県庁の星

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093861502

感想・レビュー・書評

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  • お役人根性丸出しだった聡がスーパーの人々や業務にふれるうちに変わっていく様子が小気味よかった。爽やかな読後感。

  • 公務員絡みの本ということで、手にした1冊。県庁のエリート職員である主人公が、民間研修に派遣され、そこで1年を過ごすというストーリー。研修に派遣された同期の中には、研修の意味を感じられずに根をあげる者も出てくる。主人公も、初めは派遣先であるスーパーの体質についていけず、お役人的な発言や行動が目立ち周囲を困惑させるが、彼のすごいところは、そこで腐らずに、疑問に思ったことをそのままにせず、きちんと相手に対して問題提起をするところ。そして、彼の起こした1つの行動が問題の改善にとどまるだけでなく、そこで働く従業員の態度や店全体の体質改善へとつながってゆく。
    こうして改めて考えてみると、主人公はきちんとPDCAサイクルを行なっていることがうかがえる。まず、店側に対して、意見書を提出し(PLAN)、実際に、その意見書に従って改善する(DO)。主人公が特に力を入れていた惣菜弁当については、当然売上によってお客様からの評価がくだされる(CHECK)。それに対して、改善策を打ち出す(ACT)。
    彼のスーパーでの成功を促した要因は、3つあると思う。1つは、彼がどんな場所であっても、腐らずに、自分が疑問に思ったことをどんどん相手にぶつけて改善を図ろうと模索するところ。2つめは、その彼の行動に周囲の人々が同調し、全体を巻き込んでしまうところ。そして、3つめは彼の成長力。初めは頑なだった考え方や態度も、周囲の意見や考えを取り入れることで柔軟性が出てき、最終的には従業員との信頼関係や協力関係が芽生え、惣菜弁当の売上競争に勝つことができた。
    他に研修を受けていた同期についてはあまり触れられていないが、中間報告の様子を見ていると、研修生の中でこんなにも人間として成長できたのは、主人公だけなのではないかと思う。ただ、研修終了後についてはあまり描かれておらず、せっかくの研修での成果が今後どんな風に県庁の業務に活かされるのかが見えなかったことが、少し消化不良。
    また、研修先のスーパーの話と平行して進んでいた話たちも、結局メインの話に対してどのような意味を持っていたのか、よくわからない。
    主人公を取り巻く話はまぁいいとしても、主人公の教育係であった二宮の話がどうしてクローズアップされたのか、別れた旦那や息子との関係性はどうなるのか、私の読解力では推し量ることができなかった。
    (とりあえず、話的には、主人公とともに二宮も母として成長していく姿を描きたかったのか。句の作り方を習ってから、感情の層をたどるようになり、息子との関係性を取り戻してきているということなのか。…実は、二宮が毛嫌いしていた旦那さんや子供扱いしていた息子さんの方が考え方がしっかりしていて、よく見えていなかったのは二宮の方だったように思えてならない。f(^^; )

  • 1年間民間のスーパーで研修することになった、役所勤めの県庁さん。

    役人であり硬い頭で生真面目で人の気持ちを察することができないが故に
    民間のふにゃふにゃなやり方に怒り心頭。

    付き合っていた女の子にも詐欺られ、凹む毎日。

    けれどめげずにひた向きに、スーパーの店員全員と力を合わせ
    スーパーに活気をもたらす
    愛と勇気と気合いの熱い物語。

    著者の書く話はなかなか好きかも。
    やさしい言葉がなかなか言えないぶきっちょな人がよく出てくる。

    ほぼ会話で話が進んでいくから漫画みたいに読める。
    映画も観たいと思った!)^o^(

  • 先に見ていた映画と比べると、少し物足りなく感じた。

  • 出張中に読破。
    頭を使いたくなかったので、楽しそうなのを
    図書館で借りました。

    映画のイメージ(本編を見てないのでCMですが…)が強かったのですが、少し設定が変わってるのかな。

    いいと思います。

  • お役所小説でもあり、スーパーマーケット小説。
    映画化もされた作品です。

  • テンポがよくて、コミカルで、楽しい作品。
    エリート公務員が、民間企業で知る現実とは。
    最初は鼻持ちならなかった主人公だけど、だんだんと悪くない気がしてきた。
    元々優秀な人材なのだから、正しい方向にその能力を向けられれば、これほど頼もしいことはない。
    皆が一つになる最後は、清々しい。
    ちょっぴりじーんときた。
    映像化にもぴったりだと思う。
    映画があったと思うので、機会があったら見てみたい。
    http://koroppy.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-fa80.html

