めた人たち及び江戸の文化の紹介がされています。彼らがなぜ名君と言えるのか、また江戸の文化は他の時代や他の国の文化と異なって、何が独創的なのかについても解説されています。

    最近ドラマではアニメの実写化がなされることがありますが、このルーツは人形浄瑠璃を歌舞伎で上演することにルーツがある(p298)ことを私は理解しました。今回の本においても、歴史書には残っていないけれども、実際にはどうであったかの解説がなされて興味深く読むことが出来ました。

    また、光圀の時代に始まった「大日本史」が明治39年に完成した事実(p25)は驚きでした。

    以下は気になったポイントです。

    ・最年長の子であっても側室の出生であり、家督を継ぐ資格は無い者とされることがある、光圀は家臣の子として育てられたのでその種の届出はされておらず、嫡子として認められた(p9)

    ・光圀が名自他「大日本史」が完成したのは、明治末の1906年(明治39)である(p25)
    ・幕府が光圀で果たそうとした「天皇家の血の導入」は、慶喜(彼の母:水戸藩9代藩主の妻は有栖川宮家の吉子)で完成した(p28)

    ・宗教にせよイデオロギーにせよ、分裂して分派が出来るのは、それまでの主流が「ニセモノ」とされる時、カトリックからのプロテスタント、スンニ派からのシーア派等(p44)
    ・家康が考え出した朱子学の導入は、幕府を安泰にするために普及させようとした思想であったが、幕末には倒幕の原理に化けてしまった(p51)

    ・保科正之の三大美事は、末期養子の解禁・殉死の禁止・人質制度の一部緩和(大名の重臣の人質は免除、大名の正室と嫡男は江戸在住)である(p83)
    ・日本の廃仏毀釈は、政府の神仏分離令(1868年3月)によって起こったが、それが直に広がったのは、それ以前にそれを「正義」とする根強い信仰があったため、これを正之は会津藩内で先駆けて実施している(p90、92)

    ・徳川家は浄土宗であったが、天下を取ってからは天台宗にも帰依した、京都の鬼門(東北)を守るのが比叡山延暦寺、江戸の鬼門を守るのが東の比叡山、東叡山寛永寺、ともに年号を寺号にしている格式高い寺(p103)
    ・上杉家は強引な形(末期養子を認める)で存続できたが、その返りとして、石高を30→15万石とされることになった(p119)

    ・江戸時代に幕府の役人を接待したのは、公共工事を押し付けないように懇願するため、公共工事は命ぜられた藩の持ち出しである、交際費を削った米沢藩は上野寛永寺の修理(5.7万両:100億円近く)を命ぜられた(p136)
    ・貴族、僧侶、武士といったエリートに対する教育機関は多くあるが、庶民を対象にした学校(閑谷:じずたに学校)は、岡山藩に確かに存在した(p182)

    ・キリシタン一揆ともいえる島原の乱(1637=寛永14)後に、幕府はキリスト教、宗教全体に対する警戒をするために、寺請制度(国民はどこかの寺の檀家である必要あり、改宗禁止)が始まった(p193)
    ・韓国では、同姓は娶らずというルール(儒教の絶対的ルール)があり、厳格に守られている(p200)

    ・江戸時代のように、江戸城内や大奥でエリートが楽しんだ文化が「大衆化」されて広まった事例は稀である、庶民の知的レベルが高かった、幕府が文化を否定するという方針もそれに起因する(p257)
    ・日本は万葉時代から、「歌の前での平等」があった、万葉集は天皇、貴族と庶民が同じ土俵で和歌という「文芸作品」を作るという、世界で類を見ない歌集である(p258)

    ・忍者には2種類(隠忍、陽忍)ある、隠忍は映画等で有名であるが、陽忍とは、本名でしかも敵から望まれる形(芸能人、学者、技術者等)で敵地に潜入し、長期間の工作を行うものである(p293)

    ・江戸が長らく首都になりえなかった理由として、1)有史以来、文化・政治の中心は西であったこと、に加えて、2)平地のところどころにある小山が障壁となっていたため、これを天下の大名を動員して、山を削り海を埋め立てた、神田山は神田台となった(p295)

    ・江戸時代の人間は、「武蔵守」と聞くだけで、徳川将軍を連想できた、これは「仮名手本忠臣蔵」の成立事情を分析するためのキーポイント(p316)
    ・日本には発音をそのまま表す表音文字があり、庶民が簡単に覚えられるものがあったので識字率が上がった、日本では庶民が上流階級と共有して平家物語を音曲により楽しめた(p388)

  • 相変わらずわかりやすく、面白い。太平記秘伝理尽鈔見たい。

    とはいえ生類憐みの令の意味、信長の比叡山焼き討ち、秀吉の朝鮮出兵etcについては、むしろこの人が言っているような内容を習ってきたんだけどな…そのため力を込めて「定説は間違っている」と言われても、「そんな定説あんの」という抜けた反応になってしまう。まあ、歴史認識が変わっていく過渡期にいるということなんでしょう。自分、すごく面白い時代に生きてるなあ、とよく思います。

  • 上杉鷹山や保科正之など
    日本史知識不足の自分にはあまり聞き覚えのない名前が出てきて、
    大変勉強になりました。

    宗教たる朱子学の怖さと言ったらありません。

    今こうやって自分が本を読めているということ、
    日本の識字率レベルを著しく向上させた慈円さんの功績に感謝したいと思います。

  • う~ん、連載は細切れで間が空くからあまり気にならないようだけど、
    まとまると「くどさ」が・・・。シリーズが長くなったせいのある???

  • 2010.09.25 (80) 相変わらず好調。批判とJが多いのが気になるが、明治維新の原因が徳川家康にまで遡るというのは鮮やか。

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著者プロフィール

1954年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念。独自の歴史観からテーマに斬り込む作品で多くのファンをつかむ。著書は『逆説の日本史』シリーズ(小学館)、『英傑の日本史』『動乱の日本史』シリーズ、『天皇の日本史』、『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』『お金の日本史 近現代編』(いずれもKADOKAWA)など多数。

「2023年 『絶対に民主化しない中国の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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