サラバ! 下

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著者 : 西加奈子
  • 小学館 (2014年10月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863933

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サラバ! 下の感想・レビュー・書評

  • 言葉の選び方の良し悪しだとか文章のうまさだとか構成がどうこうとかそんなことどうでもいい。
    読んでいる間じゅうずっと胸が震えて、先を読むのがもどかしくて。今まで知らなかった小説の新しい世界を体感している不安と喜び。
    ああ、これだから読書ってやめられない。
    素晴らしい作品。

    全編に通じる躍動感。
    荒削りな文章で描き出す圧倒的な世界観。
    異文化、宗教、天災、友情、家族。
    さまざまな要素が織りなす物語は生きることを強く肯定し私を励ましてくれた。

    どんなに辛い出来事が私達を襲っても、世界中で人々が理不尽な争いを続けていたとしても、目を逸らすことなくきっと乗り越えらる。
    今だからこの本を一人でも多くの人に読んで欲しい。そして感じて欲しい。
    久々に読書の醍醐味を感じた本でした。

  • 圧倒されました。

    砂漠の熱波を浴びたような感じ…
    深いところから湧き上がってくる熱いもの…
    心が震えるというのは、こういうことなんだと…。

    言葉で上手く表現できないのがもどかしいんですが、
    言い尽くせない”何か”がありました。

    姉の奇行、家庭内の”不穏”、父親の転勤を諦観という形でやりすごすうちに、
    感情を抑え、空気を読むことばかり上手くなってしまった歩。

    父親の転勤…
    友達との別れの繰り返しに、
    泣きはらした顔で「絶対また会おうね!」って。
    でもどこかであきらめていた自分を思い出す。

    だからよけいアユムとヤコブの再会のシーンに、胸がいっぱいになりました。
    言葉は通じなくても、深く深く解り合えていた二人。
    再び会えた感激と、そして二人の間に流れた時間にも…。

    ”巻き貝のタカコ”
    とてつもない芸術家になるんじゃないかって、
    勝手に想像していたから、少しもったいない気も…。

    貴子が歩に、両親の人生を知るべきだと言ったとき、
    子供は親の人生すべてを受け入れなければ前に進めないのかと、正直思いました。
    でも、父と母は彼らなりの人生を生きたのだということ。
    そして、貴子と歩の命名に、両親の想いを知ることができて良かったです。 

    また、西加奈子さんというと期待するのは、猫ちゃん登場。
    なんて愛おしい、おばちゃんのお釈迦様の入滅のごとき最期。
    そしてなにより、衝撃のサトラコヲモンサマ~!
    「ぶぶぶって震えるねん。それが可愛くてなぁ。」うふふ。

    それが取るに足らないものであっても、
    その人にとって「なんでもどうでもよくなるんよ」と思わせるもの。
    自分の信じられるものが何かひとつでもあれば、
    それが心のよりどころになるんだと。

    「自分の信じるものを他人に決めさせてはいけないわ」名言! 
    私にとっての”サラバ!”って何だろう…。 

    必ずまた読み返したいです!
    心から、本が好きで良かったと思います。 

  • 私が、本を読み続けている目的。
    それがこの物語で明らかになりました。
    私は、確実に自分の『サラバ!』を探しているんだと。

    私の本を読むきっかけは
    資格試験のうっかりミスをなくす為だったのですが…。
    その資格試験も、読書しようと思ったことも
    少しずつでも読書を続けてきたことも
    この本『サラバ!』に繋がっていたんですね。

    ここは通過点ではなく、
    何かが意識的に変わるであろう分岐点です。

    貴子や歩をみていれば、容易に手に入るものではないのはわかってます。
    私はまだまだ信じきることができていません。

    胸にストンとおちて、急にピントがあったように
    はっきりとわかる日まで、
    自分の思うがまま、選ぶがまま、
    これからも読書を続けたいと思います。

    ああ、こんな読書体験もあるのですね。
    自分の後ろには自分が読んだ本たちがつながっている。
    本だけではなく、今までのありとあらゆるものが
    うねるように流れている。

