スープの国のお姫様

  • 203人登録
  • 3.42評価
    • (8)
    • (26)
    • (34)
    • (8)
    • (1)
  • 37レビュー
著者 : 樋口直哉
  • 小学館 (2014年2月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863537

スープの国のお姫様の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 主人公の調理人の淡々とした雰囲気がよかったです。
    心理描写に唸りました。たとえば、
    “老人は遠くを見るような視線で空中の一点を見つめていた。老人もまた、失われてしま った日々に想いを馳せているようだった。
    「スープを口に含んだ瞬間、昔のことを思い出しました。嬉しいこと、辛いこと、哀しかったこと、寂しいこと、それらを順番に…」”
    この、思い出す順番はかなり推敲したのじゃないかな、うーむ。


    ・「余計なお世話かもしれませんが、年配者のちょっとしたアドヴァイスだと思って聞いてください。こういう時は、そもそものはじまりから考えることです」
    「そもそものはじまり?」
    「つまり、ポタージュ・ボンファムとは一体なにか、というところを紐解くことです。根源的なところから考えはじめるのです。答えは意外にシンプルだったりします。あれやこれや材料を足しても、お客様の望む味にはなりません」
    キサキは人差し指を立てた。この男の動作はいつもどこか芝居めいたところがある。

    ・老人は遠くを見るような視線で空中の一点を見つめていた。老人もまた、失われてしま った日々に想いを馳せているようだった。
    「スープを口に含んだ瞬間、昔のことを思い出しました。嬉しいこと、辛いこと、哀しかったこと、寂しいこと、それらを順番に…」

    ・「そんなの変ですよ。友達なんて、頼まれてなるものじゃない」
    キサキは目を細め、そのかたちの良い鼻筋を指先でなぞった。『どうでしょうか』とその表情は語っているように見えて。それから彼は流しで手を洗った。彼は一日に何度か、丁寧に手を洗う。それがとても大切なことのように。

    ・口論してみたって溝は埋まらない。こういう時、言葉は基本的には無力で、事態をややこしくするだけだ。

    ・「昔、車のなかで積み上げた容器が崩れて、料理が台無しになったことがあったな」
    「その時はどうしたの ?」
    「真空パックにしてあった料理はいいんだけど、そうじゃないのは食べられないから、近くのスーパーで材料を買い込んで、一から新しく料理したんだ。なにつくったのかさっぱりおぼえてないくらい大変だった」
    そういうトラブルのなかでつくった料理のほうがかえって評判が良かったりするのが、不思議なところだ。

    ・「あの鳥たちは君が飼っているのかい?」
    僕は彼に訊ねたが、返事はなかった。本当に聞きたいことでもなかったので、それ以上訊ねたりはしなかった。彼の様子を見ていると、なんとなく自分の子どもの頃を思い出した。自分にもこういう時があった。世界と自分とのあいだの距離の取り方がよくわからなくて、戸惑っていた頃だ。

    ・「大人になるってことはさ、罪を 重ねることなんだ。僕らは命を奪わなければ生きていけない。菜食主義者だって、その罪からは逃れられない。そして、罪を償う方法は、罰を受けるだけじゃない。死んでいったものたちのためにできることは、ちゃんと生きることだ――なんて言うと教科書に書いてあるような説教になっちゃうけどさ」
    僕は誤魔化すように笑ってみた。真面目に話すのは、難しい。

    ・「真剣に話したから恥ずかしいんでしょ?たまには得意じゃないこともしたほうがいいわよ。嫌なことを毎日ふたつすることは魂の健康のためにいい、って誰かも言っているんでしょ?」

    ・「僕だって、わかっているよ。でも、もしもって考えてしまうんだ」
    「もしも」彼女は空中に書かれた単語を読むように言った。「もしもっ て、なんのためにあるのか、よくわからない不思議な言葉よね。こういう気持ちって、どうしてあるのかしら。ただ人を苦しめるだけじゃない。そんな風に考えたって、今はなんにも変わらないのに」

    ・「腹は立たないの?」
    「慣れてるからね」と僕は言った。「知識を認めてもらいたかったり、文句をつけずにはいられない性質だったり、ああいうお客さんは一定の割合でいる」
    銅鍋を磨きながら、僕は話をした。
    「君もいつか男性とレストランででデートこともあるだろ。そんな時に思い出すといい。客として訪れた店のスタッフへの態度で、その人の本性がわかるから。僕らみたいなスタッフに対して、相手の男性が偉そうにしたり、なにかを頼む口調がぞんざいだったりしたら要注意だよ。君 に対してどれだけ紳士的にふるまっていても、それがやつの本性だから。付き合いはじめてからガッカリしないですむ」

