栄光なき凱旋 下

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著者 : 真保裕一
  • 小学館 (2006年4月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093797276

栄光なき凱旋 下の感想・レビュー・書評

  • 第三部 疑惑
    訓練キャンプで知り合うヘンリーとマット。キャンプ内では少数の本土出身兵士と多数のハワイ出身兵士が、いがみ合い衝突している。同じ日系人の中でも経歴や育った環境により相手を理解することができずにいた。また、ジローは南方戦線にて人殺しである自分を抑えきれずに、酒や喧嘩に明け暮れていた。
    人種に限らず多数派と少数派、そこに階級などの差が生まれると支配や妬みが生まれ、人々の衝突へと繋がっていく。

    第四部 戦場
    マットとジローは南方の島で極秘任務にあたり、同じ日本人をその手で殺した。しかし、その任務は捨て駒を試すようなもので、現地ゲリラをも犠牲にするものだった。
    ヘンリーは第100大隊としてイタリア・フランスに送られ、過酷な戦闘の中で仲間を失い、自分自身も失っていった。その戦いも、戦果を競う師団長たちが、机上の駒を動かすような命令であった。
    この大戦は個人の妬み・恨みとは違った、国を動かす人々の思惑が始めたものであった。

    第五部 裁判
    ジローの裁判で再び会う、三人。ヘンリーは検事側の証人として、マットは弁護人側の証人として。そして第一級殺人罪で収監されるジロー。
    そして刑期を終えたジローに二つの封筒が・・・。



    日系アメリカ人としてのアメリカ社会での差別、戦争をしかけてきた日本への思い、戦争と言うものの犠牲。

    日本人としての戦争経験はテレビや本でなんとなく知ってはいるが、日系アメリカ人としての戦争は初めて知り、第100大隊についてもそのような部隊があったことに驚いた。

  • 「ドブ漁りを自覚する者は、懸命に聞こえのいい名目を探し、自らの行為を正当化しようと血眼になる」
    どの国家も個人も同じか。
    違うのはチカラをもつものと持たないものの差、そこは戦場でも平和な日常でも立場が違っても変わらなく立ちはだかる。
    それでも、それぞれのしっかりとした自らのアイデンティティというものはそれだけでは縛られない強さをもつ。
    それは日系アメリカ人として受けた日本やアメリカからの不当な扱いに対する感情を保つものであったのではないかと思う。
    最後のシーンは物語であるが、ジロー、ヘンリー、マットという日系アメリカ人を通してそのことを強烈に表していていろいろなことを考えさせられる、そして物語のエンディングとしてすごくよかった。
    星六つ

  • いかなる国も人種も宗教も是非を確定させることなく、登場者に強き信念を語らせる裏で弱き実態を与える。奇抜な構成、惹き付ける展開、迫力ある描写、納得の結末、秀作を得た気分。

  •  戦争って本当に悲惨だなと思います。
     生きて帰ってきても、心は傷ついている。この作品を読んでそう思いました。

  • 8月やから第二次世界大戦の話でもってことで読みはじめて1ヶ月。何とか8月中に読み終えた。日系人への差別やら強制収容やら、恥ずかしながらこの小説で初めて知った。主人公の三人のタイプがそれぞれ違っていて面白かった。ゴーフォーブローク(当たって砕けろ)の合い言葉を掲げて、過酷なヨーロッパ戦線を戦い続けた第442連隊。アメリカ生まれの日系二世とは言っても、やっぱり彼らはヤマトダマシイを持った人達なんだと思った。

  • 読みおわってぐったり。今の日本人にはあまりにもかけ離れた状況。人種差別も戦争もない。だけど今、読めてよかった。知れてよかった。

  • 上巻でたっぷりと人物や背景に時間をかけた後、満を持したように戦争に突入していく下巻。もちろん戦争の描写もすごかったが、ほぼ全体のどの場面にもでてくる登場人物たちの心情吐露が迫真だった。これでもかこれでもかと襲い来る苛酷な状況に人間はどんなことを見、どんなことを感じるのか秀逸なシュミレーションのようで息が詰まった。そしてそのどれもが、自分だったらと考えさせられるリアリティがある。戦争は汚い、戦争は悲しい。しかし、この世界では血を流すことでしか得られないものが確かにある。たくさんの日系人たちが血を流したから今のアメリカでの場所がある、同じように今の日本の繁栄もまた、あの当時たくさんの血を流して倒れていった人々の亡骸を礎としているはずである。いい悪いの問題ではなくそういった深い部分も考えさせられるテーマの小説だった。