    私が私を連れていく次の場所。
    横道だろうが、遠回りだろうが躊躇せず
    自分に任せて直感で選んでみようと思わせる一冊です。

    こうありたいと願うものが、ここにありました。
    西加奈子さん、私も私だけの『サラバ!』を探しはじめます。

  • 鬼の巨きな手で
    ぎゅうううう、と捻られているかの様に苦しかった。

    絞られた体からぽたぽたと
    滴り落ちてくるのは
    それまでの自分を形作っていた中味。

    つかの間の若さ、
    孤独を遠ざけてくれる友情、
    いてくれれば安心な恋人、
    誰よりも充実している人生だと信じる根拠なき自信。

    そんなものが出てゆくだけで
    たちまち干からびてしまう体。

    ぞっ、とした。
    これは歩(主人公)の事。
    物語の中の作り話の中の人の事。

    などと、傍観していい立場に私はいなかった。
    私の心も又、カラカラに干からびていきそうになったから。

    他人が自分をどう見るか?
    他人から見た自分がいかに輝いているか?
    どれ程幸福そうに見えるか?

    そればかりを気にし、
    自分で自分を見ようとしない人。

    それまでずっと自分を蔑ろにしてきた事に
    気付きもしない人…。

    あ、私もそうだ。
    空っぽかも。私。
    それで、ぞっ、とした。

    『サラバ!』
    読んでよかった。
    本当に読んでよかった。

    非情な鬼に
    ヒラヒラにされてしまった体だが、まだ生きている。
    全て失い、空っぽになった心が
    その心だけが
    (本当はどんなもので自分を満たしたかったのか…。)
    答えてくれる事を知ったから。
     
    鬼は
    木の様に硬い人も捻ろうとした。
    でも、
    (こいつぁ、無理だな。)
    と、言って速攻諦めた様だった。(^^;

  • 阪神淡路大震災との遭遇。
    サトラコヲマンサマと離れた姉は“自分で、自分の信じるものを見つける”ために、父と一緒にドバイへ。
    大学入学をきっかけに上京した主人公歩は、チャラい大学生になって女の子と片っ端からやりまくり、野生が理性を凌駕した最初の一年を過ごす。
    二年生になり、映画サークルに入部し、下半身が奔放な鴻上との出会い。
    父と姉の帰国。
    姉の奇妙な行動。
    父の出家。
    母の再婚。
    姉の唯一の心の支えであった矢田のおばちゃんの死。
    三十代になった歩に起こった肉体的異変。
    歩はそれまでいろいろなものから逃げていた自分に気づく。
    葛藤、自戒。
    そんな中での須玖との運命的な再会は大きな希望だ。

    父と母の離婚の本当の理由を知ることになる歩。
    毅然とその話をする姉は、昔と同じような自分勝手のようでありながら、どこか違っていた。
    そして、生涯の伴侶を得てサンフランシスコに住む姉から届いた手紙。
    274P
    “ そして歩、あなたの名前は、歩よ。
     歩きなさい。
     そこにとどまっていてはだめ。あなたの家のことを言ってるのではない。分かるでしょう。
     あなたは歩くの。ずっと歩いて来たのだし、これからも歩いてゆくのよ。
     お父さんに会いなさい。話を聞きなさい。
     そして、また歩きなさい。自分の信じるものを見つけなさい。
     歩、歩きなさい。”

    自分は何がしたかったのか?
    何をしたいのか?
    家族に何を望んでいたのか?
    そして、これから何を信じて生きていけばいいのか?
    自分の周りで起こる事件に出会う度、歩は葛藤し、もがき、苦しみ続ける。
    そんな歩の最後に向かうべき場所は───。

    341P~342P
    “ 僕は禿げていた。僕は無職だった。僕は34歳だった。
     僕はひとりだった。
     信じるものを見つけられず、河を前に途方に暮れている34歳の僕は、きっと幼い頃の僕よりも、うんと非力だった。
     僕が手放したものは、どこへ行ったのだろう?
     輝かしい僕の年月は、どこへ行ったのだろう。
     涙は止まらなかった。”

