サラバ! (下)

著者 :
  • 小学館
4.12
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  • / ISBN・EAN: 9784093863933

作品紹介・あらすじ

本年度最大の衝撃と感動。

一家離散。親友の意外な行動。恋人の裏切り。自我の完全崩壊。
ひとりの男の人生は、やがて誰も見たことのない急カーブを描いて、地に堕ちていく。
絶望のただ中で、宙吊りにされた男は、衝き動かされるように彼の地へ飛んだ。

感想・レビュー・書評

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  • 5年前に読み終えた本作。自分の本棚の★5の作品を並べてみてた時に、やっぱり群を抜いて心に残っており、改めて広く多くの方に読んで欲しいと思った。
    人生深い谷に落ちたり、深い霧に包まれたりする時もあるが、いつかはきっとなんとかなる。終わりよければすべてよいじゃないか。そう思わせてくれた自分にとって思い出深い一冊だった。

  • R1.10.23 読了。

     サトラコヲモンサマの正体、姉の奇行と世界をめぐっている間に見つけた大切なもの、父と母の離婚の理由、自分の身体に生じた変化への戸惑いなどなど、激動する展開に目が離せなくなり、一気読みしていた。自分とは?家族とは?それぞれの想いとは?を考えさせられた作品でした。すぐには消化できないかもしれない読後感。良い意味でやられた。

    ・「信じられるものなら、何でも良かった。あらゆる人の、たくさんの苦しみ。決して解決出来ないものもあったし、どうしても納得できない残酷な出来事もあった。きっとそういう人たちのために、信仰はあるのだろう。自分たち人間では、手に負えないこと。自分たちのせいにしていては、生きてゆけないこと。それを一身に背負う存在として、信仰は、そして宗教はあるのだろう。」
    ・「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけない。」
    ・「自分だけが信じるものを見つけなさい。」
    ・「大切なのは、人が、ひとりひとり違うことを認めることだ。」
    ・「僕が生きていることを、生き続けてゆくことを、僕が信じているということだ。」

  • 言葉の選び方の良し悪しだとか文章のうまさだとか構成がどうこうとかそんなことどうでもいい。
    読んでいる間じゅうずっと胸が震えて、先を読むのがもどかしくて。今まで知らなかった小説の新しい世界を体感している不安と喜び。
    ああ、これだから読書ってやめられない。
    素晴らしい作品。

    全編に通じる躍動感。
    荒削りな文章で描き出す圧倒的な世界観。
    異文化、宗教、天災、友情、家族。
    さまざまな要素が織りなす物語は生きることを強く肯定し私を励ましてくれた。

    どんなに辛い出来事が私達を襲っても、世界中で人々が理不尽な争いを続けていたとしても、目を逸らすことなくきっと乗り越えらる。
    今だからこの本を一人でも多くの人に読んで欲しい。そして感じて欲しい。
    久々に読書の醍醐味を感じた本でした。

    • vilureefさん
      nejidonさん、こんちには♪

      おおっと、西さん大好きなのですね~(*^_^*)
      私はこの作品が初です!
      今「白いしるし」を借り...
      nejidonさん、こんちには♪

      おおっと、西さん大好きなのですね~(*^_^*)
      私はこの作品が初です!
      今「白いしるし」を借りてきているのですが、他にもお勧めがあったら是非教えてください。

      私は直木賞候補になる前に既に予約をしていたのでそれほど待ちませんでしたが、今は大変な事になっていますよね。
      ラッキーでした。

      西さん、勢いのある方ですね。
      これからが楽しみです。
      2015/02/23
    • nejidonさん
      vilureefさん、こんばんは♪
      す、すみません。
      コメントを入れたつもりで読みに伺ったら何もなくて・・(涙)
      またもや「投稿」をク...
      vilureefさん、こんばんは♪
      す、すみません。
      コメントを入れたつもりで読みに伺ったら何もなくて・・(涙)
      またもや「投稿」をクリックせずにいたようです。申し訳ありません。
      西さんの本はどれも面白いのですが、vilureefさんには「きりこについて」がおすすめです。
      たぶん、図書館にあるかと思います。
      気に入ってくださると良いなぁ。ドキドキ・・(笑)
      2015/02/26
    • vilureefさん
      nejidonさん、こんにちは♪

      ハハハ、ありますよね。そう言うこと。
      しかもブクログ動作遅いし・・・(^_^;)

