仁義なき宅配: ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン

著者 :
  • 小学館
3.66
  • (22)
  • (72)
  • (51)
  • (7)
  • (3)
本棚登録 : 527
感想 : 78
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093798747

作品紹介・あらすじ

前代未聞の潜入労働ルポ!

いまや日本最大の成長産業とも言われる宅配ビジネス。ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の大手三社は日々、どこよりも「速く安く多く」運ぶための苛烈なシェア争いを行っている。だがその一方で、アマゾンをはじめとするネット通販の「即日宅配」まで可能にする宅配業界の現場は、いままでベールに包まれたままだった。そこで著者は、宅配ドライバーの助手に扮し、あるいは物流センターのバイトとして働くという、「潜入労働ルポ」を敢行する。そこで見えてきた、宅配戦争の「光と影」とはーー。アマゾン、ユニクロの内幕を暴き「企業に最も嫌われるジャーナリスト」の異名を持つ著者が放つ、衝撃のビジネス・ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み

  • 宅配業界の立場が弱い、ある種建設業界のような下請け構造になっているメカニズムがよく分かりました。

  • 仁義なき宅配: ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン 単行本 – 2015/9/2

    宅配に送料無料はあり得ない
    2016年3月22日記述

    ユニクロ帝国の光と影を著した横田増生氏(よこたますお)による著作。
    1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て米国・アイオワ大学ジャーナリズム学部にて修士号。
    1993年に帰国。
    物流業界紙「輸送経済」の記者、編集長を勤める。
    1999年よりフリーランスとして活躍している。

    宅配業界について取材しまとめている。
    Amazon以来の潜入取材もおこなっており、ヤマト運輸羽田クロノゲートでの労働実態がわかる点も本書の貴重な点である。(第7章)
    夜勤の内4割は外国人。
    ベトナム人が多い。
    著者が次々と流れてくる荷物に対して割れ物シールだの天地無用シールに対して怒りを感じる、丁寧に扱って欲しければ上乗せ運賃、正規運賃を払うべきだと
    主張するのはよく分かる。
    自分もかつてFedExの貨物上屋にて似た作業に従事していたのでその辺の感覚は同感だ。
    実際に荷物、貨物を投げたりしていたし・・・。
    (それくらいしないと時間に間に合わない。物量多すぎが原因もほぼ同じ)
    アルバイトが2ヶ月で一度入れ替わる、入れ替わりが激しい割に教育体制がなっていない。
    怒鳴るだけのヤマト社員達などの問題点も散見される。
    今は多少は改善したと思いたい。
    出来ていない点は羽田クロノゲート以外のベースの方も自分の事として改善して欲しい。
    ヤマト運輸も初めて働く人への教育に今以上に取り組む必要がある。
    教育映像DVDを作り必ず見せるとか。

    著者もはじめヤマト運輸、同労働組合への取材を体よく断られ、取材に苦労している。
    (企業への潜入取材やユニクロ本で企業への批判もする著者にヤマト運輸側が警戒した為であろう。これはやむを得ないと思う)

    宅配業を構成する大手3社(ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便)を取り上げていてこの宅配業界の現状、なんとか運賃、料金適正化に努力している姿が伝わってきた。

    幹線輸送での佐川急便による2度に渡る下請けへの値下げ。
    幹線輸送についてはBOX輸送のヤマトに分があると思える。
    たとえ2度値下げした佐川よりヤマトの方が未だ幹線輸送代が安いとは言えかかる時間はヤマト運輸の方が良い。
    (関東関西間が佐川9万、現在8万、一方ヤマト7万)
    ロールボックスパレットならトラック積み込み、降ろしは10分ほどで済む。