    345P
    “ 僕は生きている。
     生きていることは、信じているということだ。
     僕が生きていることを、生き続けてゆくことを、僕が信じているということだ。
    「サラバ。」”

    この二カ所を引用しただけで、私は再び涙が止まらなくなる。
    私たちは何かを信じて、生きることを諦めてはならない。

    今、生きることや、人生に問題を抱え悩んでいるすべての人々にこの本を読んでもらいたい。
    ここには、今後そういう人たちに優しく手を差し伸べてくれる何かがきっと詰まっているはずだ。

    直木賞受賞作は数多あれど、これほどの傑作は類を見ない。
    読んでいる間、特に後半に進むにつれて胸が震えた。
    読み終えるのが残念だとさえ思った。
    こんな素晴らしい小説に出会えた私は幸せものだ。

    私の読書人生の中でも三本の指に入るほどの心に残る名作。
    これほど素晴らしい作品を書いてくれた西加奈子さんに感謝したい。
    ありがとう───。

  • 直木賞受賞作。
    怒涛の後半。
    前半ではわからなかったことが明らかになるので、上巻だけでやめちゃダメですよ!(笑)

    両親が離婚した圷家。
    姉の貴子は強烈な性格で、学校では浮いてしまい、それを見て育った弟の歩は、目立ちすぎず人に好かれるように、そつなく生きていきます。
    お似合いに見えた両親が離婚し、歩には理由が知らされないまま。
    実は結婚のいきさつから問題があり、父はそれを気に病んでいたのでした。

    歩は両親のいいとこどりの容姿に恵まれ、大学では奔放な生活に。
    美人の恋人も出来ますが、姉の貴子が巻貝アーティストとして注目を浴びたときに、とんでもないことに?

    歩は、学生時代から始めた仕事を続けますが‥
    頭が薄くなってきて、容姿にも自信を失います。
    再会した姉は、アメリカで自分らしく生きていて、すっかり落ち着いた様子。
    まともに生きてきたつもりの歩のほうは、どこか本気になれずにカッコつけたまま、ずるずると落ち目になってきている有様。
    あいたた‥(苦笑)

    迷惑をかけてでも、全身で体当たりして道を探っていた姉のほうが、確実なものを掴んだということでしょうか。
    弟はこの小説を書き切ったということなので、ある意味、いじいじ悩む性格が活用されたってことなのか??

    自伝的要素がある作品なので、そういう結末にしたのでしょうが、これは嘘かもしれない、と最後に言われても読者としては?
    最初から、フィクションには違いないんですが~‥
    平凡で深く考えない弟の、ありがちな年の取り方。いやこれは、気をつけたほうがいいかも?
    そして、姉がらみの特異なシーンも精緻に描かれ、熱のこもった力作には違いありません!

  • 初の西加奈子。
    巷で大いに話題だったので手にしてみた。

    上巻は冗長で読み終えるのに四苦八苦。ただ、海外生活のくだりは経験者ならでは。暮らしてこその実感で共感するところが多々あった。著者はフィクションとおっしゃっているらしいが、多分に実体験が反映された作品なのは間違いないだろう。
    さて、その肝心のストーリーだが、冗長ではあったがこの物語を語るには前半部分も丁寧に綴る必要があったということだろう。ようやく上巻終盤で怒涛の展開を匂わせ、上巻を読了したところで既に12時を回っていて少しためらいが。どうしよう。でも読みたい!と一気に下巻の真夜中一気読み。こんなことは何年振りか(おかげで寝不足)。

    無駄に思える時を過ごしてもたくさんの回り道をしても、きっといつか自分が何かを見つけられるその時がくる。自分のために生きる、それはそのまま、支え、支えられる、自分を取り囲む人々のために生きること。
    若者の成長物語と言ってしまえば、なんだそんなありきたりな、と思えてしまうかもしれないが、ぜひ若い人に読んでほしい作品。

