女ともだち

著者 :
  • 小学館
3.10
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本棚登録 : 438
感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・本 (153ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093862714

感想・レビュー・書評

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  • 《海まであとどのくらい?》
    「角田光代」
    派遣時代に知り合った5人の女性。5年ぶりに再開したが。

    《野江さんと蒟蒻》
    「井上荒野」
    結婚式の日取りが決まった、夏彦。
    同じ会社の野江さんのお弁当に入っていた蒟蒻の炒り煮が、美味しそうだったので、婚約者の有紗に作ってもらうが、あまり美味しくない。

    《その角を左に曲がって》
    「栗田有起」
    海外事業部で働くひとみさんは、外国で働いた経験があるどころか、流暢に英語を話し、バリバリと仕事をこなしていた。
    そんなひとみさんは、いつもからだのどこかを怪我していた。

    《握られたくて》
    「唯野未歩子」
    30歳を目前にしたこぶちゃんは、30歳に寿退社する事が夢で、友人のやぎちゃんの旦那の親友とお見合いを兼ねた、東京湾での夜釣りに出かけた。

    《エイコちゃんのしっぽ》
    「川上弘美」
    ある日、同僚で年上のエイコちゃんは「短いしっぽがあるんだ、わたし」と言った。

    女ともだちは、恋人より、愛おしい。
    私も、大切にしたい。

  • 5人の作家さんによる女ともだちにまつわるオムニバス小説。
    「女ともだち」というキーワード以外に、「派遣社員」もキーワード?というくらい、5つの作品全て、派遣社員の女性が主人公。雇用面で男女平等がかなり進んだ現在だが、確かにうちの会社も、事務職、派遣、請負は(おそらく)全員女性だし、やはり社会人で「女ともだち」となると、派遣社員というイメージにつながるのかもしれない。
    余談はこの辺にして、下記簡単なあらすじと感想レビュー。
    ※ネタバレ注意

    『海まであとどのくらい?』角田光代
    自然化粧品の会社の営業部で派遣社員として働いていた5人の女性達が、5年ぶりの再会を果たし、当時の楽しかった日々を振り返る。
    社内不倫からの駆け落ち作戦とは、だいぶお気楽な方々。そりゃ同僚とはいえ、他人事だし、楽しかったに違いないわ~(笑)

    『野江さんと蒟蒻』井上荒野
    子供が出来た為、もうすぐ結婚する夏彦は、蒟蒻の炒め煮を作るのが上手な派遣社員の野江さんのことがついつい気になってしまう…。野江さんが蒟蒻をたたきまくる場面、なぜだか読んでいてスカッとした。

    『その角を左に曲がって』栗田有起
    派遣社員である私は、いつも体のどこかを怪我している正社員のひとみさんと、会社の化粧室で偶然鉢合わせた。会社の最上階で働くひとみさんと、最下層のフロアで働く私。二人は共に食事をする仲となり、ある日ひとみさんが腹痛で倒れた際に、実は妊娠できない身体であるということを打ち明けられる。
    本作の中で特に気に入った二作品の一つ目。多分、ひとみさんが正社員で、仕事一筋で頑張ってきた人だから(笑)

    『握られたくて』唯野未歩子
    夏に30歳になる派遣社員のこぶちゃんは寿退社することが目標。小学生時代の幼馴染であるやぎちゃんの旦那の友達の紹介を受け、初対面の成田くんを合わせた4人で魚釣りに行く。しかし、海鮮が苦手なこぶちゃんは、釣った穴子を食べるという苦痛に耐えかね、やぎちゃんとともに無断で脱走する。
    本作の中で特に気に入った二作品の二つ目。
    "誰かと出逢い、託し、委ね、すべてを握られ、尽くしていく、あらたな人生。わたしにも実践できるような気がしたし、成田くんはいいひとだったと思うけれど。でも、彼のために、わたしは自分を変えることはできず、彼では、わたしを変えることができなかった。"
    この場面が好き。こぶちゃんが無理して自分を曲げなくてよかった。
    既婚者のやぎちゃんにはやぎちゃんの、独身の私(こぶちゃん)には私の悩みがある。置かれている状況がちがうから、きっと分かり合えないだろう、と私は思い込み、自分の悩みは胸に秘めていたけれど、やぎちゃんはいつも素直に打ち明けてくれる。幼馴染同士の互いを思い遣るやさしい関係性がユーモアも交えて描かれた温かい作品。

