のぼうの城

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093861960

作品紹介・あらすじ

時は乱世。天下統一を目指す秀吉の軍勢が唯一、落とせない城があった。武州・忍城。周囲を湖で囲まれ、「浮城」と呼ばれていた。城主・成田長親は、領民から「のぼう様」と呼ばれ、泰然としている男。智も仁も勇もないが、しかし、誰も及ばぬ「人気」があった-。

感想・レビュー・書評

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  • 最近さかんに映画の宣伝をしていて、そういえば未読だったと思い、映画で観る前に読了しようと読んでみました。(笑)本の帯には「2011年全国東宝系公開!」とありますが、確かあのシーンがあれを連想させるということで、公開が今年に延期になったんでしたっけね。
    小説の方はまあ面白かったです。戦国時代を舞台にした上質のエンターテインメントといってよいでしょう。だんだんページをめくる手も早くなってきて、次のシーンがわくわくしました。(笑)
    ただ、自分としては内容的には少しビミョーで、だいたい歴史小説の場合、前知識が邪魔をしていろいろ気になるのを目をそむけて楽しむようにしているのですが(笑)、ストーリー的にもなぜか割と中途半端なような気もします。主人公の「のぼう様」が、西郷さんのようなキャラ立ちの掴みどころがない人物設計のためか、最後まで人物の中心点がいろいろな人に散在していたせいかもしれません。全体的に感じるふわふわ感もあるのですが、作者が司馬ライクに史料をうまく合い間合い間に挟んで抑えてようとしているのが印象的でした。
    物語の出だしとして、全体から部分へ、そして周囲の人から次第に主人公へと描写していく過程は、見事な演出だったと思います。そして、合戦を軸とする前後の物語の展開も良かったのではないかな。
    清々しい正義感の石田三成と、魔人・正木丹波の描かれ方はなかなかよくできていたと思います。そして、ちどり。(笑)もう少し、甲斐姫の恋愛話は進展させて欲しかった。(笑)

  • 随分前に読んだが、内容をほとんど覚えていなかったので、再読。
    やはり戦国時代の武士の生き様は天晴れである。
    しかし和田竜氏の文書は読み易くて良い。

  •  戦国末期、豊臣秀吉の天下統一の総仕上げと言うべき小田原征伐。その小田原征伐における忍城(おしじょう)の攻防戦を描いたのが本作。
     主人公は「でくのぼう」を略して「のぼう様」と領民に呼ばれている城代・成田長親。不器用で、表情にも乏しく、背が高いだけの大男で馬にも乗れない。だが、そんな長親は領民にやたら慕われているのである。

     前半の見せ場は、長親が石田三成軍二万を相手に戦を選択するところだろう。
     傲慢な軍使・長束正家が城主の娘・甲斐姫を秀吉に差し出せと言ったことで、長親の堪忍袋の緒が切れた。
    「いやなものはいやじゃ」
    「二万の兵で押し寄せ、さんざに脅しをかけた挙句、和戦いずれを問うなどと申す。そのくせ降るに決まっておるとたかを括ってる。そんな者に降るのはいやじゃ」
    「武ある者が無なき者を足蹴にし、才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。これが人の世か。ならばわしはいやじゃ。わしだけはいやじゃ」

     だが、この事態を期待していたのは、実は軍使を遣わした総大将・石田三成。三成は、ある思惑があってわざと忍城を威嚇し、傲慢な長束正家を遣わしたのである。

     初戦で大勝利をおさめた忍城勢。
     しかし、石田三成はそれも計算に入れていた。彼が本当にやりたかったのは、秀吉が毛利攻めで見せた高松城の水攻めである。
     高松城のときよりも壮大な堤防を築かせ、湖に囲まれた忍城を水没の危機にまで陥れる。
     窮地に追い込まれた忍城では、城代・成田長親が「鬼になる」と言い捨て、決死の奇策に打って出る――。


     最近は、『天地明察』などもそうだが、ラノベタッチというか、かなり読みやすい時代小説が登場しているように思う。時代小説ファンにすれば味気なさを感じたりするのかもしれない。
     が、それはあっさりした飲み口から重厚な味の赤ワインと色々あるように、好みの問題としていいように思う。むしろ、時代小説の裾野が広がることで、今まで池波正太郎や藤沢周平を手に取らなかった読者層が新規開拓されることだって考えられる。「古典落語はかくあるべし」みたいな教条主義的思考で排斥するのではなく(実際、そうやって貶すレビューも散見される)、時代小説の間口の広さ、懐の深さとして歓迎すべきだと個人的には思うところである。

