津軽百年食堂

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 471
感想 : 99
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093862455

作品紹介・あらすじ

ふるさと「弘前」を離れ、孤独な都会の底に沈むように暮らしていた陽一と七海。ふたりは運命に導かれるように出逢い、惹かれ合うが、やがて故郷の空へとそれぞれの切なる憶いをつのらせていく。一方、明治時代の津軽でひっそりと育まれた、賢治とトヨの清らかな恋は、いつしか遠い未来に向けた無垢なる「憶い」へと昇華されていき…。桜の花びら舞う津軽の地で、百年の刻を超え、永々と受け継がれていく"心"が咲かせた、美しい奇跡と感動の人間物語。

感想・レビュー・書評

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  • 弘前で明治から100年3代続く「大森食堂」昔ながらの津軽蕎麦が自慢のお店です。初代大森賢治が大八車を引き屋台から始めた蕎麦屋がトヨと一緒になり店を構えたのがはじまり。2代目は道楽者だったようですが3代目の大森哲夫がしっかりと味を守ったようでその願いは日々何事もなく平穏であること。よほど2代目に問題があったような感じなんですが、妻と祖母の3人で毎朝神棚に柏手をうって老舗蕎麦屋の1日がはじまります。
    息子の陽一は4代目として大学卒業後店を継ぐため帰郷してきますが一度外で修行するようにと勧められ都内の中華料理店で働くのですが陰湿な上司に切れて店を飛び出してしまい半年でクビになってしまう。志が揺らぐなか学生時代の経験を活かし芸能事務所に所属しピエロやバルーンアートの講師として生計をたてるようになるなか、カメラマンの師匠に叱られていたアシスタントの七海と出逢います。偶然にも同郷で高校の先輩後輩と知ってお互い打ち解けあい意気投合し交際へと繋がります。

    初代の賢治とトヨの恋路と、陽一と七海のラブストーリーがリンクするように流れながら核心へと導いていく展開で、恋の初めのトキメキから倦怠期をへて王道展開へと向かうストーリー。

    岩木山に桜それに大森食堂、100年の時を経ても変わらずにそこにあり続けるってなんだかホッとするし、そのもとで紡がれる人間ドラマにジーンときてしまいました。
    最後のページには著者が取材した10軒のお店が載ってました。青森県では三世代70年以上続いた大衆食堂を百年食堂と呼ぶそうです。いつか津軽蕎麦食べに行きた〜い。

    ワタシ的には破天荒な2代目にもっと焦点あてて欲しかったなって思いました。

  • 太宰治の「津軽」から津軽つながりで
    お気に入りの森沢明夫さんの作品を手に取った。

    著者が語る。
    本質に出会うまで粘り強く取材したと。そしてそこに感動の連続があったと。

    二つの恋物語に惹かれながら読み進めていくうちに
    あっという間にクライマックス。
    登場する主人公たちもいいが、周りの人達が粋で人情味がある。
    私は若者、大森陽一に感情移入しながら、七海に恋をした。二人の物理的距離がどうあれ、互いを支え合って行ってほしいと切に思う。
    好きな場面は、父を貶され、そのくやしさをあらわにする場面。大事なもの、リスペクトしているものを貶されるほど許せないことはない。

    この物語は津軽の、弘前の香りがしてくる。
    そな場にいるような森沢明夫さんの描写は圧巻だ。
    津軽の食堂で昔馴染みのお蕎麦が食べたくなる。出汁が飲みたくなる。岩木山が見たくなる。
    そしてさくらまつりを味わいたくなる。

    森沢明夫さん、ありがとうございました。

  • 青森県弘前市で津軽蕎麦屋を営む「大森食堂」の初代大森賢治とトヨ。
    そして、今は東京で、それぞれの夢を追いながら、故郷、弘前に、想いを持ち続ける、大森陽一と筒井七海。

    二組の淡々しく清々しい、恋模様。
    そして、それを取り囲み、温かく見守る友人、家族。

    =桜の花びら舞う津軽の地で、百年の刻を超え、永々と受け継がれていく《心》が咲かせた、美しい奇跡と感動の人間物語=

    いつまでも、余韻に浸っていたい、心洗われる物語だった。

  • 弘前で百年続く大森食堂の代表的なメニューは津軽蕎麦だった。
    出汁をひくのは代々妻の役割で、蕎麦を打つのは夫の仕事になっていた。
    伝統の味には、徹底的にこだわり抜いてきた。
    食べてくれたお客様が優しい気持ちになれる味ーー。
    それを傾注し続けてきた。
    三代目大森哲夫の願いは、今日もまた普通の一日でありますようにーー。
    何もない平凡な一日を淡々と過ごせることが、実はどれほど幸福でありがたいことであるかーー。

