変身

著者 :
  • 小学館
3.20
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本棚登録 : 654
感想 : 102
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093861854

作品紹介・あらすじ

ある朝、目ざめたら、男前になっていた…ンなバカな!笑いと涙のスーパーエンターテインメント。

感想・レビュー・書評

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  • 相変わらずの服と美への拘り(作品の軸なのでなくては困るし私はそれを求めている)、主人公の意志の強さ、服や関連する物や出来事に対しての説明の長さ。今回はいつもより砕けた文体。ギャグ路線。帯にもしっかり「タイトルはもちろん、カフカのパクリ、いやバッタもん、いやパロディです」とのこと。帯も意外と面白い。

    カフカはまだ読んだことないが、見た目が変わると周囲の対応はこんなに変わるんだなと改めて思う。あんなにバイトに努めてもコナジジとか言われてるとか。親も子供にブサイクだとか顔の見えない仕事をしろだとか言うのはひどすぎる。それなのにバイトをして漫画を描いている主人公は性格はともかくとして十分マシに育ったと思う。
    しかし見た目が変わっても相手の対応も表面のみの変化で、やはり人は見た目ではなく中身。イケメンだろうがブスだろうが結局は陰で何か言われるのだ。小林の電話の罵詈雑言は悲しい。女ってこわい。
    ゲロ子も可哀想だし、主人公のゲロ子に対する印象がひどい。一応顧客として見ていて大事にはしているようだが...。尊敬する漫画家に恥をかかせないように同じレベルのワンピースをわざわざ買って着てくるとかゲロ子ちゃん良い子なのに...。
    主人公の漫画を買ってくれた人への対応は好き。一人の読者のために売る場所を変えないとか、本(300円)を買ってくれた人にローテローゼ(400円)を一本プレゼントするとか。漫画の価格設定もカルーセル・エルドラドが300円だからという理由なのが好き。

    最後の、試写会をすっぽかしてからのとしまえんに行き道場に通う所が一番良かった。結局大切なものは一番近くにあった。自分が下に見ていたものだった。容姿が変わり夢が叶っても結局得られるのは虚像と表面だけのもの。容姿が悪くてお金がなくて、でも夢を追っている時が一番だった。自惚れてはいけない。人を卑下してもいけない。何が自分に大切かを考えないといけないなと思った。
    最後のすっぽかして真実に気付くシーンはいつもの野ばら作品だなと感じた。お馴染みの全てを投げ出してその人の元へ行く主人公ってパターン好き。


    「その前に、エルドラド、騙されたと思って、一度、乗ってみない?」
    この台詞は笑った。あんな専門書みたいな説明聞いたら乗らないよ。メリーゴーランドじゃない、カルーセル・エルドラド。英語かドイツ語か。無駄にとしまえんとカルーセルについて詳しくなってしまった。

    81〜82ページのやりとりが好き。下剤の台詞はちょっとアレだけど。
    「作品の捉え方ってのは人それぞれなんだし、誤解して読んでしまう人がいても、それはそれとして寛容に受け取らなくてはいけないんじゃないかな。今はギャグとしてしか捉えられなくても、記憶の隅にそのセリフが残っていくとしたら、何時か、託された真意に気づく可能性だってあるんだし」
    「殆どの人が見向きもしないで素通りしていくけれど、俺がずっとここで本を売り続けるのは、何れ気付いてくれると、その人達のことを信じているからなんだとな」
    「兄貴を最高の漫画家だと信じられるなら、兄貴を認めない人達のことも信じてみようよ」

    作品が酷評されていたが、言葉が非常にキャッチーであったからこそ世間は彼の幸運を天才ゆえの成功とみなした。伝説は仕掛けられ作られるもの。偶然が重なって生まれるものではない。112ページの台詞。漫画に対する考えを語る124〜129ページもいい。

    「じゃ、午前七時に伺います」「早過ぎます。私はマクドナルドではありませんから」は笑った。139ページ。

    「これ以上、俺を迷わせないでください」「迷うのは女子の役割です」「男子の役割は?」「決めること」この辺のやりとり好き。168〜169ページ。なのに一年もしたらマドレーヌの態度が正反対になってしまって悲しい。あんなに酔って色々してたのに。ダサい重いの罵詈雑言。やっぱり女って嫌だ。

    ブックカバーと「上辺だけのことは書かないし、心にもないことはいわない」「優しさは自分に自信を持てない男が、唯一縋れる平凡な武器」のシーン良い。198〜203ページ。なのに香羽も「嘘がつけない(つかない)所が好き」と言いながら童貞だとわかった瞬間、気持ち悪いと離れていく。直前まで「お嫁さんになる」とか言ってたじゃん。女って自分勝手。

  • この主人公のダサさたるやどうなんだ!?
    自分の世界に徹底的に陶酔している。
    しかもこの性格は「ある日突然美男子になってしまう」
    前からのものなわけでしょう。
    とんでもない奴…!
    しかし美男子になったらなったでウザい。
    まあ、でも憎めない。
    (小説の中の人だからね)

    しかし困ったことが一つ。
    この小説に出てくる美男子になってしまう、
    前の状態の主人公の描写が、
    完全にとある知人の容姿と一致してしまうこと。
    これは困った…そうそう会うことのある知人ではないから、
    良かったが、この小説を読んでいる間中、
    あの知人がいきなり美男子になった話…
    と想像しながら読んでしまった。
    読みづらかった…そして笑えた。

  • 野ばらちゃんが岡田准一とか小池徹平を顔のいい男だと思ってるの、なんか、意外だな…………。

  • 最高に面白かったです。冴えない&売れない漫画家の星沢皇児(こうじ)は朝起きたら美青年になっていた。整形無しで美貌を手にした彼を羨ましく思う反面、いくら外見が変わっても内面が伴わないと結局うまくいかない。そんなことを考えさせてくれた。ゲロ子ちゃん永遠に推せる。

