- Amazon.co.jp ・本 (555ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093863445
感想・レビュー・書評
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父親が大塩平八郎の乱に加わったため、15歳になるのを待って遠島になった常太郎。
常太郎の目を通して隠岐の島後を見つめる。
松江藩の暗愚な支配、飢饉、庄屋と村人の確執、流行り病、維新。
主人公は島。 -
大塩平八郎は歴史上の人物ということしか知らず、ましてや松江藩と隠岐との関係などまったく知るよしも無かった。今でこそ松江は観光都市としてあこがれの町だが、この当時の松江藩たるや情けないの一言に尽きるありさま。それに比べて鳥取の境や米子の商人たちの開放的な人柄。現在は当然隠岐は島根県だが、鳥取県に鞍替えしたらどうだろうと思ってしまう。
それはさておき、とにかく隠岐の地名が頻繁に出てくるので、グーグルマップのストリートビューで現在の風景をみながらの読書となった。これがまた楽しい。この道を主人公の常太郎が通ったんだな、などと想像を膨らませながら読ませてもらった。
作品の面白さに関しては何も言うことはない。
そりゃそうだ。飯島さんの作品はどれをとってもすばらしい。 -
大塩平八郎の乱に連座した西村覆三郎の子、西村常太郎が隠岐の島に遠島になった後の話。
民衆と幕府の対立、流刑の島の生活、感染症の流行等、細かに書かれています。
ゆえに、重い。楽しめる読み物では無く、読むのに時間がかかる時代小説。
タイトルの「狗賓(ぐひん)」は天狗の事。それが大事なキーワードかと思ったら、殆ど出てこなくて、あれ?という感じ。
そして終わり方が突然で。えっ、その後は? となりました。 -
父西村履三郎が大塩平八郎の乱に連座したがため、その息子というだけで隠岐へ遠島となった常太郎の物語かと思わせながら、搾取され、支配者に翻弄される庶民や島の物語へと、視点がぐぐっと拡がっていく。
遠島の地といえば、あれ荒んだ場所のように思ってしまっていたけれど、当然ながらそこには元々住まう人たちがいて、日常があったのだ。政治犯や冤罪も含めて、罪を問われた人たちを迎えねばならなかっただけでなく、重税や場当たりでしかない執政に苦しめられる、その憤懣を思うとやりきれない。
幕府から明治政府へ変わっても、結局何も変わらない失望感は、今の私たちにもリアルだ。 -
所々、面白いところもあったが、飯嶋和一にしたら、今ひとつかな。少し残念。
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時代が変わっても、変わらない島の人々の奮闘が描かれている。主人公は病気、島の人々は支配制度と闘うのは読み応えがあったが、いろいろ描いた分、やや散漫になった印象もある。描写が細かすぎてよくわからないところもあったが、ここまで書けるのは素晴らしい。
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本土と隔絶した遠流の島、千年杉から舞い下りる狗賓、その警告を受け島の治安を守る選ばれし童子たち。タイトル通りの物語でも充分魅力的だったろうが、著者の視点はずっと大きく、幕末・維新期に起こったいわゆる「隠岐騒動」の顛末を虚実交えて語り尽くす。読者が最初に気づくのは、この頃の島民の置かれた状況が今日のわれわれといかに酷似しているかだろう。黒船来航だ、攘夷だ開国だと言っても、所詮は本島のことと安穏とは構えさせてくれない。島民たちは、猛威を振るう新たな疾病や突如現れる外国船に右往左往し、厳しくなる貢納に辛苦する。
耐え抜いた末に立ち上がる義民を描かせたらまさに並ぶ者なし。始まったら止まらない蜂起や擾乱のスピード感も圧巻の一語。さらに大きな賞の期待も高まるだけに悔やまれるのが、本作の繰り返しの多さ。島を席巻しそうな病禍の存在に気づき主人公が大庄屋の家で切々と危険性を訴えたと思ったら、集めた村役の面々にも再度同じ話を繰り返す。他にも島民の結びつきの強さなど、何度か同じ説明の繰り返しが見られ、本作のボリュームをいたずらに大きくしている。