      「きりこに...
      nejidonさん、こんにちは♪

      ハハハ、ありますよね。そう言うこと。
      しかもブクログ動作遅いし・・・(^_^;)

      「きりこについて」ですね( ..)φ
      猫が表紙のだー!見たことある!
      西さんの作品、タイトルだけはどれも聞いたことがあります。
      毎度毎度評判になっているのでしょうね。
      なぜか手に取る機会がなくて。
      これからゆっくり読んで行きたいと思います。

      ありがとうございました♪
      2015/02/27
  • 私が、本を読み続けている目的。
    それがこの物語で明らかになりました。
    私は、確実に自分の『サラバ!』を探しているんだと。

    私の本を読むきっかけは
    資格試験のうっかりミスをなくす為だったのですが…。
    その資格試験も、読書しようと思ったことも
    少しずつでも読書を続けてきたことも
    この本『サラバ!』に繋がっていたんですね。

    ここは通過点ではなく、
    何かが意識的に変わるであろう分岐点です。

    貴子や歩をみていれば、容易に手に入るものではないのはわかってます。
    私はまだまだ信じきることができていません。

    胸にストンとおちて、急にピントがあったように
    はっきりとわかる日まで、
    自分の思うがまま、選ぶがまま、
    これからも読書を続けたいと思います。

    ああ、こんな読書体験もあるのですね。
    自分の後ろには自分が読んだ本たちがつながっている。
    本だけではなく、今までのありとあらゆるものが
    うねるように流れている。

    私が私を連れていく次の場所。
    横道だろうが、遠回りだろうが躊躇せず
    自分に任せて直感で選んでみようと思わせる一冊です。

    こうありたいと願うものが、ここにありました。
    西加奈子さん、私も私だけの『サラバ!』を探しはじめます。

  • 上巻の軽い感じとは打って変わって、下巻は生きていく事の重みを感じる内容だった。主人公の苦しみがありとあらゆる表現で私の心に伝わってくる。姉の手紙の頁あらちから、どっと重みが増した気がする。「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ」が頭の中をぐるぐると回り続けている。この本はもう一度、何年後かに読まねば!と思った。

  • 主人公の姉の言葉。
    「あなたの信じるものを誰かに決めさせてはいけないわ」
    にいいようのない感動を覚えた。
    たぶん人生で何度でも思い出すと思う。

    夢中になって読んだし、大泣きもしたがひねくれた自分には「ああ、こんなに素晴らしい友人達がいるんだからあなたも素晴らしい」って結論ね。と若干?嫉妬をした。
    一理あると思いますが。
    でも‘完璧な’友人達側からみたら世界は見え方が変わるのかもな、と思った。

  • 圧倒されました。

    砂漠の熱波を浴びたような感じ…
    深いところから湧き上がってくる熱いもの…
    心が震えるというのは、こういうことなんだと…。

    言葉で上手く表現できないのがもどかしいんですが、
    言い尽くせない”何か”がありました。

    姉の奇行、家庭内の”不穏”、父親の転勤を諦観という形でやりすごすうちに、
    感情を抑え、空気を読むことばかり上手くなってしまった歩。

    父親の転勤…
    友達との別れの繰り返しに、
    泣きはらした顔で「絶対また会おうね!」って。
    でもどこかであきらめていた自分を思い出す。

    だからよけいアユムとヤコブの再会のシーンに、胸がいっぱいになりました。
    言葉は通じなくても、深く深く解り合えていた二人。
    再び会えた感激と、そして二人の間に流れた時間にも…。

    ”巻き貝のタカコ”
    とてつもない芸術家になるんじゃないかって、
    勝手に想像していたから、少しもったいない気も…。

    貴子が歩に、両親の人生を知るべきだと言ったとき、
    子供は親の人生すべてを受け入れなければ前に進めないのかと、正直思いました。
    でも、父と母は彼らなりの人生を生きたのだということ。
    そして、貴子と歩の命名に、両親の想いを知ることができて良かったです。 

    また、西加奈子さんというと期待するのは、猫ちゃん登場。
    なんて愛おしい、おばちゃんのお釈迦様の入滅のごとき最期。
    そしてなにより、衝撃のサトラコヲモンサマ~!
    「ぶぶぶって震えるねん。それが可愛くてなぁ。」うふふ。

