狗賓(ぐひん)童子の島

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著者 : 飯嶋和一
  • 小学館 (2015年1月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (555ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863445

狗賓(ぐひん)童子の島の感想・レビュー・書評

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  •  傑作『出星前夜』から6年。稀代の寡作家、飯嶋和一さんの新刊がついに読める。前作はこれまた傑作の『黄金旅風』から4年だったので、大いに気を揉んだ。今回は隠岐が舞台。日本史の教科書にはほとんど登場しない離島で、何が起きていたのか。

     弘化三年(1846)、隠岐「島後」に大坂から1人の少年が流されてきた。西村常太郎、15歳。彼は、大塩平八郎の乱に父の履三郎が加担したため、6歳から親類に預けられ、15歳になるのを待って、流刑に処されたのだった。

     翌年、常太郎は狗賓が宿るという「御山」に足を踏み入れる。そこは聖地であるのに、なぜ流人の自分を。しかし、『狗賓童子の島』というタイトルを感じさせるのは序盤だけ。残りの大部分で描かれるのは、人間たちの業。そこにもはや信仰などない。

     江戸幕府が開国を迫られる動乱期、長年松江藩の支配下にあった島後にも、否応なく変化の波が訪れる。海運で栄える港と、窮する一方の山村。藩と民の間に立つ庄屋衆への不満も募る。積年の憤懣は爆発寸前。小さな島が二分されていく。

     最も冷静に、俯瞰して見ていたのは常太郎かもしれない。彼は医師として島後に根を下ろしたが、薬種を入手してくれる庄屋衆の協力がなければ、何もできない。庄屋衆が私利私欲で動いてなどいないことを、常太郎はわかっている。だが民は…。

     過去にも、幕府側を厳しく描いてきた飯嶋さんだが、今回ほど憎らしく描いたことはないのではないか。批判は幕府だけでなく新政府にも及んでいることに注目したい。御一新に一縷の望みを託す若衆たち。しかし、島後が搾取される構造は何ら変わらない。そんな絶望さえも容赦なく描く。これだ。これぞ飯嶋流時代小説だ。

     帯にはでかでかと「全島、蜂起!」の文字。かなりの血が流れることを覚悟した。ところが、前作に描かれたように、蜂起衆が暴徒と化すようなことはない。これが離島で育まれた、自らを律する精神か。そんな高潔な島民たちに、業を煮やした松江藩は…。

     薩長など新政府主流派の思惑も絡み、翻弄される島後。一部若衆の勇み足は否定できないものの、父履三郎がやむにやまれず蜂起したことを、常太郎も知る。指弾されるべき松江藩は、全力で生き残りを図る。滑稽なまでの保身は、ある意味逞しい。そんな中でも、流人の身を嘆かず、医師としての務めに邁進する常太郎に救いを見る。

     現代の日本に、狗賓は宿るか。常太郎はいるか。本作が突きつけているのは、自分の身は自分で守れという真理ではないか。そう思われてならない。

  • 2016.1.28.隠岐島に流された15歳の少年、西村常太郎。大塩平八郎に与した大坂河内の庄屋西村履三郎の遺児。六歳で捕らえられた常太郎は十五歳になるのを待って遠島の刑に処せられる。存外、あたたかく迎えられた常太郎は島の医師に預けられ、医師として成長していく。全く知らなかった隠岐島の幕末事情。農業や海運業の詳細、常太郎の島民への治療の詳細、松江藩による圧政に苦しめられる島民の蜂起など詳しく描かれ、大変面白かった。敬意を込めて星5つ。

  • 飯嶋和一の新作は買わないわけにいきません。

    飯嶋和一は、現代日本のウディ・ガスリーだと思う。

  •  飯嶋和一6年ぶりの新作、といえば期待しないわけにはいかない。この人の本はたぶん全部読んでるけどほんとにはずれがない。毎回感動しまくり。本書も期待にたがわぬ力作だ。舞台は幕末の隠岐の島。大塩平八郎の乱に父親が連座したというだけの罪で数え年15歳になって流人の島隠岐の島後へ流されてきた西村常太郎が主人公。島民に思いがけず温かく迎えられ医術を学ぶ機会を得る。それからの常太郎の医師としての活躍はそれは感動的ではあるけれど、流人という立場もあって物語全体の大きな歴史のうねりの中では存在感が薄い。それが読後感に熱いといよりはむしろ静かな印象を与えている。これはこういうものとして完成された作品ではあるが、魂を揺さぶられるような感動までには至らないのが少し残念。タイトルにあるようにこれは一個人というよりは島が主役の物語なのだ。隠岐は昔島前までは行ったことがある。海が荒れて中ノ島に閉じ込められ島後へは渡れなかった。今度は島後へ行ってみたいと思った。