    『エイコちゃんのしっぽ』川上弘美
    同じ派遣会社に登録している私とエイコちゃん。価値観が違っても気が合う二人の微笑ましいやり取りに癒される。

  • 5人の作家による女友だちのショートエッセイ。
    ちょっと変わった女友だちの話が多かったけど、友達との付き合いや距離感がおもしろかった。

  • 5人の女性作家によるアンソロジー。
    女ともだちがテーマになっています。

    角田光代「海まであとどのくらい?」
    井上荒野「野江さんと蒟蒻」
    栗田有起「その角を左にまがって」
    唯野未歩子「握られたくて」
    川上弘美「エイコちゃんのしっぽ」

    井上さんのは女ともだちっていうテーマから少しズレている気はしましたが、断トツで良かったです。ある意味ホラー。あとの話が霞んでしまうくらい強烈な印象を受けました。

    どの話も派遣社員の女性が出てきて、今の時代を象徴してるな〜と思いました。

  •  いまの女性たちを飾らず描いている角田さんのがよかった。
     荒野さんのもよかった。「美しい妻」とは印象が違った。また別の作品も読んでみようかと思う。

     女ともだち。永遠のテーマかも。

  • 軽く読める短編集。派遣で働く女性が主人公。
    気が合う女ともだちっていいよねー。
    「その角を左に曲がって」が1番好きかなあ。

  • どのストーリーも全体にゆるやかな空気感で読んでてとても心地良かった。
    どれも良かったけれど、「その角を左に曲がって」と「エイコちゃんのしっぽ」が特に好きでした。

  • 面白かった。あっという間に読めた。
    短編集で5人の作家さんが書かれています。

    私が特に面白いと感じたのは、
    【海まであとどのくらい?】角田光代
    【握られたくて】唯野未歩子


    【海まであとどのくらい?】は、大学のときの友達や前の会社の同期などしばらく会ってない友達と久しぶりに集まるとこんな感じだよね、わかるわかる、という感じ。
    もちろんみんなそれぞれ住んでる場所も違って、独身だったり既婚だったり、専業主婦だったり仕事してたり立場もいろいろで。
    会うまではよく分からない微妙な緊張を感じるけど会ってしまえば以前のようにみんなでワイワイおしゃべりができる。あの時こうだったよね!っていう話をして当時を懐かしんだり。

    この雰囲気、なんか分かるなぁ、と思いながら読んだ。

    【握られたくて】は、主人公の女性と紹介で出会った男性とのその後がすごく気になった。短編集ではなく単行本で読んでみたいと思った。

  • 女ともだち というテーマで有名女性作家のオムニバス形式。派遣社員っていう裏テーマもある。この形式のおかげで各先生方の個性が出て、すごくイイんですね。

    個人的には「握られたくて」がすき。

  • (2019/4/9読了)
    角田さんと川上さんがいたので借りてみた。井上さんは、自分勝手な事情から、読むことをやめているんだけど、これくらいならいいかなと。あとの二人は、アンソロジーでは読んだことがあるかもしれないけど、ご本人の本としては未読の作家さん。
    どの方も力のある作家さんなのでしょう。短編なのに、長編のような満足感がある。上手い作家さんは、短編を読めばわかると、どこかで仕入れた情報を私は信じてる。
    派遣で働いたことはないし、派遣さんと働いたのは遠い昔なので、そこらへんはよくわからないけど、どの話も目の付け所や表現、文章の組み立て方が素晴らしかった。
    星がひとつ少ないのは、やっぱり井上さんはまだ無理だと感じたから。

    (内容)
    女ともだちは、恋人よりも愛おしい。人気女性作家たちが書き下ろした、それぞれの“女ともだち”。

    人気女性作家による「派遣社員」作品集!
    角田光代、井上荒野、栗田有起、唯野未歩子、川上弘美さんら人気作家5人が描く「女ともだち」の物語。共通テーマは「派遣」。
    派遣先で出会った仲間たちの「その後」、派遣社員としてやって来た謎めいた人、30歳を迎えた派遣女子の「正念場」、憧れのキャリア社員の秘密を知った派遣、派遣先で知り合った男性から逃げた「あたし」……。
    5人5様の「職場と人間模様」が女性作家らしい繊細さと大胆さで魅力たっぷりに描かれた小説集。

    (目次)
    海まであとどれくらい? 角田光代 《以前の同僚5人組・駆け落ちのその後
    野江さんと蒟蒻 井上荒野 《不思議な契約社員の片思い?
    その角を左に曲がって 栗田有起 《やり手のアラフォー左側ばかりに問題が起こる
    握られたくて 唯野未歩子 《美人の29歳寿退社を目論む
    エイコちゃんのしっぽ 川上弘美 《少人数の派遣会社・契約先での怖い経験

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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