- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093861687
作品紹介・あらすじ
私ね、後、一週間で死んじゃうの-。ごく自然な流れで惹かれ合い付き合いだした僕達に、突然訪れた悲しい出来事。誰もが逃れることのできない死を見つめて過ごした7日間。
感想・レビュー・書評
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図書館で借りた。
嶽本野ばらは「スリーピングピル」以来の読書。
私にはロリータファッションへの憧れは無いが、年若い少女なら一度はそんなのに憧れるのだろうか?昔、ピンクハウスが流行ったように。
ロリータファッションと薬、薄命な少女というのはなんと相性がいいのだろう。ロリータ服の少女がメンヘラがちなのは何か因果関係があるのだろうか…。
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ああ〜〜〜〜懐かしい…。
そうそう、こういうのが野ばら節だよな…。
ロリータ系ブランド名称の羅列っていう字面がなんかもう懐かし過ぎわろた。 -
よくある、あと〇〇日で死んでしまうので、やりたいことをやる!というお話。
ロリータフアッションについてや、軽快な描写は面白く読みやすかった。 -
「あと一週間で死んじゃうの」そう告げた彼女との、真摯でイノセントな一週間…。
似たような話、もちろんあります。できてるパターン、と言えるかもしれません。でも、本文の最後の方に、語り手の僕はこう言ってくれています。「愛する人と死別する。よくある話なんだ。──なのに、どうしてこんなにも、それが苦しい? 遣り切れない? 耐えることが出来ない?」
死とは非日常なのかも知れませんが、それでも毎日、死は生きています。命が生まれることと同じくらい、死も普遍に存在しています。よくあることなんです。でも、それでも──
野ばらさんがそこを捉えて無垢に、イノセントにこの世界と死を見つめて書いたのが、本作です。Innocent World等のロリータファッション描写もやはり特徴的ですが、やはりなんと言ってもこの作品を真に優美で、儚くて、夢幻に表現しているのは、雅馴な文体で語られる「生と死」そして「エロティシズム」にあると、個人的には思います。
野ばらさんはロリータに造詣がある一方で、バタイユの言うエロティシズムにも言及されているお方です。似たような感じの小説を読んだことがあまり無いのであれですが、野ばらさんは抱擁、接吻の愛表現のほか、セックスの場面も惜しむことなく描写している。バタイユはエロティシズムを「死におけるまで生を称えること」だと言いましたが、野ばらさんの文章には図らずともそういった「死のエロス」的な感慨も感じられるようで、他の作家さんとは皮を一枚剥いだような、エロティシズム──愛というもの、死というもの、生というものに迫っていると思います。そして、更にそこにInnocent Worldに寄せる「彼女」の真摯で無垢な思いや、世間の常識をねじまげても突き進もうとする「強さ」が加わって、この『ハピネス』はできているのではないでしょうか。
魂、震えました。ほんとうに、素敵なお話を書くお方です。ありがとうございました。
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8/10.
めっちゃ響いた。ボクも若い頃好きなファッションをするには色々遠慮して、ようやくこんな微妙な年になってから手を出せるようになった。自分の死が宣告されたらもっと早く、もっと徹底的に出来たかどうか分からないが、とにかくこの傑作を読んでなおさら頑張りたい。恋は美しい。 -
出逢って一年余りで死別という運命の残酷さ。これからなのに、まだまだ話したいこと、知りたいことがたくさんあるのに。なぜもっと早く出逢わせてくれなかったのか。
野ばら作品は「シシリエンヌ」「ツインズ」「鱗姫」など痛々しいような話も好きだけど「ミシン」「ロリヰタ」など純愛で悲恋な話の方が好き。今回のは後者。
出だしが良い。日常の一コマにポッと出た一言。二人でテレビを見ていたら急に「結婚しよう」と言われたようなあの感じ。日常を感じさせつつ、だからこそ彼女が死ぬという実感がない。
彼女が自分の運命を受け入れて、大好きなイノセントワールドの洋服を買い、念願のロリータになって、残りの人生を大好きな人と一緒に楽しく過ごそうと決意しているのが良い。この辺の芯の強さは、野ばら作品の女の子共通で好き。
そして野ばら作品の主人公も、彼女を尊重して、愛する点が共通しているのが好き。だけどそれゆえに主人公がメンタルゴリゴリに削られていくのが辛い。こちらも一緒に落ち込んでしまう。彼女は満足して逝ってしまうけど残された者は辛いよなと改めて思う。
心臓に大きな病気を抱え不安を抱きつつも、はたからみればなんでもないいつもの日常を大好きな彼と楽しく過ごしている描写は悲しくもあり、そんな日常なんてすぐになくなってしまうからこそ、常に大事にしなければならないのだと思った。女の子の両親が家を建てたところの話は悲しい。
彼女からネクタイをプレゼントされるシーン、カレー鍋を遺品として貰うシーンが印象的だった。
もし自分が同じ立場だったならこうしていられるだろうか。最後に誰に逢いたいと思い、いつ、どこで、何をしたいと考えるのか。
神様はいて、うまいことなるようにしていて、たとえ短い命だとしても意味がある。神様がいなければ天使もいないことになる。そんな天国はつまらない。