    息子の陽一は食堂を継ぐ為父が頭を下げ都内の中華料理店に就職するが、父親を馬鹿にする上司に反抗し半年で首になる……。
    今は、バルーンアートのピエロして生業としている。
    東京で孤独に暮らす陽一はふとした偶然から、同じ弘前出身のプロのカメラマンを目指す七海と出逢い、二人は惹かれあっていく。

    七海は師匠から独立を許され、夢に向かって一歩ずつ前進している。
    七海と比べると、自分は前進するどころか歩き出そうとすらしていなくて…。
    嫉妬・劣等感……二人の間に亀裂が生じる。
    そのまま、陽一は弘前城の跡地の公園で開かれる桜まつりに出店する実家の食堂を手伝う為弘前に帰省する。
    離れ離れになった二人は、弘前公園で偶然再会するのだが……。


    登場人物が、皆優しい人々で読み進むにつれ心が温かくなっていきました。
    家族への想い・恋人への想い・師匠と弟子の想い・友情…。
    お互いが互いをいつも気に掛けて、想い合っている。
    優しい気持ちが溢れている。
    何度も何度も涙が溢れました。

    世代を超えて繋がっていく、普通の日常が続く事の素晴らしさを改めて感じ
    『物事の終わりは必ず感謝で締めろ』その言葉にそう在りたいと思い
    読了後は、心が優しく温かくほっこりしました。
    そして、自分の亡くした大切な家族を想い少し哀しさがやって来ました

    読了後、改めて装丁を眺めていると、イラストがとても素敵
    とっても、幸せそうに微笑み暖かみや優しさがすごく伝わって来ます。
    物語そのものです。

  • 百年続く蕎麦屋
    店を守り、味を守り…それが百年
    ただただ凄い(*_*)

    初代の話にグッと引き込まれて…
    もっと百年前の話が知りたかった〜!

    ずっと続きますように
    みんなが幸せでありますように
    そんな暖かい気持ちで読み終えました(^ ^)

  • 津軽、ご縁のある土地が舞台のお話で手に取った。弘前公園桜まつり、岩木山、中央弘前駅、弘南鉄道、津軽塗り、アップルロード等々、目に浮かぶ。なのに、津軽蕎蕎麦は食べたことがないのだ。
    100年続いている食堂の物語。大八車で蕎麦屋を始めた一代目から曾孫にあたる陽一の人生を中心に家族の物語になっている。
    店を継ぐかどうか、東京で恋をし悩みながら生きている姿が微笑ましかった。
    恋人の七海ちゃんがなんともかわいい。
    優しいほんわりとしたお話でした。

  • 良い!
    百年の刻を越えて微妙にシンクロする恋物語
    しあわせな気持ちになれる物語でした

    それから
    やっぱり目次って重要だよなあってどこぞの出版社の中堅編集者みたいなことを思ったりしました

    仲間たちに背中を押されやっとのことで走り出す賢治に向かって「大丈夫きっと間に合うよ」と語る自分でした

  • 『津軽百年食堂』っていうタイトルと、森沢明夫さんにひかれて読んだけど、うーんっ、やっぱり素敵な物語だった(笑)。
    弘前市にある「大森食堂」が舞台で、タイトルの通り、百年前に初代が店を構え、現在は三代目。基本的に三代目の息子である陽一を中心に、現代の話が描かれているけど、最初の辺りと最後に初代である百年前に戻り、全体を通じて初代からの、百年の繋がりを感じられるのが凄くいい!
    2年半前に東北を旅した際、弘前に3泊して街をぶらぶらしました。弘前城にも行ったので、なんだか懐かしかったです。とても素敵な街だったのを思い出しました。
    また行ってみたくなりました!
    弘前という、本土の最北の、青森は津軽地方にある歴史情緒にあふれる城下町を舞台に、百年受け継がれる食堂の歴史を感じる、素敵な物語でした。

    陽一と七海のその後が見てみたい!
    政宗と美月も。

  • 涙が止まらなかった

  • ほんわか、じんわりと胸に来る一冊。

    すっきりとした読後感もあり、オススメできると思う。

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著者プロフィール

1969年千葉県生まれ、早稲田大学卒業。2007年『海を抱いたビー玉』で小説家デビュー。『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』『癒し屋キリコの約束』『きらきら眼鏡』『大事なことほど小声でささやく』等、映像化された作品多数。他の著書に『ヒカルの卵』『エミリの小さな包丁』『おいしくて泣くとき』『ぷくぷく』『本が紡いだ五つの奇跡』等がある。

「2023年 『ロールキャベツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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