- Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093798686
感想・レビュー・書評
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2019年3月7日、津BF
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図書館にお願いしていた「逆説の日本史シリーズ」の最新刊(No21)を読む順番が回ってきて、正月休みを利用してこの本を楽しみました。
この本では、幕末を大詰めに迎えた明治維新を含めた4年間について詳細に解説しています。正当な幕府軍が長州を征伐していたはずが、逆転して、新政府軍によって責められることになる経緯が解説されています。
価値観がひっくり返る、激動の数年間をこの本を読むことで感じることができました。次からは明治維新後の新生日本について書かれることになると思います、今から楽しみです。
以下は気になったポイントです。
・横須賀製鉄所は小栗の提言により順調に進んでいたが、幕府崩壊で中断した。後にこの地は帝国海軍の基地、現在でもアメリカが使用している(p39)
・福岡藩主の黒田長博は、外交政策を建白できる人物であった、それは、開国してアメリカ・ロシアと同盟、イギリス・フランスと対抗するというもの(p48)
・慶応元年の直前にアメリカで南北戦争が終了し、ライフル銃が大量に余ったので、グラバーを通して日本に大量に輸入された。(p64)
・薩摩の名義で外国から武器や軍艦を買って、それを長州に供給する、長州は代金を払う。これを薩摩と長州の友好関係樹立の第一歩にしようとした(p71)
・幕府は世界一の金持ちであった、金銀レートの調整失敗(国際レートの四分の1で評価)により膨大な金が流出したのは、日本が莫大な金を所有していたから(p73)
・第一次長州征伐の後、参勤交代制を復活すると通達した(p74)
・徳川家茂は、1.7万の精兵を率いて慶応に元号が変わった5.16に京へ向かった。徳川家康以来の金扇の馬印を従えていた(p78)
・兵庫開港を独断でやろうとした老中阿部・松前を罷免して、官位も没収すると朝廷から幕府へ命令が届いた。これで事実上、幕府は瓦解した(p84)
・第二次長州征伐において、当初は5つの国境から攻める予定であったが、広島の芸州が制式に戦線離脱した(p128)
・この時から日本の戦争は長州が変えた、幕府のゲベール銃に対して、長州のミニエー銃は飛距離も破壊力も格段の差があった(p133)
・幕府海軍の戦艦がわずか3年で時代遅れになったのは、最初は日本が西洋のお古を買わされていたから(p138)
・将軍となった慶喜は、フランスとの結びつきを深め、家康以来の老中合議制を廃止。陸海軍、外務、会計、内務、司法の6局をもうけた(p164)
・江戸末期において種痘をまったく行わなかったのは、朝廷関係者、つまり天皇と公家(p166)
・孝明天皇の急死がなければ、倒幕の密勅、王政復古の大号令、もあり得ない(p168)
・日本産の絹は品質が良く、特に海外では高値で売れる、これが小栗の幕府再建の切り札であった。幕府がフランスとの600万ドル借款の返す根拠(p179)
・大政奉還については、やるかやらないかという議論はあったが、そもそも前提がおかしい、と言った人間は一人もいない(p202)
・「ええじゃないか」とは、1867年の夏から翌年にかけて、東海・近畿地方を中心に起こった熱狂的な乱舞を中心とした民衆行動(p213)
・ええじゃないか運動のきっかけは、異常なインフレの進行による、未来への絶望感かもしれない、最大の被害者は固定給のうえに貧しい下級武士(p215)
・国際レートに合わせるために、金の価値を4倍(銀の価値の切り下げ)にしたが、この結果、物価も連動して4倍になった(p216)
・公家は江戸時代に137家、家格の一番上が、5摂家、以下、清華、大臣、羽林、名、半、新家があった(p226)
・警察は必ず相手に投降するように呼びかけないといけないが、軍隊なら無警告で攻撃できる(p246)
・武士から見れば、町奉行や所司代の与力、同心は、穢れた存在であり、差別すべきものえあった。罪人に触れるということなので(p246)
・王政復古を進めるにあたって、薩摩長州、土佐の行動だけがクローズアップされるが、実は、岩倉・大久保コンビは、他に芸州浅野家と、尾張徳川家を味方に引き入れていた。(p255)
・鳥羽伏見の戦いで、最新式の銃器を持っていた歩兵隊が最前線に配置されていた、負けたのは銃器の優劣でなく「弾込めを命ぜられていなかった」のが原因(p288)
・家康が作った保険(水戸家)を台無しにしたのが、八代将軍の吉宗。水戸徳川家の七男だった慶喜が、将軍継承権のある一橋家に養子に行ったので系譜がリセットされた(p296)
・慶応4年1.4の朝、京の東寺に錦旗が翻ったという報に続き、慶喜の心を砕いたのは旧幕府軍の重要拠点である淀城と、藤堂藩が官軍側に寝返ったこと(p306)
・新政府はカネがなかったので、国家の一年分の予算に匹敵する300万両分の太政官札を刷って作り上げた。流通させられないので三井、鴻池のような豪商に押し付けて、小判を強制的に徴収した(p347)
・日本最大の権力を持つ雄藩(備前藩)が新政府の陣営に加わり、軍事的優位を決定的にした(p380)
2015年1月10日作成 -
例によっての逆説の日本史。相変わらずの面白さ。
激動の時代であったこと。そして史料が数多く残っている
ようにそれほど遠い時代ではないこと。歴史を思う人に
とって、それぞれの解釈が成立しうる幕末に人気があること
が非常によくわかる、そういう一冊でもあった。
ま、わたしはそれほど幕末には思い入れがないので気楽に
楽しませていただきました(笑)。 -
いよいよ、幕府の幕が閉じる。時代小説や大河ドラマで何度もお馴染みの時代。新しいネタはないだろうと思っていたが、改めて井沢先生に敬服。
高杉晋作は五卿を嫌っていた。成程。偽勅を出しまくり長州を煽りまくり、三条とか五卿ってロクでもない奴らだ。
もっとロクでもないのが長州。高杉は俗論党をクーデターで打ち破るが、本心の高杉は開国派なので、命辛々逃げ出してしまう。「長州はアブナイ。」ホントにそう思う。
ピンチヒッターは桂小五郎。剣術の達人なのに人を切ったことがないという。この人、明治以降もこれという功績が見当たらないが、大した人物なのかも知れない。
慶喜は島津久光が四候会議を催し、幕府を支えようとするのにぶち壊す。最後は敵前逃亡。「マイナスのヒーロー。」幕府を滅亡させるために歴史に登場したかのよう。自分の頭に自信満々だけど、結局、組織を潰しちゃう奴って今の政治家にもいるなあ。
江戸での薩摩の破壊工作。それに対する幕府からの討薩表。この経緯は知らなかった。大政奉還から決まった線路を進むような歴史と思う勘違いを気付かされる。
江戸に逃げ帰った慶喜は、天璋院や和宮に取り入ろうとするが相手にされず。「武士らしく切腹すれば。」という反応。このクダリは司馬遼太郎の小説と違うところ。
竜馬の暗殺のついての考察。皆が知ってるデータから解き明かす推理に感嘆。井沢先生は名探偵だ。
竜馬の船中八策が容堂の建白、そして新政府綱領に繋がっていく。彼には未来が見えたんだと思う。最近は竜馬はそれほどの存在じゃなかったとか、極端な意見ではグラバーの手先だったとか、変な説もある。
兎も角、常識的評価を否定するのが目的になっていないか。それと比べて、井沢先生は意表をついた見解も多いが、極めて真っ当だと思っている。