運命も神様も天国も、実在するかそんなことはわからないがこの本に限ってはあるのだろうと思う。
152〜158頁も良い。物語の最後の主人公の独白はいつも良い。
印象的な言葉。たくさんあって全部書けない。
売るつもりはないから途中まで。
138〜139頁の台詞に感動。長すぎるので割愛。
いい絵を描く者が必ずしも高い技術を有しているとは限りません。
「私より、君の方が辛いよね。だけど、現実を、受け入れて」
「自分でその運命を承諾するまでに、やっぱり多少の時間が必要だったのよ」
「心臓の顔色を窺って一日、一秒でも自分の人生を引き伸ばすより、どうせ後一週間くらいしか生きられないのなら、多少のリスクを冒しても、楽しく毎日を過ごしたいなって」
「私も君の立場だったら、もっと甘えられたいし、頼りにして貰いたいと葛藤するに違いないし。役立たずな自分に憤りを感じると思う。でもね、違うんだよ。君はとっても役に立ってくれているし、何ていうのかなー、君がこうして一緒にいてくれるからこそ、私は後、数日の命だって現実に対して前向きに向かい合えてるの。もし、君がいなかったら、私、きっと、どうしていいのか解らずに毎日、只、泣いてばかりいたんじゃないかな」
「ねぇ、神様っているのかな」
応えられずにいると、彼女は「変なこと訊いてご免」と照れたように笑い「じゃ、また明日」、手を振ります。
「しかし、自分の為ではなく、人の為に必死になれる、場所柄もわきまえず泣けるのは、悪いことじゃない。だから今回は、特別に訳も訊かないし、叱りもしない。—お前には、大事な人がいるようだな。男なら、守りきれないと解っていても、最後まで守ることを放棄するなよ。必死に抵抗し、もがけ」
「そう。学校以外ではずっとロリータさんでいたいから。ロリータさんって、ファッションなんだけど、その前にライフスタイルだと思うのね。だから、お出かけの時だけロリータさんでは、本当のロリータさんにはなれないと思うの。外で幾らロリータさんを気取ってみても、家に帰って速攻、ジャージに着替えていたら、そんなの偽物でしょ」
「一晩、この子が家を空けるのが心配でないといえば嘘になります。けれど、だからといってこの子を縛り付けるのは、親のエゴでしょ。私は母親であると同時に一人の女です。ですから好きな人と一晩を明かすことが、どれくらい特別な悦びを与えてくれるかを、知っています。この子がそれを知らずに旅立ってしまうのなら、リスクがあっても、知って貰うことを私は、否、私達は望みます。親では賄えないものもたくさんありますから。生まれてきて良かったなって、この子が思える為なら、私達はどんな我慢もするつもりです」
「人の死って、宝くじで三千円が当たるのと同じくらい、ありきたりなことなの。よくある出来事なの」
「いっそ、今すぐ死なせてほしいと願ったりもするよ。でもね、そんな時は、明日、君に逢うって約束を思い出すんだ。そうしたらね、不思議と怖くなくなるの。一旦、恐怖心に支配されると、精神安定剤なんてまるで効きやしない。それより、君のことを考えるほうが安らぐ。君は、私にとって—最高の安定剤であり、特効薬なんだよ」
「君と出逢ったこと。—それが私の生まれた意味の全てで、生きた意味の全部」
「君にぎゅっとされたら、意地悪な心臓だって反抗しないよ。それが証拠に、ほら、さっきまでまだ若干、心臓の音が乱れてたけど、今は普通でしょ」
「君の身体の重みと温もりはね、不安定な出来損ない、こんな厄介な私の心臓すら、安心させてしまうんだよ」 -
一気読みした。
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物心ついて、はじめて好きになった小説が嶽本野ばらでした。あれから長い月日が経って、読み返してみたけど、なんだろう、このすっと入ってくる感じ…好きなものって変わらないんだなぁということ、若いときにこんなに好きな本に出会えたことは奇跡に近いんだなと大人になった今、思いました。
心から大切だと思えるものに出会えたことは、この主人公と一緒だ、と思った。彼女は、とても若いうちに亡くなってしまうけど、恋人である男の子に出会ってこれ以上ないというほど愛することができた。大好きな洋服に出会えて、短いけどロリータ人生を謳歌することができた。
自分らしくいること、自分らしく生きることって難しい。私が嶽本野ばらが書く女の子が好きな理由って、それぞれが好きなものを強く持っているからだ。まさに彼女はそれをもって全力で生きた。
実は最近先の見えない日々に、繰り返される毎日に、なんで生きてるんだ?なんて考えてしまったりしたけど、じんわりと生きねばという気持ちが湧いてきた…じめっとしてる場合じゃない。結局は困難な出来事があったとしても、それとどう向き合うかが大切なんだなということを教えてもらいました。 -
余命一週間の高二の彼女がInnocent Worldに身を包み同級生の僕とお買い物をしカレーを食べお泊まりをする。彼氏と過ごす事を優先し両親もそれを尊重する事に多少違和感。でも愛なんだろうな。陳腐にならない信念のある空気が良い。彼女の希望のままな祭壇の花や骨壺が切ない。著者の丁寧語な文章はすんなり入って来てすき。
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そういえばこの作品では、名前が一切出てこなかったように思う。
それと語り口調も敬語。
「平凡」という言葉がすべてのキーワードなんだろうな。