サラバ! (上)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863926

感想・レビュー・書評

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  • ホモっぽいにおいが漂う。
    下巻気になる。

  • 海外の伝記ものや人物特集ノンフィクションのように、主人公のルーツ、それも祖父母にまでさかのぼって、そのエピソードや自らにつながるエッセンスなどが綴られていっている。海外のそんな伝記もののスタイルを小説に取り入れているなあと読み受けながら、物語は始まっていきました。重要人物の主人公の姉が、もう子どものころから、常軌を逸する行動をとりますが、そこに滑稽さと苦しみが表裏一体にあらわれています。その姉が終盤にどうなっていくか、大きなポイントになっています。また、始めからそう感じたのだけれども、発見というよりも、そして再発見というよりもむしろ、「思い出させられる」という言葉がしっくりきます。それも、記憶の深い底に沈澱していたものが眼前に浮上させられて、再度味わい、感情や感覚が甦ってくるような体験をともなうかたちで。でも、それと同時に、書き手の作為というか技術というか、そういうものも感じる。作っているものだということを受けとめるような感情体験(知的体験)もある。とくにそれは、幼少時のエピソードのところに強く感じました。そして、『サラバ!』には知的な飛躍がなくて、無理解の土壌と地続きになっている考察や内省の言語表現があるように読み受けている。

  • 「母親は出産時に苦しめられたらその分を取り返そうとする。」

    難産を越えて産んだにもかかわらず、まったく思い通りにならない子供。
    この子供に対する母親の様子を表現したフレーズですが妙に頭に残ってる一文です。
    この一言で、もしも自分が妊娠した時は、無痛分娩でもいいかなって価値観が変わりました。

    あんなに苦労して産んでやったんだから、あなたが私を支えるのは当然。

    とか言われたり、思われてたりするのって、私が子供だったらしんどい。

    西加奈子さんの著作を読むのは初めてでしたが、人の感情ってそんなシンプルじゃないよなって思わせるのが上手だなと思いました。そして人の個性って感情の暗い部分から大部分が出来てるのかもって思いました。

    今回は、作品の内容について事前情報を何も得ないまま読み始めました。
    てっきりサラバ!というタイトル通り、スピード感のある人生活劇かと思ったのですが、なんとも緩やかでテンポの良い家族劇でした。

    似た作品だと奥田英朗のサウスバウンドか、桜庭一樹のファミリーポートレイトですね。でもそのどれよりもサラバ!は展開が緩やかです。

    奇想天外な姉を持つ、美少年な弟の目線で物語が語られていきますが、姉の奇抜な行動のたびにこちらはクスクスしてしまいます。

    イランやエジプトでの描写がリアルだなーと思ったらやはり作者自身がテヘラン生まれなのですね。

    自信の体験も描いてるのでしょうか。

    まだまだ下巻が残ってますので物語全体の感想は下巻で!

  • 圷(今橋)歩の誕生から高校生の頃までの物語。最初は、歩の母と姉の物語かと思うほど、彼らの個性が強力な物語だったが、イラン→日本→エジプト→日本といった生活圏の移動や、家族・友人・同級生たちとの関わり、そして月日の積み重ねの中、少しずつ彼自身が形成されていくところが、丁寧に描かれているところがいいなと思った。

    大きな感想は2つある。

    1つめ。主人公である歩が感じ考えたことが、子どものころに自分が考えていたことと結構重なる部分があり、とても懐かしかった(特に中学・高校時代の頃)。

    2つめ。歩が暮らしていたイラン、エジプトの描写がとても良かった。特にエジプト。肉屋の軒先に羽をむしり取られて並ぶ鶏、バスを叩くエジプシャンの子どもたち、空き地にやって来るヤギの群れ、地下にあるヤコブの家・・・等。自分はイランにもエジプトにも行ったことはないが、行間から異国の香りを強く感じた。

  • なんだかよくわからないけど、すごいな。
    破天荒すぎる姉に読み手のこちらも辟易するし、どこまでも傍観者の歩にも共感はできないし母親もすごいし、とにかくみんながすごい。
    特別な大事件(姉の奇行は事件だけど)が起こるわけでもなく、わりと日常をなぞってるだけなんだけど、ぐいぐい読ませるのは西さんさすがの力量。

  •  小説を読むというより文章を読むといった感じ。さらりとしたユーモアもいい。小気味よい読書だった。 
     最初のグダグダと状況説明が続いたのはしんどかった。早くセリフ入れてくれと思った。登場人物のセリフこそがその人物の、著者の人生観世界観の格言ではないか。みたいな。
     それから徐々にセリフが入りだすとどんどん面白くなり、状況説明が続いてもやっぱり面白かった。すごいテンポのいい文章でガンガンずんずん読めてほとんど一気読みに近かった。
     残りページが少なくなるのに話の展開がどんどんと進んでいく。どんな終わり方するんだろうとその後のロス感を心配しながら最終ページの最後の行に至ってこれには下巻もあるのだと知った。ハハ、間抜けであります。
     下巻読みます。楽しみです。ハイ。

  • 姉のマイノリティの中のマイノリティを目指す感じめっちゃ好きやねん。

  • 面白かったです。関西弁なのもええなあ。私も父や夫の転勤で引っ越しが多かったけど、国内だけなので、海外に何度も住むって、小説読まなきゃできない経験だよね。

  • 37歳の僕が自分の過去をもとに書いた小説という態の小説。
    イランで生まれ、帰国後またエジプトへという子供時代。自己顕示欲が強くかしましい母と姉と、寡黙で受け身な父と僕。家族の愛憎とそれぞれの精神の彷徨がうねる長編。
    実際にイランやエジプトで過ごした作者に興味があり、実体験を踏まえているだろう子供時代は面白かった。思春期以降のエピソードは面白くはあるけれど、どこまで付き合わされるのだろうという気がしなくもなかった。
    ラストを読むと、この物語の僕はやはり作者のことなのだとわかる一文がある。もちろん創作なんだけど、半生のまとめとして書かれた作品なんだろうなと思った。ややきれいにまとめすぎだろうと思ったがエンタメである以上しかたないのかな。

  • 主人公をどうしても好きになれなかった。けど、おそらく読みたいとは思わされていて気づいたら本に手をつけている感じだった。

    最後、すごく深かった。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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