  • 大変勉強になりましたし、読み応えは十二分にありましたが、少しわかりにくく感じられました。もう少し登場人物の深い心理描写を読んでみたかったです。

  • 真保裕一渾身の長編小説。

    舞台は第二次大戦中のハワイとカリフォルニアの日系人社会。
    パールハーバーへの日本軍の襲撃は、
    生活苦から新天地を求めて日本を飛び出し、
    必死の苦労の末、ようやく自分たちの生活基盤を掴もうとしていた
    日系人にとって、あまりにも過酷な運命の幕開けだった。

    実際に行ったことがないので、本当のところはわからないが、
    なんだかんだ言っても、アメリカという国は、白人の国であり、
    そこに住む白人以外の有色人種は、普通以上の努力を強いられる。
    差別のない社会を口で訴えるのは容易いが、
    実際問題として、肌の色の違いから来る悪しき先入観は、
    そう簡単に拭えるものではあるまい。

    ましてや日本と戦争をしている時期、アメリカでの
    日系人の立場は、非常に苦しいものだった。

    日系一世はもとより国籍が与えられていなかったようだが、
    二世の場合は、生まれたときからアメリカにおり、国籍もある。
    本人は当然アメリカ人としての自覚しかないのだが、
    国がそのような扱いをしてくれない。

    『敵性外国人』として、いわれなきスパイ容疑で逮捕される者もいたし、
    そうでなくても、財産を根こそぎ奪われて、強制収容所に送られたりした。
    何のことはない。虐殺にいたらないだけで、
    当時のアメリカも、ナチスと似たようなことはしていた。
    そんな中で、自らが『アメリカ国民であること』をアピールするには、
    志願兵となって、自ら進んで国家に命を差し出すしか
    なかったのだが、それとて最初は受けいられなかった。
    日系人は、結局アメリカを裏切り、日本の手助けをするに違いないと
    思われていたからだ。

    しかし、そのうち、欧米人からアジアを開放し、大東亜共栄圏を建設するという
    日本の大義名分を手助けするような、民族対民族の戦いになるのは、
    得策ではないと判断したアメリカは、
    次第に日系人の志願兵も受け入れるようになる。

    とはいえ、待遇は最悪。
    階級は最低で、部隊も白人とは別の特別部隊。
    そして、最も戦闘が激しく、戦死者が続出する最前線へと
    送り込む。
    結局のところ、都合の良い駒としか、考えられてはいなかった。
    それでも、日系人二世たちにとっては、自分たちの働きによって、
    日系人の待遇を少しでも良くしようとする思いが強く、
    気の毒なくらい、勇猛果敢な働きを示す…

    それは昔見た南北戦争における黒人の戦いを描く
    『グローリー』という映画を髣髴させる。

  • 涙無しには読めない小説は、今まで何冊も読んだ。
    しかしこんなにも、読み進めるのが苦痛なほど涙がこみあげて、
    何度も途中で本を閉じ、気の済むまで泣いてなんとか気力を振り絞るようにして読み進めるのは
    この本が初めてかもしれない。
    月並みな言葉しか浮かばないが、人間とは何か、深く考えさせられる。
    この感覚は、実際に読んでみないと伝わらないのではないだろうか。

    名シーンがいくつもあるが、私としては日本兵が出てくるシーンをあげたい。
    特に、捕虜になっていた日本兵だ。
    異常事態になったとき、真保さんが常日頃おっしゃられているように
    人は振幅が大きくなる。
    この日本兵は善悪の善の方に最大限に振られた良い例だと思う。
    責任感、祖国への愛、目の前の命への感情
    それに接した主人公たちの戸惑い
    しかしそれが戦争なのだと思う。国と国が戦っていても、実際前線で命のやりとりをするのは
    人と人なのだ。
    それぞれに感情があり、家族がいて、思いがある。

