役者は一日にしてならず

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093798693

感想・レビュー・書評

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  • 『すべての道は役者に通ず』から知る。
    朝日新聞201545掲載
    日本経済新聞2015329掲載
    週刊読書人20151211掲載 評者:松永正訓(小児科医,作家)読売新聞2018114掲載 評者:戌井昭人(作家)
    朝日新聞2022917掲載 評者:サンキュータツオ(学者芸人)

  • はじめに とところで三國連太郎のインタビューについて触れている。三國連太郎の演技の原点は阪妻にあったという話だ。この話を聞いて、名優から話を聞くことの意義を感じて、この企画はスタートしている。実際これだけの名優さんの演技に関する取材ってされてなかったですね。どれも興味深いし、芸の深さを感じることができる。少し印象に残ったところを抜書きする。

    千葉真一(高倉健について)「あの人はいつでも人生に感謝している人なんだと思います。だから絶対に偉ぶらない。どんなぺーぺーの俳優さんが来ても、立ちあがって『高倉です』と挨拶される。僕も、あの人のおかげで人間を変えられました。僕は健さんの足元にも及びませんが、あの人みたいになりたいと今でも願っています。』
    中村敦夫(三船敏郎について)「びっくりするくらいイイ人なんですよ。豪快なスターと思われがちですが、実は生真面目な人で。朝、三船プロの玄関前で掃除をするんです。それでエキストラが来ると『ご苦労さまです』と挨拶する。そういう人なんですよ。」
    林与一「今でも、主役が花なら、その横にいる葉っぱでいたい。ただ、枯れて汚い葉っぱだと花が綺麗に見えないから、青々とした大きな葉っぱでい続けたいとは思っています。」
    「長谷川一夫も言っていました。『芸の上手い下手には観客それぞれに好き嫌いがあるけど、汗をかいている姿はみんな好きなんだ。だから、物事の姿勢はいつもちゃんとしておけ』って」
    松方弘樹「昔の映画の所作事が素晴らしいのは、時間をかけているからです。僕らの若い時はテストを二十回もやってくれましたが、今は一回か2回ですから、それでは上手くなりません。
    悲しいです。いい時代を見ているだけに、今のテレビドラマや映画の現場に行くと、悲しい。」
    杉良太郎「『時代劇をやってきました』という人がいます。ほとんどの方は時代劇をやったのではなく、『鬘と着物をつけてお芝居をしました』と言うべきです。時代劇は、その時代を生きた文化や週間をどこまで自分のものにできるかということが大切です。」
    「楽屋を出る前に自分の部屋にいるものたちに『今日が俺の命日だ』と言って、舞台に上がっていました。毎日、すべてが真剣勝負。』
    綿引勝彦「悪を演じるには、悪と思わないで演じることだね。その道に行くしかなかった人間だと思って演じる。そうしないと面白くないの。」
    「演劇の世界には『感情は後払い』という言葉があります。下手な役者がやると興奮した芝居ばかりやってしまいますよね。
    伊吹吾郎「僕は今でも悪を演じる時は単なる悪役ではなくて、必要に迫られて結果的にそうせざるをえなくなった悪をやるようにしています。」
    田村亮「リアルにやることが芸なんじゃなくて、リアルに見せることが芸なの。メリハリつけてちょっとオーバーにするからお客さんも楽しんでくれるんですよ。本人のままやっても味も素っ気もなくなると思う。」

  • 映画評論家という職業は、絶滅危惧種的存在にしか思えないけど、春日太一の本を読むと、映画史家というのは必要なんだなあ毎回思います。

    短時間のインタビューで、ベテラン俳優達から、実のある話をうまく引き出せる著者の手腕は鮮やかです。


    登場している俳優たちは、名前と顔は知ってるけど、邦画もTVドラマも殆見ない自分的には、俳優としてというよりも、バラエティ番組などで見かける大御所俳優枠というポジションのおじさん達。という程度の認識しかありませんでした。

    例えば、松方弘樹なんて、昔「元気が出るTV」でただ笑ってるだけの、おじさん。と思っていたので、時代劇に対する思い入れの深さとかが書かれていて、良い意味で、自分の中での新発見でした。

    遺作の「希望の国」が良かった夏八木勲のインタビューとかも興味深かったですが、個人的には、前田吟が恵まれない出自であることが書かれていた事と、仕事に対する姿勢のビジネスライクな割りきった感じに考えてる所が、印象に残りました。

    他の読んだ方のレビューを読むと、仕事論である。という感想が多いですけど、これを突き詰めて考えてみたら、例えば仕事をしている上で、自分が少し悩みにぶつかった時に、もし身近にこういう上司達がいたら、相談に乗ってもらいたいな的な感想を自分は持ちました。

    第二弾も出版されるそうなので、それも早く読んでみたいです。

  • 名優16名のロングインタビュー集。映画やドラマを見ていて、これは一朝一夕ではないな、積み上げてきた膨大な経験から滲み出てるんだろうな、という俳優さんがいる。その蓄積層の中身が何なのか、この本でわかる(もちろん膨大の一部ではあるけれど)。皆さん技術を持った職人であると同時に生活や悩みを背負った一人。こだわり方などは他の仕事をしている人でも参考になる。赤と黒の装丁がカッコいい。

著者プロフィール

映画史・時代劇研究家。1977年東京都生まれ。日本大学大学院博士後期課程修了。映画界を彩った俳優とスタッフたちのインタビューをライフワークにしている。著書に『時代劇聖地巡礼』(ミシマ社)、『天才 勝新太郎』(文春新書)、『ドラマ「鬼平犯科帳」ができるまで』(文春文庫)、『すべての道は役者に通ず』(小学館)、『時代劇は死なず! 完全版』(河出文庫)、『大河ドラマの黄金時代』(NHK出版新書)、『忠臣蔵入門 映像で読み解く物語の魅力』(角川新書)など多数。

「2023年 『時代劇聖地巡礼 関西ディープ編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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