    ・その部屋に足を踏み入れた瞬間、はじめに満ちてきたのは虚脱感だった。
    ガラスから夕陽が差し込んで、部屋をオレンジ色に染めていた。

  • 一杯のスープで人生が変わることもある
    スープの中には全てがつまっている

  • ちょっとむず痒い中年の話。
    料理人が書いたそうで、料理の面白さを描いてある。
    ミステリー風に謎解きがあって、高校生とおっさんの心の通い合いとかなんだかんだ。
    むずむずしながら終わった。

  • 鴨川食堂とパ・マルシリーズをあわせたような感じ
    読みやすかったしおもしろかった

  • 作品の雰囲気も話も良かったのですが、何故か内容があまり記憶に残りませんでした…。スープが美味しそうだな、とばかり考えて読んでたからかな。ビールのスープやウミガメのスープなんてものがあるなんて初めて知りました。千和の記憶力にもびっくり。

  • 元スーシェフの主人公が作るスープの味から、雇い主とその孫、そして周りの人々が過去の記憶を辿り、解きほぐして一歩進んで行く話。

    味の記憶ってどこまで正確なんだろうなあ…。
    他人がそこまで割り出すのは流石に無理じゃない?という強引さも多少有り。
    でも料理の描写はとても美味しそう。
    表紙とタイトルが妙にポップだけれど、話は割と淡々としていて読後感はほんのり切ない。
    中身の雰囲気の方が断然好みでした。

  • 気になった個所があって、そちらに目がいってしまい物語どころではなかったです。

  • あるお屋敷で毎晩スープをつくる仕事を請け負った若き料理人のお話。スープの歴史とか誕生背景とかを織り交ぜながら。秋冬に読みたいお話。

  •  パンチの効かない良い話集。スープだけの食事みたいに物足りない。でもスープ作りの描写は良かった。私でも作れそう。スープを作りながら、巻末の参考文献を読みたい。

     著者が現役の料理人だそうで、料理人のあるあるネタ的な話が興味深かった。辛抱強く推敲を重ねていら、もっと完成度の高い作品になりそうなのに。普段ラノベに親しんでいる中高生が、ちょっと背伸びをして読むには良さそうな本。

     この小説が書かれた目的は、「ストーリーを形にする」ことだったのだろうな。登場人物は著者の中にあるストーリーを形にするための駒でしかないから、あんまり魅力がないんだ。青年×少女は好物なんだけど、この本の青年少女は萌えなかった…。むしろ、大丈夫かこのロリコン野郎って、ちょっとうすら寒くなっちゃった。

  • 3.5

    頭でっかちの女の子、心空っぽのシェフ。
    求めるは思い出の、謎のスープ。

    美味しそう。手間かかってるんですね。

全37件中 1 - 10件を表示

樋口直哉の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

スープの国のお姫様を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

スープの国のお姫様を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

スープの国のお姫様の作品紹介

謎たっぷりの、美味しいスープを召し上がれ

元料理人の僕は、別れた恋人から奇妙な仕事を紹介される。それは、湘南に建つ古い屋敷で、一人暮らしの高齢のマダムのために、毎晩一杯のスープを作ること。報酬は破格だった。
屋敷で、僕はマダムの孫娘である風変わりな美少女・千和に出会う。両親を事故で失くした千和は心を閉ざしていたが、母の遺した料理本を愛読し、古今東西の料理について膨大な知識を持っていた。幼い頃に母と離れ離れになった僕は、千和に自分と似たなにかを感じ、二人は少しずつ心を通わせていく。
終戦後に食べた想い出のポタージュ・ボンファム、ビールのスープ、画家ロートレックが愛したスープ、偽ウミガメのスープ、せかい1おいしいスープ……。僕と千和は力を合わせて、無理難題のようなリクエストのなかに隠された”謎”を解いていく。
そしてついに僕は、ずっと探し続けてきた「母と最後に食べた想い出のスープ」の手がかりを見つけるが――。
哀しみから再生し、明日を向いて歩む力をくれる6皿のスープの物語。


【編集担当からのおすすめ情報】
2014年4月映画公開の青春小説『大人ドロップ』でも注目を集めている著者は、現役の料理人。謎解き×料理の蘊蓄で二度おいしい食ミステリーです。たかがスープ、と侮るなかれ。スープという料理の奥深さも再発見できます。

ツイートする