ユージン・スミス―水俣に捧げた写真家の1100日

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著者 : 山口由美
  • 小学館 (2013年4月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093798440

ユージン・スミス―水俣に捧げた写真家の1100日の感想・レビュー・書評

  • 1冊の写真集がある。タイトルは『MINAMATA』。撮影者は著名な写
    真家ユージン・スミスと、妻であったアイリーン・美奈子・スミス(後に
    離婚)。

    チッソが垂れ流した有機水銀による公害被害の悲惨さを、世界に
    広めた写真集である。我が家にも1冊ある。古書店で入手したの
    だが、今でもページを開くのに決断がいる写真集だ。

    その水俣とユージン・スミスを取り上げたのが本書。このタイトル
    だけに惹かれて購入したのだが、大失敗だ。

    ユージン・スミスが水俣と向き合った日々を詳細に追っているかと
    いえばそうでもなし。当時、ユージンのアシスタントを務めていた
    石川武史の話をベースに、参考文献からの引用、水俣病患者
    家族の証言で綴っているのだが、どうにも上っ面を撫でただけ
    の印象を受ける。

    日本語をほとんど解さなかったユージンであったが、彼が水俣の
    人々の心に入り込めた人柄などは丁寧に書かれているのになぁ。

    『MINAMATA』掲載のいくつかの写真につて書かれているのだが、
    版権の問題もあるのかユージンが撮影した写真が本書には一切
    掲載されていない。これは写真家のノンフィクションとしては大きな
    瑕疵だろう。本書を読む者の誰もが写真集を所持しているはずも
    なく、私のように所持していても気軽に開ける写真集ではないと
    感じている人間もいるのだから。

    そして封印されたという写真「入浴する智子と母」についても、封印に
    至った理由の掘り起こしも中途半端だ。

    妻だったアイリーンに何度かのインタビューを行なったようだが、
    著者曰く「見解の相違」でインタビューの内容の一切が本書には
    掲載出来ないとのことだった。

    ならば、何故、作品として世に出したのだろう。しかも、この薄っぺら
    な内容で「小学館ノンフィクション賞」の受賞作品である。勘弁して
    くれよ、もう。

    著者は何を描きたかったのだろう。ユージン・スミスの肖像?水俣
    病のこと?写真の持つ力のこと?申し訳ないがこの著者には荷が
    重かったのではないだろうか。

    沢木耕太郎が長年ロバート・キャパに拘り、数々の謎を秘めた
    「崩れ落ちる兵士」を検証した『キャパの十字架』から受け取れた
    愛情がまったく感じられない。

    あぁ…書かないで欲しかった。この著者が書かなければ、他の
    ノンフィクション作家が賭けたかもしれないのに…。お願いだ、
    得意分野のホテルと旅のお話だけ書いていてくれっ!

  • 519.2-ヤマ  300303294

  • やはり本編は写真集『MINAMATA』にあるのだろう。添えられた付録の小冊子のような内容だった。それだけに本編を手に入れたくなる。ここで述べられた写真の一枚一枚を自分の目でじっくり鑑賞したい。(版権の問題かユージン撮影写真の掲載はなし。本文にそこらへんの確執を匂わす表記あり)。評伝としてはちょっと物足りないが、そうした食指を動かすツボはおさえている。しかしマケプレで現在¥17,279の高値を見て蛇の生殺し状態。

  • 水俣病患者を撮影し、有名な写真集「水俣」を発表した写真家、ユージン・スミス。彼が撮影した、水俣病の酷さだけではなく、患者である子どもに向けられる家族の愛情までも表現しようとした写真は大きな波紋を呼びました。

  • 水俣病の断片を知ることができた。ただ、後半になるにつれて何を言いたいのかよくわからない、独りよがりの内容に。もったいない。

  • 知っているけれど、知らなかった、ユージン・スミスと言う人物を知ることができた。また、忘れてはならない「水俣」を思いださせてくれた。水俣の人々が「福島」の人々を思うこと。それは、水俣を、水俣から、何ら学びえない私たち(がつくる)の、この日本という国の悲しくやり切れない姿、現実への嘆き、憤りに他ならない。

