五月の独房にて

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 92
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093797986

作品紹介・あらすじ

だから。だから、殺した。二人して私を侮辱し、笑い者にしたのだ。脅したり陥れるよりも、その罪は重い。だから、殺した。女の日常に潜む狂気の沸点を描いた戦慄のホラー・サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • 岡山美容師バラバラ殺人事件を基にした小説。
    殺人犯の頭の中を覗き見ていると、自分もおかしくなるかのような錯覚に陥る。
    ラストはゾッとした。言いようのない嫌悪感。

  • 結局自意識過剰なだけだったのでしょうか?
    独白形式の作品ははじめてですが、三人称も少し欲しかったかも
    でも主観のみのほうがまだ救いがあるのかしら

    ママが僕を嫌いになるはずがない、なんてわたしは言えたかな?
    ふと考えた。
    別に愛がたらなかった訳ではないけど、下に兄弟がいたせいか
    それとも愛なんて無意識のものだったからか。

    親に愛されてるなって特に実感した覚えあんまりない。
    こんなこというと語弊があるが、
    別に愛されてなかったわけではない。
    愛という概念がこっぱずかしくて家族にらあてはまらなかったのかなー

    多分客観的にみると愛されていた。とても。
    なかなか実感って伴わないんだよね、きっと。

  •  同僚の美容師を殺してバラバラにした中年女が、懲役16年の刑に服す女子刑務所の中で、事件のことを回想していく物語。

     殺人事件の犯人がヒロインというと、小池真理子の直木賞受賞作『恋』を思い出す。が、そこは『ぼっけえ、きょうてえ』の岩井志麻子のことだから、『恋』とは似ても似つかぬ作品になっている。『恋』は耽美的で薫り高い恋愛小説だったが、こちらはエロティックでおどろおどろしいホラーなのである。

     「ホラー」という言葉を使ってしまうと、現実離れした小説を思い浮かべる向きもあろう。だが、そうではない。この小説は細部がものすごくリアルだ。あまりにもリアルに殺人者の肖像が描かれるがゆえに、ぞっとする怖さを感じさせるのである。

     女子刑務所の描写、殺人という一線を超えるまでのヒロインの心理描写、殺人そのもののプロセスとその“後始末”の描写……いずれも、超リアル。畠山鈴香とか福田和子とか三橋香織(「渋谷セレブ妻バラバラ殺人」の犯人)とか、よく知られた女殺人者の心の中をのぞき込んだら、きっとこんな感じなのだろうな、と思わせる。
     とくに、畠山鈴香はイメージとは裏腹に読書家だそうだから、彼女が獄中で事件の手記を書いたとしたら、案外この作品に近いものになるのではないか。

     また、ヒロイン・彩子の少女時代からの回想部分が、これまたリアル。実母との激しい葛藤や夫との不毛な結婚生活の描写は、岩井自身の経験に基づいているのかもしれない。舞台となるのも岩井の出身地・岡山県だし。

     ただし、そうしたリアルな描写の合間に、ヒロインが殺した女性の幽霊が時折登場してくるあたりは、さすがホラーの女王・岩井志麻子。そして、その幽霊の描写が、作品全体から少しも浮いていない。「人を殺した女にとって、垣間見る被害者の幽霊は幻覚ではなく、“彼女にとっての現実”なのだろう」と思わせる。

     この小説はミステリではないし、どんでん返しがあるわけでもなく、ただ淡々と進んでいく。1人の殺人者が生まれ、彼女が服役を終えるまでの心の軌跡を、観察記録でもつけるようにたどっていくのだ。
     それでも十分面白いし、400ページ近い長編を一気に読ませる。岩井志麻子の才能は、『ぼっけえ、きょうてえ』のころから少しも枯れていない。ただの「エロくて変なオバチャン」ではないのだ。

    ■追記
     うかつにもあとから気づいたのだが、この作品は1994年に起きた「福岡美容師バラバラ殺人事件」をモデルにしたものだった(ただし、ノンフィクション・ノベルではない)。
     ということは、比較すべきは『恋』ではなく、桐野夏生の『グロテスク』(東電OL殺人事件をモデルにしている)だったか。

  • 女子刑務所に服役中の女が語り手。最初から最後までつらつらと、生い立ちから本心まで
    吐露し読者に訴えかけてくる。これがまた何と言ったものか…うんざり辟易してしまう。
    こんなに辛かったのだ、こんな酷い目に合ったのだ、悪いのはあの人なのだと延々続く話は
    自己憐憫に思えてしまい、凄惨な事件の詳細がこれまたキツい。気持ちが沈むだけでした。

  • 岩井志麻子の本、初めて読む。

    くどい表現やらが多くて、これさっきも聞いた、とか思いつつも、だだだっと読む。

    主人公に同情の余地があるのかと、実はこうだったという展開になるのかと思ったら、そうではなく、ただただ怖い人だった。

    後半部分も、うわぁ醜い、、、と感じつつ、女だなとも思うけど、でもこうはなりたくないと、ぞぞぞとなりつつ読み終わる。

  • 嫌な雰囲気が立ち込めている小説。はっきりいって嫌いなジャンルだけど、殺害シーンは見てきたように克明で寒気を覚えながら読んでしまった。
    破滅の物語。

  • あまり、好きなタイプの作品ではないが…。

    結局のところ自分勝手なだけの主人公。
    自分のやったことはすべて他人に責任があると思う人の極限のケースか。

    ☆図書館

  • 余りにも暗い!途中で読み終わるのを断念しました。

  • 岩井作品は「ぼっけえ、きょうてえ」に続く2読目。同じ岡山が舞台でしたが、やはり女性はコワイですね;; 図書館にて。

  • だから。だから、殺した。二人して私を侮辱し、笑い者にしたのだ。脅したり陥れるよりも、その罪は重い。だから、殺した。女の日常に潜む狂気の沸点を描いた戦慄のホラー・サスペンス(「BOOK」データベースより)

    自分でそうと意識できない自意識過剰な一人の女が、不倫の果ての殺人の経緯を刑務所内で独白するというストーリー。
    ひたすら暗く重苦しい独白のオンパレード。
    でも一番恐ろしいのはその内容ではなく、出所後の女の壊れ方。
    岩井さんらしい、女の狂気を描いた作品です。

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著者プロフィール

岩井志麻子 (いわい・しまこ)

岡山県生まれ。1999年、短編「ぼっけえ、きょうてえ」で第6回日本ホラー小説大賞を受賞。同作を収録した短篇集『ぼっけえ、きょうてえ』で第13回山本周五郎賞を受賞。怪談実話集としての著書に「現代百物語」シリーズ、『忌まわ昔』など。共著に『凶鳴怪談』『凶鳴怪談 呪憶』『女之怪談 実話系ホラーアンソロジー』『怪談五色 死相』など。

「2023年 『実話怪談 恐の家族』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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