    そして、京王線やらイザベル・アジャーニやら、ストーリーとは別のところで、懐かしさにも心躍る私であった。

  • 確かにおもしろかった。というよりは、読みやすかった。人気な理由がわかった。
    しかし、満足はできないし所々、人間の描写が雑、だと思ってしまった。
    読みやすい小説、リズムがいい小説がいい小説とは限らない。もっと人間的にこうだという「実感」みたいなのが伝わってこなかった。

    主人公にしろ姉にしろ、その人物をあまり明確に想像できないというのが事実だ。ストーリーはとてもいいと思うし素晴らしいと思う。ただもっと登場人物をこちらにわかりやすく想像させてくれる何か、があればもっといい作品だと思う。
    例えば姉がはじめなぜ気性が荒く突拍子もないことばかりして育ったのか、後半で変わりだす所が唐突すぎて。主人公歩がの髪の毛が抜け出す、以外にもっと描写はなかったのだろうかとか、それをこちらに想像しろといわれればできるのだが、少し投げやりな気もした。
    どうしても姉のはじめの激しい印象が強すぎて後半と一致しない。もう少し繋げる何かがあってもよかったのではないか。

    読みやすい、リズムがある、わかりやすい、
    しかし心を打たれるような動かされるような感動や感覚やそれらはなかった。

  • 下巻では立場が逆転。お姉ちゃんがまともになり、歩がどうしようもない奴になってしまった。
    禿のせいか?
    また須玖に再会でき、鴻上にも出会い、いい雰囲気だったけど、やっぱり3人って難しいよね。
    それでも、須玖と鴻上は歩を好いてくれていたのが救い。
    両親の結婚にまつわる話も衝撃的。

    やっぱりヤコブに再会出来て本当に良かった。2人でナイル河を眺めるシーンにジーンときちゃいました。

    すごい家族の話だったな~確かに小説にした方がいいね(笑)

  • 著者が「すべてを注ぎ込んだ」という、直木賞受賞作。
    自身の身辺がモチーフか、それともあくまで著者の想像力の産物か。
    自己愛的な主人公、異常行動を重ねる姉、自分勝手な母、罪悪感に囚われている父、家族それぞれの再生に向けての物語。
    作品全体に、こ難しい言い回しはないが、キラッと光る言葉が散りばめられている。
    『私が信じるものは、私が決める』

  • 物語がなかなか頭から離れないような引力で、その世界に引き込まれていった。物語のなかに自分を見ているような気がして、様々な感情がわきおこった。とくに「自分」というものを強く意識させられ、貴子の手紙を読みながら、歩と一緒に私も諭されているような感覚がした。
    自分自身と向き合えているだろうか。決して綺麗事ばかりではなく、生きるということや認めるということに向き合って、また前に進むきっかけを与えてくれる本だと思う。

  • 何をどう言葉にしていいのかわからない。
    西加奈子は暴力だ。圧倒的な暴力だ。
    この長い物語を読んでいる私は、打ちのめされ、引きずられ、傷付いた。それでも彼を見失わないように必死で目を凝らす。どこまでもつながるこの痛みを自分の中に取り込もうと目を凝らす。
    生きていることが苦しくて、いっそ逃げてしまいたい、そう思うことがある。
    何もかも周りのせいにして、自分の中に逃げ込みたくなる。そこはきっと居心地が良くて、多分傷付くことなく生きていける。目を閉じ耳をふさぎ見えない何かを感じる、そこにいればもう傷付かなくてすむ。
    でも、そこから外に出て、自分の人生を歩き出すために、どれだけのチカラを必要とするか。きっと一人じゃダメなんだろう。自分のそばにいて、ただそばにいて、ひたすらじっとそばにいてくれる。そんなだれかが必要なんだろう。
    生きること。生きていること。生きていくこと。その圧倒的な苦しみになかでもがいているたくさんの人に、この物語は一つの福音になるのだろう。芯を見失い軸を失い漂うたくさんの人へ、この物語を届ける、それが私の信じるべき何かなのかも。