    ラストは個人的には意外ではあった。
    しかし、予想していたよりハッピーエンドだったので良かったかもしれない。
    戦争はそのあまりの大きさが、人や国に大きな爪あとを残す。
    残るのは傷だけれど、そこにこうした救いもある。
    少し救われる思いがする。

  • 面白かったです。堪能できました。鳥肌が立ちました。やるせなさは残りますが、前向きなラストがよかったです。

  • (限りなく4★に近い3で)
    とてもおもしろい小説。
    上下2冊で、両方ともたいそうな厚さなんだけど、ぐんぐん読めた。
    しかし、重い。読むのが辛かった。でも読まずにいられないというジレンマ・・・。


  • 途中で断念。時間があったら続きを読みたいと思う。

  • エピローグにあたる部分の
    最後のバーでの出来事は、必要だったのかな〜。
    日系人はだれも幸せになれなかったってことでしょ〜。
    日系人にとって救いのなかった時代背景を
    よく表していると思うけど、
    悲しすぎる読了感よね〜(;ω;)

  • 今まで読んだ作品がどれも面白かったので、著者で選んで図書館から借りてきた。 しかし他の作品と違いハラハラしながらどんどん読んでしまうようなものではなく、特に前半は読みにくかったが意地で読んだ。 真珠湾攻撃直前からの三人の在アメリカ日系二世たちの闘いを描いたものなので、史実に縛られる部分は展開が遅くても仕方ないと思ったが、登場人物たちには確実に惹かれていった。 最終章がすばらしく、一番ダークイメージだったジローに惚れた。 ハッピーエンドではないが、やはり希望を持たせて終わってくれた。 2007/12/8 読了。

  • 第二次世界大戦下の日系アメリカ人3人の話。迫害から逃れるため、家族を守るために志願した3人。
    最前線に回される日系人。仲間たちが次々と死んでいく…
    また、殺人を犯してしまい逃げるように語学兵となったが、捕虜となった日本兵からは蔑みの目でみられる…
    それぞれの苦悩。
    戦争の悲惨さと日系人の苦労が描かれている。(下巻)

  • 久しぶりにずしりとくるものを読みました。内容も知らずに借りた本。読んで、戦争の話だと知り、躊躇したものの読み進めました。
    ストーリーは、太平洋戦争時の日系人の話。小説なのでフィクションですが、触れる程度しか知らなかった日系人の苦悩というのか、置かれた状況をほんの少し知ることができたような気がします。

    下巻の最後の辺りで、思わず読む手を休め、天井を見つめてしまいました。予想はしていました。けれど、哀しく、そして今の幸せというものを感じずにはいられませんでした。

  • 最後まで違和感がぬぐえなかった。わざとこういう書き方をしたのかな?仲間と共に戦う勇気を持つことをいやに賛美している気がする。

  • 上下ものすごく分厚く、読むのが比較的早い自分でも結構時間かかった。
    真珠湾攻撃以降の日系人移民の話。
    重いし、ヘビーだし、辛い話だったけどラストですごく感動した。よかった。久しぶり涙でた。
    ちょうどプライベートライアンと父親たちの星条旗を見た後に読んだので戦争シーンも生々しく、怖かったです。人間の弱さ、もろさ、儚さ、そして強さを描いてあると思います。

  • 戦争によって、人生がこんなに変わるなんて。
    人種差別を受けた事がないっていうのは、幸せなんだな・・・。

  • 戦争が人格をスポイルする

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栄光なき凱旋 下の作品紹介

終戦の時は近づいていた。アメリカ軍は日本軍を罠にかける秘密の作戦を立案する。その命令を受けたマットは太平洋の小島でジローと出会い、彼の過去の秘密を知る。収容所から日系部隊へ進んだヘンリーは、仲間とともにイタリア戦線へ投入され、過酷な戦場に身をさらしていく。やがて彼らが再会する時、運命は三人に残酷なまでの試練を与える。愛、友情、生と死。魂を揺さぶる感動のエンターテインメント巨編。

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