    それが取るに足らないものであっても、
    その人にとって「なんでもどうでもよくなるんよ」と思わせるもの。
    自分の信じられるものが何かひとつでもあれば、
    それが心のよりどころになるんだと。

    「自分の信じるものを他人に決めさせてはいけないわ」名言! 
    私にとっての”サラバ!”って何だろう…。 

    必ずまた読み返したいです!
    心から、本が好きで良かったと思います。 

    • koshoujiさん
      こんにちは。
      これは、出会えて良かったと思える数少ない傑作でしたね。
      夏バテしていませんか?
      杜の都は昨日あたりから、最高気温が26度...
      こんにちは。
      これは、出会えて良かったと思える数少ない傑作でしたね。
      夏バテしていませんか?
      杜の都は昨日あたりから、最高気温が26度と、一気に秋の気配が近付いて来ました。
      まあ、もう一度くらいは暑さがぶり返してくるでしょうが。
      このまま夏が終わってしまうのは何とも切ないので。
      高校野球はお好きですか?
      昨日の決勝戦は声を枯らして応援しましたが願いは叶いませんでした。
      東北の夢の実現はまだ遠いようです。
      それでは、お体ご自愛ください。
      2015/08/21
    • koshoujiさん
      追伸です。
      「あのとき始まったことのすべて」に花丸をいただいたので、レビューを読み返したら、
      今ブログに書いているようなことをこのレビュ...
      追伸です。
      「あのとき始まったことのすべて」に花丸をいただいたので、レビューを読み返したら、
      今ブログに書いているようなことをこのレビューの中で書いていたのですね。
      知らなかった(笑)。
      切ない想い出です。
      あらためて「secret base~君がくれたもの~」の歌詞が心に沁みわたります。
      教えてくれてありがとうございます。
      2015/08/21
    • 杜のうさこさん
      koshoujiさん、こんばんは~♪
      花丸とコメントありがとうございます!
      『サラバ!』最高に熱い本でしたね!
      大切な一冊になりました...
      koshoujiさん、こんばんは~♪
      花丸とコメントありがとうございます!
      『サラバ!』最高に熱い本でしたね!
      大切な一冊になりました。

      育英…本当に残念でした。。。
      今度こそ、東北に!って願ってたんですが。。。
      高校野球は大好きです!
      たしか瞑想の松から林の中を歩いていくと
      東北高校のグラウンドがありましたよね。
      甲子園であの校歌が流れると懐かしくて~
      「三百余年、名君の~♪」歌えちゃいます(#^^#)
      ブログも楽しみに読ませていただいてます。
      西公園のプール、もうないんですか…
      プラネタリウムがなくなったのは、友達に聞いてたんですが。。。

      暑さは苦手で、本読みのペースがますます遅くなっています。
      koshoujiさんも、お体ご自愛くださいね。
      2015/08/22
  • こうゆう本だったのか。。。

    あんなにイケていた歩の人生が転落してしまう。
    しかも懸念していた家族のせいではなく、自らの容姿の衰えによってだ。
    いつからか外見やステータスだけで人の価値を測っていたような歩だ。すっかり自信をなくし、身も心もみっともない男になってしまった。
    人と比べ続ける人生の危うさにゾッとした。
    歩には芯がなかった。自分だけが信じられるものがなかったのだ。

    そして「信じるもの」を探す旅に出る。
    これまで長かったけど、ここからが本番だったのか。
    歩が見つけた「信じるもの」は
    ”僕が生きているということ、生きていくことを信じる。
    僕たちはサラバとともに生きていく。”
    というすべての人に当てはまりそうであるが、漠然としていて観念的な答えだ。
    そして歩の人生を共に辿った読者たちを切り離していく。
    この本は歩の『サラバ』であって読者の『サラバ』ではないのだ。

    「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。」

    姉が以前、歩に対して語ったセリフが読者にも降りかかる。
    私の「信じるもの」は委ねられた。

    「信じるもの」を見つけたい思った。この家族の「信じるもの」を見つけるまでの七転八倒をみるに、そう易々とは見つからないのだろう。もしかしたら失うことでしか得られないのかもしれない。
    しかし、これまでや、これからの人生の中に「信じるもの」を得る手がかりはきっとある。そのために私はこれからも本を読み続けていかねばならない。