  • 自分の好みとしてはどう考えても、自分のブクログ本棚に設定してあるカテゴリのひとつ、「読み続けられなかった本」または「積読」行きになってもおかしくない本だった。
    それなのに、一言一句読み飛ばすことなく、ゆっくりとだが読み終えられたのが不思議だ。

    図書館の予約状況から見ても、上巻でやめた読者も多かったようだし、私自身もよく下巻まで進んだものだと思う。

    でも読了後は、上巻でやめなくて良かったと思うようにはなった。
    やはりヤコブとのサラバはぐっとくるものがある。

    だけどだけど、貴子の手紙の内容に一理あるとは思うものの、貴子の奇行の数々を「でもそれは私のことよ。歩のことじゃない。」「私がやっていることは、歩がやっていることじゃないのよ。」(P245)なんて言われたら、歩同様にやっぱり腹が立つ。

  • 破天荒な姉のせいで周りの大人の顔色を窺いながら生きてきた弟が語り部。そうすることが処世術だった弟を思うと後半の展開は、見てられない。受け身でいること、逃げること、見ないフリをすることは自分を守る方法なんだけどな…。
    だって信じることは怖いことだ。世の中に「絶対」を約束されたものなんてないんだから。信じる何かが見つかれば、救われるってのはわかるんだけど!
    本を読む中、自分のためだ!と思える言葉に出会えたときの気持ちを味わって欲しい。

  • まさか!下巻でこんな展開になるとは!
    上巻では、そつなくこなす美少年だった主人公が、
    下巻では、堕落して、禿げだ無職の中年になりさがった。
    けれど、見つけた、自分の信じるものを。
    揺れ動く心情に共感した。

    自叙伝的物語の主な展開は、4人家族の生活。
    自己主張の強い姉に振り回され続けた圷家の離散。
    一人暮らしを始め、タガが外れ、歩の人生が狂いだす。

    壮年期、自分の過去を振り返り、揺れ動く時期。
    誰かと比べ、劣等感に陥り、卑屈になりやくなることもある。
    そんな、落ちぶれた主人公の姿を読むのが辛くなる。

    人生とは、選択の連続。
    人生とは、回顧の連続。
    誰かと比べたり、評判を気にしたりせずにはいられない。

    落ち着いた姉が、歩に諭す。
    『あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ』

    主人公・歩は、父と会い、そして、カイロの旧友に会いに行く。
    見つけた信じるものは、『サラバ!』
    かつて、カイロで暮らした圷家の絶頂期時代に、友達と交わした会話。
    『僕は神様に出会い、出会った瞬間、別れを告げることが出来るのだ』
    それは、わかるような、わからないような感じだった。

    そして、終わりは、読者への応援メッセージになっていた。
    姉の言葉『あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ』で。

    やっと気づいた。
    読者への、自信を失った人への、応援するための回顧録風物語だったことを。
    長い長い、主人公の家族との暮らしを克明に綴ってきたのは、
    今立ち直った彼のルーツ、原点に戻ることが大切だ、ということだったのだ。
    スティーブン・R・コヴィーが提唱した「7つの習慣」にもあったと思う。

    著者自身の自分史のような物語。
    共感できるのは、挫折したことがある人たち。

    友と見た静かに、静かに流れるナイル川。
    そこで交わした『サラバ』
    良き懐かしい思い出。
    それが、やり直そうとする力になる。
    そんな良き思い出を、読者も思い出して欲しい。

    最後は、歩の言葉が、どれも名言だ。
    『僕は生きている。』
    応援メッセージにあふれた大河小説。

    第152回直木賞受賞作

  • 後半は家族がそれぞれの道を歩み始めた。
    最後の最後、姉が何かを見つけて帰国してきてホッとした。
    1番の問題児だとみたいだったのに、母親や弟に影響を与えるほどになって帰ってきたんだ。
    自分の芯のようなものがわかったということか。
    「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。」そう、ほんとそうだと思う。

