津軽百年食堂

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093862455

感想・レビュー・書評

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  • 弘前で明治から100年3代続く「大森食堂」昔ながらの津軽蕎麦が自慢のお店です。初代大森賢治が大八車を引き屋台から始めた蕎麦屋がトヨと一緒になり店を構えたのがはじまり。2代目は道楽者だったようですが3代目の大森哲夫がしっかりと味を守ったようでその願いは日々何事もなく平穏であること。よほど2代目に問題があったような感じなんですが、妻と祖母の3人で毎朝神棚に柏手をうって老舗蕎麦屋の1日がはじまります。
    息子の陽一は4代目として大学卒業後店を継ぐため帰郷してきますが一度外で修行するようにと勧められ都内の中華料理店で働くのですが陰湿な上司に切れて店を飛び出してしまい半年でクビになってしまう。志が揺らぐなか学生時代の経験を活かし芸能事務所に所属しピエロやバルーンアートの講師として生計をたてるようになるなか、カメラマンの師匠に叱られていたアシスタントの七海と出逢います。偶然にも同郷で高校の先輩後輩と知ってお互い打ち解けあい意気投合し交際へと繋がります。

    初代の賢治とトヨの恋路と、陽一と七海のラブストーリーがリンクするように流れながら核心へと導いていく展開で、恋の初めのトキメキから倦怠期をへて王道展開へと向かうストーリー。

    岩木山に桜それに大森食堂、100年の時を経ても変わらずにそこにあり続けるってなんだかホッとするし、そのもとで紡がれる人間ドラマにジーンときてしまいました。
    最後のページには著者が取材した10軒のお店が載ってました。青森県では三世代70年以上続いた大衆食堂を百年食堂と呼ぶそうです。いつか津軽蕎麦食べに行きた〜い。

    ワタシ的には破天荒な2代目にもっと焦点あてて欲しかったなって思いました。

  • 太宰治の「津軽」から津軽つながりで
    お気に入りの森沢明夫さんの作品を手に取った。

    著者が語る。
    本質に出会うまで粘り強く取材したと。そしてそこに感動の連続があったと。

    二つの恋物語に惹かれながら読み進めていくうちに
    あっという間にクライマックス。
    登場する主人公たちもいいが、周りの人達が粋で人情味がある。
    私は若者、大森陽一に感情移入しながら、七海に恋をした。二人の物理的距離がどうあれ、互いを支え合って行ってほしいと切に思う。
    好きな場面は、父を貶され、そのくやしさをあらわにする場面。大事なもの、リスペクトしているものを貶されるほど許せないことはない。

    この物語は津軽の、弘前の香りがしてくる。
    そな場にいるような森沢明夫さんの描写は圧巻だ。
    津軽の食堂で昔馴染みのお蕎麦が食べたくなる。出汁が飲みたくなる。岩木山が見たくなる。
    そしてさくらまつりを味わいたくなる。

    森沢明夫さん、ありがとうございました。

  • 百年続く蕎麦屋
    店を守り、味を守り…それが百年
    ただただ凄い(*_*)

    初代の話にグッと引き込まれて…
    もっと百年前の話が知りたかった〜!

    ずっと続きますように
    みんなが幸せでありますように
    そんな暖かい気持ちで読み終えました(^ ^)

  • 良い!
    百年の刻を越えて微妙にシンクロする恋物語
    しあわせな気持ちになれる物語でした

    それから
    やっぱり目次って重要だよなあってどこぞの出版社の中堅編集者みたいなことを思ったりしました

    仲間たちに背中を押されやっとのことで走り出す賢治に向かって「大丈夫きっと間に合うよ」と語る自分でした

  • フリーターのピエロの陽一とカメラマンの助手の七海が東京でひょっこり出会った。出身高校が同じ人と都会の東京で会えたらそれだけで幸せで盛り上がる気持ちはよくわかる。時折、賢治とトヨの話が挟まれ、大森食堂の歴史が垣間見え、どんどん物語にひきこまれていった。思わず遠く離れた故郷と家族、友人、先祖に思いを馳せることになった。陽一の父親も寡黙だが、背中で語ってきたんだなと感じ、胸がキュッとなった。弘前の桜祭りと岩木山の情景も心に浮かんだ。いつか見に行きたい。温かな本だった。

