サラバ! 上

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著者 : 西加奈子
  • 小学館 (2014年10月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863926

サラバ! 上の感想・レビュー・書評

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  • 本を開いて読み始めると思うこと。

    うわー。テンション高っ!
    (力技で物語に)ずりずり引きずり込まれる、
    ぐわんぐわん巻き込まれる。
    アイデンティティーとは。
    自分を形作るものとはと考え込む。

    活きのいい魚を急に持たされたように、
    どうしていいのかわからなくなる。
    …結果やっぱり読書って体力いるわ、とぐったり。

    それでも面白くて目が離せない。
    圷家の息子、歩くん目線の物語。

    受け入れ、諦めること。
    それに抗いまくる母と貴子。抗わない父と歩。
    どちらかというと抗って納得しない私。
    歩が家族との生活の反動で惹かれる芯がある人々に、
    私も憧れを抱いてしまいます。

    母国ではない国で生活すること。
    初めての国での母の「嘘やろ」「阿呆か」
    帰ってきた日本での「嘘やろ」「阿呆か」
    これだけは譲れないってものがいかに脆いものなのか。

    価値観がそうなのであれば、
    人間の素の部分なんてもっとですよね。
    脆いから揺れるから人間なんでしょうけど、
    どうしたら芯が通っていくのかを、
    歩と一緒に探しています。

    歩の「諦観」がどのようになるのか。
    自ら引きずり込まれて下巻に進みたいと思います。

  • 直木賞受賞作。
    第152回、2014年下期。
    エネルギッシュで、溢れんばかりの勢いがあります。
    海外生活については、自伝的要素があるらしいですね。

    語り手は、圷歩(あくつ あゆむ)という少年。
    (両親の離婚後は今橋)
    父の海外赴任にともなって、イランで生まれた。
    イランに革命が起こったので急に帰国することになり、大阪へ。
    穏やかな父、身奇麗で女らしい母。にぎやかなご近所や親戚達。
    だが何よりも、姉・貴子が強烈なのだ‥
    わがままで、扱いにくく、いつでもどこでも大声で泣き喚く。
    人の注目を集めたがり、皆と同じでは気がすまないらしい。
    そんな子にくたびれ果てた妻と娘の間で振り回され、やはり疲れていったのだろう父。
    歩は、どちらにも関わらずにいようと決め、外でも目立たないように生きていく。

    この姉はADHDとしか思えませんが。だからといって、どうなるわけでもなく、それぞれ個性があるわけですからね。
    これほど迷惑かけて平気な子は好きになれないけど、まあ小さいうちだしねぇ。成長すると共に、意外な面も見せていきます。
    小顔で美人な母に似ず、父に似た長い顔でごつごつと痩せていて、ある時期「ご神木」とあだ名されてしまうのは気の毒。
    そりゃ、名づけるほうが性格悪い。
    ある男の子とラブラブで有名になった時期もあるのだが‥

    歩が小学校1年、姉が5年のときに、父の赴任でエジプトのカイロへ。
    二人は、日本人学校に通うようになり、友達が出来ます。
    海外赴任では経済的に余裕が出来るので、母は着飾って出かけるようになった。
    歩には輝いて見えた母だったが、実は辛いことも起きていた。
    歩は、ヤコブというエジプト人の少年に出会い、ほかの誰とも違う大人びた雰囲気にひかれ、親しくなる。
    言葉も通じないのに表情や身振りで心を通わせていく。このくだりは美しいです。
    ヤコブが気に入った日本語の挨拶が「サラバ!」だった。

    歩にも友達が出来、ガールフレンドも出来るし、はっきり物を言うこともあって、自分でわざわざ露呈してるほどには自分を抑えてるだけの生活でもないですよね。
    いろいろな要素が次々に出てきて、飽きずにどんどん読み進められます。

    ただ、感情移入できるかというと、どの登場人物にもちょっと、しにくい。
    そのへんが低い評価も出る理由かな?
    もう少しだけ書き方を変えればたぶんもっと感情移入は出来るようになるんだけど、作者の狙いはどこか違う点にあるのかも。
    どういう理由でこういう構成になっているのか‥?
    下巻を読んでのお楽しみですね☆

  • 冒頭───
     僕はこの世界に、左足から登場した。
     母の体外にそっと、本当にそっと左氏を突き出して、ついでおずおずと、右足を出したそうだ。両足を出してから速やかに全身を現すことはなかった。しばらくその状態でいたのは、おそらく、新しい空気との距離を、測っていたのだろう。医師が、僕の腹をしっかり掴んでから初めて、安心したように全身を現したのだそうだ。それから、ひくひくと体を震わせ、皆が心配する頃になってやっと、僕は泣き出したのだった。
     とても僕らしい登場の仕方だと思う。
    ──────

    僕の中学生時代、12クラス一学年600人もいた生徒の中で堂々と手を繋いで帰宅していたカップルは、覚えている限りたった一組だった。
    告白したくてもできない、男同士でつるみながら「お前、誰が好きなんだ」とからかっているだけで楽しいと信じ込んでいる、勇気のない“ガキ”がほとんどだったのだ。
    もちろん、向こう側のまだ経験したことのない“男女交際”という世界への願望が全くなかったと言えば嘘になる。
    それでも、男同士の付き合いのほうが、皆の注目など浴びずに、気楽で楽しいと思っていたのは事実だったろう。

