- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093797818
作品紹介・あらすじ
この国にはいまも和歌山県の太地港、外房の和田港など全国四カ所を基地とする現役の商業捕鯨船が、たった五艘だけ存在する。総重量五十トン以下の小型捕鯨船が捕るのは、国際捕鯨委員会(IWC)による「商業捕鯨一時停止」対象外のゴンドウ鯨、ツチ鯨という耳慣れぬ小型種だ。本書は著者が太地の小型捕鯨船「第七勝丸」に乗船、鯨捕りの男達の姿を追い続けた真実の記録である。第14回小学館ノンフィクション大賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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東京神楽坂には本のセレクトショップとも言うべき本屋さんが、少なくとも2軒ある。
1軒は、その名前に親近感を抱く「かもめブックス」。もう1軒は本書を買った「神楽坂モノガタリ」で、店内にCafeがしつらえてあり、ビールも飲める。私が訪れた時は店休日前日の遅い時間だったため、ビールをタンクから抜く必要があるからと、本を買ったときに一杯すすめられた。迷わずビールを頂き、ソファに座り、買ったばかりの本を少し読んだ。
それから何か月経ったかは数えないが、ビールを飲みながら読み始めた本書を、ウイスキーを1ショット飲みながら読み終えた。
太地を母港に持つ勝丸の、ワンシーズンの捕鯨を描いたノンフィクションで、過去の史実である捕鯨時の海難事故である”大背美流れ”や、現在の捕鯨を取り巻く世界情勢を語りながら、勝丸の操業の現場が書かれている。驚くことに、勝丸は太地近海だけでなく、房総沖や知床沖まで出張って捕鯨している。やはり、心躍るのは鯨を捉える描写で、第7章の房総沖での捕獲シーンや、知床半島の静かな描写から、一気に転じて獲物を捉える躍動感に惹かれる。
捕鯨を取り巻く国際情勢に触れながらも、賛否を鮮明にすることを避けたところに、本書の読み易さがあると思う。その立場が”捕鯨”を一つの仕事として、また勝丸の船長や乗組員を捕鯨という仕事に取り組む職業人として書けた要因だろう詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
船と縁の無い著者の無謀な体当たり取材。 捕鯨に賛成なのか反対なのか白黒付けろと言われて取材者としての立場として悩み、船の上で村八分になることを覚悟して挑む姿が、なんとも哀れなのだが、そんなへっぽこなザマをさらけ出しながらもここまで書いたことに驚きを隠せない。第三者だからこそ書けたノンフィクションなのだろう。太地、鯨取り、現代の海の仕事師たちの姿を伝える一冊。確かに捕鯨は、農業や他の漁業と一線を画して特殊な仕事と思えるが、代々それに従事してきた人々の姿を知る機会が少ないことも、捕鯨について無知な人々を生み出しているともいえる。
異文化の隣人を知ることは、そこに住む人には簡単なようで難しいこともある。よそ者だからこそ、見られる視点、放言できるということもあるのだ。