  • 心の柔らかい部分をつかれたような感じがする。後半涙が出っ放しだった。自分も「感じやすく」なっているかも。

    姉はいつも何かやらかしていて、僕は気配を消すことで生きてきた。小さいときから大人にならないといけなかった、という矢田おばちゃんの言葉にぐっときた。私にもそんなところがあったのです。

    僕はいつの間にか、逃げながら受け身で生きていく姿勢が身についてしまっていた。いつも「いい子」であって、容姿にも恵まれ、リーダー的存在の友達としての地位、女の子にも困ることなく、生きてきた。しかし、30を過ぎ、仕事がうまくいかなくなり、髪の毛が抜けはじめ、僕は変わってしまう。いつも、人と比べて、生きてきたのだ。判断基準が他人だった。芯が、軸が、信じるものが、自分の中になかった。いやだけど、共感できてしまうところが多かったなぁ。

    一方でいつもやらかしてきた姉が、なんども傷つきながら、自分の足で信じるものをみつけ、別人のように穏やかになっていく。姉は、やり方こそ間違えていたが、いつも自分で考え、自分で行動していたのだった。

    姉が立ちなおるきっかけになったもののひとつに、ヨガがある。私もヨガをしていて、ちょうど休みがちだったのだけれど、すぐにヨガをしたくなった。自分の芯を、軸を、見つめたくなった。

    「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ」

  • 文句なしの直木賞。
    僕はこれを読んで、自分はなんとつまらない人生を送っていることか、と思いました。

    思うに人生というのは、とてもだらだらした日常の連続で、そのなかの非日常と、突発的な物事の影響を受けつつも、途切れることなく静かに、けれども圧倒的な存在感を持って流れる大きな河のようなものなんだろう。

    大きな流れの中で人はあまりにもちっぽけであっても、人は前に進むのである。

    そんなことを思わせてくれる作品でした。

    上巻はとてもきらきらした少年時代と、家族の状況に耐える少年の姿がつつましく、美しかった。
    でも下巻は圧倒的な「こたえ」と「メッセージ」があふれている。
    そして現代を生きる私たちが直面するリアルタイムな事象を踏まえて人生と「ひと」というものを考える。

    先ほど「人生というのは、とてもだらだらした日常の連続で、そのなかの非日常と、突発的な物事の影響を受けつつも、途切れることなく静かに、けれども圧倒的な存在感を持って流れる大きな河のようなもの」と書いたが、それはどの時代にも存在してきたし、その過去の存在を見ることによってそれを感じることが多いのだけれど(往々にして書物から得られる情報や叙情的なテキストは時間的な隔たりを感じる者の方が多い気がしている)、このサラバ!では叙情的な部分が現代という時間の中で、そして今を生きる主人公のなかで細やかに描かれている。

    私達は現代の、現実の、日常に生きているのだし、
    ニュースになるような突発的な事象もその中にしか起こり得ない。

    この作品を通して、自分自身が「いま、ここ」で生きている、主人公と同じ時を生きていると感じることができたことはとても幸せなことであるように思う。

    これをたとえば5年後、10年後読んだとしても、同じような感慨は得られないだろう。

    それは主人公の歩が、ヤコブが、それを経て大切な奇跡を手放すことになった、膨大な時間の隔たりというものがそこに存在するからだ。

    今を生きる人には、今、読んでほしい。

    図書館で借りるのでもいいから、文庫本になるのを待たないで笑

    西加奈子さんについては昔から大注目だったけれども、改めて、追いたい作家になった。

  • 上下まとめた感想。すごかった。ずっと惹き込まれた上に、最後にこの本で何を言いたかったか語った部分の納得感も、すごかった。
    産まれた瞬間からのことをずっと書いてるわけだけど、上巻が終わるくらいで「はて、テーマは何か?(何にまつわるエピソードをかいているのか?)」と思い、少し考えて、「ははぁん、テーマは愛だな」と思ったが、違った。「愛」くらいじゃ言い表せない感じを表現してた。
    西加奈子は2冊目だけど、どっちも、一言では表現できないことを小説の形で表現してる感じで、なんとも気持ち
    いい。