  • 「いつわりの功名心にぼくが関心を持ったか?愛にも、とりわけて名声にも。だがこれらは求めないのにやってきて、ぼくの許で生い立ち、それらがなしうること──つまり一つの名前をぼくに与えた。しかしそれはぼくの求めた目標ではなかったのだ。たしかにぼくはかつてはもっと高尚な目標を持っていた。だがすべては終わった」
    (本作より。バイロンの詩の一節)

    バイロンにこんな詩があるとは知りませんでした。とても胸を衝く詩だし、本作『変身』を象徴している詩でもあるように思います。佐藤春夫の『田園の憂鬱』がブレイクの詩「病める薔薇」からインスパイアされたように、野ばらさんが本作で度々引用するバイロンの詩からも、強いこだわりと美しさを感じます。

    そうです、こだわりです。本作ではこだわること、周りの人たちからは「無駄な美学」と言われてしまうような美学にこだわり続ける主人公、星沢皇児が登場しました。三十路になっても少女漫画家を夢見る不細工な男が、ある日を境に美貌、富、地位、何もかもを手に入れます。正直、あまり素直に飲み込めた内容ではありません。これではなろう小説みたいになるぞ。星沢のこだわりにさえ、序盤の方では「キツイなー」となってしまいました。

    しかし、読み進めていくとどうも様子がおかしいぞ。イケメンになったはずの星沢は近づいてくる女性たちにことごとくフラれ、次第に自分の虚栄心に気が付き、「俺は何者なのだ?」「みんなは俺に何を求めている?」と、アイデンティティ・クライシスに陥ってしまう。ここ、すごくリアリティがあって、読んでいてちょっと重かった…。正宗白鳥を読んでるみたい笑。やっぱり野ばらさんの作品は、どこまでコメディーなタッチでもどこか抗いがたい貫禄みたいなのがあります。すき。

    ……話がそれましたが、兎に角、序盤とは毛色の違う感情が徐々に私を呑み込んでいきます。そしてゲロ子です。何となく最後はゲロ子に戻ってくるとは予想していましたが、このゲロ子も芯のある女のコでした。野ばらさん作品をまあまあ読んできた私としては、やはりゲロ子のような、我を貫く女のコが大好きです。そして、最後にそのことにちゃんと気がつく星沢皇児も、好きになれました。

    野ばらさんの美的感覚は、独特かもしれません。『鱗姫』の楼子ように極端に美を求めるキャラクターを描きながら、ゲロ子のような美しい心を持ったキャラクターも描きます。そんな野ばらさんのキャラクターたちに、私にはとても魅力を感じます。決して押し付けがましくない、けれど決然と滾る精神に圧倒される……。本作もそんな、野ばらさんらしさをとことん感じる作品の一つだったなと思います。

  • 普通と違うということは、それが美しいものだとしても、必ずしも価値があるものではなく、むしろそれゆえに生きづらいこともある。

    自分の信じたいことを信じ続けるのは案外難しい。

    社会を生き抜くにはいわゆる「普通」であることが必要で、周りに合わせることが必要で、個人の信条とか美学なんて誰も興味ない。

    エルドラド。コム・デ・ギャルソン。ローテローゼ。

    読んでるこっちが恥ずかしくなったり、あいたたと顔を背けたくなったりする場面もあったけど、この主人公みたいに「自分」を貫ける人が羨ましい。

    野ばらさんのお話に出てくる主人公たちは、みんな自分の信条を曲げないからすき。

  • 購入

    メリーゴーランドじゃない、
    カルーセルエルドラド。

  • おもしろい、、。
    ある朝、目覚めたら男前になっていた、、、。
    めっちゃ笑いました。
    酷い振られようですね。
    初めてのデートにとしまえんで
    カルーセルエルドラドってのはそんなに気持ち悪いのかな、、、?
    花束も。
    まぁ。少しは頭沸いてんじゃないかって思うかもしれないけど。
    ロマンチックで素敵じゃない??
    実際されたら引くのかもしれないけど、、、。

    といいますか、星沢さん、嶽本野ばら先生自身ではないですか?!
    デートにジーンズはありえないとか。
    考え方がそのものではないですか!

    いや、野ばら先生はとても素敵なので振られるなどないのでしょうが、、、。

  • わたしもイケメンになりたい。

  • 好きじゃない感じの小説。意図的にでもこんなに気持ち悪く人物を描く著者。
    カフカの変身は、最後まで人間に戻ることはなかったけど、この変身は星沢が不細工に戻ってしまう場面が見たかった。
    期待して読んだのにそのまま終わってしまい、物足りなかった。
    星沢は三人の女に振られるのに、学習しねえなこいつって感じの終わり方。

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著者プロフィール

文 嶽本 野ばら
京都府宇治市出身。作家。
1998 年エッセイ集『それいぬ̶ 正しい乙女になるために』(国書刊行会)を上梓。
2000 年『ミシン』(小学館)で小説家デビュー。
2003 年発表の『下妻物語』が翌年、中島哲也監督で映画化され世界的にヒット。
『エミリー』(集英社)『ロリヰタ。』(新潮社)は三島由紀夫賞候補作。
他の作品に『鱗姫』、『ハピネス』(共に小学館)、『十四歳の遠距離恋愛』(集英社)
『純潔』(新潮社)など。『吉屋信子乙女小説コレクション』(国書刊行会)の監修、
高橋真琴と共書絵本『うろこひめ』(主婦と生活社)を出版するなど少女小説、お姫様をテーマとした作品も多数。

「2021年 『お姫様と名建築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

嶽本野ばらの作品

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