  • 1.山口由美『ユージン・スミス 水俣に捧げた写真家の1100日』小学館、読了。本書は20世紀を代表する写真家の最後の仕事は『MINAMATA』(1975)。本書はユージンが水俣で過ごした3年間を、妻やアシスタントの証言をもとに、水俣での交友、撮影生活と思想、人柄を明らかにする。

    2.山口由美『ユージン・スミス 水俣に捧げた写真家の1100日』小学館。「写真を撮っている時間は少なかった」と水俣の人は言う。スミスは被写体との信頼関係を前提に自然な表情を写し取る。そして職人芸ともいえる紙焼き作業を経て連作する。写真には詩文やエッセイが添えられる……。

    3.山口由美『ユージン・スミス 水俣に捧げた写真家の1100日』小学館。スミスが水俣を訪れたのは1971年、公害病認定から3年(発生の公式確認からは10年以上)。この時、水俣を訪れたカメラマンは単発的覗き見趣味取材がほとんど。それでも、患者家族は協力を惜しまなかった。

    4.山口由美『ユージン・スミス 水俣に捧げた写真家の1100日』小学館。スミスに限らず功名心は誰にもなくはない。しかし彼はそれから3年、水俣で過ごすことになる。写真のプロフェッショナルとしてだ。しかし、それは原田正純さんを想起させる「弱い方に立つ」立場である。

    5.山口由美『ユージン・スミス 水俣に捧げた写真家の1100日』小学館。助手の石川武志は「ユージン・スミスが水俣に来ていなかったら、報道の写真は、もっと荒っぽくていいという考えのままだったと思う。つまり、どれだけ凄い被写体が撮れるか、ということ。でも、ユージンは違った」と証言する。

    6.山口由美『ユージン・スミス 水俣に捧げた写真家の1100日』小学館。スミスが写真集に添えたメモ(信条)が印象的だ。PHOTOGRPHY IS SMALL VOICE THAT CAN RIGHT NO WRONG,THAT CAN VURE NO ILLNESS, THAT CAN

    7.山口由美『ユージン・スミス 水俣に捧げた写真家の1100日』小学館。スミスの撮影した親子の入浴写真は現在では公開されていない。「水俣展」(96年)にその有名な写真は販促物に使われたが、雑踏で人々に踏まれるそれに両親はいたたまれなくなったという。ベンヤミンのいう複製技術時代の問題を考えさせられてしまう。

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ユージン・スミス―水俣に捧げた写真家の1100日の作品紹介

水俣病を世界に告発した写真家の本格評伝

二十世紀を代表する写真界の巨匠、ユージン・スミス(1918-1978)の代表作であり、人生最後のプロジェクトでもあったのが、写真集『MINAMATA』(1975年)でした。なかでも有名なのが、胎児性水俣病患者の娘をいとおしむように胸に抱く母の姿をとらえた「入浴する智子と母」の一枚です。この写真は世界中に衝撃を与え、水俣の公害の実態を海外に知らしめる役割を果たしました。
写真集『MINAMATA』のプロジェクトは、妻アイリーン・スミス氏との共同作業でしたが、もうひとり重要な役割を果たしたのが、当時ユージンのアシスタントを務めていた石川武志氏です。ユージンが水俣で過ごした約3年間、彼と生活をともにしながら撮影活動を支えた石川氏の視点から、独特の撮影手法や患者との交流、写真にかける情熱、情の深い人柄など、これまで語られることのなかったユージン・スミスの「水俣」がよみがえります。
2012年、第19回小学館ノンフィクション大賞受賞作品。


【編集担当からのおすすめ情報】
「ユージン・スミスの仕事をここまで力に満ちて追求し続けた作者に感服した」(椎名誠氏)、「もはやたんなる取材者を超えて、なにか大いなる真実に肉薄していこうとする求道者の印象さえある」(高山文彦氏)と選考委員の先生方も絶賛した小学館ノンフィクション大賞の受賞作です。彼の生涯を追いかけた初の本格評伝をぜひお楽しみください。

ユージン・スミス―水俣に捧げた写真家の1100日はこんな本です

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