  • 西加奈子に、優しくハグされたような気がします。

    人と比べた自分の価値ではなく、自分の中にある核。芯。信じられるもの。
    自分を支えるもの。赦すもの。ただそこにあるもの。

    それさえあれば、それでいいんだ、と。
    それが分かれば、生きることはずいぶんと楽になるんだ、と。
    「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。」

    両親期待の長女であった私は、子どものころ精神的酸欠で結構苦しかった記憶があります。
    いい子でいなければならないという強迫観念。

    だから我が家の出木杉くんである長男に、中学生のころ言いました。
    「大人は子どもにいい子になれと言うけれど。いい子になってほしいと思っているけれど。
    子どもは、大人に都合のいい子になろうとしなくていいんだよ。」
    「ちょっとよくわかりませんけど…」そんなサンドイッチマンのような答えが返ってきましたが。

    今なら、この本を渡す。
    これを読め。
    自分にとっての「すくいぬし」は何?

    この本『きいろいゾウ』と同じくらい好きだ。

  • ★4.5

    自分探しと言うと違うな。自分自身を書いたと言う方が正しいかな。

    モノローグだけで構成される本書は、「何か変わった本だなぁ」と言う印象でしたが、下巻も進むに従い、何故だか感情を心の奥底から震わされます。って言うか、ぶっちゃけ、最後の方で泣きそうになってしまいました。

    普通の男の普通の人生を普通に書いているだけなのにね。いや、逆に、普通の男の普通の人生を普通に書いているだけで物語が成立しているところが凄い。

    ものすごく物語になっているわけではないのに、深い物語です。

  • やっと図書館で予約してたものが回ってきました!長いけど、ずんずん読める。どんどん、じゃなくてずんずん。
    生きること、信じることって何なのか。それをひたすらに、のめり込むように、つかもうとする。そんな小説です。

  • 下巻、おもしろかったな。
    上巻で出て来たカード、Xだったもの○だったもの、がつぎつぎにひっくり返っていく、ある意味わかりやすすぎるんだけれど、まさかの歩が○ゲでつまづくとは(笑)
    人生順調だった子がふとしたキッカケでつまづくっていうのは、実際によくあるパターンですが、ちょっと軽すぎるというか(笑) ああエンタテインメントなのね、この小説。
    それよりも、マサラコウモンサマのおばちゃんが亡くなったあたりから貴子再登場までの都合の良さが、あまりにも え〜〜 ないない!だった。
    さらに、最後エジプトおち? ないないない〜〜(笑)

    でもまぁ、楽しめます。
    この小説はメディアに頻繁に登場する実物の加奈子ちゃんとセットでお楽しみ下さい、ですね。
    リアル加奈子抜きだと ないないない!で終わってしまいそうでした。

  • とても面白かった。
    最後は西加奈子の世界だなぁ
    と思った⑅◡̈*

  • イランで生まれ、エジプトで育った経験がある作者西加奈子さんの経験が色濃く出ている作品。強烈な家族の中、存在を消しながら、周りの評価を基準にして生きてきた主人公歩の成長。

    姉を否定し母を非難し 、自分だけがまともだと、ふたりと距離を置き生活してきたけれど、状況は変わり、惨めな状況にある自分に気づき、怒り、傷つき悶々とする…。

    人それぞれ信じるものは自分で見つけなければならないということ、誰かに決めてもらうものでもなく、他と比べて評価するものでもないというメッセージを感じたけれど…、深いいですね。

    西さん、発想がハチャメチャで楽しい。そして文章はとてもしっかりしていて上手いなぁと。直木賞おめでとうございます。

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一家離散。親友の意外な行動。恋人の裏切り。自我の完全崩壊。
ひとりの男の人生は、やがて誰も見たことのない急カーブを描いて、地に堕ちていく。
絶望のただ中で、宙吊りにされた男は、衝き動かされるように彼の地へ飛んだ。

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