    3社のこれまでの歴史を取り上げた章を読んでも
    佐川急便は他社への乗っ取り方法で全国拠点を増やしていく。
    政治家への賄賂、ヤミ献金で便宜を図ってもらうなど感心しない事が多い。
    佐川清、東京佐川急便の渡辺広康をはじめタニマチ気質があった点も経営者としてどうなのかと思えた。
    その点ヤマト運輸は地道な販路拡大をしてきた。
    免許を出さない運輸省との闘いをはじめ世論を味方につける手法をポピュリズムと批判する著者の考えには賛同できない。
    佐川急便のようにヤミ献金をしろとでも言うのか。
    消費者目線を当時から意識していた小倉昌男氏の方向性は正しいだろう。
    正確に間違うよりも漠然と正しくあるべきである。
    *表立って運輸省と戦うのが小倉氏で、その裏で運輸省を懐柔するのが3代目社長となる都築氏の役目だったという。都築氏の指示で運輸省の担当課長へビール券を持って行ったことのある部下がいるようだ。
    また宅急便を開始したのに米国UPS社を参考にしたと著作で述べている。
    しかし現実には佐川急便をはじめとする日本国内の伝統的急便事業を熱心に研究していたようだ。

    ヤマト運輸のバリューネットワーキング構想の投資2000億円の内
    1400億円は羽田クロノゲートの投資。
    現在の宅急便16億個の内個人間の荷物は1割。
    大半は企業発個人向けの荷物である。

    本書の足りない点を指摘すると
    日本郵政の現場への取材が不足している感は否めない。
    ドライバー取材や潜入取材が郵政だけないし・・・。
    あともうちょっと写真を豊富にすることは出来なかったのだろうか。
    ルポタージュ、ジャーナリズムとしてややパンチ、リアリティに欠ける。

  • 宅配は生活の一部になっている。
    ネット通販したり、身内に荷物を送ったり。
    宅配業者さんには感謝です。
    だけど、宅配の仕事をしろと言われたら厳しいですね。
    クロノゲートでの話は、衝撃。
    慣れというのはいつでもどうしても出るよね。
    なんか考えさせられるな~

  • インターネットの発達とともに、ネット通販で購入する人も増えていますが、消費者は便利を享受しても、その裏で働いている人たちがどれ程大変か?その一つに、配送という物がありますが、この当たり前に届くシステムの現場の現場をルポした一冊です。

    作者自らが、その現場で実際に働いて分かったこと、それは消費者が思う事と離れている現実が。表に見えにくい部分だけに、それがどのようにして成り立っているのか。

    確かに、送料無料も当たり前と感じてくる昨今のネット通販も、著書を読むたびに考えさせられます。

  • 横田増生の著書は、丹念な取材や現場潜入という徹底した情報収集とともに、取材対象とは距離を置いた俯瞰的で冷静な分析がバランスしていて、読み応えがある。かつてのアマゾン潜入記、訴訟沙汰になったユニクロ本、そして少々意外なテーマの中学受験に関する本は、どれも面白かった。
    今回、著者の得意分野である物流で、消費者にも身近な宅配便を扱うということで、これは読まずにはいられなかった。しかも、ヤマト運輸の羽田クロノゲートへの潜入記も含まれている。
    本書で、ヤマト、佐川、日本郵便という宅配ビッグ3の歴史、ポリシー、得意分野などがよく分かった。また、セールスドライバーへの取材や潜入記によって、宅配便の抱える問題点も明らかになった。しかし、何か物足りないのも事実。自分でもよく分からないが、読み終わったときの納得感が少ないのだ。本書への期待が高すぎたのだろうか。

  • ネットで注文したものが即日・翌日に届くというのは素晴らしいし、ほとんどのショップでは送料無料がうたわれている。
    が、当然、これは商品代に配送料が含まれているわけだし、商売でやっている以上、コストである配送料には値下げ圧力が強く働き、最終的には物流業界で働く労働者の酷使という形で付け回される。

    読まなくても分かるような話がほとんどで、あまり新味はない。宅配業界のブラックぶりをあげつらうような内容ばかりで、ロジスティクスなどのオペレーションについて期待して読むとやや裏切られたような感じ。

