虫娘

著者 :
  • 小学館
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感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863834

感想・レビュー・書評

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  • 四月の雪の日。あの夜、シェアハウスで開かれたパーティで、一体何があったのか?「樅木照はもう死んでいた」という衝撃的な一行からこの物語は始まる。しかも死んだはずの照の意識は今もなお空中を、住人たちの頭上を、「自由に」浮遊している。
    ----------------------------------

    Bハウスというシェアハウスの住人4人と、管理人の曳田陽一郎。住人の1人、樅木照が亡くなった。自殺なのか殺人なのか、住人同士の関係は?など、それぞれの目線と、死んだ照が空中から見ているもので物語が進んでゆく。イタリアンシェフ、自称俳優、ライター、銀行員と個性的な男女あり、それぞれがそれぞれを干渉したりしなかったり。
    誰が殺したのか?謎は解けるのか?と思って読み進めサラっと読めた。

  • シェアハウスに住む4人の男女の悪意と嫉妬が入り混じった夜の出来事。

    4月の雪の夜に、パーティーをしようと提案してきた樅木照は死んだ。

    売れない俳優の妹尾真人。
    銀行員の鹿島葉子。
    フリーライターの碇みゆき。
    料理人の桜木竜二。

    彼らが住むシェアハウスを管理する不動産屋に揚一郎。

    ヌードモデルと体を売ることをして生活していた照は、掴みどころがなくていつも死んでいるように生きていた。

    いつも死んでいるようなものだったから、
    生きていることに苦労しているシェアハウスの住人たちが羨ましく、そして同時に憎たらしくて
    あの夜に照は乱交パーティーをしようと提案した。

    本当は元夫婦だったみゆきと竜二。
    自分の性に不器用だった葉子とお調子者の真人。

    あの夜を堺にギクシャクしだした彼らだったけれど
    照の死後もそれぞれの生き方で生活を続けていった。

    みゆきに薬を飲まされて、竜二に見てみぬふりをされて
    裸のまま雪の上で死んだ照だけが、
    ただ自分の死を後悔した。

    死んだら終わりだ。その時が来るまで、生きることに執着する。

  • すっきりしない後味を残し、主人公・照の涙で終結。自分の人生に100%満足している人間なんて早々いないんだろうということを思わされる本でした。誰しもが誰かに嫉妬心を燃やし憎しみをもって見えない何かに捉われているなぁと。最後に照が死んでいるように生きていたことを後悔することによってさらに報われない感じに。表紙は照かな?

  • 「生きることは淋しいに似ている」死んでも尚シェアハウスや不動産の食品曳田に寄り添うように見守る主人公照(ひかる)のつぶやいたひと言が身に染みた。

  • 死んだ照(ひかる)を巡るシェアハウス同居人たち。奇妙な味わい。

  • まぁ面白かった。
    1行の空白はあるものの、場面がコロコロ変わるのが分かりにくかった。
    「虫娘」という題名にしなくても、もうちょっと「ふわふわっ」としたものでも良かったような感じです。

  • 手に取った時から好きだと思った。宇野亞喜良さんの毒ある装丁が美しかったから。
    読み始めてすぐにやっぱり好きだと思った。不快感溢れる、スロースタートなのに、どんどん物語に引き込まれて。ゆっくりゆっくり謎が溶かされて行く感じが。以下ネタバレ有り。

    醜い感情たちが入り乱れる。死んでしまった照が一番わたしに近いような、や、違う、憧れかも。照のように自由に、死んだように生きるのはやはり憧れる。他人にどう思われようが構わない精神は憧れる。けど、そこから始まったラストはなかなか感慨深い。もっと死んでしまったことを悔やむような生き方がしたかった、というオチが好き。とても綺麗にまとまっていて、憎悪とか、性とか、決して綺麗な物語ではないのに、美しいなと思うものが、この物語にはあった。

著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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