    読む年代、時期や心も持ちようによって刺さるツボが変幻しそうな本だ。
    ただ、どんな時に読んでもきっと背中を押してもらえる、そんな読後感だった。

  • 阪神淡路大震災との遭遇。
    サトラコヲマンサマと離れた姉は“自分で、自分の信じるものを見つける”ために、父と一緒にドバイへ。
    大学入学をきっかけに上京した主人公歩は、チャラい大学生になって女の子と片っ端からやりまくり、野生が理性を凌駕した最初の一年を過ごす。
    二年生になり、映画サークルに入部し、下半身が奔放な鴻上との出会い。
    父と姉の帰国。
    姉の奇妙な行動。
    父の出家。
    母の再婚。
    姉の唯一の心の支えであった矢田のおばちゃんの死。
    三十代になった歩に起こった肉体的異変。
    歩はそれまでいろいろなものから逃げていた自分に気づく。
    葛藤、自戒。
    そんな中での須玖との運命的な再会は大きな希望だ。

    父と母の離婚の本当の理由を知ることになる歩。
    毅然とその話をする姉は、昔と同じような自分勝手のようでありながら、どこか違っていた。
    そして、生涯の伴侶を得てサンフランシスコに住む姉から届いた手紙。
    274P
    “ そして歩、あなたの名前は、歩よ。
     歩きなさい。
     そこにとどまっていてはだめ。あなたの家のことを言ってるのではない。分かるでしょう。
     あなたは歩くの。ずっと歩いて来たのだし、これからも歩いてゆくのよ。
     お父さんに会いなさい。話を聞きなさい。
     そして、また歩きなさい。自分の信じるものを見つけなさい。
     歩、歩きなさい。”

    自分は何がしたかったのか?
    何をしたいのか?
    家族に何を望んでいたのか?
    そして、これから何を信じて生きていけばいいのか?
    自分の周りで起こる事件に出会う度、歩は葛藤し、もがき、苦しみ続ける。
    そんな歩の最後に向かうべき場所は───。

    341P~342P
    “ 僕は禿げていた。僕は無職だった。僕は34歳だった。
     僕はひとりだった。
     信じるものを見つけられず、河を前に途方に暮れている34歳の僕は、きっと幼い頃の僕よりも、うんと非力だった。
     僕が手放したものは、どこへ行ったのだろう?
     輝かしい僕の年月は、どこへ行ったのだろう。
     涙は止まらなかった。”

    345P
    “ 僕は生きている。
     生きていることは、信じているということだ。
     僕が生きていることを、生き続けてゆくことを、僕が信じているということだ。
    「サラバ。」”

    この二カ所を引用しただけで、私は再び涙が止まらなくなる。
    私たちは何かを信じて、生きることを諦めてはならない。

    今、生きることや、人生に問題を抱え悩んでいるすべての人々にこの本を読んでもらいたい。
    ここには、今後そういう人たちに優しく手を差し伸べてくれる何かがきっと詰まっているはずだ。

    直木賞受賞作は数多あれど、これほどの傑作は類を見ない。
    読んでいる間、特に後半に進むにつれて胸が震えた。
    読み終えるのが残念だとさえ思った。
    こんな素晴らしい小説に出会えた私は幸せものだ。

    私の読書人生の中でも三本の指に入るほどの心に残る名作。
    これほど素晴らしい作品を書いてくれた西加奈子さんに感謝したい。
    ありがとう───。

    • chineseplumさん
      花まる、ありがとうござます!私も、出会えてよかったなと思う作品でした。
      花まる、ありがとうござます!私も、出会えてよかったなと思う作品でした。
      2015/03/04
  • 文庫本3冊を読み終えて
    現実は変わらなくても気持ちは変わる。歩は次第に幸福感を失って行くが、家族という集合体の中で、気持ち次第で世界を変えていくことができると西加奈子さんが訴えていると思うのである。
    男女の違いはあるが、西加奈子さんは歩を通じて、人の人生は気持ちの持ち方で随分変わることが伝わってきた。

    ネットでの拡散はウイルスに例えられるケースが多いが、ここでは「イナゴの集団」、昭和のレトロな感じが出ている。
    御神木は崩壊の呪文、全巻を通して、この呪文により場面が変わる。しかし、しかしだ、御神木は御神木であって、御神木ではなくなったことに、戸惑いを感じた。
    そして家族のひとりひとりの思いを歩が知ることになる。家族や友人との関係は必ずしも形式や言葉ではわからない。それぞれが心の中に想い描いている事が、見事に描写された作品だった。サラバ!

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

西加奈子の作品

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