  • ほんわか、じんわりと胸に来る一冊。

    すっきりとした読後感もあり、オススメできると思う。

  • 青森で、三代で70年以上続く食堂を「百年食堂」と呼ぶそうです。

    これは、親子四代の、百年食堂のお話。
    と言っても、メインは現代を生きる四代目、初代のひ孫である陽一の心の移ろいがメインに描かれています。
    主人公をはじめとして登場人物がみなやさしくあたたかで、読了後はとてもほっこりとした気持ちになりました。七海ちゃんの、陽一のお母さんに言うせりふが良かったです。

    森沢作品はこれまでにも何冊か読みましたが、その中ではこれが一番好きかもしれないです。丁寧な取材によって紡がれる物語は、本当に弘前には大森食堂があるような気持ちにさせてくれました。

    お蕎麦、食べてみたいなぁ。

  • 百年前の先祖と今の主人公、重なってるようで、僕の祖先はどんな人だったんだろ。お祖父ちゃんを思い出した。優しかったなあ。

  • 青森県では三世代、70年以上続いている大衆食堂を百年食堂と呼びます。
    この物語はそんな百年食堂を舞台にした優しくてあったかな人間ドラマの物語でした。

    森沢さんはこの物語を創るために実際の百年食堂を取材したときのエピソードがこのドラマの元になっているみたいです。

    生れつき右足の指がなくてとろくさいからとろ森と呼ばれた大森賢治。
    彼が露天の蕎麦屋を始めて乾物の行商をするトヨという娘と知り合って「トヨちゃんは俺が幸せにする」
    奥手な賢治がやっとの思いでトヨを口説いて二人で初代大森食堂を出店する第一章。
    第一章はそんな賢治のエピソード間に(四代目にあたる)大森陽一のお話が挟まれるという形で展開されます。

    故郷を遠く離れた東京で大学を卒業しながらピエロのバイトで明日の見えない毎日を送っていた陽一。
    そんなある日、バイト先でカメラマンのアシスタントをする七海と出会います。
    二人は同じ高校の先輩と後輩と判ってお互いに惹かれていきます。

    第二章からは陽一と七海のドラマが中心となっていきます。

    「僕はいつまでピエロのまんまなんだろう」
    食堂を継ぎたいそんなほのかな夢がありながら風船のお兄さん、ピエロを続ける陽一。
    師匠に認められてカメラマンへの夢を駆け上がっていく七海。

    五年振りに実家に帰った陽一は高校の卒業文集を見つけます。
    作文のタイトルは「夢は日本一の食堂」 食堂を継ぐことが自分の夢だったってことをあらためて心に深く刻みこむ。

    ちょっとうるっとさせられて心がほこっとするなかなかいい物語でした。

    でもなんか読み終わって惜しい!って思う気持ちもけっこう残ってたりして・・・

    『百年食堂』ってタイトルなんで陽一と七海の恋の話しばっかりじゃなくて破天荒な二代目とか食堂そのものの歴史の重みを感じさせてくれたらもっとよかったかなっとも思いました。

    文章も読みやすいんだけどなんか特徴がなくて平凡な感じでしたね。

    でもまぁ割と好みではあったかな。

    「男女が二人でいるときに、頭の上さ花びらが乗ると思いが叶うんだって」明治時代、トヨが賢治に言った言葉

    「男女が二人でいるときにね、どっちかの頭に花びらが乗ったら、その二人は幸せに結ばれるっていう噂」七海が陽一に言った言葉。

    百年の時を超えてトヨと七海の言葉が重なる。ベタだけどこういうのって好きです。

    桜の花びらが散る様子が浮かんでくるようです。

  • 弘前城の桜は写真とテレビでは見ました。実物を観てみたい。そして津軽の蕎麦を食べたい!

著者プロフィール

1969年千葉県生まれ、早稲田大学卒業。2007年『海を抱いたビー玉』で小説家デビュー。『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』『癒し屋キリコの約束』『きらきら眼鏡』『大事なことほど小声でささやく』等、映像化された作品多数。他の著書に『ヒカルの卵』『エミリの小さな包丁』『おいしくて泣くとき』『ぷくぷく』『本が紡いだ五つの奇跡』等がある。

「2023年 『ロールキャベツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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