     ただし、本作に関しては少しスッキリしない部分があるのも確かである。石田三成は、生来の潔癖さと、水攻めをやってみたいという欲望の虜になっている部分で齟齬があっても構わないが、成田長親のキャラ設定にはちぐはぐ感が残ったように思う。小田原陥落により全ての戦が終わった後、冷静に振り返ってみると「結局、こいつは何がしたかってん?」と思わざるを得なかった。長親の心情は作品内では明示的に語られることなく、そのほとんどが正木丹波の推測として語られるのだが、読者視点であるはずの正木丹波が納得するシーンで「?」となるところもあった(特に最後の甲斐姫の処遇について、あそこで納得するんだったら、領民・家臣を苦しめても開戦に踏み切ったときの正当性って翻ってどうなるの? 結局は「城代の気分」で戦争したってことにならないか?と何かひっかかりを感じた))。
     あと、少し冗長な印象も受けた。上下巻合わせて400頁ほどだったが、もう少し削れるところを削って引き締めた方がテンポが出て、ダイナミックな展開になったと思う。

     ちょっと気になるところもあるにはあったが、それでも十分楽しめた。浅学にして石田三成の忍城水攻めを知らなかったので、「戦国時代にはまだまだ知らない面白い話があるんだ」と思わせてくれたのも大きい。
     さらっと読めるので、気になっている方には一読をオススメします。

  • TVで、「戦国時代500人で2万人攻撃をしのいだ城があった。それが忍城だ」と言う話から、この作品を知った。
    早速読んだ。全体を通して光景が目に浮かぶようで、登場人物の感情、心の動きも見え、一気に読んでしまった。
    絶対勝てないとわかっている相手に対しても武士としての信念を貫き、一歩も引かずに挑んでいく姿がかっこいい。
    今秋映画化⇒絶対に見に行く

  • マンガ的と言うか、それぞれのキャラが非常に素直に動くので、ストーリー的に裏切られる事がないと言うか、、、展開が読めるのに退屈しないのは、読みやすさに徹した語り口のお陰でしょう。
    娯楽として読むにはちょうど良いです。

  • 一番良かったのは、戦を経験したこともないのに軍略の天才だと豪語した若武者が、自分の策で見事に敵を打ち負かし、敵の総大将三成から賛辞の言葉を受け、はらはらと泣くシーン。
    思わずもらい泣きしそうになった。
    命がけで対峙した相手からの賞賛の言葉というのは、どれほど価値があるものか。
    のぼうはもちろんのこと、それぞれのキャラクターが生き生きと描かれている。
    戦国時代ってのはこんなにも清々しい男たちが生きた時代だったのだろうか。
    時代小説は現代にない価値観を与えてくれてやはり面白い。

  • 感動した。
    男達の熱き思いに魂が揺さぶられ、最後は涙しそうだった。

    石田三成の二万の軍勢を破った僅か五百の忍城の士。
    ハリウッド映画"300"を思い出した。

    圧倒的な筆力で描かれるのは、大スケールの忍城の水攻め。
    かかんに立ち向かう忍上の武士達。
    帯にあるように、さながらハリウッドの大作でも見ているようだ。

    戦いも終わって、離れ離れになっていく愛すべき将達。
    うー、かっこいい。

    結ばれることの無かった親長と甲斐姫。
    清々しくも切ないエンディングだった。

  • 坂東武者というものがどういうものか、これで理解したように思う。

    のぼう様がいとしい。

    甲斐姫の恋模様が切ない。

    まるで本当のことであるかのように思わせる、史料たっぷりの本なのに、あのエピソードは小説の中だけだったなんて。

    一日、二日で気軽に読めます。

  • 武力をもったとてつもないリーダーシップという
    武将をイメージしていたが、
    人心掌握というすばらしい方法をもった
    すごい武将がいたことがびっくり!

  • 史実にもある忍城水攻めを題材にした歴史小説。
    主人公の「のぼう様」成田長親をはじめ、登場人物のキャラクター描写がしっかりしていて、読み応えがあった。映画化されるのも納得。

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