泣きながら、呼んだ人

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 187
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863452

作品紹介・あらすじ

喧嘩をしても、逃げたいと思っても、重くても、憎くても、嫌いでも、一生あなたから自由になれない。「母への思い」と「母の思い」のすべて。

感想・レビュー・書評

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  • 4組の母と娘の確執を描いた連作短編集。

    わだかまりのあった亡き母の遺品整理、友達親子と噂される母と娘の実情、過剰とも言える過保護な母からの縛り、幼い頃家を一人出ていった母への積年の怒り。どの娘も母からの影響が色濃く、苦い思いを拭い去れない。
    子にとって母というのは特別な存在。無償の愛を与えてくれて全身で守ってくれて。
    けれどその思いの強さが足枷となることもあるのだから、母と子の関係はややこしい。ましてそれが同性なら複雑な感情も絡まる。

    時に重く感じる母からの愛情も、大事にされた記憶としていつまでもその人の心に残り、それが新たな愛情を育ていく。親から子へ、そのまた子へと愛情は引き継がれていく。
    私にも娘がいるので娘の身を心配する気持ちが身に沁みて伝わってきた。
    娘のことを信じて見守る、その距離感について考えさせられた。
    どの短編も終わり方が、娘たちの未来に光差し込む形になっていて読後感がとても良かった。

  • 初めて読む作家さんです。親子の確執を巡る連作集ですが、いきなり母親の幽霊が居間に居座っているので、あれ?そういう系?と戸惑いましたが一話目だけでした。
    親と子というものは絶対と考えてしまいますが、絶対なんてことはない事に大人になると気が付きます。
    色々な事情で親とすれ違っている人々が主人公ですが、少しづつわかるというか、誰しも少し屈折した気持ちを持っているもんですよね。僕もそれなりにあります。
    さらりと読める割に心に残る部分もあります。安易な和解で終わらないからかも。

  • 姉さんは、完全に正しい。

    母と娘の関係を描いた作品でありながら、作品に出てくる男性側の視点が共感を抱いた。ため息混じりに吐くような、半ば諦めにも近い感情は、女性特有?の小言を言い争いを際立たせているようだった。

  • いいよかとげんさん

  • 好きな作家さんの一人です。
    母と娘の関係って周りにはわからないけれど、
    多かれ少なかれ様々な葛藤や想いがある。
    だけど、とっても特別で。
    見ていてほしくて愛してほしい。
    子どもの時も大人になってからも母親って特別な存在なのだと思う。
    そんな事をしみじみ思わせてくれたお話です。

  • “一時間ほどのあいだにワゴン販売を二度呼び止め、舌が焼けそうに熱いコーヒーを飲みつづけた。”加藤元の文章にはこの様に情景が浮かびつつ、一瞬ハッとさせられる「言葉の凄み」がある。そしてそれが緩急を付けさせ物語がグッとしまってくる。上手いもんだな。

  • 家族の中でも母と娘がこじれたら一番難しいのかな。この本読んでたらそう思った。4人の母の中でも菜摘の母が家族だったら大変そう。だからずっと一緒にいる菜摘の父はそれだけですごいと思う。「だましだましやっていくしかないやな、お互いさまなんだから」

  • 4組の母娘の関係を掘り下げて描かれた家族小説。
    母親だってひとりの人間。
    いつもいつも正しい言動をしているわけではない。
    母の立場になったり
    娘の立ち位置にいたりと
    いろんな角度から読み進められて
    おもしろかったです。

  • 不肖私マザコンですからこういう母親ものは弱いのです。そうかーあんまり評価されてないかー。一つの新築に関わる様々な家族の母親との関係をピックアップしたショートストーリー。薄いっちゃ薄い。何が薄いかって母親の存在感。常に主人公が一番印象に残っちゃうから、テーマである母親の影が薄いんだ。ここでは主人公は名脇役に徹しなきゃ。母親の存在感を際立たせるよう立ち回らなきゃ。いやまあ自分の子供が自分を踏み台にして生きるよう下から見守るのが母親ですから、と深読みすればできなくも…できないか。あと、基本的に母親が我儘。どいつもこいつも。リアルですけど、そんなリアルさはいらないから、今は作り込まれた母親の温かさが読みたいのです。でも僕はこういう本大好きです。

  • 共感度、によってだいぶ評価が変わるかと・・・。
    母と娘の間のいろいろって、私もそれなりにありますが、そんなにはないのかもなぁ・・・。
    あんまり干渉しない人だしな。
    ん?そうでもないか。ウザいときもありますねw
    上手くスルーさせる業を身につけたのかもww

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著者プロフィール

神奈川県生まれ、東京育ち。日本大学芸術学部文芸学科中退。日本推理作家協会会員。2009年、『山姫抄』(講談社)で第4回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー。『泣きながら、呼んだ人』(小学館)が盛岡のさわや書店が主催する「さわベス」1位を獲得。2011年に刊行した『嫁の遺言』(講談社)が多くの書店員の熱い支持を受けベストセラーに。その他に『蛇の道行』(講談社)、『四月一日亭ものがたり』(ポプラ社)、『ひかげ旅館へいらっしゃい』(早川書房)、『ごめん。』(集英社)など。昨年刊行した『カスタード』(実業之日本社)は奇跡と癒しの物語として多くの読者を勇気づけ、本作はその続編にあたる。不器用だけど温かな人情あふれる物語には、幅広い世代にファンが多い。

「2022年 『ロータス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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