    ・やはりアマゾンの影響力はすさまじいものがあり、2013の佐川の取り扱いが13.5億個、ヤマトが14.8億個であったが、2013春に佐川がアマゾンから手を引いて12.1億個に、ヤマトは16.6億個になった。約6000万個がアマゾンの取引と推測されている。

    ・佐川はアマゾンとの契約をとるために一個250円ちょっとという値段でやっていたらしい。今のヤマトの運賃の280円程度だという。しかし、この業界は一個250円がギリギリ採算ライン。しかも佐川は下請けをよく使うが、ヤマトは使わない。これは下請けに払う値段が宅配便130円、メール便40円、と一個当たりの値段になってしまうため、規模の経済が働きにくくなることを小倉が嫌ったのだという。ヤマトは自社のセールスドライバーでやっているので荷物が増えればその分がまるまる会社の利益に成るが、佐川は増えた分の儲けは下請けに行ってしまう。

    ・これまではヤマトVS佐川という戦いだったが、佐川は適正運賃を求めてアマゾンとの取引から手を引いた。が、日本郵便が巻き返しを図っており、ヤマトVS日本郵便という戦いになっている

  • ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3大宅配業者の仁義なき戦いを取材したルポ。宅配業者の実態を探るため、取材だけでなく、短期アルバイトとして仕分センターへ極秘潜入する著者にジャーナリスト根性を見た。

    ネット販売により、企業発個人向け荷物が急増した時代にあって、その荷物を届ける宅配業は成長分野だ。しかし、アマゾンをはじめとする大手ネット販売業者がウリにするサービスは「送料無料」。顧客にすれば、宅配業者とは料金を払うことのない、目に見えない存在だ。それに加えて、業者間の熾烈な競争。営業努力に見合う料金を徴収することができない。

    それでも荷物を時間通り日本全国へ届けなければいけないし、その設備投資も必要だ。その結果、宅配業者は従業員へ無償で壮絶な努力を強いている。

    客がお金を払いたくないサービス業になってしまい、従業員へ適正な賃金を払うことができない。そんなドツボにはまっている3大宅配業者に将来の光明はあるのか。

  • 過酷な勤務体系の中、低賃金で多くのサービス残業を強いられている宅配業。深夜の倉庫作業の多くが外国人によってまかなわれて居ると言うのも納得。実質コンビニのバイトよりも安いとは、ちょっと信じがたい現実。1利用者としての利便性に感謝しつつ、考えさせることが多くありました。配達員による再配達の手間を減らすためにも、今後コンビニでの受け取りなどを考慮に入れようと思います。

  •  宅配便に関して著者と同じような着眼点(疑問点)を持っていたので興味を持って読み進めた。帯にもある、「潜入労働ルポ」的な部分は、最終章のあたりだけだったので、少し期待外れで物足りなさを感じたが、その他の部分も知識としては勉強になった。
     最近は書籍購入やCDレンタルでも宅配便を頻繁に利用するようになった。宅配業界が健全に存続するためにも、本文中で著者が述べているように、消費者側も利便性に応じた一定程度の負担をしていく必要があると感じた。

  • 新聞の広告欄に記載があり興味を惹かれた1冊。これを読むと時間指定や再配達がどれだけ非効率で、また送料無料を可能にすることがかなりの負担を強いていることが痛感させられる。今後の宅配サービスを継続させるためにも業界全体で見直しの必要性を感じた1冊。

全78件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

横田増生

一九六五年、福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。九三年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。九九年よりフリーランスとして活躍。二〇二〇年、『潜入ルポ amazon帝国』で第一九回新潮ドキュメント賞を受賞。著書に『ユニクロ潜入一年』『「トランプ信者」潜入一年』など。

「2022年 『評伝 ナンシー関』 で使われていた紹介文から引用しています。」

横田増生の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
エラ・フランシス...
佐々木 圭一
宮下奈都
塩田 武士
北野 武
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×