  • 面白かった、、、久々にわーっと読みました。いやほんま、飯島本にハズレないですねぇ。先日諏訪で雷電像を拝見したときに、『雷電本紀』を思い出して再読したいなぁ、とアマゾってたらこちらが出てきました。主人公は大塩平八郎の挙兵に連座した父・西村履三郎の長男で、当時6歳だった常太郎は以後9年間親類宅でいわゆる自宅禁固後、15歳で単身隠岐へ遠流。思想的一揆的な物語になるかと思いきや、実は江戸末期医療ドラマ。常太郎が隠岐で大切にされ、地元の人々と良いコミュニケーションをし信頼関係を築きながら医師となって、最後は明治維新の新政府恩赦で河内に向かう(島を出る)ところまで。特に島(密室)でのコレラや麻疹(赤もがさ・はしか)アウトブレイク、それに天然痘の予防接種牛痘の啓発事業などの医療ドラマ部分がものすごく面白い。が、残念なことに全てのエピソードが完結せずに中途半端なところで場面が変わって行くのがちょっとモヤモヤした。大変な歴史の動いた時期で隠岐でも色々と興味深いことがたくさんあったのだろうが、全部並列的に書き込まれているところがもったいないところ。そこらへん差っ引いてもものすごく面白かったです。できたら河内で弟と母と再開し、最後死ぬところまで描き切ってほしかったです。どうもスッキリ感が少ない。

  • 幕末期の隠岐島。そこに暮らす人々は、島の風土を大切に生きている。しかし人々が時代の流れにのみこまれて変化していく姿がすごい。

    全く知らない事ばかりだったのでとても勉強になった。またいつかじっくりと再読したい。

  • 2016.8 いや長かった。でも幕末はこんな腐敗した奴らばかりだったんだろうか。大塩平八郎の乱は言葉しか知らなかったけれど見直してしまいまさした。芯のある小説でした。

  • 常太郎が6歳のときに父が大塩平八郎の乱に加担したため、15歳になるのをまって島に流刑にされるところから話が始まる。

    江戸時代の終わりの民の生活が力強く書かれていて、中盤まで一気読み。流刑者である常太郎と島の人たちの関わりがとても心地よかった。ここまでなら★5?
    途中までは主人公は常太郎だと思い読んでいたが。。。

    途中から誰が主人公かわからなくなってきたくらいからが長かった。歴史に裏づけされた松江藩と島の人たちの混乱のところが、登場人物が多いし、ちょっとしんどかったです。
    動乱の時期を島民目線でかかれているので、この時代のことが違った目線でみることができ,
    そういったところは、さすがだなと思いました。

    最後は、あっけなく。
    勝手な想像で最後は狗賓童子が現れるのかと思ったりしていたので・・・。

  • この人の作品は、力がある。「生きる」と言うことを真剣に考えている登場人物に心動かされているうちに読み終わった。
    江戸の姿を借りているが、現代でも同じことは言えると思う。生きることを考えたい。

  • 一人の流罪になった青年(流罪になったときは十五歳と少年である)が医術を学び信頼を集めて、その間維新が起きて云々~というお話。
    農業の描写とか医術の描写とかすごく調べたんだろうなあと尊敬したけど物語としては特にそこまで好きではなかったかも。
    お初の生き様は好きでした。
    文字を頑なに拒む女性。

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狗賓(ぐひん)童子の島の作品紹介

歴史小説の巨人、6年ぶりの新刊!!

弘化三年(1846)日本海に浮かぶ隠岐「島後」に、はるばる大坂から流された一人の少年がいた。西村常太郎、十五歳。大塩平八郎の挙兵に連座した父・履三郎の罪により、六つの年から九年に及ぶ親類預けの果ての「処罰」だった。
ところが案に相違して、島の人々は常太郎を温かく迎えた。大塩の乱に連座した父の名を、島の人々が敬意を込めて呼ぶのを常太郎は聞いた。
翌年、十六歳になった常太郎は、狗賓が宿るという「御山」の千年杉へ初穂を捧げる役を、島の人々から命じられる。下界から見える大満寺山の先に「御山」はあったが、そこは狗賓に許された者しか踏み入ることができない聖域だった。
やがて常太郎は医術を学び、島に医師として深く根を下ろすが、徐々に島の外から重く暗い雲が忍び寄っていた。

『神無き月十番目の夜』『雷電本紀』『始祖鳥記』『黄金旅風』『出星前夜』と、いずれも歴史小説の金字塔となり得る傑作ばかりを書き続けてきた作家・飯嶋和一。
いつの頃からか、書評家や書店員のあいだで、「飯嶋和一にハズレなし」と語られるようになった作家の6年ぶりの新刊です。
今回も超弩級の大作です。存分にお楽しみください!

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