    イランで産まれ、日本、エジプト、再び日本へ。
    子供時代の歩は様々な環境の下で人生の航海を始める。
    家族には、常人とはかけ離れた行動をし続ける姉。
    いつまでも子供のようで、自己中心的な母。
    その母に抗わず、ひっそりとおとなしい父親。
    歩は姉を嫌い、何処にいても、どんな時でも、“自分を消す”という処世術の下で、上手く生きていこうとする。
    幼稚園、小学校、中学校と大きくなってもその考えは変わらない。
    その間、両親の離婚をも経て、歩は少しずつ成長していく。
    ご神木と呼ばれ、引きこもり、サトラコヲモンサマにすがりつく姉。
    エジプトでのヤコブとの出会い。
    帰国し、高校生になり、須玖との出会い。
    大学に入り、鴻上との出会い。
    歩の人生に大きな影響を与える友たちとの出会いと別れを繰り返し、物語は進んでいく。

  • 誤って
    24色入りクレヨンの箱を落としてしまった様な読後感。

    西加奈さんの作品は
    私のなかでとても色彩が豊か。

    あくの強い女達に囲まれ
    (静観)という処世術を身につけ
    要領良く生きている主人公の歩が(白)だとしたら
    存在感のない父親はグレー。
    多彩な色を持つ煌びやかな母親に
    ヒステリックな姉は黒、だが
    同じ黒でも黒曜石の様に光を秘め持つ親友ヤコブもいる。

    まだ上巻なので
    散らばったクレヨンらが
    一体どこに転がっていったのか。
    拾い集めた時点で
    24色だったクレヨンがどんな色に変化するのか。

    まるで予想もつかないが
    とにかく心はやる。
    広範囲に転がっていった
    クレヨンを
    ひとつ、またひとつと発見してみれば
    それは
    ほのかに発光し始めているような…

    あぁ~、下巻が楽しみ!

  • 話題の本。上巻と下巻いっきに読みました。とても読みやすい物語ですが、最後の終わり方はちょっと哲学的。自分を信じること。言葉でいうと簡単に聞こえるが、人生で何を信じるかを見出すのは難しいテーマ。その時に最終的には自分でどう考えて、どう行動するか。
    モノ語りは一人の主人公の37年間の人生を通して、人生の尊さを描いている壮大なある意味冒険ストーリー。登場するキャラクターがどれもしっかり個性があり、強烈な印象が残る。特にキーパーソンのお姉さんはそのキャラクターがとにかくユニークで面白い。両親の離婚の裏に隠されたストーリーはなんとなく予想は出来るが、やはり人を好きになることで人生は大きく変わる。誰を大切にするか。
    色々考えさせられる一冊でもあった。

  • 歩の生まれた時から高校時代までが描かれている。
    イランで生まれ、エジプトでも生活した事があるっていうだけで物語が出来上がってる。
    それに家族も変わり者。唯一お父さんはいい人かなって思うけど、なんか訳ありで離婚しちゃうし・・・
    お母さんとお姉ちゃんは強烈かな。特にお姉ちゃんは凄い。

    家族のおかげで自分をうまい事コントロールしながら成長していってるのよね。なかなか人気者のようだし。
    下巻はどんな人生が待ちうけているのだろう。楽しみだ。

  • 自叙伝的な物語なのかな?
    子供の頃の海外生活はとても刺激的だったに違いない。誰でもが体験できることではないので、羨ましいな。
    後の人生に何かしら影響を与えるのだろう。考え方とかね〜。
    姉弟のあり方とかおもしろい。
    相手のことを見ながら行動しているものなんか〜。
    あたしは、妹の出方とか全然気にしてなかった。
    きょうだいの下がよく観察しているということ!?

  •  変わった個性的な家族の中で、如何に「僕」が苦労したのかー。
    母の自由さと強さ、姉の奇行の数々、厄介事をすべて引き受ける父、うまくいかない母と姉の間で空気のようにうまくやり過ごす「僕」、といった日々が綿々と綴られている。
    下巻を読むと、上巻が壮大な序章というか大掛かりな前フリのように思えてくる。
    少々読み進め辛かった第一章を過ぎると、サクサク読めた。
    特に第二章は、エジプトで暮らす一家の日々を通じて向こうの習慣やしきたり、文化などが知れて面白かった。

  • 直木賞受賞作品ということで、お手並み拝見的な要素で読み始めた本。
    最初は姉の傍若無人ぶりに辟易気味だった。このままずっと振り回されるのかと心配をよそに段々と物語の世界観に入っていけた。エジプトでの生活は淡々と描かれていたけれど、主人公の心模様の描写は丁寧に掘り下げられていてとても良かった。教祖になったおばあちゃんであったり興味深い人がいっぱい。下巻も期待したい。

  • イランで生まれエジプトで幼少期を過ごした少年を取り巻く家族の物語。マイノリティーであることで皆の注目を浴びようとする姉とその姉を疎ましく思い、気配を消すことで無難に生きてきた弟。物静かで家族の犠牲になることをすすんで受け入れようとする父親と、幸せになるために毎日をきらびやかに過ごす母親。姉は一種の精神的な病気を持っているようだが、それはこの後の弟の生活にどう及ぼすのか。成長していくにつれて世あたりのうまくなった弟がこのままうまく世の中に受け入れられるのか。自由奔放で前を突き進む母親は、この先も恋愛をし続けることができるのか。日に日に影の薄くなった父親はこの後も父親でいられるのか。弟の細やかな心情を丁寧に描くことで周りの情景が浮かびあがりどんどん先を読みたいと思えた。

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サラバ! 上の作品紹介

西加奈子さんの「サラバ!」は筆者の半生を元に書かれた長編小説です。
第152回直木賞を受賞した本作は、主人公である歩(あゆむ)が家族が抱える問題や人間関係に揺さぶられ、他者との関係のなかで揺らぎ、喜怒哀楽を重ねながら自分というものの存在を作るために歩んでいく、誰にとっても共感でき、そしてともに歩んでいく道標となる作品です。

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