胡蝶殺し

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 499
感想 : 101
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863803

感想・レビュー・書評

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  • 20140930
    歌舞伎の世界が舞台。父親を亡くした秋司と後見人となった萩太郎、息子で秋司と同い年だが性格のちがう俊介の物語

  • 図書館で借りる。ミステリではないけど、読み応えのある作品だった。歌舞伎の子役という特殊な題材ではあるが、親子としての話には強く引き込まれた。最後まで読み、タイトルの意味が分かったように思う。

  • ロードレースシリーズ(『サクリファイス』など)、ビストロシリーズ(『タルト・タタンの夢』など)などの人気シリーズを初めとして、数多くの著作がある近藤史恵。
    気にはなっていたのだが、手にしたのは本作が初めてである。

    引き出しの多い人なのか、本作の舞台は歌舞伎である。
    父親を失った子役・秋司、秋司の後見人を務めることになった若手役者・萩太郎、萩太郎の息子でありやはり子役の俊介。この3人を巡る物語である。
    視点は萩太郎にある。
    萩太郎は誠実な人物である。出来る限り、兄弟子の遺児である秋司の力になりたいと望む。歌舞伎界では、親の後ろ盾を失った子役の立場は弱い。役をもらうにも稽古をつけてもらうにも、誰かが道筋をつけてくれなければどうにもならない。やはり若い頃に父を失っていた萩太郎はそうした事情もよく知った上で、そして何より秋司が見せる才能に惹かれ、便宜をはかろうとする。
    しかし彼には自分の子、俊介がいる。
    同い年だが、早生まれなこともあり、どうしても秋司と並べると見劣りがする。だが、息子をえこひいきするようなことは避けたい。
    誠実ゆえに心が揺れる。
    一方で、夫を失い、いささかヒステリックになっている秋司の母、由香利との間はぎくしゃくしていく。
    しっとりと、いささか粘り気を持って、梨園の人間関係が描き出される。

    「胡蝶」とは「春興鏡獅子」に出てくる役である。「春興鏡獅子」は獅子の精に魅入られ憑依された美しい小姓弥生を主役とする舞踊劇だ。前半の気品ある女形の舞と後半の勇壮な獅子の舞を同じ役者が演じる人気演目である。「胡蝶」は、前半と後半の間に現れ、獅子が登場すると獅子と戯れる2匹の蝶の精である。子役がやるものとは決まっていないようだが、子どもの方が可憐に見え、観客の受けもよい。
    この「春興鏡獅子」が物語の1つの軸となる。

    手堅い描写に引き込まれて読み進めていくが、このタイトル、この表紙である。そして「ミステリ」だという。子どものどちらかが犯罪被害者になる話だとすると、吸引力の強い作品だけにつらいな、と途中で思い始めた。
    詳しく書くと興を削ぐので、それは杞憂であった、とだけ言っておこう。
    芸の厳しさ、生きることのやるせなさを孕みつつ、物語は最後に、ふわりと温かなカタルシスをもたらす。

    胡蝶とともに見る、美しい、一幕の夢である。

  • あまり興味のない世界の話でしたが、面白かったです。
    タイトルがん?って感じですが。

  • 最近、なかなか時間がなくて本が読めず、読んでも途中で寝ちゃうことが多くて困ってたけど、久しぶりにがーーっと一晩で一気読みしました。

    歌舞伎の世界の特殊な感じ、御曹司が負う重責とともに、御曹司の奥様が負う重責についても考えさせられてしまいました。

    タイトルから殺人事件が起こるかと最初の設定を見て辛くなってしまったのだけど・・・そこまでではなかったです。ちょっとラストはぬるいような気もしたけど、とてもおもしろく読みました。

  • タイトルと「歌舞伎の子役を主人公にしたミステリー」という書籍紹介から、どんな大事件が!?と思いながら読んだけど…ミステリーではないな。タイトルも大げさすぎる気がする。
    それでも、ストーリーそのものは惹きこまれる。歌舞伎にまったく縁がなくてもおもしろく読めたし、歌舞伎に興味がわいた。

  • 「胡蝶殺し」近藤史恵◆歌舞伎役者・萩太郎は父親を亡くした少年の後見人となり少年の世話を始めるが、彼が自分の息子以上に歌舞伎の才能があることに気がつく。引き込まれるのですが、さらっと呆気なく終わった感も。不穏なタイトルですが事件は起こらず、どちらかというとまっすぐで爽やかなお話。

  • ★3.5

    構成も話運びも真相も結末も好き!
    二人の御曹司をめぐる変わり種ミステリ。

    ゆかりんには苛々させられたけど、仕方ないよねー。ゆかりんもムチュコタンも、それぞれが互いを思いやって必死なのよー。

    苛々と痛々しさが読んでて辛いけど、面白かった!

  • 近藤さんの、久々の歌舞伎もの
    歌舞伎は全然詳しくないけど、面白く読めた
    ミステリー色は弱いかな

  • 梨園の裏、そして御曹司たちが子役として成長していくさまが興味深い。謎解きとしては弱いラストだが、余韻が心地よく爽やか。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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