  • ■「お前、変わったな」「そうか? だとしたら・・嬉しいよ」

    書籍「県庁の星」(桂望実著・小学館刊・255頁)から。
    先に映画を観てしまったから、ちょっと物足りなさは感じたけれど、
    じっくり読み直す時間がある分、メモは多かった。
    というより、地方公務員の私には耳が痛い台詞がぶつかり合い、
    どのフレーズでも、この「気になる一言」が書けるほど、
    インパクトのある言葉、なるほどと思える発想・視点が溢れていた。
    そんな中、1年間の民間研修を終えた主人公に、同僚の県庁職員が
    「1年間、民間研修で魂をすり減らしただろ。
    退院したばかりの病人みたいなもんだ。県庁に戻って・・1週間だろ。
    社会復帰できたか?」と声を掛けるラストシーンがある。
    「魂をすり減らしてなんかいないよ。
    誘われて、新鮮な空気を入れてもらったようなもんだ」と答える。
    民間研修で掴んだ感覚が「民間」を上から目線でみることがなくなった。
    さらに「民間」のやる気を、自分なりに評価しようとしている姿を見て
    同僚が呟く。「お前、変わったな」
    それを受けて主人公の口から出た、素直な気持ちが
    「そうか? だとしたら・・嬉しいよ」である。
    1年が経ち、誰もが失敗企画だったと感じた「民間研修」は、
    実は一番大きな実を付けたことを、この台詞は物語っている。
    民間研修は「民間の仕事の仕方(費用対効果)を学ぶのではなく、
    民間で働く人の意識・考え方を学ぶこと」
    そんなメモをして、本を閉じた。

  • 正直言って、うすっぺらいなーって感じ。
    読み始めて数ページで展開が全部予想できてしまったー。
    それでも、もしかして予想もしない展開になるかも?!と淡い期待を抱いて読み進めてみたけど、見事に予想通り(苦笑)
    この手のストーリーは今までにもあるしねー。

    そして、登場人物も魅力不足。

    さらに、同じサービス業の私としては読んでてイライラしたー!
    こんなんで売上が伸びるならどこのスーパーも苦労なんてしないっての。

  • テンプレすぎる“ザ・お役人”な主人公、聡。
    エリート意識が強すぎて視野が狭い。全力で空回り。
    能力の高い自分にはもっと相応しい仕事を…
    とか言っちゃうあたりにイラッとしつつ。
    そしてもう一人の主要キャラ泰子さんも、すごく肩肘張ってるというか変に力入ってる感じ。
    聡のことを“ちっちぇえな・・・”って内心小馬鹿にしても、根っこの部分では同じ穴のムジナな気がする。
    乱暴にまとめると、二人とも一生懸命なあまり視野が狭く、頭が固くなっていて
    自分と違う意見が受け入れられない・・・というかそもそも違う視点からの物の見方が頭に無い。

    でも、そんな二人が少しずつ変わり始め、歯車が噛み合ってからの展開は爽快。
    周りの人のふとした助言をきっかけにみるみる視界が広がって行き、連鎖反応のように
    周囲も巻き込んだ大きな変化となっていく・・・

    読んでいて気持ちいいし、何よりこれって結構すごいことだと思う。
    プライド高い人だったり、何十年もずっとそれで通してきた人が自分を変えるのって
    なかなか難しいよなぁ・・・と。

    進化して県庁に戻った聡は、いかにもなお役所仕事の世界で壁にぶち当たることも
    きっと多いだろうけど、確かに星になれるんだろうな。。。

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著者プロフィール

一九六五年東京都生まれ。大妻女子大学卒業後、会社員、フリーライターを経て、二〇〇三年『死日記』で「作家への道!」優秀賞を受賞し、デビュー。著書に『県庁の星』『嫌な女』『ハタラクオトメ』『頼むから、ほっといてくれ』『残された人が編む物語』『息をつめて』など。

「2023年 『じゃない方の渡辺』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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